ノーマーク・ノーライフ

              “ 何 を いって い る ん だ 君たち は!! ”
 議場では人々がののしり合ったり、ときに声を、そして手を長机にたたきつけて、憤慨し、これまでの無秩序な秩序に対しての鬱積した思いを語る。もう残された大陸はひとつしかなかった。地球の寿命も、もうあとどれだけもつかわからなかった。傍らに控える老人たちが、がやがやとがやをとばしている。まるで古代の闘技場のように、周囲をただ口うるさい老人が囲っていた。いや、それらはすべて“アバター”にすぎない。未来的な社会では、こうしたコミュニケーションですら、電脳空間ですべてを終えてしまえるのだ。
 厄介なコミュニケーションですら、簡単に終えられるのだった。

 そり立つ白い協会を背にして、世界臨時政府の重鎮たちが、あの手この手で、争う票と評価を競い合う。電脳空間をかこう閲覧席には、世界中の議会に関心のあるものたちが、メディアを通してその向こう側にあるはずの世界を覗いていた。
 眼鏡をつけた科学者らしき老人が、説明をおえると、対面にすわっていた、議長が、まるで裁判官のような面持ちで、小さな透明なテーブルの上で、なにごとかを指図する、それをうけとった、逆側、左に控える議員らしき人物が大声をはりあげて、その老人の科学者か医者かを罵倒した。
 「数字出ない事象がすべてを示しているのに、人は人を数字として理解しなければ安心しきる事はできないのに、都市部にも、田舎にも、様々な事象があるが、そもそもが、全体としておかしくなっているのが、この3001年、この地球じゃないか、古き人類が自然や生態系をむさぼり、破壊しつくしたのを知らないのか!!」

 世界政府が憤りをみせた。世界政府は、人工のすべてをしっている。地球人口は、すでに一万をきっていた。

 「社会現象の何たるかを、学問を横断的に見なくてはならない」
 
 最古の老人が、年長者らしき人を諭し、促す態度をとる。・老人たちが争い、ひっくり返したテーブルやいすのバリケードの向う、黙りこくる若者がいた。
 若者は、もう最後までだまっていようとおもった。白い議場には、老人とわかものしかなかった。女性たちはあきれて、もうお茶も提供しなかった。しかし今、長椅子の向う、先ほどまで黙りに黙って一切議論に参加しなかったもの、それを電磁波を媒介にして全世界に伝播させていた若い男がたちあがり、彼のめがねのふちをきゅっと上にもちあげて一言はなった。議場はそれで騒然となり、またもや議論は大乱闘の様そうに変わった。

 若者は、つとたちあがり、その直後から、誰にも勝る罵声をあげた。それは心からの怒りだった。

 「老人、老人、聞いてください、若者はあなたたちの監視に飽きました、あなたたちは、暇を持て余し、その持て余した暇で人の揚げ足をとってばかりいるではありませんか、新しいものをつくれば、古いしきたりにあわせろといい、古きものに従えば、斬新さがないという、もはや手詰まりです、人工はもう、1万をきっているんです、考えてください、私の友人は、もうあなた方のマークを嫌って、牧歌的な古代の生活をはじめてしまった、けれど、そんな人間でさえ、老人、老人、よく聞いてください、この言葉がすべてです、あなたがたは、また揚げ足をとるのです、人の揚げ足を、どうです、ここまでいきてきた人類、その誰もが、持て余した暇、それに与えるべき英知を、ただのひとつでもこれまで見つける事がありましたか?私は友人を不憫に思います、なぜなら老人のような人々の手によって、不自由な生活を強いられ、そしてあまつさえ、都市部できらびやかな生活を送る、あなた方のプライドの穴埋めをさせられているのですから」

ノーマーク・ノーライフ

ノーマーク・ノーライフ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-27

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