もしも君に翼があったら

千葉しげる

雀の子を助けた子供の話

まさし君は、 みんなからマー君と呼ばれていました。 ある日、 公園の砂場で遊んでいると、 ガサッという何かが木から落ちた音が聞こえました。
なんだろうと、 近づいてみると一羽の雀の子が巣から草の上に落ちていたのでした。
マー君は、 草の上に落ちて、 かろうじて無事だった雀の子を両手でそっとつかみました。 そして、 その雀の子の温かさに驚きました。
雀の子ってあったかい。 生き物ってみんなこんなにあったかいのかなぁ?。と、 マー君は思いました。
でも、 思わぬ宝物を手にしたマー君は、 両手で雀の子を大事につかんで、 急いで家へ持って帰りました。 すぐに、 お母さんに見せたかったからです。
雀の子を、 お母さんに見せると、 まぁどうしたの?。と、 お母さんは驚きました。 マー君は、 自慢げに、 公園で見つけたんだ。 僕の雀だよ。と、 言いました。
でも、 お母さんは、 雀の子は人間からエサを取らないから、 家に置いておくと死んじゃうのよ。と、 やさしく言いました。
それを聞いたマー君は、 えーそうなの?、 それじゃあ雀の子のお母さんの所へ返さなきゃだめだね。と、 言いました。
1時間ぐらいたって、 雀の子がだんだん元気がなくなってきたのを見ると、 マー君は、 お母さん、 どうしたらいいの?。と、 聞きました。 すると、 お母さんは、 お父さんが帰ってきたら、 巣に戻してもらいましょう。と、言いました。
マー君は、 ホッとしてケーキの箱の中に入れている雀の子に、 もうすぐお父さんが帰ってくるから、 お家へ帰れるよ、 心配しなくても大丈夫だよ。と、 言いました。
夜になって、 お父さんが帰ってきました。 お母さんが、 事情を説明すると、 すぐに行こう。と、 言ってくれました。
マー君は、 ケーキの箱の中に入れた雀の子と一緒に、 ハシゴをかついだお父さんの後について行きました。
公園に着くと、 お父さんは、 どの木なの?。と、 たずねました。 マー君は、 公園の砂場の近くにある木を指して、 あの木。と、いいました。
お父さんは、 持ってきた懐中電灯を片手にハシゴを登り、 雀の巣があるかどうか確かめました。 マー君は、 ドキドキしながら、 その様子を見守りました。
すると、 あった。と、 お父さんは、 こちらに振り向きました。 それを聞いたマー君は、 ホッとして、 雀の子に、 よかったね。おうちへ帰れるよ。
と、言うと、 ハシゴを途中まで降りてきたお父さんに、 ケーキの箱ごと雀の子を渡しました。
お父さんは、 やさしく雀の子をつかむと、 そっと巣の中へ戻してやりました。 ハシゴを降りてきたお父さんは、 マー君、 雀の巣の中には、 他に三羽の子供がいたよ、 兄弟が帰ってきて、 みんな喜んでいたみたいだったよ。と、言いました。
マー君は、 お父さんに向かって、 これで良かったんだよね、 お父さん。と、 言うと、 お父さんは、 そうだよ。 マー君。いいことをしたね。 えらかったね。と、 やさしくほめてくれました。
でも、 マー君は、 ちょっぴり、 雀の子と別れるのが残念でしたが、 お父さんにほめられて、 自分はとても良いことをした気持ちになり、 なんだかすごく嬉しくなりました。
そして、雀さん、 さようなら。 もう巣から落ちたらダメだよ。と、 言うと、 お父さんと一緒に家へ帰って行きました。
それから、 3ヶ月ほど経ったある夜の事でした。 マー君は、 眠ろうとして、 布団に入りました。 午前0時を過ぎた頃だったでしょうか、 ベランダのガラス戸をコツコツ、コツコツと、たたく音に目を覚ましました。 なんだろう?。と、マー君は起き上がり、カーテンを開けて外を見ました。
すると、 月の明かりに照らされた、 一羽の雀がいました。 マー君は、 なんでこんな夜中に雀がやってきたんだろうと不思議に思いました。
そして、 ガラス戸を開けると、雀に向かって、雀
さん、 何の用?。と、 たずねました。 すると、
雀は逃げもせず、 3ヶ月前に、 巣から落ちたところを マー君に助けられた雀です。 今夜は、 マー君に恩返しにやってきました。と、 言うのでした。
マー君は驚き、 いったい何をしてくれるの?。と、
たずねました。 すると雀は、 今夜は、 あなたを空の旅にご招待いたします。と、 言うのでした。
マー君は、 どうやって?。と、 雀に聞くと、雀は、 まずは、 ベランダに出てください。と、 言いました。 
マー君は、 言われた通り、 ベランダに出ると、雀は、 これから、 マー君に翼をあげます。と、言うのです。 そして、 あっという間に大きな白い翼が、 マー君の背中にありました。
雀は、 少し動かしてみてください。と、言うので、
マー君は、 どうやって?。と、たずねると、雀は、
頭の中で、 翼よ羽ばたけ。と、思うだけでいいんです。と、言いました。
マー君は、言われた通り、頭の中で、翼よ羽ばたけ。と、思うと、背中の翼は、バタバタと動き、体は宙に浮かびました。
マー君は、飛ぶとは、こういうことなのか。と、心の中で思いました。
それを見ていた雀は、 準備はできました。さて、
マー君は、 どこへ行きたいですか?。と、 聞いてきたので、夜空を見上げ、 光り輝く月を指さし、 あの月を、 もっと近くで見てみたい。と、言いました。
雀は、 いいでしょう。では、 月に向かって飛んでいきましょう。と、 言いました。 そして、雀は、 私は体が小さいので、 マー君の肩に乗ります。と、 言うと、 ピョンとマー君の肩に乗りました。
雀は、サァ、 勢いよく、 月に向かって飛んでいきましょう。と、さらに言うと、マー君も、うん。と、答えました。
そして、翼を羽ばたかせると、それはまるで、ジェット機のような速さで、ベランダを飛び出して行きました。
マー君と雀は、ぐんぐんと空高く昇って行きました。 そして、1時間ほど経つと、そうとう月に近づきました。 
宇宙にやって来たマー君は、近くで見た月を、月って、本当は灰色なんだ。それに、穴がたくさんあって、でこぼこしてる。家から見ていた月とは、だいぶ違うんだなぁ、色は黄色くて、もっとキラキラ光ってるんだと思ってた。と、言いました。
すると雀は、 月はもう死んでしまっている星だからね。と、 言いました。 マー君は、雀に向かって、
そうなの?。と、 言うと、雀は、 そうです。と、
答えました。 そして、マー君、 振り返ってみて。
と、 言いました。
マー君は、 言われた通り、 振り返ってみると、 そこには、 青く輝く地球が見えました。 すると、 マー君は、 わぁー、 地球って、 青くてあんなにきれいなんだ。と 言いました。
そして、雀に向かって、 どうして地球は、 あんなにきれいなの?。と、たずねると、雀は、 生きているからなんだよ。 もう死んでしまっている月は、 近くで見るとあんなんだけど、 生きている地球はきれいでしょ。 生きているってことは、大切なことなんだよ。と、 答えました。
それを聞いたマー君は、 生きてるってことは、大事なことなんだね。と、 言いました。 その後、 しばらく地球に見とれていたマー君に向かって、雀は、マー君、 そろそろお家へ帰りましょうか。と、
言いました。    
マー君は、うん。と、 元気よく答えました。 何やら、 美しい地球を見てから、 力がわいてきたようでした。
青い地球に向かって、マー君と雀は、 飛び続けました。 そして、 マー君のお家のベランダに着くと、 雀はこう言いました、 もう夜中にマー君をたずねてくることはしません。 いつまでも元気でね。でも、
僕は、いつも遠くから君を見守っているからね。
それじゃあ、 さようなら。と、 言うと、 サッと飛び立って、 どこかへ消えてしまいました。
そして、 気が付くと、 背中にあった大きな白い翼もなくなっていました。 マー君は、 それより急に眠たくなって、 ガラス戸を開けると、 すぐに布団に入って、 ねむってしまいました。
朝が来て、 ふと、 目をさましたマー君は、 夜中に雀がたずねてきたことや、 月や地球を宇宙からながめたことは、 すべて夢だったのだろうかと思いました。      
2階の自分の部屋から、 階段を降りて、 朝食のしたくをしているお母さんに、 夜に起こった出来事を話しました。
すると、お母さんは、 すてきな夢を見たのね。と、
ほほえんでいました。 そして、 きっと雀さんを助けたごほうびに見られた夢だろうから、 これからもいい子でいましょうね。と、 マー君の頭をなでてくれました。
マー君は、うれしくなり、僕、もっといい子になるよ。と、元気に笑っていいました。
       
        
                     
     
      


          
     
          
        
      
        

     
    
    
   


       
    
  
   
  
   
   
     
  
    
  
       
  

         
   
          
                                 
                      

もしも君に翼があったら

もしも君に翼があったら

  • 小説
  • 掌編
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