The Winds of Nature: 1

黒うさぎ Black Rabbit

The Winds of Nature プロローグのパート1です。お読みいただきありがとうございます。中世ファンタジーの物語にしたいと思って書いております。良ければ次回のパートもお読みください。お待ちしております。

第二話: https://slib.net/92482

プロローグ: 疾風

「ほら、エイドル。じゃあ、それを取れ。取ったらすぐに始めるからな」
 そう親父が言って、俺の前に、一本の木剣が放り投げられる。木剣と言っても正しく製造された、売り物にでもできそうな綺麗な代物ではなく、ただなんとなく剣らしき形に粗々しく成形した木の棒と言った感じだ。投げられた木剣をしばらくじっと見つめてから、俺はすっとそれを手に取った。
「剣術の基本、毎度のこと言っているが、それは“合いの手”だ。相手の攻撃に合わせて、対応する行動を取る。これも毎回言うが、言わば『遅出しじゃんけんの命を賭けたもの』だ。例えば、相手が上方から切り掛かってきたら、自分も上方に剣を構えて防御行動を取る。これは相手にとっても同じ、自分が攻撃したら相手も防御する。 ……よし、それじゃあ、やってみようか」
 言って、親父はおもむろに、自分が手にした木剣を俺に向けて構える。俺もそれに応じて木剣を親父に構えた。
「まずお前から攻撃してみろ」
「……ああ」
 俺はゆっくりと剣を振り上げる。狙いは上半身の首近いあたり……。首を斬ってしまえば、一撃で相手を沈められると、これも前に親父から教えられた。
 そして、親父めがけて、木剣を袈裟懸けに斬りおろした。
「やっ!」
 掛け声に合わせて降ろされた剣は、速度や鋭さは、木剣にも関わらずまだいまいちだったが、一応はそれも攻撃の一つである。親父はどこから斬りおろされたか、どのタイミングで防御を合わせればいいか、一瞬で見極めて、俺の一撃を弾き返した。
 パン、と乾いた木の音があたりに一面に響いた。
「前よりは、攻撃が正確になってきているな。だが、あくまでも前よりはマシというだけだ。まだまだ、騎士になるためには鍛錬が必要だな、エイドル」
「……そうなのか。だったら、自分から鍛錬をこなしていくまでだ」
「いい意気だ。それじゃ、俺の攻撃を防御してみろ。本気ではまだやらないから安心しろ」
 防御態勢から戻った親父が、改めて剣を構えながら、俺との距離を少し置く。
「よし、それじゃあ、行くぞ!」
 そして、親父は突進するように俺に駆け向かってきた。木剣が腹部を搔き切るように水平に薙がれる。
(……!)
 俺は、親父のようには、まだ上手くいかなかった。攻撃を見極められず、腹部に一撃を食らう。親父は本気でやると言っていなかったのに、そして、これはあくまで木剣なのに、なぜか本物の剣に斬られたような気がして、その恐怖とそして親父が斬った時の顔面の気迫とで、俺の足には力が入らなくなっていた。
 すとん、と、尻餅をついて倒れる。その後、親父は昔の癖が出てしまったのか、俺の首元に刃を近づけた。
「おいおい、どうしたどうした。そんなに力は入れていなかったはずだぞ? 痛かったのなら、謝るが」
「……いや、大丈夫。ちょっと、足が竦んだだけ」
「でも、まあ、怖がることは決して悪いことではない。戦場において恐怖心が無くなり、傲慢な考えに取り憑かれれば、その先に待っているのは、確実な死だ。できれば……弾いて欲しかったがな、ははははは」
 俺は立ち上がって尻を両手で払う。そばに落ちていた木剣を拾い上げた。
「よおし、それじゃあ、まだまだ続けるぞ、ついてこい、エイドル!」
「……ああ」
 そして、そのあと、俺たちの鍛錬は夕暮れまで続けられた。

The Winds of Nature: 1

お読みいただきありがとうございます。下から見ている人もこんにちは。中世ファンタジーの物語にしたいと思って書いております。良ければ次回のパートもお読みください。お待ちしております。

The Winds of Nature: 1

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  • 掌編
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  • アクション
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更新日
登録日 2019-05-26

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