小春
その人はママの愛する人で、私のパパではない。
小さい頃から見せてくれたその笑顔が忘れられなくて、その笑顔は今も目の前にある。
ママと同じ歳、その歳には見えない若々しい顔。
二十四年という差なんて感じさせない、手を繋いで歩幅を合わせてくれる優しさ、私は今、その優しさが苦しい。
自分勝手で自由に生きる、結婚はしない。
でも実は、私のことを一番に考えてくれていることを、私は知っている。
いつもバカなことを言って私を笑わそうとする。
そんなあなたが好きな私は、もっとバカだ。
たまに家に来ることがすごく楽しみで、いろんな話をしてくれて、いろんな話を聞いてくれた。
あなたが言うことは周りの大人とは違って、世間に流されず、いつも私の真ん中を突き刺した。
たまに歌う、それが心地好くて眠ってしまう。
そして、みる夢が、、そう。
そうなんだ。
手をつなぐ、それが変わっていったり。
私の瞳に映る、あなたが変わっていったり。
ママとあなたがいるリビングの扉の前で、止まってしまったり。
私は知っている、私があなたを好きにならないようにあなたが振る舞っていることを。
私は知っている、あなたがママを好きなことを。
私は知っている、私に別の同じ歳ぐらいの人を好きになってほしいことを。
ママ、私十五歳になったよ。
私はあなたと外で二人で会ったことがない。
私は一度もあなたとお風呂に入ったことがない。
私は一度もあなたに抱きしめられたことがない。
私はあなたの連絡先を知らない。
私はあなたの子供じゃない。
私はこんなことを思うんだ。
私は子供を引きずりながら、大人になっていく。
すごいスピードで、音もたてず、静かに。
私は小春。
あなたが好きだ。
ママの隣でテレビを見て笑うあなたを目の前に、そんなことを思ったんだ。
小春