Show waru onna
ある都市部の近郊には、近隣住民を遠ざけるゴミ屋敷があって、それらは何度も立ち退きやゴミの処理を行政に促されたにもかかわらず、何も変わる事がなかった。その街の市役所の職員が仕方なく業者をよびよせ、掃除にかけつけさせる。
「ゴミ?ないよ、そんなもの」
よくある話だと思った。果たしてどのくらいのよごれか、それは傍目に見えるはずだろうと、駆け付けた私は思ったのだ。
「けれど、私は依頼されたとおり、近隣のボランティアやNPOとともに、この家の掃除を任されたのですが」
「じゃあ、しょうがない、さあ、あなたほらあがりなさい、ごちそうはないけれどお茶くらいはだすよ」
「は、はあ」
ニュースなどで見る光景とまるでちがう、それどころかその家とその夫人は去年亡くした祖母のいで立ちをおもわせた、雰囲気が、空気がその奥にある当然整然とならべられた生活感のない家具と、掃除が行き届いたまるで公の場所のような、隣人愛に満ち溢れた邸宅と屋内を連想させた。
「それでは、おじゃまします」
玄関からしてまったくそうだ。ごみやチリ、そんなものはひとつもない、むしろ匂いさえなかった。住所を間違えたのだろうか?いや、三度、三度も確認したのにまちがっているのだとしたら、きっと自分の方に問題があるのだろう。
「すみません、おばあさん、ゴミはどちらへ??」
「ありませんよ、そんなもの」
古着らしき素朴なセーターとよくパーマの行き届いた髪の毛、清潔感の固まり、いったいどこにこの部屋のどこにごみなどあろうか、廊下から奥へ、左手にキッチン、右手には洋室、さらに奥には階段と、トイレに浴室。どこにもゴミがみあたらない。
「ありませんよ、そんなもの」
突然自分の目の前の景色がゆがんだ。それはまるで涙のようなゆがみ方で、けれど私はめもとをぬぐってもそこに一滴の涙もながれていないのをふきとってみて、やっと感じた。
「さあ、どうぞ、こちらへ」
そういって和室に案内される、案内といっても家主は廊下から自分はたちどまって、その先の選択はこちらにまかせたようだった。
「それでは、失礼します、あっ、目に、ゴミが??」
「ああ!!そうか」
目の前が見えなくなった、ホコリだ。この空間にもホコリがあった。そこでようやく理解する、ここはゴミ屋敷だ。そうしてめをあけた。
「ああ、そうか、お客さん、あの性悪女のせいだね」
「ギ、ギギ、ギギ」
「……おかあさん、これが、“行政のいう、ゴミ”でしょうね」
そうして入った一室の奥には、とても古い形のロボットが二体。どうやら、男女対の夫婦の形のようだった。
「ああ、ならば、それの処分はあなたにまかせるわ」
そう軽く言った貴婦人の言葉の端が軽く裏返って、動揺をしらせていた。
これは今から遠くない未来のできごと、子供を持たなかった老人は、けむたがられ、嫌がらせをうけていた。ただ、旧式のロボットを二体かかえているだけで、“ゴミ屋敷”のいわれようだった。
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