夏の始まり
神様が不在の電車の中で蹲る、仕事終わりの夜明け。私は知ってるんだ。秘密を唇に塗った妖しい女性の紡いだ、陽射しが反射して綺麗な泉に、沈めた悲しい匂ひのする言の葉の宝石。打ちのめされても、打ちのめされても、生きていくしかない、夜の鴨川で吹いたサックスの演奏。力強く、握ってくれた手の儚い線香花火。優しい眼差しのオルゴールの音。幸せの崩れ落ちる音は、いつだって星に生きる少女の地上への墜落死。地上は、幸せの成れの果て。無数の墓標に生きる地上の、通り過ぎて行く夕陽の電車の、鎮魂歌。
夏の始まり