査証
四条河原町の阪急出口を出て、夜の帳。月はあたしに雨を騙した。通気口からの風を頼りにした。足はひどく重かった。心は自由だっただろうか。
名前。
誰かのような名前。紛れもなくこの身体の持ち主。借り物のような身体。無慈悲に酷使してでも持ち主が得ようとした地上への碇。自傷なのだろうか。他人のような名前で、他人のような身体でもよかった。確かさは血や肉ではなかった。
ひと。
生き死にを是認してくれるようなひとの素地。いや、肉塊ではなくていい、生きることを許してくれさえすれば。どんな形骸でさえも是非を裁決する厳然さならば。ここに「ある」者である査証さえくれるなら裁かれてもよかった。
あなた。
流亡する木屋町。自由なあなたを相対することでようやく得られるあたしは自由だっただろうか。どの一瞬のために、あたしは、生きようとするのか。
査証
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