人間

人間

そしてこうして私は人間として成長し高めていくのです、あなたから辛うじて人生で孤独に1人ぼっちで耐えていく事をそっと教えられ、私はふと人間でなくなる事にほっとしなければならない。
宇宙に一つとしてない一つだけの心が微かにでも動いているのですから、不思議です。私はなぜ心というものがこうして存在しているのでしょう。何か不思議な人の心の感受性にそっと触れて、ぽっと人間になれたのです。
私はただ人間でなくなる事で心が軽くなり救われていく、何か深く心に背負う重荷を感じている時に、私はふと現実を忘れたくなって、ああもうどうでもいいのです。ふと不思議に死がもうすぐに来るのではないですから。
私は人間として人間の事がわからなくなる。私は人間を想う事を全てを放棄してやめたくなったのです。
するともうこの心の中には美しいものだけが残されて生きているのを知り、もう一度だけ私の心を死なせてから初めさせて下さい。
でも私の心はもうとっくにはじめから生きていなかったのかもしれません。
でももうそれでいいのです。何もかもはじめから無かったのですから。
私の人生は信じてきた一つの真理から本当に想う存分にいいようにされたのか。もしくはいいようにしていったのか。それは誰にもわからない。そう、それは時間を経て人生を振り返る時の私にしかわからないのです。

そんな私をもう生きさせてくれなくても良かったのです。これまで様々な事を感じ過ぎて、私はもうわからなくなってきました。

でもこんなちっぽけな私にも恋なんかできるようになりましたわ。やっとうまく生きれるようになったのかしら。
今の私は一体世界の中心の何処に生きているのでしょう。男と女の恋の秘密を教えたのはあの男なのではないかしら。
私はずっとこの恋の夢のまた夢のままで生きていたかった。人生は何の計らいもなく全てが自然に、こんなにもうまくいくようにできていた。男とうまく恋ができた初めての夜に、ふとこの私は心象の主人公となり、ふわっと居心地が良くなってしまい、うっとり夢を見ていたのです。

一人の孤独な私だけをずっと信じてきて良かった。今の私の生命を確かに生きて信じています。生まれたばかりの10秒後の心というものを、ふと人生で初めて知ってしまったのでしょう。
私にもわからないままに時は儚く過ぎ去っていった。ふっともうすでに生命の形を有していないものへの儚げな淡い憧憬の中に、この世俗からの完全な脱心があったのです。
人生とは今ではもう何もかもが不思議な事に思えてきました。これまでの私が何も知らないうぶであったのが、いけない人としての恥じらいなのかしら。それさえももうどうでもよくて、私には知る由がなかったのです。
私の人生はこれで良かったのですか。そう私の人生は本当にこれで良かったのです。さあ、全ては良い事にして明るくいきましょう。
人間として恥じらう事なく堂々として生きることの尊さを教えたのは、あの男であったのかと、今となってはわかります。
この何とも言えないありがたさ。それに気付けなかった私にふと恥じる心で情けなくなってしまったのです。
私は本当の私なのかしら。本当の私ではないのかしら。どっちなのですか。

いっそのこと、こんな人生に愛想をつかせた方がいいのかしら。それともこんなにも不思議で幸せな居心地に主を仰ぎ、人生を新たに創造していくのが、最も嬉しい乙女の空想なのかしら。
この世界で私らしくしなくてはならない意味というものがあるのですか。
世界の真理は全く広大で美しいものであった事を知らないでは済まされません。
ああ、いつしか全てが解って本当の大人になる時が来るのでしょう。
どうか教えてお願い。もうわからない。死なせて。どうでもいいの。私は生まれなければ良かったのでしょう。人間として私は生きる意味が本当にあるのかしら。
ああ、天地を創造した時の微かに移ろう心だけが私を許せるというのです。
私は何もしない人生より、やっちゃう人生の方がいいのです。これまで様々に感得してきた人生の経験が、人間の個性としての独特の形状を与えたのです。
さあ、私はついに本当の人間になる時が来たのです。心はついに本当の心になる時が来たのです。
人生で何を想像して物の哀れに孤独になってしまうのか。その不思議な心の移象がわからなくなってきました。両親に誠に申し訳のない事なのですが、私は人間をやめる時がやっと来たのです。
人間として死ぬ事に、このまま死んでいいのかと自問自答しながら、私は薄らいで死んでいくのです。
ああ、心は邂逅していく。解脱していかざる終えない、もうこれでいいのだわ、ふと人生は人生でなくなったのです。
ふっと人間をやめた時、やはり生きている心とはいいものだったんだわと感じる初めての私がそこにいた。
私にこんなことが起こるなんて、生きてきた心がそっとあの世へとこんなにも美しい所にいるのだわ。
私は宇宙に1つだけのこの状態でああ、死んでいいの。もう何もかもこの世での問題事は、全て解決させたのですから、もう何も何も無かったのです。

人間

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-21

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