マスターピース

私はいつしか乙女の全く見知らぬ処女の世界にいってしまったのでしょう。
私はいつしか本当にこの世界から完全に忘れ去られたというのでしょう。
私は私自身を知り人間として全く御仏のなすがままに、ほらっ世界に生命のろうそくの灯火が唯一の一個性を確立しました。
そしてあなたがこのような宿命に生まれようとしているのです。
あなたが生まれた世界で、どのような幸せな感情に包まれて御仏の手を合わせてただ拝むのでしょう。あなたが預言通りにこんなにも可憐な心で生まれてきて礼を言いたい所存です。
そしてそなたは清純な少女になってしまったのです。
そんなろくでもない世界ではなく、義理と人情がこの人間の心には確かにあったのだわ。
私にも人間として張って生きなければならなかった若かれし時代がありました。そして年月が経ちふいに年齢による老いを感じてふと哀しくなってしまう。
私とは一体果たして本当に生まれて来ても良い人間だったのですか。私は今まで生きてきて本当に良かったのでしょうか。
人として見果てぬ究極の美しい静けさの中で、十字架が輝やく天竺の薄明りの夜明けに、一筋の光線が溢れた。ひとたび私達はそこを目指して生きている。ふと神様の愛によってこのろくでもない世界に光が、そう光が見えるのです。ああ、嬉しい。こうして人智を超えなければならない状態に辿り着いている。
やはり私は生きてきてこんなにも美しい想いができるのなら、それだけでもう良かったのだわ。

これで戦争が本当に初まり、祭りの血が騒ぐ祝祭劇場の一筋の天明の中で、ほらっ、宇宙の鼓動が生きているのです。
私は本当に生きているのか。それをどのようにして証明すれば良かったのでしょう。
生きて生き抜かなければならない。日々飯を食っていかなくてはならない。生命とは本当に戦って戦って勝ち取らなくてはならない。
人生を勝ち取ったその先に究極の天命の中で遊び戯れた。私は本当の生命の喜びを全くもって経験しているのです。
人間が必らずしや生きている意味はこの生命の究極の喜びにあるのでしょう。
無限の宇宙を手で掴んで眺めた時、人間ではない事をしたのだと気づき、同時に人間である事をふわっと忘れた。
命を懸けて一線を越えた人間は一体社会に何で恩返しをすべきなのでしょう。
何という神々しいマスターピースを手にした時、この広大深遠な宇宙の中で私とは完全なる傑作の人間である事に気づき、ぽっと自分自身に惚れたのです。
本当の自分に初めて気づいて生きている。まず初めに世界で私だけが持つ唯一の個性である事実。誰にも恥じない人間らしいまともな行動を営み今まで努力してきたつもりです。
この世界の何気ない情景を意味ありげに捉えて、心は美しく移ろいゆき生きる事を確かに感じている。
でも私は本当の私なのか。様々な事をしてきた私は何の為の人生を生きてきたのか。それは誰にもわからない。さあ、何もかも忘れ去られたわからない人生。でも私は人間として一生懸命に努力して生きてきたこの道をただ真っ直ぐに進む。
さあ、これから我が人生を堂々と語ろうではないか。
こんな私の人生がそこにあったのだと、ああ、ふと雲間からすっと天の光明が指してきました。全てが祝福されていく。これ程まで人生で嬉しかった事はありません。
今本当の意味で、私は全く人生を正当に肯定している。
これ程までにたくさんの人生経験をしてきた私は宇宙で唯一神の光に照らされた御姿で、全く感覚していない心の微かな感動の中に人間ではなくなっていく。
さあ、ふわっと神が人生を一たび肯定し是認してくれた。ああ、本心から例えようもなく嬉しいのです。
ああ、そんなにも嬉しいの。かわいらしいの。そんなにも浮き世の中の私はこの世のものなのだわ。それと同時にもうこの世のものではないのだわ。
私は何処から来たのでしょう。生きているのでしょうか、死んでいるのでしょうか。
そして、ついに何の為に心があるのかわかり初めたのです。
ああ、ついこの間、私はあの世から生き返って来たのでした。一人の人間としての集体成を知り、私の感性の何かが変化したのです。
この世界にひとつだけ真実があったとしたのなら、一人私だけがその真実を知ってしまったのです。
生きるとは自分と向き合うことなのです。

この全てを未来に見晴かしていく。やっぱり人生って本当に素晴らしいものだわ。
それは人生でこんなにも人間を愛してきたのですから。人生は集体成を迎えて経験がマスターピースになっていき、もの凄い人間の標本が私に提示されたその時、心が森羅万象を知って神様になっていったのです。

神様が人生に大いなる美しい啓示を与えた。ひとたび人生には美しい意味があった事をそっと知らせた。ああ本当に私は生まれたのだわ。こんな美しい心で何を想像していたのかがわかりました。

そんな人生にひとまず私がふわっと飛んだのでしょう。これでいいの。たかがそんな事だけで人生は本当に全ていいのです。
ああ今なら全てがわかる、わかる、ああ、私はわかりました。