夏雲麦茶、ばあちゃんちの仏間

自動書記

長机縦に二個、この日ばかりは白クロス、灰に生けた線香3本、額に入ったえらい人の写真。
蕗の炊いたの、竹の子の炊いたの、揚げの炊いたの、イカの刺身親戚がくれたの、バラ寿司樽いっぱい。
日清製粉から揚げ粉、じゅうじゅう、ウインナー炒めとたまご焼き、今日は特別にオレンジジュース。
お誕生席にはじいちゃん、とりあえずビールで乾杯、そこそこ呑んだら燗が欲しいね。
ころあい見計らって茶碗蒸し、作りたては熱いから、おにぎり作ったから食べなさい、好きなものばっかり食べずに。
すえ臭くなったじいちゃん、よっぱらって寝てしまったお父さん、誰かが点けたテレビ、
打った、おおおおきい。
ざらついたい草、日光を吸ってへんな色、えらく遠いところに入道雲、生色い眠気。
にいにいぜみ、だれかんちの風鈴なる、りーんりーん、おなかの上に肌掛けの気配。
サイクルは閉じているのだ、私はどこにも行けないし特にいきたいところも無い、何年も何年も同じことが続いてきたしこれからも続いていくし、でもうすうす気付いているんだけどそうそう長く続くことも人生にはないのだね。
そんなに寝てると夜寝られないよ、誰かの声、べったべたになったおでこ、なんだか非常に体が重い。
コップに汲んだ麦茶、喉が飲み込む、ここここっと鳴る、お盆の日のばあちゃんちの仏間、とっくに消滅してしまった日常。

夏雲麦茶、ばあちゃんちの仏間

夏雲麦茶、ばあちゃんちの仏間

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-20

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