彼女たちの純情

彼女たちの純情

ー五人組ネットアイドルグループのピュアホワイトが二年間の活動を終え解散して一ヶ月、彼女たちのその後ー

Aのその後
Aはグループでもあまり目立つ存在では無く控えめなキャラクターが売り物だった。Aは解散後に新しい就職先探しに苦心していた。高校在学中からピュアホワイトに所属していたのでアイドル以外の仕事をした事が無く、求人募集に履歴書を送っても書類選考にすら引っかからない。何通履歴書を書いただろうか?やっと面接にこぎ着けたのはピュアホワイトに所属する前に、三ヶ月程アルバイト経験があったコンビニエンスストアと同じ様なスーパーのレジのアルバイトの仕事だった。

「レジの経験はあるんだよね?POSは知ってる?しかし…前職アイドルって何?わざわざ書く?て言うかテレビに出てた?誰も君の事なんて知らないと思うよ。て言うか本物のアイドルは、私アイドルでした、なんてわざわざ言わないでしょ」

Bのその後
Bはピュアホワイトのリーダーで、勝ち気で積極的なキャラクターが売り物だった。Bは解散後もタレント事務所に入る事が出来た。しかし小さなタレント事務所だったので、いきなりテレビに出演出来る筈もなく、オファーが来るのはマイナーな週刊誌のグラビア撮影ばかりだった。

「ピュアホワイト?聞いた事もないけどまあスタイルは良さそうだから、早く水着に着替えて。え?イヤ?何言ってるの。アイドルの時も短いスカート履いてたんでしょ。は?こんな仕事したくない?冗談言ってるんじゃないよ。いきなり女優にでもなれると思ってた?こんな仕事があるだけでも有り難く思えよ」

Cのその後
Cはグループでも目立つ存在でリーダーだったBとよく衝突していた。Bに対してCは私の方が可愛い、ダンスが上手い、歌が上手い…と常に不満を持っていて、ピュアホワイト解散後は自らがリーダーとなり、女の子たちをかき集めて新しいネットアイドルグループを結成したが、新しいメンバーの女の子たちが自分よりも人気が出たら困るので、ビジュアルはCよりも劣る普通の女の子たちばかりだった。

「新しいネットアイドルグループのピュアピンクって…何か微妙じゃね?リーダーになったCもそもそもそんなに可愛くないし、ダンスも下手だし歌も下手。他のメンバーなんか普通以下だよ。ピュアホワイトの劣化版だな。萌えないし応援する気もしないな。さっさと止めろよ」

Dのその後
Dはグループでも際立ってビジュアルが良かったが、美貌を武器にガツガツ前に出ない姿勢が一部のファンから絶大な支持を得ていた。Dはピュアホワイト解散前から熱狂的なファンにストーカー被害を受けていた。ピュアホワイトはSNSやネット配信で主に活動していたので彼女たちの本名や家の住所やLINEのアカウントもバレていた。

「は?ストーカー?僕が?冗談は止めて下さいよ。僕は彼女とお付き合いしてるんですよ?実家のご両親にもこの間ご挨拶に行きましたし。ご両親は恥ずかしがって会ってくれませんでしたが…まあでもそう思う気持ちも分からなくもないですね。恐縮しているんですよ、彼女がネットアイドルとして成功したのは僕のお陰と言っても過言ではありませんので」

Eのその後
Eはグループの中でも一番やる気が無く、一番人気も無かったので解散が決まって心から喜んでいた。Eはピュアホワイトに所属している当時からメンバーにもファンにも秘密裏に年上の会社員と交際をしていて、解散後すぐにその恋人と結婚をした。

「え?子供なんでまだ早いんじゃないかな…俺も今仕事で大事な時だし…何か他にやりたい事とか無いの?仕事とか趣味とか。毎日家でゴロゴロばかりして…食事もまともに作れないんだから、料理教室にでも通えば?それに化粧とかも最近してないよね?そういうの何か俺イヤだな…俺はピュアホワイトだった頃のキラキラしていた君が好きだったのに」


取材 月刊ネットアイドル編集部 F記者

彼女たちの純情

彼女たちの純情

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-19

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