選ばれた王様

おおへんり 作

 亡くなった王様には子供も兄弟もなかったので、王位に就く者がいなかった。すると、王位をめぐって家臣たちが争いを始めた。そこで、国民が集まって話し合いをして、国民の投票で王様を決めようということになった。いろんな人が、王様になると申し出た。その中の一人である将軍は、多勢の兵隊たちを連れて都中を練り歩いた。
「国民ども、よく聞くんだ、王様の投票はおれに入れるんだぞ、おれが王様に選ばれなかったら国中を焼き払ってやるぞ」
 将軍は国民をおどかして、自分に投票させた。その結果、将軍が新しい王様になった。将軍の王様は、大広場に国民を集めて話し出した。
「おれはこの国をもっと大きくするため、となりの国々と戦争をする、国民どもは兵隊の食物や武器を作るために一生懸命に働くんだ、この国が大きくなれば国民どもも豊かになれる、だから戦争に協力するんだ」
 次の日から、数千の兵隊たちがとなりの国々に攻め込んだ。将軍の王様を信じた国民は、兵隊たちの食物や武器を作るために休まず働いた。戦闘は勝ってばかりで、国は大きくなり、国民は豊かになった。ところが、回りの国々が協力して戦うようになったので、将軍の王様は大敗してしまった。出兵していた兵隊たちは一人残らず死んで、国は小さくなり、国民は貧しくなった。将軍の王様はわずかな重臣たちと共に城に残った。すると、国民は城に押し寄せて、将軍の王様を追い出した。
 王様がいなくなったので、再び投票が行なわれることになった。いろんな人が申し出る中に、大金持の商人がいた。
 大金持の商人は豪華な馬車を何台も連ね、都中を回った。
「国民のみなさん、私はとても金持なので、みなさんのために役立ちたいと思っている、だから私を王様に選んでくれ」
 商人は国民にお金を渡して、自分に投票してくれるように頼んだ。国民は商人の言葉を信じて、商人に投票した。商人は、王様に選らばれた。商人の王様は、国民を大広場に集めて話し出した。
「私はこの国をもっといい国にしたい、そのために税金を上げることにした、その税金でより豊かに暮らせるようになる、国民のみなさん、どうか税金を納めるように協力してれ」
 次の日から、役人たちはたくさんの税金を取り立てて回った。商人の王様は税金で城を大きくきれいに改築して、税金でりっぱな洋服を作った。また、税金で事業を始めて、金もうけばかりに精を出した。役人たちも、税金でぜいたくな暮しをした。初めのうちは、国民もがまんしていたが、生活が苦しくなると耐え切れなくなった。そして、みんなで城を襲って商人の王様を追い出した。
 また王様がいなくなったので、どうして王様を選ぶか、国民は集まって話し合った。そして、国民から尊敬される人をみんな王様にすることに決まった。早速国中から偉い人が集まって、王位に付いた。それからは、たくさんの王様が話し合って国の仕事をすることになった。ところが、たくさんの王様は、一人一人意見が違うので、話がまとまらずケンカになってしまう。たくさんの王様がケンカしている会議室に、博士が大きな機械を持って現われた。
「王様たち、どうかケンカしないで下さい、私がすごい機械を持って来ました、ここにある機械は考えることができるので、王様たちがこの機械に意見を述べると、どれが良い意見か答えてくれます、どうぞこの機械を使ってください」
 たくさんの王様は、その機械を使って一番良い意見を決めて、その通りに国の仕事をした。初めのうちは国の仕事はうまくいったが、次第にたくさんの王様はなまけ者になってまじめに意見を考えなくなったので、国の仕事も失敗ばかりが続いた。たくさんの王様は機械が悪くなったと決めつけて、機械を壊してしまった。そして、再び話し合うことになって、またケンカが始まった。そこに神の使いという神父が、黄金の神の像を持って現われた。
「王様たち、もうケンカなんか止めてください、私がすばらしいものを持って来ました、王様たちは神という偉大な王を忘れてはいませんか、神を信じて神に相談してください、きっと王様たちを助けてくれますから、みんなで神に祈りましょう」
 たくさんの王様は、黄金の神の像に祈り始めた。しかし、黄金の神の像は何も答えない。怒ったたくさんの王様は、神父をロウヤに入れて、黄金の神の像も溶かした。そうして、たくさんの王様は再び話し合いを始めたが、ケンカばかりして話がまとまらない。国の仕事は何も行なわれず、国民は困り果ててこの国から逃げ出してしまった。

選ばれた王様

選ばれた王様

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-05-18

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