王子とブス

おおへんり 作

 西の国の王様には、三人の王子がいた。三人ともりっぱな王子だが、下の王子は目が見えない。王様はこの下の王子が嫌いで、小さい頃から大きくなるまでいじめてばかりいたが、きさきが死ぬとついに城の外の裏庭に住まわせた。裏庭の小屋に一人で住むことになった王子は、自分一人の力で生きてゆかなければならなかった。兄弟の王子も王様の家来も、誰も下の王子を助けることは無かった。
 ある日、王子はいつものように森にキノコを取りに出たが、転んで足にケガをした。歩けなくて困っているところに、女が一人通りがかった。
「どうしたんですか、そんな所にうずくまって」
「足をケガして動けないんだ」
「わたしでよければ家までお送りしましょうか」
「そうしてくれると助かるよ」
「わたしの背中に乗ってください、あなたの家はどこですか」
「どうもありがとう、僕は城の裏庭の小屋に住んでいるんだ」
 女は王子を背負って、王子の住む小屋まで歩いた。その途中王子は何度も礼を述べながら、女が喜ぶような歌を歌ったりした。
「ここでいいんですか」
「多分ここだと思うよ」
「自分の家なのにわからないんですか」
「僕は目が見えないから」
「ごめんなさい、それではさぞお困りでしょう」
「そうでもないよ、一人でどんな事でも自分でできるんだ、そのあかしに君に美味しいお茶を入れてあげる、中に入っておくれ」
 小屋に入ると、女は王子のケガを手当し、王子は女にお茶を入れ、そうして二人はくつろいだ。
「あなたはこの城で働いているんですか」
「これでも僕はこの国の王子なんだ、でも、目が見えないもんだから、王様は僕を嫌っていて、母が死ぬと僕をここに追いやったんだ」
「何てひどい王様かしら・・それで王子はどうして暮しているんですか」
「森で食べられる物を獲って暮しているよ」
「何てかわいそうなんでしょう」
「でも、結構楽しくやっているよ、木々も動物も友だちだからね・・それで君の方は」
「わたしは農家の娘です、でも醜くて臭いから、みんなわたしのことをブスと言って嫌がって、誰も近付こうとしないんです」
「君もかわいそうな人なんだね、ではこうしよう、君と僕は一緒に暮そうよ、二人で力を合せたらもっと楽しく生きていけると思うよ」
「そうね、一緒に楽しく暮しましょう」
 そういうことになって、王子とブスは裏庭の小屋で一緒に暮し始めた。そして幸せな日々は続いた。
 ある日、北の国が西の国に攻め込んで来た。西の国の軍隊は大敗して、王様は二人の王子と共に南の国に逃げ込んだ。城は北の国の王様が乗っ取って、住むことになった。そんな時、城の回りをうろついていた王子とブスを、見回りの兵士たちが捕まえて北の国の王様の前に引き出した。
「お前はこの国の下の王子だそうだな、なぜそんなみすぼらしい姿をしているんだ」
「王である父は目の見えない僕を嫌っていたんです、だから城から追い出したんです」
「何とひどい王なのだ・・それでお前は王の不幸を笑いに来たのだな」
「いいえ、心配で見に来たんです、僕は父を憎んではいませんから」
「それならわしはお前を殺さなければならない、お前は仕返しを企むだろうからな」
「どうか殺さないでください、仕返しなんて考えていませんから、目の見えない僕がどうしてそんな事ができるんでしょう」
「そうだな、お前なんか殺す価値もないから、助けてやろう」
「ありがとうございます・・父や兄たちはどうなるんでしょうか」
「南の国に逃げ込んだが、見つけ出して殺してやる」
「お願いです、どうか助けてやってください、彼らも仕返しなんかできないでしょうから、いつか恩返ししますので」
「だめだ、必ず見つけ出して殺してやる・・お前たちはわしの目の前に決して現われるな」
 北の国の王様はそう言って、王子とブスを放してやった。王子とブスは裏庭を後にして、森の奥に小屋を建てて暮し始めた。
 月日が過ぎて、新しい年を迎える。南の国に逃げ込んでいた王様たちは、南の国の力を借りてこの国を取り戻そうと攻めて来た。その軍隊の勢いは激しくて、北の国の軍隊を次々と破り、この国の城へと進軍する。困り果てた北の国の王様は、大臣たちと協議して戦いに勝つ方法を考え実行したが、どうしても勝てない。北の国の王様は、しかたなく元の国に引き上げることにした。城に戻ったばかりの北の国の王様のもとに、兵士が駆け込んできて、敵の軍隊が攻めて来た・・と告げた。北の国の王様は早速大臣たちを集めて、敵の軍隊を迎え撃つ作戦を協議した。そこに、王子とブスが入って来た。
「お前たち、何しに来たのだ、わしの目の前に二度と現われるなと言ったのを忘れたか」
「覚えています、でも恩返しをしたくてやって来ました、それに父や兄たちに戦いを止めさせたいし」
「どうやるんだ、話してみろ」
「僕たちが向こうの軍隊の所に行って、この国を攻めないように頼んできましょう、もし聞き入れてくれなかったら、僕たちが作った兵器で退散させます、だから王様も軍隊を出さないでください」
「お前たちにそんな力があるとは思えないが、お前たちを信じてやろう、北の国は軍隊を出さないとあの王様たちに言っておけ」
 北の国の王様がそう言うと、王子とブスは喜んで帰って行った。二人がいなくなると、北の国の王様は大臣たちや将軍たちと話した。
「ヤツらはわしをだまそうとしているんだ、どうせ西の王に言われてやって来たのに違いない・・早く軍隊を出そう」
「王様、それならどうして殺してしまわないのですか」
「殺す値打ちもないヤツらだ」
 王子とブスは荷馬車で、行進してくる西の国の軍隊を訪れた。軍隊を指揮しているのは、二人の兄の王子だった。
「お前、まだ生きていたのか」
「その醜い女はお前の家内か」
「ごらんのように、僕は元気です、それは横にいる家内のおかげです、僕には出来過ぎの家内です」
「そんなことはないぞ、その醜い女はお前によく似合っているぞ」
「ところで、おれたちに何の用だ、敵の様子でも知らせに来たのか」
「そうです、北の国は軍隊を出しませんから、兄さんたちにも引き上げてほしいのです」
「何を言うんだ、戦争をしかけて来たのは北の国の方だ、今さら止められるものか、北の国を滅ぼしたら、おれたちに力を貸してくれた南の国に領土を半分渡すという約束なんだ」
「お前は北の国に頼まれて、おれたちをだましに来たな」
「いいえ、違います、どうしてそんな事をする必要があるんです」
「黙れ、帰れ、帰れ」
「お前なんか殺す意味もない、助けてやるから」
 その時、敵の軍隊が攻めて来たぞ、と見張りの兵士が叫ぶのが聞こえてきた。王子とブスはしかたなくその場を後にした。
「これからどうするんですか、戦争が起こると村人たちは苦しみます」
「もちろん、戦争を止めさせるとも、僕にいい考えがある、とにかく村々を回ってみんなに手伝ってもらおう」
 西の国と北の国が、国境で戦いを始めた。その間、王子とブスは、村人たちを集めて大きな大砲を幾つも作った。その大砲は巨木をくり抜いただけの、粗末なものだ。
「王子、こんな大砲なんて役に立たないよ」
「たとえ使えたにしても、弾がないよ」
「大丈夫さ、これで戦争を止めさせてみせるよ・・僕らはこの大砲を丘に運ぶから、みんなはウンチをできるだけたくさん集めて来てほしいんだ」
「ウンチなんか集めてどうするんだね」
「ウンチがこの大砲の弾だよ、なるべく臭い方がいいな」
 王子とブスが何人かの村人たちと大砲を丘まで運んだ頃、多勢の村人たちがそれぞれたる一杯のウンチを持って来た。そのウンチを布の袋につめ込んで、戦場目がけて大砲で打ち始めた。どんどんウンチの弾を作って、どんどん打ち出す。戦場では、ウンチが雨のように降る。戦っていた兵隊たちは、何だろうと空を見上げた。次の瞬間、ウンチのとてつもない臭さに、兵隊たちは戦いを止めて、逃げ惑った。将軍たちも、たまらず逃げ出した。丘では、勝利に酔う歓声が挙がった。しかし、なおも大砲を打ち続ける。
「王子、兵隊たちが逃げて行くよ」
「僕たちが勝ったんだ、これで僕らの国も北の国も平和になるよ」
「でも、見てよ、西の国の兵隊たちがこちらに向かって攻めて来るよ」
「王子、どうしたらいいんだ、大砲の弾のウンチのもうないし」
 村人たちに問いかけられても、今の王子には答えはなかった。みんなが騒ぎ出すと、ブスはみんなを静めた。
「わたしにはすごい武器があるから、心配しないで、でも、恥ずかしいから目を閉じていてね」
 幾人かの兵隊たちが丘を上り切って、大砲の所まで来ると、ブスは下着を脱ぎスカートをめくり上げると、大きなオナラをした。すると、たちまち兵隊たちはとてつもない臭さに気を失った。また、兵隊たちが駆けて来た。また、スカートをめくり上げたブスは、さらに大きなオナラをした。兵隊たちは真っ青になって、次々と倒れていった。この国も北の国も、大砲を壊そうと兵隊たちを差し向けるが、ブスは次々と大きなオナラで兵隊たちを倒した。
「王子、軍隊が引き上げて行くよ」
「王子、今度こそおれたちの勝利だよ」
「そうだ、戦争を始めた王様たちをこらしめてやろうぜ」
「それはいい考えだ、みんなで城に押しかけてやろう、思い切り臭いウンチの大砲を打ち込んでやろうぜ」
 目見えないの王子とブスと村人たちは歌を歌いながら、城を目指して行進を始めた。そして村人たちの家に寄ると、ウンチをかき集めた。城に着くと、目見えないの王子は王様と二人の王子に呼びかける。
「王様、兄さん、二度と戦争をしないでください」
「うるさい、お前に指図される覚えはない・・上の王子、中の王子、下の王子たちをやっつけろ」
「わかりました、王様」
 二人の王子はそう言うと、兵隊たちを率いて城に出た。すると大勢の村人たちが恐ろしい形相で手にクワやスキやオノやこん棒を持って、城を取り囲んでいた。そしてさらに村人たちが押し寄せてくる。二人の王子はそれを見て城の中に逃げ帰った。西の国ではそれから戦争をしなくなった。

王子とブス

王子とブス

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-05-18

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