よくばりな王様

おおへんり 作

 ある国の王様は、ものすごくよくばりだった。この王様は、ものすごく金持なのに、もっともっと金持になりたがっている。そのために、国民から税金をたくさん取ってすごく苦しめていた。それを見ていた天国のある神は、王様に改心させようと、その国に下って行った。そして、コジキに化けて、王様の所に現われた。馬車に乗っていた王様は、大きな袋を抱えて大喜びしているコジキを見ると、馬車を止めて呼び寄せた。
「おい、そこのコジキ、何をそんなに大喜びしているのだ」
「王様、どうか聞いてください、わしは森の王様からすばらしい宝物をもらったのです」
「どんな宝物だ、わしに見せてくれ」
「いいえ、王様だけには見せられません、王様に見せると、この宝物を取り上げるでしょ」
「では、見せてくれとは言わない、その代わり、それを誰にもらったか話してくれ」
「言ったでしょ、森の王様ですよ、都の外れの森に住んでいて、この世で一番の大金持、あの森の王様ですよ」
 神が化けているコジキがそう言うと、王様は兵隊に命令して彼を捕まえようとした。しかし、神は兵隊の手をすり抜けて、どこかに走り去った。宝物の入った袋を取り上げられなくて王様は残念に思ったが、名案を考えついて安心した。
 次の日、王様はコジキの身なりをして、森の王様が住むという森に行った。森で大きな城を探したけれど、王様は見付けることができなかった。歩き疲れて小川のほとりで休んでいたら、村人と出会った。その村人を呼び止めて、王様は尋ねてみた。
「この辺りに森の王様の城はないか」
「お前は森の王様の所に行きたいんだね、ちょうどおれもそこに行くところだよ、だが言っておくが、森の王様の所は城じゃないよ、水車小屋だよ」
 それを聞いて王様は半ば失望したが、村人と一緒に行ってみた。水車小屋に入って行くと、村人と変わらない中年の男がいた。村人はその男から小さな袋をもらうと、すぐに帰って行った。すると、その男は王様に話しかけた。
「あなたはどこが悪いのかね」
「わしはどこも悪くないぞ」
「それでは、他に何か用でも」
「わしは森の王様に宝物をもらいに来た、森の王様はどこにいるのだ」
「目の前にいるよ、私は医学を学んだのだが、それを貧しい人々のために役立てようと思って、ここでケガ人や病人を診てあげているんだ、そういうわけで村人たちは尊敬の意を込めて、森の王様と呼んでいるんだ・・だが、私にはあなたにあげられるような宝物はないぞ」
「森の王様はあるコジキに宝物をあげただろ、その宝物をわしにもおくれ」
「そんな覚えはないな、私の持っているものなら何でもあげるが」
 王様が森の王様を問いつめている時、神が再びコジキに化けて袋を担いでやって来た。
「わしが森の王様から宝物をもらったのは本当です、この袋の中をのぞいてください」
 そう言われて、森の王様はコジキの差し出す袋の中をのぞいて、納得してうなづいた。
「確かにこれは私が持っているものだ」
「わしにも見せてくれ・・何だこれは、何もないぞ、ただの空っぽの袋じゃないか」
「あなたにはこれが見えないのですか」
 王様は袋の中に体ごと入って探してみたが、何も見付けることができなかった。腹立たしくなった神は、袋を裏返しにして王様に見せた。底には、愛という一言が書かれている。それを見ると、王様は驚いた。
「これは確かにすばらしい宝物だ、わしほどの大金持でも今まで見たことも聞いたこともない、この宝物をぜひわしにおくれ、さあ、大きな袋に愛という一言を書いてわしにおくれ」
 あきれかえった神は事のいきさつを森の王様に打ち明けて、二人で王様を改心させる方法を相談した。
「それでは宝物をあげよう、しかしこの宝物は使い方がわからないと価値がない、私と一緒にここにいればいつかわかるのだが」
「宝物がもらえるなら何でもやるぞ」
 その日から、王様は森の王様のもとで仕事を手伝うことになった。王様の役目は、薬草を探したり、ケガ人や病人の世話をしたり。王様は嫌でならなかったが、宝物の使い方を知るためにひたすらがまんした。それからひと月が過ぎたある日、城から大臣がやって来た。
「王様、こんな所にいたんですか、今まで散々探したんですよ、早く私と一緒に城に戻ってください、おきさき様と王女様は王様がいなくなってとても悲しんでいるのです」
「ばかなことを言うな、宝物をこの手につかむまで城に戻れるものか」
 王様はそう言って、大臣を追い返した。ところが、大臣はおきさきと王女を連れて戻ってきた。
「あなた、どうか城に帰って来てください」
「お父様、お願い、もう帰って来て」
「ばかなことを言うな、もうすぐ宝物がこの手に入るんだ、これさえあればわしは世界一の大金持になるんだ」
 王様はそう言って、再びみんなを追い返した。そうして、ふた月、み月と月日は流れて、いつの間にか一年が過ぎる。そうなると、村人たちの喜ぶ姿が、王様には嬉しく思えるようになった。それでも、底なしの欲望は消えることがない。そんなある日、大臣が一年振りに尋ねてきた。
「王様、大変です、おきさき様と王女様が今にも死にそうです、ぜひ私と一緒に城に戻ってきてください」
「それはかわいそうなことを、だがわしはまだ城に戻れないのだ、宝物の使い方を知るまではどこにも行けない、わしはその宝物を手にして世界一の大金持になるんだ」
 森の王様は物陰で二人の話を聞いて、そこに飛び出して口をはさんだ。
「王様、あなたはもう宝物の使い方を体得している、だから城に戻ってください」
「この宝物は何の役に立つのだ、どうして使うのだ、わしはまだ知らない」
「その宝物は善いことならどんな事でもできる力がわいてくる、そう念じて、そう行なえばいい」
「これはやはりすばらしい宝物だ、これからどんどんお金をかせいでやるぞ、わしは世界一の大金持だ」
 王様は喜びながら、大臣と共に城に戻った。ところが、城は大騒ぎになっている。王様は驚いて、王室へと急いだ。そこでは、下臣たちがおきさきと王女の死を悲しんでいた。ベッドに歩み寄った王様も、にわかに悲しみが込み上げてきた。
「そうだ、わしには例の宝物があったのだ」
 王様は森の王様からもらった大きな袋を取り出すと、二人よ生き返れ・・と力一杯に何度も何度も叫んだ。しかし、おきさきも王女も目覚めることはなかった。
「何だ、こんなもの、ただのガラクタじゃないか、森の王様め、よくもわしをだましたな」
 王様は大きな袋を壁に投げ付けると、悲しみや苦しみに胸が張り裂けそうになった。その時、生れて初めて神に祈った。すると、王様の前に神が現われた。
「王様、何かご用ですか」
「お前は誰だ」
「王様が今祈った相手です、見覚えないですか、一年前のコジキですよ」
「そうか、それではわしの願いを聞いてくれ、きさきと王女を生き返らせてほしいのだ」
「それぐらい簡単なことです、生き返る薬を調合すればいいんです、しかしこれには王様の命がいるのです」
「わしはまだ死ぬのは嫌だ、だが二人を生き返らせてやりたいし、困ったなあ、どうしたものか」
「王様、この一年間を思い出してください」
「この一年間わしはひどい目に合った、朝早くから夜遅くまでこき使われた、しかし、わしが得たものは愛という何の役にも立たないものだ」
「ただそれだけですか、他にも心に残ることがあったでしょ、よく思い出してください」
「わしはひどい目に合ったことしか覚えてない」
「そうですか、では二人は生き返らないでしょう」
 神はそう言い残すと、姿を消した。後に残った王様は、突然怒り出して、大臣を呼んだ。
「こんな事になったのも、何もかも森の王様のせいだ・・大臣、ヤツを捕まえて来い」
 大臣は命令を受けると、兵隊を引き連れて森に行き、森の王様を捕まえて戻って来た。
「王様、私に何の用だね」
「きさきと王女が死んだのはお前のせいだ、お前はその償いに二人を生き返らせるんだ、できないとお前の命もなくなるぞ」
「こうなったのは私のせいじゃない、しかし、生き返らせるのは簡単なことだ、もちろん、それには王様の命がいるがね」
「わしはまだ死ぬのは嫌だ、他に方法はないのか、他人の命ではだめなのか」
「だめだとも、王様の命じゃないと」
「わかった、しばらく考えさせてくれ、わしは疲れたから横になってくる」
 王様はそう言うと、王室を出て書斎に行った。そこのソファに横になったが、お腹が空いてきたので、台所に行こうとした。廊下に出て、大臣の部屋の前を通ると、大臣や下臣たちの声が聞こえて来た。ふと王様は足を止めて、聞き耳を立てた。
『王様のよくばりのせいで、心やさしいおきさき様や王女様が死んでしまうなんて』
『よくばりな王様が死んでしまえばいいんだ、あんな王様いらないよ』
 彼の耳にそんな会話が飛び込んできて、王様は慌ててその場を立ち去った。そして、兵士の部屋の前を通ると、またしても自分の悪口が聞こえてきて、逃げるように廊下を走り過ぎた。そうして、台所のそばまで行ったが、そこからも下男と下女が自分をののしる声が響いてきた。王様は、重い足取りで城中を回ってみた。すると、城中の誰もが王様の悪口を言い、おきさきや王女の死を嘆くのがわかった。王様はそのまま王室に行って、森の王様に頼んだ。
「わしの命をやるから、きさきや王女を生き返らせてくれ、わしが死んでも悲しむ者はいないだろう、わしは国一番の嫌われ者だ」
「いいや、そんなことはない、王様が死ぬと悲しむ者がいる、それはおきさき様と王女様だ」
「二人とも悲しんでくれるかな、その二人を早く生き返らせてやってくれ」
 森の王様は王様をベッドに寝かせると、その生命力を抜き取って薬を調合した。それをきさきや王女に飲ませると、二人はたちまち生き返った。
「二人とも目覚めたかね」
「わたしたちは死んだはずなのに」
 森の王様は今までの事を全て話した。すると、おきさきも王女も王様にすがりついて、涙を流した。その涙が王様のほおをぬらした時、王様は起き上がって大あくびをした。

よくばりな王様

よくばりな王様

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-05-18

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