私的、静と生と性*

沙山 雪 作

感情を秘め沸き立ちを覆いやる私の体内はい
つもうるさい

人前で美しいドビュッシーのアラベスクを弾
き防音の部屋でめちゃくちゃにピアノを叩き
ビリー・ジョエルは好きだけどガンズ・アン
ド・ローゼズに高ぶる

私の中の静と激、表と裏で生きるは不安定を
持て余し、叫びだしたくてもひっそり天秤が
揺れ続けているだけ

死にたい願望は誰もが経験者で安楽死は賛成
派、悲しむ人が誰ひとりいないと言うならば
楽になればいい

猫は死に際を見せないと聞いたことがあるけ
ど、どこかに猫専用の死に場所が決まってい
て、そこには腐りかけのとか白骨化したのと
か順序どおりの死体がたくさんあるのだろう


お葬式なんてしてもらいたくないし死体を人
に見られて花を飾られるなんて嫌だから、万
年雪の大地の奥、誰も来ない深海の底の下、
樹齢何百年の大木の根の中、何なら電柱の芯
絶対に見つからない場所で静かに消えてゆく
のが理想なんて思う

生の色と死の色の毛糸を絡み合わせて編んで
ゆけば、冷えた首を温める色のマフラーが仕
上がるのかなんてよくわからない

ふいに熱いものがとろりとつたい「私は女」
と確認づけられる不快に罪悪と嫌悪は拭えず
揺れ続ける天秤は激しさを増す

生殖行動は生死の中心の渦で、愛する男と繋
がる快楽に外側からそれを見る私の目は冷や
やかで、愛する男は水色の私は桃色の毛糸で
絡み合わせ編んでゆけば、ひとつのすみれ色
になってしまいたいのはよくわかる

何度も何度も私の名前を呼んで欲しくてこの
ままずっと終わらないで欲しくて、防音の部
屋でピアノを叩き続けたくて、ガンズ・アン
ド・ローゼズが叫び続けていればいいと思う

その束の間に静と激の天秤は平行に止まり、
私はそこに本当に生きているような気がする

私的、静と生と性*

私的、静と生と性*

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-05-17

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