追想
だから、要約すると、「あなたには僕が見えていたか?」という問題に帰結する訳ですよ。
あの僕は生涯報われないでしょう。
「一瞬でも、その無機質な虹彩に映してほしかった…!」と、膨大な自我を飼い殺し続けている。
あなたに僕の細く白い首を絞められる、白くぼうっとして、こきりと音がして、甘美な夢から覚めると、あなたの唯一人の友人がいるよ。そのときあなたがどんな表情をしていたかはいつも思い出せない。
あなたをころそうとすると、僕の非力な腕ではあなたの健康に育った首をへし折れる訳もなく、僕は僕のナイフを取り出して(これは、人魚に託されたもの…?)、刺そうとして、二日酔いのように目が醒める。あのときあなたはいつも僕を軽蔑するように無抵抗だった気がした。
あなたがリスカしてたらめちゃくちゃ嬉しい、リスカをするあなたであってほしい。スティグマのように拓かれた腕からかなしく溢れ出す血液を私が慎重にバイアル瓶に流し込んで保存する。勿論いつか耐えきれなくなったときに飲んで死ぬためだ。
あなたの大きく丸まった背中ごしに何度「死ね!」と思ったかわからない、でもその横顔は儚く涙が出そうになった。あなたとの帰り途を思い出す。あなたのおかげで増えた知識の数々を呪った。…あなたのことが大好きだった…!
だから、最後で最大の呪詛を、「幸せになれ。」と、吐く。
お前が幸せにならないまま死んだとき、私はお前を殺しに行く。
追想