第8話-20

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 宇宙議会の設立は太古の時代にまで遡る。

 この宇宙の歴史で40億年の昔、惑星デーニョを中心とする恒星系と惑星アボックを中心とする恒星系の恒星間戦争が行われた。大量の死者、死傷者を出した末に、消耗戦となった戦争は4年の後に惑星デーニョの条件付き降伏によって集結した。

 戦争の際、多くの無関係な種族にも犠牲者を出し、種族間での紛争へと発展した。新たなる戦争の火種となったのである。これを受けて各種族や国家を含む多くが加盟する条約締結と連合機関の設立が行われ、宇宙議会が発足された。

 それから幾多の争い、紛争が激化した。けれども議会を抜ける種族は現れなかった。今のいままで。

 ジュヴィラ人はこの離脱を待っていたかのように、複数の種族文化圏へ艦艇50億隻から構成された一個艦隊を宇宙全域へ派遣、戦闘状態へ突入した。

 もちろんジェフフェ族、ティーフェ族を含む水性種族の文化圏へも、巨大艦隊が接近した。

 ティーフェ族議会は直ちに全種族を水の都に集め、緊急で防衛体制をとることを全会一致で決議、ターミナズ300億匹を水の文化圏に配備し、防衛ラインを築いた。

 この時、ビザンはと言えば1人、ジェフフェ族が避難した惑星ヒフホの議会場近くの研究ラボを借り、思案にその膨大な処理能力のある頭脳を傾けていた。

「兄さん、なにしてるのよ、お父さんは」

 ラボの水の壁面を抜け、妹のミザンが泳いで彼の横へ急ぎ駆けつけた。

「ああ、ポスハにまかせてある、心配ない」

 そういうと眼の前の水中に浮かぶ20センチ四方のキューブを見つめ直した。それは父グザが寝ている間に取り上げたものである。

「それ、お父さんの。手元にないって分かるとまた騒ぐんじゃないの」

 と言うミザンの手にも同じキューブが銀色の輝きを放っていた。

「なあ、お前も見ただろ。あの時、この2つは確実に共鳴しあった。それが影響してジュヴィラ人の兵士が死んだ。これって何かの兵器なのかもしれないぞ。ジュヴィラ人を宇宙から葬り去る鍵になるかもしれない」

 そう言い放った兄の顔が野心の炎に燃えているようにミザンには見え、真鍮にゾッとしたものが浮かんだ。

「それよりお父さんよ。兄さん、息子なんだからしっかりしてよ。研究や戦争よりもまずお父さんのことでしょ。わたしはわたしで研究しなければならないことが山のようにあるんだから、いつまでもお父さんの面倒をみるわけにはいかないのよ。兄さんがしっかりしてちょうだい」

「お前だって娘だろ。親の面倒を見るのは男であるわたしが見る必要がどこにある」

「だから兄さんは最初の子供なんだから、親の面倒をみるのはあたりまえ」

 あまり横で騒ぐので、イライラしたのかミザンは妹からキューブを奪うように取った。

「お前、これどこで手に入れた」

 話を父からそらした。

 ビザンの中では父の話よりもキューブに思考が行っていたのである。

第8話-21へ続く


 

第8話-20

第8話-20

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-14

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