モデリング珍事件

バンプ 作

 猫乃木もちが教室の扉を開けると、最初に目についたのはロッカーに並べられた作品達。次にそれを見つめ微笑むカルロ・ピノの姿だった。
「おっすー、ピノっち。これなに?」
「もちお姉ちゃん、ごきげんよう。これはモデリングの授業で作った作品ですわ」
「ああー! そういえば私も昔やったなぁ。ピノっちの作品はどれ?」
「ふっふっふ、これ、ですわ」
 ピノは胸を張り、誇らしげに笑みを浮かべる。
「えっと、これは芋虫……かな?」
「からすじゃがいもさんです!」
「あ、な、なるほど! 見える見える」
 触覚に見えた部分は角だったんだ。あ、よく見たら足生えてる……。
 その時、もちに電流が走る。そして邪悪な顔を浮かべた。
「ビビッときちゃった」
「え? なんて言いました?」
「何でもない。ピノっちこれちょっと借りてもいい?」
「え、ええ。構いませんわ」
「さんきゅ~」
 芋虫、もといからすじゃがいもを乗せている台を手に掴み、片手で覆う。
 これをあの風紀委員長に見せれば……フフフ。
 突然虫(実際は違うけど)を見せられて驚く顔を見るのが今から楽しみだ。



「あっ、ピノちー」
 もちと入れ替わるようにして教室に入ってきたのは牛巻りこだった。
「ごきげんよう牛巻お姉ちゃん。今日は来客が多いですわ」
「来客? ……ああ、そうだこれこれ」
 りこは作品に目を移す。一つ一つ探るように見ている。
「どうしました?」
「あ、いやそれがね。私が作ったものまで3Dプリンターにかけちゃったみたいで。せっかくだから受け取りにきたんだけど……」
「……もしかしたら」
「ん? 何か知ってる?」
「もちお姉ちゃんが間違えて持って行った物かもしれませんわ……」
 未だからすじゃがいもはロッカーの上に鎮座していた。



 おっ、噂をすれば。
 前を歩くのは風紀委員長だ。あの特徴的な(長さの)スカートを見間違うはずもない。
「風紀の乱れは心の乱れ~♪」
「……私の似てないモノマネをするのは誰ですか。それに私はそのセリフをそのようにリズミカルには言ってません!」
 ツッコミつつ器用に振り返る。こういうこと細かに構ってくれるとこが――コホン、閑話休題。
「まあもちさんだと思いました」
「ふふふ」
「またいたずらを思いついたような顔して。もうお菓子では許しません……よ?」
 なとりはもちの差し出してきた手を見る。あからさまにいたずらを仕込んできているのがすぐにわかる。
「あのですね……」
「じゃじゃーん!」
「なっ」
 もちは覆っていた手を放し、中身を見せた。
 ふふ、驚いてる驚いてる。
「ど、どういう意味ですか!?」
「意味?意味っていわれても」
「こ、これは預かっておきますからね。……後でしっかり話しましょう」
「え?え?」
 なとりは台ごとつかみ取り、どこかへと駆けてしまう。
「どうしたんだろ」
 首をかしげるもちだけが一人残された。



「ちなみに何を作ったのですか?」
「うーんとね」
 りこは朗らかな笑顔で答える。
「指輪!」

モデリング珍事件

モデリング珍事件

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-05-13

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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