「高野ミウさんが死刑判決!!?」

なおち

  1. ミウに判決が下る
  2. 「せまる先輩、ビッグニュースだよ!!」
  3. 「デートっていっても、何をすればいいのか分からないよ」
  4. 「金持ちは死ねよ!!」
  5. 「ナツキ会長、俺はあんたを殴らないといけないんだ」

ミウに判決が下る

「生徒会の副会長、革命裁判官、2年一組クラス委員兼任の高野ミウ。
 第一級殺人犯として死刑判決とする。死刑執行の方法は
 後日改めて通知することにする。これにて閉廷とする」

裁判官の重苦しい言葉が法廷によく響いた。
ここは学園内にある革命裁判所である。

ミウの裁判には判事1名。検察官6名。弁護人なし。
若干の傍聴人を含めて粛々と行われた。

裁判というのは適切ではない。一種の儀式と化していた。

高倉ナツキ会長は、学内で私的な目的で権力を振るうミウのことを
疎ましく思うようになっていた。部下の相田トモハル委員、
イワノフ委員からの度重なる苦情。一番彼の心を動かしたのは
腹心のナジェージダ・アリルーエワの説得だった。

彼らは上司と部下の関係など、とっくに通り越していて、
夜は肌を重ね合うほどになっていた。名目上の恋人からの進言に
ナツキはすっかり骨抜きにされてしまい、組織のため、学園のため、
革命の防衛のためと、自分に言い聞かせ、ミウを革命裁判所に起訴した。

革命裁判は、反革命容疑者を断罪する場所である。
ここに送られる人は、十分な取り調べの上で事前に
有罪が確定してから形だけの裁判を行う。初めから有罪なのだから
ミウに弁護人が付くわけがない。これは形式的なものだった。

「付いてきなサい」

ミウは手錠され、広々とした廊下を歩かされた。
先導するのはナツキの副官のナージャだ。

ミウはショックで気絶しそうなのをやっとの思いで耐えていて、
足取りはおぼつかない。廊下の角を曲がる時に足がもつれてしまい、
転びそうになったほどだ。

鉄で囲まれた地下。

無機質で冷たくて、人間らしい温かみなどみじんもない。
壁には赤い染みがある。虐待された囚人たちの血がこびりついてるのかもしれない。
階段の先にはランプの明かりでわずかに照らされていて、
その先に囚人が収容されている牢屋が並んでいる。

「中へ入れ。そしたら、後ろ向きに、ひざま付ケ。
 鉄格子越しに手錠ヲはずしてやる」

露語のアクセントが微妙に混じった日本語。
ミウはナージャに言われた通りにして、手錠を外された。

「死刑判決が下るまで猶予期間がある。
 しばらくの間はここでおとなしくしてイなさイ。
 監視カメラがあるから、逃げようとしても無駄だ。
 もし逃げようとしたら罰を与エる」

ナージャが去った後は、ただ孤独だった。

4畳半程度の広さの牢屋だ。
もちろん暇つぶしの道具などない。
すみっこにトイレがあるだけだ。

「なんで……私はこんなとこにいるんだろ……」

ひろげた手のひらの上に、熱い涙がこぼれ落ちた。
ここは、ミウが本来いるべき場所ではなかった。

彼女は学内の反革命容疑者を取り締まり、収容所やろう屋に
送る側の人間だったはずだ。彼女を生徒会の副会長に
任命した張本人であるはずのナツキになぜか
裁判に掛けられ、何もかもを失ってしまった。

後悔は、ないわけではない。

振り返ってみれば、自分のやっていたことは
ただのわがままだったことにも気づく。
後悔してもすでに時が遅すぎるのだ。

彼女が奇行に走った全ての動機は、太盛を
生徒会の魔の手から取り戻すため。

でもダメだった。彼に近づこうにも
彼を慕う別の女が邪魔をしたり、
また彼自身から距離を取られてしまう。

何をしても、うまくいかなかった。
だから自分の人生の終着点は死刑になることなのだ。

支給された囚人服。サイズが合ってないので脇の周りがきつい。
しんと静まり返っていて、呼吸音すら響くほど。
重苦しい鉄格子が、彼女に残酷な現実を伝えてくれるかのようだった。

今ごろ、自分が死刑になることは学内で周知されている。

マリーは歓喜しているだろう。
太盛も喜んでいるかもしれない。
二人は晴れてカップルになるのだ。

そんな姿を見るくらいなら、文字通り死んだほうがマシだった。

「殺されるのを待つだけなら、いっそ」

食事は日に三度与えられると聞いた。
ならばナイフで自分の首に突き刺してしまえばいい。
そう思った。

「せまる先輩、ビッグニュースだよ!!」

堀太盛

太く盛る、と書いて「せまる」である。
この名前にはモチーフが合って、とある女性アイドルの
お兄さんの名前から頂いた。ずいぶんと変わった名前なので
強く印象に残った次第なのである。

「嘘じゃなくて本当に解放されるんですか?」

斎藤マリーは、ナツキの温情によって7号室から解放された。
特別扱いである。ナツキは以前からミウにいじめられている
マリーのことを憂いていたのもあるが、ただ単に容姿が
彼好みだったことも大きい。

ナツキは学内ではロリコンのうわさが多少あったのだが、
残念なことに事実であった。

マリーは、美しい少女だった。
中学と見間違えるほど愛らしい童顔。

色白で大きなえくぼが合って、ぷっくりした唇、
セミロングのくせのかかった茶髪。長いまつ毛から
覗く、奇跡のように可愛らしい二つの瞳。

少し甲高いが、どこまでもよく通る声。
別にロリコンでなくとも、一度彼女の容姿を見たら
誰でも虜になってしまうくらいの美しさだった。

「え、僕が解放されるんですか? 
 なんか裏がありそうで怖いんですけど」

続いて件の堀くんである。
マリー同様にナツキ会長の温情で釈放となった。

この男は前作などで周囲の女性に対し煮え切らない態度を
取るなど、筆者をさんざん怒らせていたが、実はかなりの美形である。

この少年の容姿を今まで詳しく語っていなかったかもしれない。

太盛もマリーと同じく童顔だ。母親似の愛らしい瞳、女性らしい
ゆったりとした顔の輪郭。どうみても女の顔としか思えない。
さらさらでまつ毛にかかるほどの黒髪。

下手な女子よりも太盛が女装したほうが美人だろうと噂されるほどだった。
特に横顔の美しさに定評があった。そのため彼の写真を
こっそり撮影する女子までいたほどだ。盗撮は犯罪なので本人の
許可を取らずにやるのはやめてほしいものだ。

そのくせ声は低くて男性らしさがある。
身長が低いが筋肉質。意外と筋肉質で体つきはがっちりしているなど、
アンバランスさも好評だった。リーダーシップに優れた人物で、
中3の時に男子のクラス委員をやっていた。

成績は、マリーも太盛も優秀だった。そのため彼らは進学クラスに所属している。


さて。解放された当日。この二人は下校途中の下駄箱で再開した。
まったくの偶然だった。

「マリーじゃないかぁ!!」
「せんぱぁい!!」

激しく抱擁しあう。

初めて一人で狩りを終えることに成功した「ガゼルの子」が、
餌を口にしたまま母親の元に帰って来たシーンを彷彿とさせる。

「あああああ、夢みたい!! 
 また先輩と話ができるようになるなんて!!
 神様ありがとう!!」

「神への祈りがついに届いたってわけだな!!
 やっぱり正義は勝つんだよ!! あははは!!
 もううれしくてな何が何だか分からないぞ!!」

ガゼルの親子は、飛び跳ねたり、奇声を発するなどして
喜びの感情を表していた。ここは昇降口前下である。
下校途中の生徒らは不愉快そうに彼らをかわして帰る。

文句を言いたい気持ちもあるが、会長閣下の命により
開放された二人だ。下手なことを言ったら、どうなるか
分からない恐怖で身がすくんでしまう。スルーが賢明だ。

「なに!? ミウが死刑だと?」

「先輩、知らないの?
 てっきりとっくに知ってるものだと…」

「いやいや、俺は何も聞いてなかったよ。 
 ミウが死刑になるってマジか!?」

太盛には情報が伝達するのが遅かった。
理由は分からないが、こういう設定なのだろう。
黒江と太盛のやり取りで彼が記憶喪失だったシーンを思い出した。
(斎藤マリー・ストーリー)

「やったじゃん!! あのクソ女が死刑になるなんて最高!!」

とマリーは言うが、

(あのミウが死ぬ……?)

太盛の表情は硬い。
モアイ像(イースター島にある四体の内、左から二番目)のようだ。

「表情暗いよ。具合悪いの?」
「いや…」

マリーはモアイ状態の太盛に構わず
さらに強く出し決めたり、人目も気にせず
強引にキスを迫ったりした。

太盛はマリーにされるがまま、愛想笑いを
浮かべる。一見すると喜んで愛し合っているように
見えるが、心の中は死んでいた。

その時の彼の心境は、チャールズとの結婚披露宴時の
ダイアナ妃のようだった。(すでに夫婦関係は破たんしていた)

その日の夜。

「うぅ……うっ……ぐすっ……」

「太盛様。泣くほど私の食事は口に合いませんでしたか…。」

「違うんです。後藤さん。後藤さんは悪くないんです……」

夕食中太盛はナイフトフォークを握りしめたまま震えていた。
バルサミコ酢ソースで味付けした大根サラダをたまに
口に運んでは、嗚咽する。

心配する後藤がわけを聞くと、太盛の説明は要領を得ない。
ただ、学校で色々あったとしか言わない。
後藤は使用人の立場から、太盛が言いたくないことを
あえて聞くわけにはいかず、しばらく厨房で待機することにした。

給仕係の女性メイドも空気を読んで退出してしまう。
食道にいるのは、太盛一人だ。

太盛は、いつかミウと一緒にこの食堂で
お昼ご飯を食べたことを思い出していた。
(初代 学園生活の3話あたりのシーン)

人懐っこくて小悪魔のマリーと口げんかしていた。
あんな、なんでもない思い出が今では胸に刺さる。

(ミウは、俺のことを本気で好きでいてくれたんだ。
 あの子の感情は嘘じゃない。本気で俺が好きだったんだ。
 あの子はあのまま死んでしまって良いのか?
 それで学園は満足なのか?)

筆者の意見としては、死刑になるだけのことはしてきたと思う。
学園生活・改での彼女の横暴は目に余るものがあった。
冷酷なるサディスト。拷問狂として学内では有名だった。

(ミウの声、屈託のない笑み、あの綺麗な顔。
 英国育ちの英語、あの怒鳴り声さえ心地よく感じるから不思議だ)

彼は、失いつつあるミウをお思うと
なぜか恋心が再燃するのだった。

もう、二度と会うことはできない。

そう思うと人間は不思議な感情を抱くものだ。
太盛は今になって自分が大馬鹿なことに気が付いた。

「俺は、ミウが好きだ!!」

廊下にむなしくこだまする。

誰に宣言したわけでもないのだが、
とにかく彼の本心であることに違いない。
ちなみにミウの美しさは女優かトップアイドル並みである。

男性としては、一度は好きだった女性のことは
中々忘れることはできない。

記憶を思い出させるのは「五感」によるものが大きい。

髪の匂い。ふんわりとした女の子らしい優しい匂い。
耳に響いたあのきつい音程の英語。

出会ったばかりの頃はクラスでは目立たなくて、
いつも机にうつむいて座っていた。

「やっぱり俺は」

テーブルを拳で乱打する。

「ミウが好きなんだよ!! ミウことを忘れられないんだよ!!
 他の女じゃダメなんだ!! ミウじゃないとダメなんだ!!」

早押しクイズ番組のような勢いで答えていく。

そんな彼の奇行を、女性メイドのサキさん、料理人の男性後藤さんは
暖かく見守ってあげた。あえて指摘しないところに彼らの優しがあるのだ。
太盛お坊ちゃんは中学時代もよく友達と喧嘩して
傷だらけの顔で帰ってくることもあった。太盛の情緒不安定にも慣れたものだ。

そういえば、彼の囚人仲間で「カナさん」がいたと思うが、
彼女が登場すると色々めんどくさそうなのでスルーしておく。

「あのぉ。お坊ちゃま」

「あ、佐紀さん……大声出しちゃってすみません。
 これはちょっと……発作のようなものでして、
 今気持ちの整理がついたから大丈夫です」

「はぁ…それは結構なことでございますが」

40代のメイド服の女性は、咳払いをしてから

「お部屋に置いてある、太盛様の携帯が鳴りっぱなしなのですが」

「え?」

太盛はスマホをカバンに入れたまま、部屋にぶん投げていた。
サキさんは、廊下を歩いているときに着信音を耳にしたのだ。
スマホを持って来て太盛に手渡してくれた。

「せんぱーい。いっぱい電話したんですよぉ」

「おう。マリーか。出るのが遅れて悪かったね」

「そうですよぉ。たっくさん電話したのにぃ」

(うん?)

違和感。

(マリーってこんなしゃべり方だったか。
 確かに失語症になる前はこんな感じだったかもな。
 小悪魔的な、本来のマリーか。解放されてからすげー元気だな)

あとで知ったことだが、太盛が夕飯(7時ちょうど)までに
マリーからの電話の着信が20件もあった。恐怖すら感じる。

「先輩、明日から学校サボってデートしましょう」

「はい?」

「大丈夫。会長殿から許可は得ていますから」

マリーから詳しい話を聞いた。

マリーは、学校で会長から正式に謝罪をされた。
ナツキは部下のミウによって多大なる迷惑をかけた
おわびとして、マリーに卒業するまでの授業を免除する権利を与えた。
テストすら受けなくても9割以上の得点が与えられて当然単位も取得できる。

また、学校を仮に欠席しても出席扱いにする上に、
マリーにあらゆる危害を加える分子を極刑に処すことも約束してくれた。

またしてもマリーはニートになったのである。

さて、ナツキはロリコンなことはすでに説明した。

実はナツキはこの特別扱いをマリーにだけ適用し、
太盛のことはスルーしようとした。そのことで
マリーが激怒すると、ナツキはすぐに太盛にも特別措置を
発動することを許可してくれた。

こうしてマリーと太盛は、学内ニートになったわけなのである。

「デートっていっても、何をすればいいのか分からないよ」

太盛は、クラスの様子が気になるからと学校には出ようと言った。
マリーは愛する人の言うことなので、しぶしぶ従った。

「やあ、みんな」

ガラッと2年1組の引き戸を開ける。

マサヤ、エリカ、井上マリカを筆頭に、クラス中に衝撃走る。
朝一からあの堀太盛君が登校してきたのだ。

囚人であった彼は、クラス内ではもちろん腫物扱い。
しかも会長からの正式な許可を得ての開放であるから、
彼をどう扱ったらいいのか、簡単には判断がつかない。

「太盛くん……?」

エリカは、彼と腕組してる女を見つけ失望した。
女はマリーだった。

思わず、にらみつけた。

「私の顔に何かついてます?」

マリーは不愛想に言った。

エリカは黙る。マリーが腕組してることで、カポー(米語)なのは必然。
二人同時に収容所から解放されたこともそれを裏付けている。
つまりこの二人の仲は学園の最高権力者のお墨付き。

もはや誰にも否定できないのだ。

「み、みんな!」

マサヤだ。両手を大きく広げて声を張り上げる。

「堀太盛が、ついにクラスに帰還したぞ!!
 そうだ。太盛は初めから無実だったのに
 アキラ前会長とか、ミウのわけわからない判断によって
 不当に収容されていたんだ!! さあ祝おうじゃないか!!」

最初は短い拍手。この状態についていける生徒の方が少なかった。

「みんな、マサヤ君の言う通りだよ。盛大にお祝いしてあげようよ」

クラスの女子リーダーであるマリカさんが言うと、
あっという間に拍手の渦に包まれる。

「わーわー」「せまるくーん」「おめでとう!!」

すぐに担任の横田リエ(23歳。美人)がHRをするために
やって来た。太盛の元気そうな顔を見ると

「生きていたのね。よかった……」

と言ってひざをつき、ハンカチを目元に当ててウソ泣きを始めた。

なぜ演技をするのか。芸能人のように金でも貰っているのか。
そうではない。教室の天井の四隅に監視カメラが設置されているからだ。

この学園は「共産主義政権である生徒会」によって支配されており、
学内で起こるあらゆることが監視されている。

したがって太盛が帰還した時には喜んでおかないと…

「会長の意向(太盛の開放)に反している」
「太盛を敵対視している」
「反革命容疑者の恐れあり」

という図式が成立しかねなない。
そうなった場合は、尋問室で拷問、自白、裁判の末、銃殺刑の
定番のコースになってしまう。
(嘘ではなく、初期のソ連や北朝鮮では日常だった)

だが、担任として一応確認しておかないといけないこともある。
どうも斎藤さんはコアラのように太盛君にくっついていて、
まるで離れようとしない。すでに始業のチャイムは鳴っているのに。

「あのー堀君」

「なんですか先生?」

「君の横にいる人は、斎藤マリエさんかな? 一年生の」

「そうでーす☆」

マリーがわざと明るく返事する。アニメ声優っぽい音程だ。

「そ、そそそそ、そのね。さ、ささささ斎藤さんは、
 自分のクラスには行かなくてていいのかなって…」

斉藤マリエ(通称マリー)は、3秒間を置いてから

「えっと、ごめんなさい。先生の言ってる意味が分かりませんでした。
 もう一回言ってもらってもいいですか?」

なんとなく小さな体から怒気を感じ、クラスメイト達は萎縮する。
横田リエは、彼女を刺激しないように

「私のクラスではこれからHRが始まるんですね?
 HRを時間通りに始めないと、私も厳罰を食らう身でして……。
 あはは。それでね? 一応ここは2年生のクラスですから、
 1年生の人がいると、色々と問題とか発生しちゃうかなって…
 ほら。生徒会の規則的な感じで? あは」

マリーちゃんは、また3秒おいてから

「は?」

と言った。やはり怒ってる。

「私のことは気にせずHR始めればいいじゃないですか。
 私は学校をさぼっても良いって会長から許可貰ってますけど。
 もしかして私が太盛先輩の横にいるとうざいですか?
 だとしたら見逃してください。お願いします」

「し、失礼しました!! そういうことだったのですね!!
 勘違いさせてしまってごめんなさい!! 私ったら
 教員なのに学内の決まり事をちゃんと分かってなくて
 もーほんとにやになっちゃいますよね。えへへ。
 それじゃあ、HRはじめまぁす(血涙)」

クラス中が担任に同情する。
おそらく全員が生きた心地がしないことだろう。
胃が痛くなるクラスである。

マリーは、教室のど真ん中にある太盛の席に座ろうとしたが、
当たり前だが椅子は一つしかない。またマリカが気を利かせて
どこから椅子と机を持ってきた。

マリーと太盛は隣通しで机をくっつけて座る。
終始ニコニコしていて、ただ彼の近くにいるだけで満足していた。

カオスである。一年生な上に、人目など眼中にない
彼女の言動に、クラス中が思ったことは

(うぜえ)

であった。もちろん口にしたら殺されるので言えないが。

一時限目の国語の時間であった。

「つまらないからその辺を散歩しませんか?」

太盛の返事がない。太盛は、黒板に書かれた内容をノートに
書き写しもせずに、机に頬杖を突いたままぼーっとしていた。

彼は考え事(ミウのこと)に夢中で、マリーのことなど
全く気にしちゃいない。だからマリーの提案も聞いてなかった。

「先輩ったら」

「んー?」

ほっぺたをつんつんされて、ようやく太盛がマリーの方を向いた。

「久しぶりの学園生活ですから、廊下を歩いたりしませんか? 
 授業中に歩き回るって少しワクワクしますよね。
 周りが緊張した雰囲気なのに私たちだけフリーってのが」

「そうだね。気分転換にはちょうどいいか」

二人は一生懸命説明している国語のおじいちゃん先生など
無視して、部屋を出て行った。そのあと、クラス中から
安堵のため息が漏れたのは言うまでもない。

(もう帰ってこなくていいからな…)

マサヤはそう祈った。

学内を歩くだけで、マリーにとってはデートのつもりだった。
彼と手を繋いだり、たまに階段の途中で
段差を生かしてキスを迫ったり、彼の胸に自分の顔を
しつけたりと、色々やっていた。

とにかくマリーは彼が好きで好きで仕方なかった。

太盛は少し呆れてしまった。
ここまで自分が好かれる要素がどこにあるのか。

彼は自己評価が低い人間だった。
自分は特別頭が良いわけでもなければ、身長もないし
運動も得意じゃない。

生まれは良い方だとは思うが、
比較的お金に不自由しないのも親父殿が偉大だからであり、
彼自身は何もしていない。

親父殿からは厳しく教育され、優しかった母は家を出て行ってしまった。
彼は高校生になっても小さな子供のように父親に厳しくされるので
自分など堀家の跡継ぎにはふさわしくないと思っていた。


「マリーはね、先輩のことが大好きなの」

マリーはようやく足を止めてくれた。
二人は一時間も歩いていて、彼らのいるB棟の校舎から
庭に出て、理事長自慢のイングリッシュガーデンの一角に付いた。

巨大な噴水の周りに、アーチをあがく石段がある。
そこへ二人一緒に腰を下ろした、

マリーは情熱っぽい瞳で彼を見つめながら続けた。

「女子野球の時のこと、覚えてる?」

「女子野球? ああ、あの時の」

学園生活改の6話あたり? を参照のこと。
筆者もよく覚えてないから、あとで読み返しておく。

「あの時ミウにいじめられて本当は心の中で泣きそうになっていたの。
 先輩が私をかばってくれたこと、一緒忘れないよ。
 すごくうれしかった。先輩が心の底から私のこと
 愛してくれてるんだって思うと胸が熱くなった」

「俺は大したことしてないよ。ただ君が不当な理由で
 逮捕されるのを黙って見過ごせなかっただけだ」

「でも先輩かっこよかったよ。自分が尋問室送りになる覚悟で
 私をかばってくれた。先輩のあんなにカッコいい姿見たの
 初めてだった。失語症の時も私の面倒を見てくれたし」

当時の太盛は、ミウを憎んでいた。
その感情は嘘ではない。

だが今は?

明らかにマリーのことよりもミウが気になっている。
彼の頭を支配しているのは目の前にいる斉藤マリエではなく、
思い出の中にいる高野ミウだ。

『笑わないで聞いてね? 実は私は記憶喪失で
 帰る家がどこなのか分からないの』

『明日もマリーのお見舞いに行くでしょ?』

『あの生徒会って組織、なんなの!?
 ボリシェビキとか意味わかんない!!』

短気でよく怒鳴っていた。

刑が執行されれば、あの声が聞けることは二度とない。

マリーは一人で太盛のことを、まるで神に対する賛歌の
のように褒めちぎり、飽きることがなかった。
太盛は彼女の誉め言葉をくすぐったい思いで聞いていたが、
不思議なことに彼女とは心の距離がどんどん離れていく気がした。

この子と付き合えば、もう何も問題はない。
そのはずなのに、ミウの寂しそうな、
彼を振り返って泣きそうな顔が、亡霊のような姿が頭に浮かぶ。

「ミウは…」

「え、なんでいきなり話題が変わるの」

太盛は正直に話すことにした。

「俺はミウのことが気になるんだ」

マリーから笑みが消えた。

「……ミウの死刑の内容が気になるってことなら
 近日中に発表されるって会長が」

「そうじゃないんだ。ミウはさ、
 死刑になるほどのことをしたのかなって思って。
 あの子だって今思えば好きで生徒会に入ったわけじゃないし、
 色々仕方ないこともあったと思うんだよ。それなのにさ…」

「ちょっと待って。先に質問させて。
 太盛さんは何? ミウの肩を持ちたいってこと…なのかな。
 まるでミウが死ぬのを悲しんでるようにしか見えなんだけど。
 それとも何かの演技でもしてるの?」

「演技じゃないよ。俺はミウが死ぬのが悲しいんだ」

「むしろ喜ぶべきじゃないのかな。だって学園一のクズが死ぬんだもん。
 先輩も同じ気持ちじゃないのが、むしろ不思議」

「俺はね、ミウに死んでほしくないんだ」

そこまで話したところで、太盛は全身に金属の破片が
突き刺さったかのような「殺気」を感じた。

マリーの瞳が深い闇に包み込まれ、
太盛を飲み込んでしまいそうだった。

彼女と視線を合わせると、激しい悪寒に襲われる。
たまらず太盛は短い悲鳴すら発してしまう。

「なるほどねー。だから先輩は私といても
 上の空だったんだぁ。まさかミウと本気で付き合ってたの?
 いや、ありえないよね。だって先輩は3号室で囚人やってたのに。
 囚人と副会長が恋人関係とかありえない」

「ごめんね。マリー」

「何に対してのごめん、ですか?」

「俺は、マリーの恋人になれそうにないんだ」

長い沈黙が訪れた。

マリーは頭の回転が速く、人の倍の速さで言葉をまくしたてる、
都会のフランス人のような少女だった。そのマリーでさえ、
太盛の奇怪な言動にはついに言葉を失ってしまう。

マリーは、収容所から解放されて当然太盛とハッピーエンドになって
結ばれるとしか考えていなかった。斎藤マリー・ストーリーは
打ち切りだったため、こっちが本編だと考えていた。

なんとかして気持ちを落ち着かせる方法はないか。
マリーはむしろ好意的に解釈することにした。

太盛は人が良すぎるから、極悪人のミウを心から憎むことがないのだ。
彼が熱心なキリスト教徒なのも影響しているのだろう。

百歩譲って彼がミウに配慮するのは分かった。
だが解せないのは、マリーとの関係を拒絶したことだ。

マリーにとって太盛は最愛の人である。
この世の男性の中で一番好きである。

親と太盛のどっちを取るかと言われたら喜んで太盛を取る。
なのになぜ太盛は、どうしてマリーの彼氏になってくれないのか。

ミウは関係ないとして、自分の言動が彼を引かせてしまったのか。

「ちょっと馴れ馴れしすぎてうざかったですかぁ?
 先輩はもっとドライな関係の方が好きってことでしたら
 腕組んで歩いたりとかは控えたほうがよさそうですね。
 あと私って結構声もでかいし、こういうのも太盛さんには不愉快なのかな」

「うざくはないよ」

太盛は力強く否定する。

「マリーのことは好きだよ。でも友達としての好きだな。
 友達っていうより妹かな。マリーは何も悪くないんだよ」

太盛は、足元の一点だけを見て続けた。

「俺が悪いんだ。ごめんね。マリー」

そんなことを言われてもマリーは納得できない。
マリーは、自分に何か落ち度があって太盛に
拒絶されるのだとしか思えなかった。

彼女が死んでも認めたくないのは、太盛がミウに恋心を
抱いていることだ。事実そうなのだが、マリーは女の意地として
認めるわけにはいかなかった。すでに死刑判決が出た極悪人のことを
太盛が今でも好きでいるなどあり得ないことだ。

「た、確かに」

マリーは怒りで唇が震えていた。

「あの女って、容姿はまあまあ綺麗でしたよね。
 髪の毛とか。顔も、まあ、そこそこ整ってたかな。
 英語はペラペラでしたよね。私も英語を話せるようにならないと
 いけませんね。これからは国際化の時代ですから」

実はマリーは、容姿ではミウに劣っていることを自覚していた。
口にこそしないが、ミウが本気でオシャレしたら
絶対に負けるとまで思っていたほどだ。

そして面白いことに、ミウも同じことをマリエに対して思っていた。
美しさの点でも二人はライバルだったのだ。

「マリエは勘違いしてるようだけど、
 俺はミウの外見だけが好きなわけじゃないんだよ」

「へー。そうなんですか」

マリーの握りしめた拳が、スカートの上で小刻みに震える。
太盛の発言は、もはやミウへの恋心を認めたのと同義である。

マリーは、ミウを八つ裂きにするだけでは済まさず、
死体をバラバラにして野犬の餌にしてやろうと思った。
これ以上太盛の口からミウの言葉が出たら、
叫んでしまいそうなほどストレスだった。

もうこれ以上、話をするのは限界だった。

「先輩の馬鹿っ」

少女漫画でありがちなセリフを吐いて、走り去っていった。

太盛は薄情にも追いかけることはせず、
ムンクのような顔で考え事を続けるのだった。

今の彼にとって本当にマリーはどうでも良かった。
美少女に好かれてるのにもったいない男である。

その日の夜。太盛は食堂にちゃんとスマホを持って来ていた。
おそらくマリーから何か話があると思っていたら、本当に来た。
LINEだ。

「今日はごめんなさい」
「気にしてないからいいよ。俺の方こそごめん」
「私のメール、うざいくないですか?」
「全然。で、用件は何?」
「…」
「おい」
「明日、学校帰りにデートしませんか?」
「学校帰りじゃなくてサボっちまうぜ」
「いいんですか!!」
「今日のお詫びだよ。
 マリーを悲しませるようなこと言っちまったからな」

さすがに小説では表現できなかったが、
互いに絵文字やスタンプ全開のやり取りであった。
世の女性は自分の文章を可愛く見せるのが好きである。

次の日の朝10時に駅前に集合となった。
そういえば、ここが栃木県の何市なのか筆者も知らない。
たぶん足利市あたりなのだろう。
もしくは宇都宮氏なのかもしれない。
考えるのがめんどくさいので適当でいいだろう。

太盛はその日の夜、オシャレなデートスポットを考えたが、
七福伸で有名な神社や洞窟(大谷石)くらいしか思いつかなかった。

太盛が後藤さんにデートスポットを聞いたら、
ココファーむ・ワイナリーを教えられた。

テレビでも紹介されたことのある、
足利市の北部にあるレストランである。

山の中腹を切り抜いて作った、広大なぶどう畑を
一望できるテラス席で洋食が食べられるのだ。
ワインやぶどうジュースの類は大変に豊富である。

次の日、太盛らは駅前に集合したのだが、ワイナリーまで
20キロ以上離れているから話にならなかった。

ここはGW中はメインの駐車場が満車の上、
遠く離れた駐車場から坂を上っても、結局は
並んで待つことになる。連休中は行かないほうが良い。

それはともかく太盛達は平日なので混雑とは無縁だ。

しかしバスに乗って行くのもめんどくさくなったので、
結局ショッピングモールでデートすることにした。
筆者は栃木県民ではないが、足利市にはよく行く。

あの近くにショッピングモールなどなかった気もするが、
小説なのであることにする。イオンにしよう。
余談だが、イオンの株主優待品は結構お得である。
筆者は興味ないので持っていないが。

「先輩が一緒に来てくれて良かった。
 先輩と一緒ならどこでもうれしいですよ」

(その割にワイナリーを断るなよ。楽しみにしてたのに)

マリーは年ごろの娘なので田舎っぽいブドウ園は好みではなかった。
太盛は逆に田舎を愛しているので、ゆっくり自然を満喫したかったのだ。

二人はカポォのように腕組しながら歩いた。
そこでマリーがハッとして飛びのいた。

「ごめんなさい。こういう馴れ馴れしいの、嫌なんですよね」
「嫌ってわけじゃないよ」

太盛はにっこり笑う。

「それに、マリーみたいな可愛い子にくっつかれて
 男としてうれしくなわいわけないだろ?」

マリーは気持ちがふわふわした。
もう遠慮なしに太盛に密着して歩いた。
そうすると、ますます二人は「カップル」に見えた。

「あいあむ るっきんぐ ふぉぉ しゅーず」
「靴を探してる? 上の階にあったかな」

太盛は、マリーが日本語訛りの英語を話してることは
触れずに、エスカレーターに乗って二階のアパレルショップへ行った。
10代より20代の社会人女性が集まりそうな高級店に入る。

値段はともかく、小柄で幼い子供に見えなくもないマリーには
似合いそうもなかったが、太盛はやはり指摘しない。

「あいるぃる てぃきぃっと。ひあ!!
 はう どぅ あい るっく?」

「履いたローヒールが似合うかって?
 うん。白は似合わなくはないけど、ちょっとシックすぎるかな。
 こっちのほうが高校生っぽいんじゃないか?」

太盛は日本人男性によくある適当な返事などせずに
真剣に選んでくれた。飽きもせず靴を履き替える
マリーに付き合っては、最後は何も買わずに店を出てしまった。
店からすれば迷惑な客かもしれない。

「買わなくて良かったのか?」
「うん。ここには欲しい物がなかったから」

太盛は気が付かなかったが、実は以前ミウが履いていた
ヒールがここに売っていたのだ。
シックすぎた靴は、ミウの容姿ならともなく、
低身長のマリエが履いても似合うわけがなかった。

二人の身長差は5センチもあるから
やはり同じ路線のファッションで責めてはダメなのだ。

「私の英語はどうだった?」
「よく喋れてると思うよ。日本人にしてはうまいよ」
「先輩は英語が喋れる女の子が好きなんだよね」
「そうわけじゃないんだけどなぁ」

太盛はここでも違和感に気づいた。
マリーは、わざとミウの仕草をまねしている。

ミウは、育ちが良いからなのか、
あごを引き背筋を伸ばして小股で歩く。

(食事のマナーと姿勢が良さには女性の育ちがよく出る)
マリーも同じように歩いていた。

さっきの英語も、今思い出すと英国風の堅苦しい発音を
していたような気がした。

声のトーンもそうだ。
ミウは短気だが、普段はおとなしいので小声で話す。
特に日本語を話す時は、ゆっくりとぼそぼそ話すので
たまに聞き取れない。

マリエがまた下手くそな発音で始めた。

「すぴ-く いんぐりっしゅ ぷりーず」

「うぃあぁ じゃぱにーず 
 じゃぱにーず かんばせーしょん いず ぐっど ふぉお あす」

マリーは聞き取れず会話が止まった。

「日本人なのに英会話する意味ないだろって言ったの」
「……早口だったから聞き取れなった」

(すげーゆっくり発音したんだけどなぁ…。
 ミウなんてもっと早かったぞ)

おーっと、このやり取りは逆効果だ!!
現に太盛はますますミウに対する未練が強まっている!!

斉藤選手はもっと頑張らないと太盛さんに振り向いてもらえないでしょう。

「マリエ。食事にしようか。そろそろお昼時だし」
「うん。何が食べたいですか?」
「特にないよ。君は?」
「私もこれと言ってありませんね」
「おいおい。そーゆー返事が一番困るんだぞ」

ここで太盛は気が付いた。

今日マリーが来ている服のことだ。
季節は、どうしようか迷うが、現実世界に合わせて5月の下旬にしておこう……?
いやまずい。確か斎藤マリーストーリーでミウが横暴をしていたのが、
革命裁判の後だから、11月下旬くらいにしないとまずいのか。

適当に12月の頭で良いだろう。よって今は冬だ。真冬だ。

「マリーの着てる白いコート。襟元がお団子でふわふわしてる。
 冬物のジーンズもミウと同じ色だ。高そうなブーツも」

ミウは物欲のない子だが、
ブーツや靴類にはお金を掛ける子だった。

ご両親が大変に裕福で、実は資産が
『1億1千万』もある設定だったのだ。
(現金5500万。日本株1000万。米国株3000万。
 米ドル、豪ドルでの外貨預金計1000万)

日米で分散した株式は長期投資で運用している。
株は保有しているだけで特定の月に配当金が入ってくる。
税引き後で年間170万円ほどだ。これは不労所得である。

余談だが、頻繁に株式の売り買いを繰り返す短期投資、
FX、仮想通貨などは愚者のやる投機であって投資ではない。
こういう馬鹿は、一生かけても真の金持ちにはなれないことを
ここに断言しておく。

株式投資とは、本来は企業を長期にわたって応援(出資)する行為であり、
自分自身の金儲けだけを考えても、市場を出し抜くことは不可能だ。
一度や二度はラッキーで大金をつかむことはあろう。
しかし、10年から20年単位の長期で考えると、いつかは損して資産が吹き飛ぶ。
ゼロ・サムゲーム。パチンコとレベルが変わらない。

さらに高野家は、父親の年収が手取りで900万を超える上に
ミウと母親のカコの住居の分譲マンションは一括購入しており、
家計消費における住居費がゼロ。
さらに駅前に住んでるので車すら所有してない。

どんな有名なFPが試算しても、高野家の財務健全性は最上位であろう。

高野家の買い物は一括が基本。
例え住宅でもローンなど組まないので
支払う側としての金利はゼロ。

逆に企業から配当金をもらう側である。
つまり圧倒的に債権者なのである。

第一作の学園生活でもこの点には触れたかもしれないが、
多くの金持ちは「質素」を好む。

大国アメリカで富裕層と聞くと、みんなが豪華な生活を
してるように思えるかもしれないが、庶民レベルの
生活を維持しながら億単位の資産を持ってる人は普通に存在する。

これは、日本のプライベートバンクで長年勤務した
行員の方も同様の指摘をしていた。ユニクロのアウターを
着た、ごく普通の中年男性がバンクにやってきて、
軽く商談を済ませて帰って行った。

「じゃあね。また来るよ」彼はその日に2億円の不動産投資をしたそうだ。


金持ちのになるには段階がある。
親が金を持っていたら強みであるが、そうでないのなら。

一、コツコツと勤勉に働く
二、コツコツと貯蓄にはげむ
三、コツコツと余ったお金で運用をする

この3ステップが基本だ。

「男なら一攫千金」「逆転勝利もある」「コツコツなんて、めんどくせえ」
こう考えるアホが世の中の9割だろうが、完全なる愚者である。

貧乏人⇒金があるとすぐ使う
金持ち⇒金が減るのが怖い

ここで両者の生涯の資産形成に致命的な差が出てしまう。
仮に高収入でも稼いだお金を全部使ってしまうアホも、貧乏人と同様である。
この馬鹿もおそらく一生貯蓄ができない。そういう性格だから。

家系の経済も、家系版バランスシート(貸借対照表)で
分析すれば金持ちかどうかなど3分で分かるものだ。
高野家は資産はあるが、負債の項目は一切ない。
資産すなわち純資産。つまり最強だ。

それと富裕層の皆さんが「健康」に気を使ってることも触れておきたい。
どれだけお金が会っても「健康」ほど大切な物はない。
富裕層ほど早朝の筋トレやランニングを欠かさないのは、
ドイツなど欧州諸国では当たり前のことだ。


そしてこの文章を読んで太盛は驚きの声を上げた。

「うっそぉ!! ミウの家って資産が1億もあったのかよ!!」

「そんなにお金持ちだったの!?」

マリエもつられてヘラジカのような顔をした。
ドイツのヴェスト・ファーレン地方の奥地に住んでそうなシカだ。

「ミウの家ってそんなに高そうなマンションだったっけ?」

太盛は、学園生活改の終盤をスマホで読み返していた。

「安そうではないけど、どこにでもありそうなマンションだったぞ。
 ライオンズマンションだよな? 高野家にしては庶民的だな」

「だからお金が有り余ってるんでしょ。あの人、
 お財布の中に外食店の優待券がたくさん入ってた」

マリエの顔が嫉妬でゆがむ。

ミウの金持ち設定が許せなかったのだ。

誰もが憧れる美人で、エイゴガ ペラペラ ロンドン育ち♪
生徒会でも絶対的権力保有していた♪
太盛の愛しい人のポジション♪ そして☆富裕層☆!!

マリエの女としての嫉妬はアゲアゲ、ハイテンション!!!!!
どして女は他人と比較するのが好きなのだろうね。
他人など気にしなければいいのに。困ったもんだ。

筆者は男である。筆者からして
女は「人間」に対する関心が強すぎるのだと思う。
それゆえに人生の半分くらい損している。
他にも楽しいことは山ほどあるぞ☆

「うち(斎藤家)だって、そこそこお金はある方だと思うよ。
 両親は共働きだし」

「お、おう。そうだな」

マリエの両親は銀行員?だったと思う。
やはり私は原作者なのによく覚えてない。
彼女のお母さんが稼ぎの良い
コンサルタント営業みたいなのをやっていた気がする。

「個人向けのリテールだろ」

ふむ。難しそうな仕事だ。
金融関係の仕事は人を騙すのが基本なので私は大嫌いだ。

国内外問わず銀行で不正融資を勧める者が後を絶たないが、
生きてる価値がないので全員死んだほうがいい。

「太盛先輩の家もお父様が会社の経営者なんでしょ」
「まあな……。だがお金をいくら持ってるかは知らないよ」
「知らないんだ?」
「聞いても教えてくれないだろうし、そもそも興味ないしな」

太盛もマリエもいわゆるお金持ちには分類される。

(野村総合研究所を参照)
日本でデファクトスタンダードとして
広く使われている富裕層の定義は、

準富裕層が5000万以上
富裕層 が1億以上
超富裕層が1億5000万以上

である。
マリエの家は、ぎりぎり準富裕層に入らないレベル。
太盛の家は準富裕層だ。

一見すると豪華な家に住んでいる太盛の家の方が
お金がありそうだ。親父殿が会社の経営者なので
確かに収入では太盛家は一位なのだが…

肝心の純資産ベースでみると、豪華な家に住み、
使用人を雇っていることから何かと費用がかかっている。
地方でも敷地が広いから固定資産税だけでもかなり取られているだろう。

質素倹約な高野家の純資産額には及ばない。
収支のバランスでも高野家に軍配が上がる。

高野家は表向きは庶民なので支出が少ない。これは重要だ。
太盛家が、親父殿の事業での収入に依存しているのとは正反対だ。

家系レベルの経済では、「支出」の少ない家庭が最強である。
最も改善するべきなのは収入以上に支出なのである。
そのため、本当の金持ちは高野家なのである。

豪華な生活=金持ちではない。声を大にして言いたい。

それだけに娘さんに死刑判決が出てお気の毒である。
この小説を書いてるのは私だが、自分には関係ないので他人事である。

「金持ちは死ねよ!!」

高野家の話を続ける。

学園生活は、実はモンゴルへの逃避のスピンオフだったのだ。
私は他に「孤島生活」という、つまらない作品を書いていた。
実は恥ずかしくて孤島生活だけは読み返したことがないのだ。

孤島生活にもミウは登場する。
というか私の書いた作品のほとんどに登場している。
ミウは初期設定では高校自主退学による中卒だった。

しかし、家がお金持ちなので生活に一生困らないのは間違いない。
仮に彼女がコンビニアルバイトを60歳まで継続し、
その頃までに両親が死亡し、ミウは独身で
手取り月8万円だったとしても一生飢えることはない。

転居の可能性、住宅の購入、リフォームを含めて住宅の建て替えが
あったとしても、支払い能力は十分にある。
現金預金が大量にあるからだ。

それと配当金の副収入もある。
なにせ株式の配当金は、企業業績や
株価の変動リスクを考慮しても
最低でも年100万は見込めるのだ。

景気変動による将来のインフレリスクを考えても
現金以外に株式を大量に保有しているので
むしろ資産総額はプラスになることだろう。

こうなると両親死亡時に相続税が大量に発生するだろうが、
仮に500万の相続税がかかっても資産総額からすれば
まだまだ余裕だ。親は一円でも多く娘に残すために
非課税の生前贈与をうまく利用することだろう。

実はこの例はモデルがある。
とあるファイナンシャル・プランナーの家系相談コーナーで
高野家に酷似した家庭の相談があったのだ(ネット記事)

私は当初、適当に高野家の設定を書いたもののだが、
まさか高野家に酷似してる家庭の例が現実にあるとは知らなかった。

件のご家庭をプロのFPにライフプランニングをしてもらったところ、
高齢の両親が認知症になり、長期介護が必要になった可能性を考慮しても尚、
子供へ少なくとも9000万以上の資産を相続できる可能性が高いそうだ。

ならば、ミウも1億近い資産を相続するのだろう。
この点からして、高野ミウが、いわゆる少女漫画のヒロインにありがちな、

一、顔はブスか普通。貧乏もしくは庶民家の生まれ
二、金持ちの男の子に求愛され
三、シンデレラ・ストーリー

が成り立たないのが分かる。

そもそもミウは美人であり、英語が話せるなどの特技がある。

顔がパッとしない、何のとりえもないなどの
少女漫画設定はすでに破たんしている。
金にしても太盛の家よりお金持ちなのが判明してしまった。

むしろ太盛が婿に行った方がよさそうだ。

さらにシンデレラどころか、生徒会の副会長になってしまった。
生徒会は明らかに悪の組織であり、ミウ自身が生徒を
監禁、虐待、拷問、粛清するなどしていた。
どう考えてもヒロインにはふさわしくない。

なぜ少女漫画の話をするのかというと
私は少女漫画っぽい作品が書いてみたかったのだ。
恋愛ノベルじゃなくて少女漫画っぽい小説である。謎のこだわりだ。

そして学園生活を振り返ると、強制収容所が頻繁に登場する
訳の分からない作品になってしまった。


『ミウは金持ちである』

それは十分に分かった。

太盛は、ナルヒトさんを呼ぶことにした。

「やあ」

ナルヒトさんは突然二人の前に現れた。
なぜ現れたのか。太盛が願ったから表れたのである。

彼は高野ミウの実の父親であり、いわゆる
エリート・サラリーマン。株の専門家なのだ。

ここはフードコートの一角だ。
きりっとスーツを着こなした、貴公子ともいえる男性の登場に
マリエは一瞬目を奪われそうになった自分を恥じた。

ナルヒトの容姿は、オヤジ系少女漫画で検索すると
出てきそうな感じでイケメンである。

何より筆者が驚いたのが、親父系少女漫画の存在だ。

主人公の少女や若い女の恋する対象が、40代のおじさんだったりするのだ。

漫画として成り立つのか!?
そういう漫画に需要があるということは、そいうことなのだろう。
少女がおじさんに恋するなど、男性側のみの妄想の世界だと思っていたが。

私は恋愛系の作品を書いてるつもりだが、
いまだに女性の考えていることはさっぱり分からない。

「話は聞いているよ。娘のミウを奪還したい」

「僕にも何かお手伝いできることがあれば言ってください」

「それには及ばないよ。すでに手は打ってある。
 これでも仕事は早いほうでね」

ボリシェビキによって学園の周囲は高度に軍事化されている。
ミウが閉じ込めらえているのは地下である。
まずは、地上に展開している全ての戦力を無力化しなければならない。

そもそも足利市一帯は、共産主義化しており、学園と同じく
軍事化されている。学園を攻撃しようと思えば、
同じく足利市全体の軍事力も敵に回すことになる。

足利市は、北朝鮮並みのおそるべき軍事力を誇るとされていた。
さすがは足利市の名前を冠しているだけはある。

(現実では神社や寺がいくつかあるだけのしょぼい町である。
 とあるエロゲーの舞台になったことでオタクの間で有名になった)

そこで、ナルヒトは海外とのコネを生かし、
下記の戦力を用意するに至った。

戦車 5万5千両
装甲兵員輸送車 7万両
歩兵戦闘輸送車 2万4千両
砲 3万3千門
自走りゅう弾砲 9千両
ロケット弾   8千両
防空車両    5千両
対空砲     1万2千門
ヘリコプター  4千3千機

どこかで見たことのあるコピペである。

ナルヒト「これでもまだ足りないかもしれない」

太盛「いや、たぶん一瞬で滅ぼせますよ」

マリエ「むしろ早くやってください。
    ボリシェビキとかまじでうざいので」

ナルヒトは、太盛と親しげにしてるマリエの存在にようやく気が付いた。
今まで彼女の背が低かったので視界に入らなかったのだ。

「君は?」

「斎藤マリエ。太盛さんの彼女で婚約者です」

「なに」

婚約者です…
彼女です…
斉藤マリエです…

この一言で、ナルヒトはキレた。
この感情をどう抑えたらいいか分からず、太盛を殴ってしまう。

「ぐはっ」←せまる

気に入らなかったことはいくつもある。
まず、太盛がミウじゃなくて別の女の子と付き合っていたこと。
そしてこの斉藤さんがすごく可愛らしくて彼好みだったこと。

彼は女好きなので、自分好みの女の子が、自分以外の
男といちゃついてるだけでイライラする、困った性格をしていた。
基本的に俺様系男子で、世の中の美女は全て自分の物に
するのが夢だった。なんだこの設定は。

「これでは足利市を軍事的に滅ぼしても意味がない。
 まず君にはミウとの交際を継続してもらおうか」

「ぐふっ」

太盛は腹パンを食らい、床の上をゴロゴロと転げまわった。
急いでマリエが介抱に向かう。

太盛は具合の悪そうな顔をしている。まもなくして吐いてしまった。
朝食べていたものが、ぴちゃぴちゃと床の上をはねる。

「浮気をする男は最低だよ君」

どの口が言うのかと、マリエがキッとイケメンを睨んだ。
よく見ると彼は体中を高そうな貴金属で固めている。
チャラそうな中年男性だ。

マリエはカンで、この男が最低でも30人以上の女と
寝たことがあるのだと理解した。
妻と娘には生活に十分すぎるお金を送る一方、
自分専用のお金は全て女遊びに費やした人生。

「私たちは、あなたの手助けなんていりません!!」

「なにぃ」

太盛とミウ個人の問題だから、親が首を突っ込むなと主張したマリエ。
さらに、足利市を軍事的に攻撃したら小説が成り立たなくなるから
止めてほしいとも言った。後者はナルヒトは首を縦に振った。

だが、娘の彼氏の件には首を突っ込まずにはいられない。

「私はミウの父親として、堀太盛君には誠実な男性になってほしいのだよ。
 君はミウのことが好きなのだろう? そっちの斎藤さんと浮気してるのは
 一時の気の迷いに過ぎないのだ。私を見て見なさい。きちんと
 カコ…、おっと今のは妻の名前だが、妻と寄り添って一緒を共にする覚悟でいるよ」

彼の愛人の数は17人いて、上はイタリア人の奥さんで52歳。
一番下は、ロシア人の若い娘で17歳。全部仕事関係で知り合った
男性から寝取ったりしたものであり、最低の極みであった。

マリエは上の文書を読み、やはりナルヒトをぶん殴ってやりたい衝動に駆られる。
ミウのことは大嫌いなのでこのイケメンのことも憎かった。
ルックスと金を頼りに女を食い物にしているこの男を殴りたかった。

やはり殴ってしまった。

「うわー」

これはギャグ小説なので、ナルヒトは
アンパンチを食らったバイキンマンの要領でお星さまになってしまった。

「ふぅ。すっきりした」

「殴ってよかったのかマリエ? あの人、小説の重要人物っぽかったぞ」

「だってほら。台本に書かれてるでしょ」

マリエは台本を太盛に見せてくれた。

「うわー、くだらねえ内容。誰が考えたんだよ」
「NHKの連続ドラマのが面白いと思う」
「この話はこれで終わりか。じゃあ次の話に行こうぜ」
「セリフ覚えるの大変だね」

カメラが回ってないところで二人は熱いキスを交わした。

「ナツキ会長、俺はあんたを殴らないといけないんだ」

天気の良い昼下がり。
微風。生徒会本部にて。

トントン
カチャ
スッ

「ご無沙汰しております。会長閣下」
「待ってくれ。太盛君。上の擬音はどういう意味だ?」

トントン←ノックの音
カチャ←扉を開けた音
スッ←椅子に座る

「本題に入りますが」
「う、うむ……」

太盛はナツキにすごみを聞かせて言った。

「俺のミウを返せええええええええ!!」

ナツキの鼓膜が破れるのではないかと思うほどの、凄まじい声量だった。


『第五話 太盛の直談判。☆愛するミウを取り戻せ☆』


「俺のミウを返せ、か。つまり君は今でもミウのことを」
「ミウは俺の最愛の人だ。もちろん愛してるが、それが何か?」

ナツキは顎に手を当ててから、短く「そうか」と言った。

「学内の規則は絶対なのは君も知っての通りだ。
 ここは学園ボリシェビキの総本部。分かっていても尚
 僕相手にお願いをしに来た君の度胸は認めてあげたい」

「俺だって拷問されるくらいの覚悟はできてる」

「死刑判決を無効にするのは無理だ。生徒会だけでなく僕の威信にも関わる」

「なら話だけでもさせてくれ!! 俺はもう一ヵ月もミウに会ってないんだ!!
 ミウと話がしたい!! 面会時間はないのか!! 鉄格子越しでもいいから!!」

あんまりにも太盛がうるさいので、ついにナツキが折れる。
ナツキとナージャが同伴の元で、太盛を地下へ招待した。

「高野ミウさんが死刑判決!!?」

「高野ミウさんが死刑判決!!?」

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