星語り

君は画面を眺めている。
指を器用に使いながら、文字の羅列を目で追っている。
嬉しいこと
悲しいこと
驚いたこと
日々画面を見ていればそんなことを疑似体験できる君は画面に夢中で食らいつく。
その目は瞬きも忘れてしまっているから、君の目は砂漠のようになっている。
君は昔に比べて、見えないものが増えた。
昔という言葉を使うほど、君に歴史はないだろうが、君の目は昔に比べて水が足りなくなっている。
だから、勝手に砂が目から溢れ出てくるのも時間の問題だろう。

君はニュースをよく見る。
主に自然と人間の2つの出来事が世界の全てのように語られるニュースを見て君は恐怖を覚える。しかし、心のどこかでああ、と諦める自分もいる。

何をしても無駄なのか、と。

君は賢明だから、それを決して声に出さずに静かに感じる。

目から水が垂れれば、まだ希望があるものを、君の目は砂漠になっている。そして今見ている文字を君は、何だこれと読み飛ばしたくなる衝動にかられた。

君は、何かに希望を持っている。
君は誰かの何かを受け取ろうとしている。
君は時々、やるせなさに衝動が走りそうになる。

つまり君たちは、見えない不安に立ち向かっている。
砂漠は全て同じ景色。行っても行っても、全部砂で覆い尽くされている。時折見えるオアシスは幻だと既にわかっている。

君たちは、空に蒸発しそうだ。
歩くのをやめてしまいそうだ。


「でも、考えてほしい」


君の目を文字が邪魔する。


「君の目からは砂が溢れそうだ。君が見ているのは、あまりにも小さく、あまりにも根拠のない答えだ。そして今君が見てる画面も小さすぎる。君たちは小さな画面にこだわりすぎている。」


君は、目を瞬きさせた。
そして、 だと思った。


君が砂漠の正体に気付いた時には、砂漠は鮮明に思い起こすことができる思い出へと姿を変えていた。

星語り

星語り

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-11

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