生きるコンポート


死ぬとはなんだろう。



理恵子はりんごの皮を剥きながら考えていた。
お気に入りの赤い鍋にりんごをどんどん入れていく。
祖母の命日には毎年コンポートをつくるのだ。

大好きだった祖母が亡くなり悲しくて悲しくてわんわん泣いたのを思い出す。

だけど、何故悲しいんだろう。死は生きとし生けるものすべてに平等にくるものとわかりつつ、私達は泣く。

「泣くのは別れが寂しいから・・」

理恵子はりんごをかき混ぜながら呟く。
昔みた本にネズミもゾウも、体格も脈打つ速さも違うが心臓は15億回脈を打つのだと書いてあったのを思い出す。

祖母は15億回脈を打ち終えたんだろうか。

椅子に座り真剣に本を読む旦那をちらりとみる。

「あなたが15億回脈打つのが先か、私が先に15億回脈打つのが先かはわからないけれど。一緒にせえので15億回脈を打てたらとっても素敵ね」

旦那は本から顔をあげ、こちらをみる
「ん?」
よくわからないけれど
私はなんだか嬉しい気持ちになってニコリと微笑んだ。

死ぬとはなんだろうと考える前に、
今目の前にいる旦那と今晩のご飯について話し合うことの方が15億回脈を打ち終える前にしておきたいと思った。

去年よりも美味しくできましたよとりんごのコンポートを祖母に供え
手をあわせるのでした。

生きるコンポート

生きるコンポート

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-06

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