のえごしゅ!

ハンネが決まらない人

久々に筆がのったので。
とても健全な小説を書きました。

【最愛なる女王様】


彼女は麻薬だ。
あの心地よさと甘さに一度でも嵌れば、一生抜け出すことはできない。

もう、抵抗することすら……



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朝。
控えめなノックの音とともに、彼女は柔らかい布団の中で目を覚ます。なんだか酷く退屈な夢を見たような心地らしく、その表情は曇っていた。

「ご、ご主人様、お目覚めでしょうか」

〝飼い犬〟の声がする。
彼女は扉の方へちらりと視線を投げ、小さく溜息を吐いた。
朝から無視して困らせ、その反応を見れば少しでも退屈凌ぎになるかと思ったが、そうなると別の使用人が起こしに来かねない。
特にじいやが来たら最悪だ。絶対怒られる。
仕方が無しに『入りなさい』と言うと、嬉しそうな笑みとともにサービスワゴンを押しながら1人の男が入ってきた。

「ご主人様、おはようございます」

『おはよう、ノエル』

飼い犬──ノエルはさらに顔を綻ばせる。
彼はこの屋敷の使用人であるが、彼女以外に仕える意思を示さない。所謂専属の使用人だった。
そして彼にとって彼女は全てであり、世界。彼は己の主人のためなら命を差し出すことも喜んでするような人間だった。

「…あ、っ、モーニングティーを、ただいまご用意いたしますね」

『ありがとう』

ノエルは少し緊張した手付きで茶葉をポッドに入れ、お湯を注ぐ。そして程よく抽出された頃合いを見てぎこちなくカップに注ぎ、ソーサーと共に主人へ手渡した。
彼女はアールグレイの香りをすんすんと嗅いでカップに口をつける。

『ノエル、今日の予定は?』

「はい、えぇと…本日は14時から18時までダンスと詩とバイオリンのレッスン、その後夕食は晩餐会に招待されて…」

『…どこの家の?』

「えっ、あっ、えぇと…」

とっさに答えられず言葉を濁す。
他の使用人のようにメモでも取れば良いのだが、彼は読み書きがほぼ出来ず、現在勉強中なのだ。


『フォートナム家。後で確認しておきなさい』

「は、はい……申し訳ありませんでした…」

ノエルは役に立たなかった、としょんぼりしながら視線を落とす。
彼は主人の役に立つ事が存在意義であり、逆に言うと役に立てなければ存在してる意味すらない、と思うほどに忠誠心が強かった。

『…ノエル、お手』

「!、はいっ!」

差し出された右手に、ほぼ反射的に左手を差し出す。
彼女はその手を掴むと自身の方へ引き寄せる。ノエルは咄嗟の出来事に重心移動が上手くいかず、そのまま足をよろけさせてベッドに手をついた。

その結果、神とすら思っている主人と距離が近くなる。
具体的に言うと、10センチほどの距離まで縮まった。

「ご、ご、ごしゅじ…っ!?」

『ふふ、面白い顔』

吐息がかかるほどの距離で微笑まれ、ノエルは息を飲む。
掴まれている左手から伝わる体温、自分とは違う甘い香り、触れる吐息、白い肌、彼女の全て。
視界に映るのは主人の微笑みだけ。聞こえるのは主人の声だけ。

「じょおうさま…」

『ノエル、今死んでもいいって顔してる』

「はい、女王様のご尊顔を拝したまま死ねるならこれ以上の幸せはありません…♡」

『いい子』

彼女はそう言って空いている方の手でノエルの髪を撫で、頬を撫で、そして指で唇を撫でる。

『でもまだだめよ?まだ終わらせてあげない』

唇を撫でた指はそのまま顎を擽るようになぞり、首に巻かれているリボンを撫でた。
恍惚とした表情のノエルがごくりと生唾を飲み込むと、楽しそうに言う。

『お前のぜんぶは私のものなんだから、ね』

「っ…はい…♡」

犬の全ては主人のために存在する。命すらも。
彼女は時折こうして確認するように囁く。
ノエルからしてみれば当たり前のことなので驚きや抵抗などは微塵もないが、主人が自分に執着してくれている事がたまらなく嬉しかった。



全年齢版 ここまで。

のえごしゅ!

のえごしゅ!

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い性的表現
  • 強い言語・思想的表現
更新日
登録日
2019-05-01

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