グレイ家の兄弟 Counterattack!
G4の反撃
すると、すさまじいプロペラ音を響かせながら、1台のヘリコプターが飛んできた。全員がそれに気付き、上空を見た。
「あっ、あれは!」
フレディが言うと、ブライアンとロジャーが半身を起こしてヘリを見て、互いにうなずき合った。
「おお」
ジョンも小さく喜んだ。
ヘリを操縦していたのは、ドクター・フリックだった。その中には、彼の助手のアメリ・ウェンも居る。
「ドクター・フリック、G4とガルーが見えまス!」
アメリが指差した方向には、木材を並べて作られた円の中で4人が起き上がるのが見えた。ドクター・フリックは、アメリに指令を出した。
「アメリ、例のものを飛ばすだす」
「はいっ!」
アメリは、ヘリの隠し扉からある物を飛ばすと、すぐにタブレット端末で何やら操作を始めた。
頭にプロペラを着け、両手にバケツ大の壺を持った白兎のぬいぐるみがG4のもとに飛んできて、うまく着陸した。バトルに似つかわしくない物体の登場に、ロジャーは思わず笑いそうになった。
「えっ、ぬいぐるみ?こんなときに?」
ジョンがつぶやいた。その直後、ブライアンはフレディのもとに行って何やら耳打ちし、弟たちのもとに戻った。フレディは、ライカンスロープの周りに円を描くように何周も走り、彼の気を引いた。
その間にブライアン、ロジャー、ジョンがぬいぐるみを見ると、白兎のぬいぐるみの目が赤く光り、そこからアメリの声が聞こえた。
「この壺の中身を、ライカンスロープの背中にぶちまけるのでス」
3人で相談した結果、動きが一番素早いロジャーがそれをすることになった。
それと時を同じくして、フレディは走るのをやめ、ライカンスロープからある程度離れた。
「無駄な抵抗、するんじゃねえ!」
フレディがそう言った直後、彼の描いた円の中で火柱が発生し、ライカンスロープは全身を焼かれた。炎が消えると、予想外の攻撃を受けた悔しさのあまり、彼はフレディを強くにらみつけた。
その隙にロジャーがライカンスロープの背後に周り、壺の中身を人狼の背中にぶちまけた。
「うおっ、ううっ…」
壺の中身は、辛さ抜群のハバネロパウダーだった。やけどを負った体にこの攻撃はたまったものではない。ライカンスロープは痛さのあまり、イナバウアーのように体を反らせた。ロジャーは浮遊した状態で、相手の顔面に残りのパウダーをぶちまけた。ライカンスロープの反応は言うまでもない。フレディ、ブライアン、ジョンはその様子を見て、必死で笑いをこらえた。
最強の技
そうしていると、今度は頭にプロペラを着け、両手に大きめの箱を持った黒猫のぬいぐるみがG4のもとに飛んできて、着陸した。
「またぬいぐるみだ」
ブライアンがつぶやいた。フレディが箱を開けると、中身はラグビーボールぐらいの大きさの銀製の猫の像だった。
「何だこれ、猫か?」
「銀でできてるのかな」
フレディとジョンが口々に言うと、黒猫の目が緑色に光り、ドクター・フリックの声がした。
「ほえほえ~、G4、末っ子から順にこの銀の猫にエレメンタルウエーブを込めてラグビーの要領でパスし、最後にライカンスロープにぶつけて倒すだす」
「よし、分かった」
G4とドクター・フリックやりとりの中で「銀の猫」というワードを聞いたライカンスロープは、顔色を変えた。
「な、『銀の猫』だと…?」
フレディは、箱から銀の猫を出してジョンに渡した。
「ジョン、おまえからスタートだ!全員散らばれ!」
「「「OK!!!」」」
G4はバラバラの方向に移動した。
「行くよっ、ロジャー兄さん!」
ジョンが銀の猫にエレメンタルウエーブを込めると、ロジャーにパスした。彼はそれをうまくキャッチした。
「よっしゃ!ちゃんと取れよ、ブライアン兄さん!」
球技があまり得意でない次兄を心配しつつ、ロジャーはエレメンタルウエーブを込めると、ブライアンにパスした。
「よし、取った!」
ブライアンはミスらずにキャッチし、エレメンタルウエーブを込めると、投げながら兄に言った。
「さあフレディ、決めてくれ!」
「よし来た!!」
フレディはうなずくと、ブライアンが投げてきた銀の猫をキャッチした。彼らの一連のアクションは、まさにラグビーをしているようだった。
フレディは銀の猫にエレメンタルウエーブを込めると、ライカンスロープに向かい合って立ち、手に持っているものを見せた。
「ホ、ホモ・サピエンス、それは…!!」
フレディを指差して、ライカンスロープは震え出した。
「『娯楽』は終わりだ!くらえっ!!」
グレイ家の長男は、自分たちのエレメンタルウエーブが込められた銀の猫を、渾身の力を振り絞ってライカンスロープに投げつけた。
「ぐはああっ…!!」
それは見事にライカンスロープの腹を直撃した。ガルーの族長は、片膝を突いて苦しんだ。G4は目を凝らして相手の様子を伺った。
「やったか…?」
フレディがぼそっと言うと、ライカンスロープがゆっくりと立ち上がった。それも、G4と初めて対面したときと同じ人間の姿で。彼の口周りは真っ赤な血で染まっていた。
「ハァ、ハァ、見事だ、ホモ・サピエンス…」
そう言うと、ライカンスロープは苦しそうな声を出してうつむいたが、すぐにG4に顔を向けた。
「ガルーは滅ぶが、おまえたちはまだ滅びない…」
彼は枯れたような声で話すと、崩れ落ちるようにその場に倒れた。そして両目を閉じると、その体は地面にのみ込まれるように消えていった。
G4は、その様子を黙って見届けた。
バトル終了!
しばらくしてフレディ、ブライアン、ロジャー、ジョンは我に帰った。タイムリミットが来たためか、彼らは普段の服装に戻っていた。
「俺たち、ライカンスロープを倒した…!」
「戦いは終わった…!」
「やった、これでソルシティも平和だ!」
「よかった、本当によかった!!」
G4は、勝利の雄たけびを上げて円陣ハグを交わした。
「ドクター・フリック!アメリ!本当にありがとう!」
フレディは大きすぎるくらいの声で、ヘリコプターの中に居る仲間にお礼を言った。
一方、ヘリコプターの中では…。
「ほえほえ~、G4グッジョブだす」
ドクター・フリックが明るく言うと、ほほえんで親指を立てた。戦況を見つめていたアメリもG4が勝ったと分かり、うれし泣きした。
「G4、本当によく頑張ったでス…」
G4は、限界を超える量のパワーを消費したために、一斉に地面に倒れ込んだ。しかし4人とも安心した顔をしていた。
グレイ家の兄弟 Counterattack!