Clean War
この作品の注意事項です。
米印のあるカッコは、ト書きのため、読まないでください。また、米印のないカッコは、読んでください。
Clean War
〈登場人物〉
男→小野、江村(えむら)、中谷(なかや)
女→真綾(まあや)、奈央(なお)
(※物語は、ネオクリーン株式会社に入ってきた、1本の電話から始まる。)
真綾「(※電話に対し)…えぇ、はい。それに関しましては十分に承知しております。はい。
…しかし、今すぐに変更を申されましても…。」
小野「…ん?どうしたんだね?真綾くん。」
真綾「(…よかった!助かった!)
たった今、社長がお見えになりましたので、お電話を代わりますね。
社長。お得意先の室田工業(むろたこうぎょう)より、お話をしたいとのご連絡が。」
小野「わかった。私が代わろう。
はい、お電話代わりました。小野でございます。」
江村(えむら/※室田工業からの電話の主)「室田工業の江村です。
先日、我が社に新たな掃除機"バルンV(ファイブ)"を提案してもらったと思いますが、それが、ライバル社の幌工業(ほろこうぎょう)が出した、同じく新掃除機"ダストスクリュー"の製造を"明日から始めろ"と脅されておりまして…。」
小野「なるほど…。
(…現在、午後1時。何とかして、幌工業を止めなければ。)」
江村「…実は、小野社長。1つ、幌工業に対して気になることがあるのです。」
小野「はい。なんでしょう?」
江村「実は、ダストスクリュー、"見本品が届いていない"のです。
話があり、設計図は送られたのですが、組み立て済みのものがなく、それへの話もなし。突然、それを組み立てて販売しろと…。」
小野「(怒)」
江村「小野社長…。どうか、お助け舟を。」
小野「…わかりました。 私がなんとかしましょう。
その代わりに、いくつかお願いがあります。①設計図を送ってください。②幌工業からの話をしてくれたやつの名前を教えてくれ。そして、電話番号も。
(…許せん。見本も何もなしにいきなり作れとは。その上、明日から販売を頼むと来た。
…ふざけるのも大概にしろ。そんな易々〈やすやす〉と製造して販売する、甘い世の中じゃねぇぞ…。)」
江村「はい。かしこまりました。まとまり次第、すぐに連絡します。1時間以内には済ませますので、はい。」
小野「無理させて申し訳ございません。貴社を護るためです。お願いします。」
(※電話が終わる)
真綾「…お話、聞いておりました。」
小野「忙しい中、いつも辛い思いをさせて、本当に申し訳ない。」
真綾「いえいえ。これもまた、我が社"ネオクリーン株式会社"の命運をかけてのことですから。私も、1社員としてのことをしているまでです。
それと、幌工業について調べましたが…。」
小野「ん?調べて、どうなった??」
真綾「幌工業。家族及び親族でしか運営していない工業会社。その中を知るのは誰一人としていない。知る機会としては、僅か(わずか)数名の広報担当が外に出ている際に声をかけるだけ。しかし、ほぼ質問には答えない。
販売も手がけるが、常に手荒な手段をとり、いろんな企業を泣かせ、倒産させたところも数知れず。
社長、…中谷宇吉郎(なかやうきちろう)」
小野「…アイツ!」
真綾「あなた…。」
(※電話が鳴る。江村からだ。)
江村「はい。室田工業の江村と申します。」
小野「江村さん、お疲れ様です。小野です。」
江村「担当者や電話番号がまとまりました!
担当者の名前は、"優羅啓示(ゆらけいじ)"で、新人と思しき(おぼしき)若い男性の"波川翼(なみかわたすけ)"と一緒でした。
電話番号は、…。(※電話番号が次々と伝えられる)」
小野「はい。ありがとうございます。
もしかすると、そちらにお伺いをするかもしれませんが、よろしいでしょうか?」
江村「えぇ!喜んで!我が社を救っていただけるのであれば!」
小野「ありがとうございます!
後ほど、連絡しますので。」
江村「お願いします。小野社長。貴方にかかっているのです…。」
(※電話が終わる)
(※幌工業〈ほろこうぎょう〉に電話をする小野。怒り心頭だ。)
奈央(なお/※幌工業の受付オペレータ)「お電話ありがとうございます。幌工業、お客様相談室でございます。」
小野「ネオクリーン株式会社、代表取締役社長の、小野智之(おのともゆき)だ。
要件だけ伝える。あんたんところの、優羅啓示(ゆらけいじ)ってやつとお話がしたい。それか、あんたのところのヘッドと話がしたい。
"今すぐに"な!」
奈央「…は、はい。かしこまりました。お電話をつなげますので、少々お待ちください。」
(※暫くして、電話が代わる。)
奈央「お待たせしました、小野様。お電話、代わります。」
中谷宇吉郎(なかやうきちろう/※以降、中谷)「幌工業の、中谷だ。」
小野「…おい、中谷(なかや)!…いや、幌工業の代表取締役社長さんよ。お前、見本品も送らずに、ダストスクリューとやらを紹介して、いきなり室田工業(むろたこうぎょう)で製作しろ、って言ったそうだな。
しかも、突然の話で、"明日販売"と来たもんだ。今は午後3時30分。お前、モノづくりをどうだと思ってんだよ???(怒)」
中谷「私は、私のやりたいようにするだけさ。強引に行くのは当たり前。扱ってくれないなら、力づくでもやるまでですよ。
メーカーの方が、権力は上ですからねぇ~。」
小野「中谷…。(※イライラ)」
中谷「プロトタイプを室田工業に送ってないと?
それが、我が社のルールです。どんなものなのかは、我々はお見せしません。実際に作って頂くことで、我々も知ることになりますから。」
小野「お前…。
それでもモノづくりに携わる身か!!そんなんなら、お前の会社にモノづくりをする資格などない!突然のねじ伏せも、人としてどうかしてるぞ!!」
中谷「…あのねぇ、小野く…」
小野「貴様にはモノづくりをする権利などねェ!!(※食い気味に)
…いいか、よく聞け。お前のところの圧力で、幾つもの企業が悲鳴をあげている。消えたものもいる。
詳しいことは、室田工業で話をしよう。
…今から、30分後にな。
逃げたら、こっちもこっちで、全力であんたらを叩き潰す。当然、秘書も同行だからな。あんたの所も、同じくな。」
中谷「…はいはい、分かりましたよ。ブラボーブラボー。君の演技には、毎度毎度驚かされますねぇ~。
空けておきますから。私はいますから。」
(※室田工業に到着。秘書も同行。)
江村「小野さん…!」
小野「江村さん。呼び寄せましたよ。元凶をね。」
中谷「やぁやぁ。
…どうも、え・む・ら・さん♪
(※不気味な笑み)」
奈央「…ど、どうも。」
真綾「(え?!な、奈央ちゃん?!なんでここに?!)」
奈央「(…あ、まやちゃんだ。結構いい所に就職してたんだ。)」
小野「おい、中谷!なんでさっきの電話対応の奴がそこにいる?!」
中谷「…言うのが遅くなりましたね。彼女、私の秘書です。
今回は、受付担当者が少なかったものでして、お手伝いをさせてました。」
小野「(お前、バカだろ?秘書をそんな扱いさせるなんて、頭イかれてるぞ…。)」
真綾「(最っ低! 奈央ちゃんにそんな事させるなんて、信じらんない。
何が社長よ、あのハゲジジイ。)」
小野「ゴホン(※軽く咳き込む)。話を本題に移す。
あんたらの強引な契約のせいで、室田工業の、ここにいる、江村氏が、…いや、全従業員が苦しんでいる。まともな説明や見本イメージを用意せず、作図だけを用意して、直ぐに作らせようとした。」
中谷「何度も言ってるじゃないか。」
江村「中谷、さん?」(※後ろに、何かオーラが出ている)
中谷「はい。なんでしょう?(※ニコニコ)」
江村「あんたのところの商品、一切作りませんからね!
何が設計図だけ渡すから後はよろしく、だ。モノづくりを舐めるんじゃねぇ!!こっちも、あんたのためだけに時間を割いてんじゃねぇんだよ!それがしたいなら、自前で工場を持つなり対策できるだろ?!」
中谷「あの、…」
(※突然中谷の胸ぐらを掴む、江村。怒りがピークに。)
江村「あんたんとこは!あんたんとこは単なる企業つぶしのトラブルメーカーに過ぎん!! わしゃ知っておる!あんたのせいで無理して作り、赤字で潰れた企業。ゴマンと知っとるわ!
"モノづくりはな、そんな1日や1週間で出来るものではな~い!!"試作品を実際につくり、何度も何度も調整しては作り直す。CG(シージー)っていうハイテクなもんもあるそうだが、あんたんところは、CGに一辺倒なんじゃ!
モノづくりにおいてはな、CGというものも駆使しつつ、実際に作成してこそ意味があるんじゃ。売れるということは、大ヒットするということとイコールではない!」
中谷「…。…何言ってるんでしょうね?このお爺さん。私にはよく分かりませんねぇ。フハハ。」
奈央「…おじいちゃん。」
江村「なんじゃ?奈央よ。」
中谷「お、おじいちゃん?!」
(※小野・真綾の2人は、頷く〈うなづく〉)
奈央「…おじいちゃん、ごめん。勝手に、変な企業で、こんなことをさせられて。
あの時、勝手に家出した自分が悪いんだ。工業が嫌で嫌で逃げて、拾ってもらった人が、まさかのブラック企業の社長だった…。」
真綾「奈央…。」
奈央「まやちゃんも、ごめん。自分勝手のせいで、こんなことになっちゃって。」
(※真綾は、奈央にビンタを1発浴びせる。奈央は、無抵抗に喰らう。)
真綾「自分勝手もいいけどねぇ、あんたの、そのハゲジジイ(※中谷)のせいで、どこもかしこも狂ってしまったのよ!
本当は、もっとなぐりたいけど、これ以上やると面倒になるから、ここまでにするわ。
あんたら2人のやった功罪(こうざい)は、そうやすやすと消える物じゃない。江村おじさんの傷だって、一生癒え(いっしょういえ)やしない。償うなら、今、この瞬間から、永遠にね。」
(※真綾が、奈央に向かって、2発のビンタを食らわせる。)
真綾「この2発は、江村おじさんの怒り。いいね?」
奈央「は、はひ…。」
(※立て続けに、2発ビンタ。)
真綾「これは、私の企業への怒り。いいね?」
奈央「…は、はひ…。」
(※とどめに、小野が中谷に靴でローブロー。)
小野「…んで、中谷。これは、俺が社長としての怒りと、あんたが社長として罪を犯した分の恥ずかしさ・惨めさ(みじめさ)。いいね?」
中谷「は、はひ~!」(※涙を流しながら…)
小野「これで、ダストスクリューの件は、無し。ついでに、幌工業の信用はZERO。
…せいぜい、顧みる(かえりみる)ことだな。あんたらの功罪の全てを。」
(※その後、中谷と奈央は威力業務妨害及び、営業妨害等の複数の罪で逮捕、起訴。2人は離婚予定だそうだが、完全に離婚するまでは、到底時間がかかりそうだ。)
(※その後、ネオクリーン社のバルンV〈ファイブ〉が室田工業で製作され、発売。40万本を売り上げる、ヒット商品に。)
真綾「社長。…いえ、貴方、お疲れ様でした。」
小野「あぁ、ありがとう。真綾。君のおかげもあり、解決できたよ。
さらに、バルンV(ファイブ)も順調に売れていて安心安心。まだまだ、我々はモノづくりをしなければならない。例え、それが社長でもな!」
真綾「えぇ。その通りです。」
小野「お前も、何かアイデアがあれば、言っていいからな。秘書も、一社員。声を上げる権利はある。」
真綾「はい!私も、ネオクリーン株式会社の一員として、これからも頑張ります!」
END
Clean War
訂正情報
・7月19日(金) 権利情報を変更