恋のキューピッドは非リア充
俺はモテない。
ただ……
何故か恋を叶えさせる事は出来てしまう。
不思議だ。
俺は確かに恋愛相談をこの方10件引き受けてきた。
圧倒的に叶わないと思っていた恋を強引に告白させたら、
案外うまく行って感謝の言葉を貰った。
最近だと普段喧嘩ばっかりの二人を結び付けてやったものだ。
しかしどうだろう?
この恩知らずどもは、俺が叶えてやるやいなや俺の存在を忘れた様に
ベタベタベタベタイチャイチャしだす。
「こんなことなら」と後悔を良くしている。
ただ、どうにもこれを止める事は出来ないようだ。
「俊! 飯行こうぜ!」
俺を誘うのは野郎ばかり。
たまには女子にも誘われてみたいものだが、
何分誘われないので仕方がない。
「おー」
と竜也に返事をした。
「高城先輩!」
女子の声。
"お、ようやく俺にも転機が?"
と思ってはいけない。
「高城先輩に相談すると
良いって言われたので……お願いしたいんですが」
ほらまただ。
しかも俺がこう言うことの相談件数多いに定評がある故、
断ると後々厄介なことになりそうだ。
実際の告白とは違い、周りの目があるなかで
堂々と言われるのも断れない要因だ。
…………仕方がない。
「オッケ、話を聞こう」
俺はこう言ってしまうのだ。
「相手は剣道部の一年生……ね」
「はい、幼なじみで……今まで思いを伝えられずに……」
「いつから好きだったの?」
「中学2年の頃から……いつ告白しようかと迷っていたら高校入っちゃって」
どうも滑稽だと内心思った。
この高校に入ったのも恐らく
"彼"もここを第一志望としていたからだろう。
「…………告る気あんの?」
真っ先にそう聞いた。
俺は長期に渡って相談するのは嫌いだ。
あくまで短期決戦型思考である。
「あ……はい…………一応」
断言する。
ビビっている。
フラれることを恐れている。
こう言う奴にはキッパリ言っちゃうのが一番だ。
「ったく…………ビビッてんじゃねぇよ情けねぇ!」
口調を強くしすぎた。
まぁ良いや。
「わざわざ同じ高校入るくらい好きならそれ全部言え、
それが出来ねぇなら諦めろ、ウジウジしてて恋なんか叶わねぇよ!」
怒鳴り寸前。
………………問題……ないかな?
「…………はい、でも…………上手く行くか……」
「告れば上手く行く! 告んなゃ上手く行かねぇ! それだけだ」
彼女はハッとなった表情でこっちを見た。
「頑張れよ」
口調を和らげて終了。
11件目だ。
「あ…………ありがとうございました!」
恋のキューピッドは非リア充
俺は後何件恋愛相談をするのだろう?
そして……
俺はいつになれば彼女が出来るのだろう。