搔き暗す雨夜の月より
宵のあひだのみ
すがたをあらはす点滅信号
わたしはそれをわたらない
ちがうところをさがしもしない
点滅は幾度となく繰り返し
清明心を蝕む(ここであらはれる点滅は動悸のメタファーではない)
恥にも似つかぬ過去罪悪が
だれにもわからぬこころのなかみが
ひとりでに闊歩してゐる
ひとりの時間は善くないことか
ひとりのじぶんに問ひかける
応えも答えも行方不明
だれもおしへては呉れないのだ
この白き病床は
汝自身のこころの如く
しづかなところにいざなはんとす
そうだろう
背を向けてゐるノスタルジアよ
しからずんば 窓に憧れこの身打ち捨つ
並列回路の関係に於いて
ひとはみなじぶんを殺してゐる
こころを持たぬ こころは保たぬ
ここは個室で五月蝿いノイズが鳴り響く
わたしはその色覚を遮るために
目を瞑りながら空を想ふ
搔き暗す雨夜の月より