約束
君に伝えたいことがあるんだ。
あの日、君がいってしまった日。
君は待っていてくれたんだよね。
僕が来るのを、ずっと玄関の横で。
なのに、僕は間に合わなかった。というか、知らされなかったんだ。
君がいってしまうというのにね。
僕がただの入れ物に対面できたのは、君がいってしまってから何時間も後のこと。
君の養母がさ、訳知り顔で君の残りの時間を僕に語っている間
僕は悔しくて悔しくて仕方がなかった。
どうして、僕は気がつかなったんだろう、って。
君がいってしまうということに、鈍感になっていたんだろう、って。
君が決して寂しい思いをしないようにと、ただそれだけを願っていたはずなのに。
ひとりでいかせてしまった。
僕はどうしたら良いのかわからずに。
馬鹿みたいに立ち止まり、ぐるぐる回り、そして結局しゃがみ込むんだ。
約束しようと思うんだ、君と。
君と同じように、僕もいく。これでどうかな。
大事な人と約束するんだ。
いくときは必ずそばにいて、って。
そうして、待ちくたびれてこと切れる。
こんな最期を僕は望む。ひとりでいくと約束するよ。
約束