約束


君に伝えたいことがあるんだ。


あの日、君がいってしまった日。
君は待っていてくれたんだよね。
僕が来るのを、ずっと玄関の横で。


なのに、僕は間に合わなかった。というか、知らされなかったんだ。
君がいってしまうというのにね。

僕がただの入れ物に対面できたのは、君がいってしまってから何時間も後のこと。

君の養母がさ、訳知り顔で君の残りの時間を僕に語っている間
僕は悔しくて悔しくて仕方がなかった。


どうして、僕は気がつかなったんだろう、って。
君がいってしまうということに、鈍感になっていたんだろう、って。

君が決して寂しい思いをしないようにと、ただそれだけを願っていたはずなのに。
ひとりでいかせてしまった。



僕はどうしたら良いのかわからずに。
馬鹿みたいに立ち止まり、ぐるぐる回り、そして結局しゃがみ込むんだ。


約束しようと思うんだ、君と。
君と同じように、僕もいく。これでどうかな。

大事な人と約束するんだ。
いくときは必ずそばにいて、って。

そうして、待ちくたびれてこと切れる。

こんな最期を僕は望む。ひとりでいくと約束するよ。

約束

約束

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-04-22

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