空っぽな、空。

黒板の前から5列、左から2列目。
教室のまん中、左より。
うん。だいたいその辺。
机に突っ伏して、
そこから左に見える青い空が好きだった。

初夏の昼休み。
プールの授業の後。
風の運ぶ塩素の匂いに、涼しさを感じながら。
うとうと。うとうと。
空を雲が泳いでたら、もう言うことはないね。
完璧だ。
そういう空が好きだった。

黒板を走るチョークの音。音読。
ページをめくる音。舌打ち。
開け放された窓になびくカーテンと、銀色の窓枠。
スチール。白い壁、柱。あの娘の横顔。緑化した桜。
その隙間を埋める青い空。
そういう空が大好きだった。


夏休みが終わり。学級会。
机上の花瓶。花。蝉時雨。
青いだけじゃ物足りない。
空っぽな空。
冬が来るのはあっという間だった。

空っぽな、空。

空っぽな、空。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-04-21

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