理不尽ー男子生徒ー

ある日、担任の教師が爆弾を持って俺の教室に現れた。
俺は、どうすることもできない。
そこで、見かける青白い少女。
俺は逃げ場を失う。

この教師は、ヤバイ。
そう思ったのは、ほんの0.0数秒前で。
脳裏でその思考が働いたころには、もうすでに教師の右手には凶器が握られていた。
俺は、常日頃から冷静を心掛けてきたし、周囲の同級生達にも
「××は、常に冷静で落ち着いてるよね。ヒュー」なんて、言われてきていた。
だけれどこの状況は、いくらなんでも経験したことがない。
許容の範囲を、大幅に超えている。俺は冷静沈着を装って、逃げようと思った。
逃げようと、した。ーけど。全身が(特に太腿辺りが)硬直して、上手く動けない。
誰か、助けてー。声にならない叫びをあげながら、辺りを見渡した。
同級生達は皆、驚愕により停止していた。俺も、その状況を見て、驚愕した。
俺等には、逃げるところがない。まるで、鳥籠の中の無力な鳥だ。
瞬間。目の端に何かが映りこんだ。俺はそれを捉えて、視界の中で追いかけた。
少女。だった。青白い、蒼白の表情を浮かべた、少女。だけども、
その感情に起伏はない。ただひたすらに無表情。
少女は、口を動かした。
「あの男性は、私のもの。私のものだもの。決して、失敗するはずがない。
いや。そもそも人生に失敗なんてない。そんなもの、他人が付加するもの。」
少女は、右手を右目の上に当てて、深くうな垂れた。考え込んでいるようだった。
俺は、自分の右斜め後ろ(距離およそ1メートル前後)に位置する、
その少女の動作の全てを見終わって、何故だか嗚咽が止まらなくなった。
この現場は、何かが歪んでいる。おかしい。
何なんだ、あの少女は。-同級生?いたっけか。な。
だけども、もう、どうだっていい。そんなことは。早く、逃げなければ。
きっと、あの少女は、死神なんだ。その一言で、全て、呑み込める。
あぁ、早く逃げたい。この場から、逃げ出したい。
そう思う、俺の前で。担任の右手から閃光が飛び出した。
爆音。



が、轟いた気がする。
俺にはただ、その振動だけが、熱気だけが、微かに認識され続けていた。
視野一面を覆う煙の中で、俺は、先程の少女と対峙した。
少女は、哀愁を帯びたような表情をしていた。
俺が、人生で経験したことのないような気持ちを帯びた、表情だった。
「君は、何なの?」
少女が、言った。それは俺の台詞だ、と言いたかったのだけれど声が出なかった。
少女は、泣く寸前のような表情で、俺の全身を見ていた。ような気がする。
俺は、無我夢中で少女のシルエットを手にとろうとした。
けれど、掴めなかった。触れることすら、できなかった。
少女は、煙のように掻き消えて、そして瞬時に、俺の耳元に姿を現して、
「どうせなら、もっと賢い生き方をするべきね。もしまた今度、生まれ変わったら。」
そう言って、爆発は俺の体を粉砕、溶けこまれていった。

理不尽ー男子生徒ー

理不尽ー男子生徒ー

理不尽ー教師ーを読んで頂ければ幸いです。 内容が分かり辛く、すみません。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-15

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