Bounds of friendship
初投稿オリジナルです!!頑張って書きますのでよろしくお願いします!
プロローグ
偶然、それは必然―――。
さぁ、行っておいで、私の可愛いdoll達。
永遠にも思えるほどゆっくりと過ぎていった一学期最後の日――――。
「はぁーぁ。成績ヤバいよう。うー。」
呟きながら通りの向こうからやってくる一人の少女。少しウェーブのかかった漆黒の髪を後ろで一つに束ね、同じ漆黒の瞳を潤ませながら空を見上げている。まるでこの世の終わりのような顔をしているその少女―――――――朝井美奈は公立の高校に通う見た目も中身もごく普通の平凡な高校2年生。
「はぁ、宿題いっぱいあるし・・・。」
なおも呟きながら歩く美奈は前方の人影に気づくことなく、正面衝突してしまった。
ぶつかってしまった人に謝ろうと目を開け、言葉を失った。そこには―――――等身大に近い140センチほどの精巧なビスクドールが座っていた。見事な銀髪は結われることなくほどけたターバンのように足元に垂れ、真紅の瞳が美奈を凝視している。
(なんでこんなところに人形が?)
美奈が恐る恐るその綺麗な髪に触れようとしたとき、
「さわるな。」
まるで地の底から響いているような低い声がした。美奈は驚いてあたりを見回すが、自分と人形しかいない。美奈は人形を見て、また触れようとした。すると、その人形のかわいらしいさくらんぼのような口が開いた。
「さわるな、と言ったはずだ。」
その声は先ほどと同じ、低い声。美奈はそれがこの目の前の人形―――――いや、人形と見まごうほどの美少女から発せられる声だと気づくのに時間がかかった。それほどまでに見た目と声が一致していないのだ。まるで声だけが老化したような、はたまた、体の成長が止まってしまっているような、不思議な感覚に陥る。美奈が声も出さずにその少女を凝視していると、すくっと少女が立ち上がり、美奈には目もくれず去っていこうとした。その少女の動作に我に返った美奈は目の前に落し物があるのに気が付いた。そして、おそらく少女が落としたのであろうキラキラと光る石を拾い上げた。その時、石からまばゆい光がはなたれ、一瞬目の前が真っ白になった。ようやく、目が見えるようになった美奈は、石を渡そうと少女のほうを見る。すると少女は驚いたように目を見開き、美奈を見つめていた。そして、すぐにムスッとした表情になり、
「大変気に食わんが、こいつなのか。」
とつぶやき、美奈に
「ついてこい。」
と言い放った。美奈は彼女の声に再び驚き、何も言い返せないまま彼女について行った。
出会い
「どこに行くつもり?」
と問うた。すると今度は返事のつもりなのか
「フンッ」
と鼻を鳴らすような声。彼女の態度に怒りを感じた美奈は方向を変えて帰ろうかと悩み始めたとき、
「ここだ。」
とまた、低い声が響き渡る。美奈はまた少し驚き彼女のさす方向に目を向けた。そこには目を見張る荘厳な造りをした屋敷が静かにたたずんでいた。
彼女はベルのところまでちょこちょこと小走りで行き彼女には少し高い位置にあるボタンを背伸びをして押す。そして彼女が何事かつぶやくと門が重い音を立てながらゆっくりと開いた。美奈が建物に見とれていると、彼女はさっさと入って行ってしまい、美奈はあわてて追いかけた。
美奈が彼女について屋敷に入ると、この屋敷の使用人であろう者たちが二人をある部屋に案内した。その部屋は奥に大きな椅子が一つ置かれているだけのとても殺風景な部屋であった。
部屋に入るとすぐに少女は奥の大きな椅子に腰かけた。その姿は、まるで小さな子どもが無理をして大人の真似をしているように見えたので美奈はクスッと笑ってしまった。
その時、部屋の扉が開いて、若い燕尾服の男が入ってきた。彼は肩のところで切られた少しウェーブのかかった銀髪から濃い紫の瞳がのぞいていて、整った顔立ちを更に美しく見せている、小さな美少女と並んでも何の違和感も感じないほどに綺麗な人だった。と、その男性が口を開いた。
「お待たせしてしまって申し訳ありません。私、ユリア・J・リコリスと申します。」
と優雅な動きで一礼しながら美奈に言った。美奈は生まれてこの方執事というものを見たことがなかったので、その優雅さに見惚れていると、
「ユリア、このアホ面に説明してやれ。」
とあの低い声で美少女が言った。美奈がムッとして言い返そうと口を開いたところでユリアが遮った
「申し訳ございません。あの方はルシータ・マリタロス様、私どもの主人のご令嬢にございます。」
あの子、ルシータちゃんっていうのか。などと考えていると、再びユリアが話し出した。
「そうですね、単刀直入に申し上げますと、貴女様にはルシータ様を太古の呪いより救っていただきたいのです。」
「はぁぁ?!」
あぁ、私はなんだかとても関わってはいけない人たちにつかまってしまったようです。あの時、そのまま帰っていれば、よかった。美奈は本気で後悔し始めたが、そんなことはお構いなしにユリアの話は続くのだった
戻れない
「は?」
美奈はユリアの言っていることの意味がわからずにただ呆然とユリアのことを見つめていた。
「大丈夫ですか?美奈様?」
ユリアは心配と呆れの入り混じった表情で美奈を覗き込んでいる。呆けている美奈をみて、ルシータはユリアのほうを向くと、
「ユリア、最初から丁寧に説明してやれ。どうやらこいつは馬鹿なようだからな。」
と言い放った。美奈はルシータの言葉にムッとしながらもユリアの次の言葉を待った。
―――――――その昔、世の中には魔力を持った人々がまだたくさんおりました。マリタロス家は小さな村の長でした。その村は魔力を持つ人と普通の人が共に暮らすとても良い村でした。しかし、世の中は次第に魔力を恐れ、魔力を持った者を排除しようとしたのです。瞬く間に戦争は始まり、平和だったマリタロス様が治める村にまでその波が押し寄せてきました。
「魔力は、排除すべきだ!!」
「その恐ろしい力は神への冒涜だわ!」
「お前らは地に堕ちた悪魔のしもべなのだろう!」
善良だった村の人々もそれこそ悪魔がとりついてしまったかのように魔術師を非難しました。初めは言葉で、次第に殺すための道具を持ち出し戦争に発展していきました。おさまらない戦火を止めるべく、マリタロス様は皆の前に立ち戦争がいかに無意味なことか、そしてこの村の人間と魔術師の歴史について説きました。しかし皆はマリタロス様の話に耳を傾けようとはしなかったのです。その時、怒り狂った一人の魔術師がマリタロス様に強力な死の呪いをかけたのです。マリタロス様はその時自身の魔力を最大限に使いマリタロス家の後継者を造りだしたのです。そして、それに自らの意思を託し事切れたのです。マリタロス様の死によって町の人々は我に返り、町に再び平和がおとずれました。
しかし、マリタロス様にかけられた呪いは消えてはいなかったのです。
「今はまだマリタロス様の魔力によって抑えることができていますが、その魔力も時とともに薄れ、今日ではいつマリタロス様の魔力が消えてしまってもおかしくない状況なのです。」
「はぁ。」
美奈はどこか違う世界の話をきいているかのような、まるで現実感のない話に間抜けな返事しか返すことができなかった。
「それで、あなたには、ルシータ様を救っていただきたいのです。」
「・・・・・・・・なんで?」
美奈の口から出た言葉はそれだった。
「ですから、その昔―――――」
「それはわかった。この子が危ないのもわかった。でも、なんで私?」
自分はこの子とはなんの関わりもないし、むしろ今日が初対面だ。なのになぜ私なのだろう。
「それは、あなたしかいないからです。」
「ふーん。でも無理だわ他をあたって。」
あなたしかいない、そう言われて悪い気はしない。だけど見ず知らずの女の子のために危険をおかしてまで救ってあげるほど私はお人好しではない。
「・・・お前の願いを一つ叶えてやろう。」
「願い?」
”願い”その言葉につい聞き返してしまった。今振り向けば協力しなければならなくなる。分かっているのに、帰れ、そう思っているのに体はいうことをきいてはくれない
「どういうこと?」
――――――――――あぁ、もう戻れない――――――――――。
願い
「どういうこと?」
美奈の口から勝手に出た言葉。言ってから美奈ははっとした。
「そのままの意味だ。お前の願いを叶えてやる。」
美少女、もといルシータは椅子にふんぞり返って言った。
「お前にはどうしても叶えたい願いがある。だがそれは叶えることができないこともわかっている。しかし私は違うぞ?お前の望みを叶えることができる。なにせ今お前が聞いたとおり普通の人間とは違うからな。」
「・・・・それを信じろというの?」
美奈は複雑な表情で問うた。
「信じる信じないはお前の勝手だ。だがこれだけは言っておこう。今断ればこれから先お前の願いを叶えられることは万にひとつもないだろう。なぜなら普通の人間には叶えることが出来ないからだ。」
「・・・・・協力するわ。」
美奈の言葉を聞いてルシータは満足げにうなずいた。
「ユリア、あとのことは任せたぞ。私は疲れた。久々にたくさん喋ったからな。」
ルシータはそう言って部屋を出て行った。
「畏まりました。」
Bounds of friendship
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