レタスサンドとねこ

あおい はる 作

 ふつりあいな、ふたり。
 真夜中の、公園の、池で、魚たちと、話していた。
 ねこと、ひと。ひとは、女のひと、かと思ったら、男のひとで、ねこは、まぎれもなく、ねこ、だけれども、にんげん、のような、ねこ、だった。二本足で、立ち、わたしたちと、おなじことばを、流暢に、つかっていた。
 池の魚は、おしゃべりで、ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃ、しゃべっていて、女のひとのような、男のひとは、黙って頷いていた。にんげんみたいな、ねこは、魚たちに負けじと、ぺらぺら、ぺらぺら、しゃべっていた。ビルの、街の、公園からも見える、高いビルの、屋上の、赤いランプが、光ったり、消えたり、していて、魚たちは、ときどき、うれしそうに、たのしそうに、水面をはねた。ばちゃん、びちゃん、と、はねた。ねこは、拍手をしながら、よろこび、女のひとのような、男のひとは、やっぱり、なにもいわずに、頷き、その表情は、横からでは、よく見えなかった。
 宇宙のことを、考えてみたときの感覚に、似ていた。
 わたしは、スマートフォンが、電話が、鳴っていることに、まるで気がつかなかったし、彼らは、その音にも、わたしがいることにも、まったく気づいていないようだった。

( 透 明 )

 わたしは、たしかに、そこにいたし、彼らも、いた。真夜中の、公園の、池に。時折、車が通り、ふいに、ガサガサ、だの、コツン、だの、キュッ、だのという、なにかしらの物音が、きこえた。それらをかきけすように、池の魚たちが、ばちゃばちゃ、水を叩いたとき、
「知っていますよ、あすこのサンドイッチはね、絶品ですよ。ええ。とくに、レタスサンドが」
という、女のひとのような男のひとの声が、鮮明にきこえた。
 きこえた瞬間、目の前が、真っ赤に染まり、ねこと、男のひとと、水上を舞っている魚たちが、ぐにゃり、と歪んだ。

レタスサンドとねこ

レタスサンドとねこ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-04-17

CC BY-NC-ND
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