沙山 雪 作


髪を伸ばそうと思った

あの人は長く真っ直ぐなきれいな黒髪が好きらしいと耳にしたから

茶っこくて少なくて細くて柔らかくて
すぐに毛先は枝分かれする私の髪は
伸ばすには似合わないって知ってる

一筋に欠けていて
すぐに迷って
別の道を探しだす

まるで私自身だ
思わず笑った



髪を伸ばそうと思った

あの人は長く真っ直ぐなきれいな
黒髪が好きと知ったから

枝分かれした毛先を
少しずつ切っては整え
どのくらい経ったのか

茶っこくて少なくて細くて柔らかくて
すぐに毛先は枝分かれする私の髪は
腰のあたりまで伸びたけど
黒髪にはなれなかった

遺伝を呪った
真っ直ぐなきれいな黒髪に生まれたかった



髪を伸ばすのをやめた

肩までばっさり切り落として
くるくるにパーマをかけて
それは茶っこい私の髪に
似合うにきまっていたから

一筋に欠けていたって
すぐに迷ったって
別の道を探しだしたって

それが私自身だ
笑えばいい

そういえば
長く真っ直ぐなきれいな黒髪が好きな
あの人は誰だったっけ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-04-17

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