アステロイド終末紀行

Racine 作

停電した高層ビル群 斃死する烏

黒い太陽 嗤う木々

無人のバス停 千切れたイヤホン

白い病褥 青い夢

焼けた手記 仄かなぺトリコール

終息前夜 バイタルサインの嬌声

半開きの窓 閉ざした瞼

有刺鉄線の向こう いつもの伐採跡地でね

薪の叫び 微かな祈り

濁流の嘆き 167階から転落死

唸るアンドロイド 蠢くパラサイト

極夜とわたし

金属山の麓 錆と暮らす荒野

あまい溜め息 あまい辞書

詩書きと瓦礫 にがい雲

無色信号 無数の倒木

タールの湖 酸のスコール

怯える機械魚 電気砲台の連続

足りない情緒が静かに融ける

失くした五感が甦る

骸骨の軍隊が挙兵する

滅んだ白日を取り戻すために

廻り続ける 灰色の観覧車は今日も綺麗だ

急勾配の坂道には 破れた提灯が眠っている

空を泳ぐドローンは 積乱雲の餌食になった

立入禁止の管制塔で 無色の花火をつくりだす

ブラックアウトした海中で ふたりにしかわからない恋文を紡ぐ

3000年前に死んだ中華街で 余った心臓を捜し出す

今日は何として生きようか

今日もわたしを創ろうか

薄暗闇に微睡む肢体

朦朧とする透明虹彩

色と空を求めて

届くことのない最期のことば

輸血途中の彼女の瞳に

終わらない想いを描き遺した

「またいつか」

アステロイド終末紀行

アステロイド終末紀行

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-04-17

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