なつぞらダイバー 第7週 なつよ、今が決断のとき

別所高木

ようこそ、ムービーダイバーへ
ムービーダイバーは、お客様の希望する小説、映画、ドラマの作者、脚本家の傾向を分析し、AI化する事で、お客様の希望するストーリーの中に入り込む事ができる、
バーチャル体験型アトラクションです。

俺は、またムービーダイバーの店舗に入った。

「いらっしゃいませ。あ!お客さん!なつぞらの第4回、覚えてますか?」
「覚えてますが、急にどうしたんですか?」
「いえね。私もなつぞらをもっとしっかり把握しておかなくっちゃって思って、ビデオで最初から見直してたんです。そしたら第4回でなつと泰樹さんがアイスを食べるところで泣いちゃったので、お客さんも泣いたかなって思ったんですよ。」
「あのシーンは良かったですね。俺も涙が止まらなかったですね。」
「やっぱり!なつぞらのホームページの4月10日のインタビュー読んで、お客さんの事じゃないかなって思ってたんですよ。」
「あれは、内村光良さんのインタビューで、私のことじゃありません。全くの別人です!」

「そうですか・・・すみません。」

「いえ、謝るほどの事ではありません。気にしないでください。」
女性店員は釈然としていないようだが、仕事モードになった。

「お客様は、今日はどの物語へのダイブをご希望でしょう?」
「今週も、なつぞらお願いします。」
「なつぞらは、得意ですよ♪もう、ムービーダイバーでなつぞら といえば私のことです。お客さんも私のことをなつちゃん、とか、すずちゃんって呼んでくれていいですよ。」
「はははははは・・・・・ぶつよ!」
俺と女性店員は不穏な笑顔で微笑みあった。

「では何処にどの様な立場で参加されますか?」
「なつが、阿川弥市郎さんの家から帰るときの、雪原の向こうに朝焼けの景色に感動したのを、あの景色を見たいです。」
「シーンの追体験ですね。これは、冬まで待って、航空券とって、ライブで体験してほしいところですが、ムービーダイバーなら、なつと一緒に同じ景色を見る事ができます。。。。ただ、ストーリー上なつは一人なので、人間以外にダイブする必要がありますね。でも、どれがいいかな???」
女性店員はじっと俺を見つめた。
「お客様なら、キタキツネがいいかもしれませんね。森にキタキツネがいるのは自然な事だし。キタキツネにダイブしましょう。」

俺は納得してカプセルに向かった。
七色の光に包まれ、俺は夜明け前の森に現れた。
弥市郎の小屋のそばにキタキツネがいる。
俺は、キタキツネにダイブした。

ちょうど、その時弥市郎の小屋からなつが出てきた。
小屋の前でスキーを履いて、移動の準備をしている。
俺はなつに近づいた。
「おや、キツネ。」
なつはちょっと驚いたようだったが、別段恐れているようでもなかった。

よかった。クマにダイブしていたら逃げられているところだった。
俺は、ちょっぴり安心した。

なつはスキーの準備が整い、進み始めた。
俺は、なつの周りをウロウロしながら凍った静寂の森の景色を楽しんだ。

前日に強烈な風が吹いたので、森の中でも道は雪に埋もれている。
大げさなラッセルが必要な程ではないが、それでもスネくらいまでの新雪を踏みしめて、進む必要がある。
俺は、なつの進むのが少しでも楽になるように、先回りして僅かながらも雪を踏んで進んで行った。

弥市郎の小屋の周りは、白樺やダケカンバなどの落葉樹に囲まれている。
まだ、朝早いせいか、誰もいない。驚くほど静かな森だ。
いや、誰もいないから静かなのではない。
雪が音を吸い取っているから静かなんだ。
俺は静けさを楽しみながら歩いた。


森の中を歩いて進むと、歩くにつれてまるで後ろに流れていくようだ。
でも、遠近感のせいか、近くの木と遠くの木では、流れていくスピードがちがう。
近くの木はすぐに後ろに流れていくのに、遠くの木はゆっくりだ。
自然に生えた森の木々の中を進むと複雑に木々が流れていく。

やがて森の出口に近づいた。
木々の向こうに山が見えてきた。
夜明け前の朝焼けの光がうっすら空を照らしている。
うっすらとした光の中の山は、不思議な質感を醸していた。
これが、朝ドラでやっていたシーンの山だ。
森があり、雪原があり、山がある。
しばらく、なつと山を見つめていた。

やがて、空はさらに一段明るくなり。
日の出が近くなってきた。

遠くの高い山の山頂が赤く輝き始めた。
山頂に朝日が届いたんだ。
雪山は山頂順番にから、朝焼けの赤い光に照らされていく。

反対側の山を見ると、山の稜線が眩しいばかりに輝いている。
次の瞬間、朝日が現れた。

眩しい!

その瞬間、なつも、周りの雪原も、白樺の森も全てが朝焼けの赤い光に包まれた。
世界が薔薇色に包まれた瞬間のようだった。

俺はなつと一緒に雪原を歩いた。
極寒の朝なのに、周りを包む薔薇色の光と、背中に当たる日光の暖かさが心地いい。
ただ、しばた牧場に向かう道だったが、全てが心地よかった。

やがて、しばた牧場から天陽の家に向かう道に繋がった。
道には2本のスキーの跡がある。
きっと天陽だろう。
もう、道には雪を踏み固めた跡がある。
ラッセルの必要もないだろう。

俺は道の脇に座ってなつを見つめた。
「キツネさん、やっぱり帰り道を案内してくれてたの。ありがと。」
俺はしばた牧場の方向に首を振った。
「もう大丈夫。一人で帰れるよ。」
なつは一人で歩き始めた。
何度も何度も振り向きながら進んでいく。

あたりが虹色の光に包まれ俺は、カプセルに戻っていた。

「お客様、ステキな景色でしたね。」
「あぁ、ほんとこの世には神様がいるのかと思うくらいステキな景色だった。この経験がなつの将来に役立てばいいんだけど。。。」
「さすが、お父さん♪」
「ちがいます!」

俺は店を後にした。

なつぞらダイバー 第7週 なつよ、今が決断のとき

なつぞらダイバー 第7週 なつよ、今が決断のとき

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
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