硝煙の心象

Racine 作

応えてよ

それは果てしなく 終わらないことば

問いかけは確認と承認を孕む

意味のない時間に色をつけると錯覚する

あてもなく 放浪した想いは終着駅で息を引き取り

なすすべもなく 途方に暮れた茜色の世界は黙ってその腐りゆく肢体を静かに飲み込んでゆく

我儘と我儘

ぶつかり合うそれは 決して終わりを迎えることはない

波と波が殴り合う 静謐な空間を打ち砕くように

見下ろす空は止めてはくれない 五体不満で届かないから

心は誰にでも 何にでもあるかもしれないが

どれもがいびつなかたちをしていることは違いない

歪められてゆくのだ ひとりでいようと ふたりでいようと

ふたりでいるときにあらわれる虚無感というのは

晴天を歩いているときに遭う俄雨のような気分になる

孤独は予防である

繋がりを否定することではない

互いの傷を最低限にとどめる一種の処方薬である

服用する量を誤ってしまい 直情に裏切られたことも過去にはあったのだが

知らず知らずのうちに人は人を殺めるのだ

だれかの心を蹂躙するのだ

関係することはその危険性を覚悟することに近い

わたしがそうしてきたからだ

幸福を手に入れることは だれかの幸福を奪うことだ

幸福のかたちは 人によって違うのだろうが

奪われた幸福は憎悪や悲哀 不治の傷にかたちを変える

抑圧の絆創膏で傷口を塞いでも 膿はひとりでに声を上げるのだ

そいつの口を塞いでも 意味に首を絞められるだけだ

正直な空を探したい 正直な空を探したい

正直な 正直な空を

孤独とこころを受け入れる くまなき濃紺の空を

鬱蒼とした視界とこころが むかしの自分を殺さぬように

殺伐とした水面が 未来の自分を赦さぬように

いまをどうしようもなく 喰らうのだ

いまをどうしようもなく 飲み込んでゆけ

関係の香辛料は 最低限にしておくが吉だ

つとめて疾走 疲れて失踪

日々に愛想をつかされぬように

おまえはおまえをつくるのだ

過去の呪縛を縛り直して

おまえをおまえを破るのだ

制限時間は拍動の蝋燭が息の根を止めるまでだ

信じなくてもいいことがあることを学んでゆけ

期待しなくても傷つかないことがあることを覚えてゆけ

おまえはおまえだ わたしはわたしだ

日々は日々だ

おまえはおまえを赦さない わたしもわたしを赦さない

日々の監視を免れず

空に杞憂を諭されず

顔を死ぬまで演じてゆけ

硝煙の心象

硝煙の心象

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-04-17

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