なつぞらダイバー 第6週 なつよ、雪原に愛を叫べ

別所高木

ようこそ、ムービーダイバーへ
ムービーダイバーは、お客様の希望する小説、映画、ドラマの作者、脚本家の傾向を分析し、AI化する事で、お客様の希望するストーリーの中に入り込む事ができる、
バーチャル体験型アトラクションです。

俺は、またムービーダイバーの店舗に入った。

「いらっしゃいませ。あ!そうそう、夕べテレビ見てたら、ダーウィンが来たをやってって、ダイオウイカの特集みたいだったんです。
で、ずっと見てて、なんか変だな〜って思ったら、ダイオウイカじゃなくて、イカの大王だったんですよ!びっくりしちゃいました!」

「あなた、ダイオウイカとイカの大王を間違えた!?ダーウィンが来た!とLIFE!を間違えた!?あなた只者ではありませんね!」
「どっちも、末尾に!が付いてるから、そっくりですよね。見分けつく人いるのかな???」
「全然、違います!前も言ったと思うけど、ヒゲジイによく似ていると言われますが、別人です!」

「そうですか・・・ヒゲジイに似ていると言った覚えはないけど、すみません。」

「いえ、謝るほどの事ではありません。気にしないでください。」
女性店員は釈然としていないようだが、仕事モードになった。

「お客様は、今日はどの物語へのダイブをご希望でしょう?」
「今週も、なつぞらできるでしょうか?」
「なつぞら好きなんですね。なつぞらにイカの大王が出てきたら素敵なんだけど・・・・」
「絶対出てきません!」
「そんな放送される前から、確信しているなんて、やっぱり!」
俺と女性店員は不穏な笑顔で微笑みあった。

「では何処にどの様な立場で参加されますか?」
「泰樹さんが、なつと長男の照男の結婚を画策するじゃないですか。
それが基で泰樹さんは、みんなに非難されているけど、あの考えに到達するまでの、泰樹さんを見たいんですが・・・」
「なかなか、難しそうですね。心の中はなかなか表面には出てこないんですが、、、、また、子牛にダイブしてみましょうか。」
「子牛?」
「きっと、泰樹さんが気持ちを吐露するとしたら、牛の前かなって思うので、行ってみましょう。いいですか?」
俺がいつも信頼している、店員が言うのだ。
なんらかの目論見があるのだろう、試してみよう!

俺はカプセルに向かった。
俺の視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚はしばた牧場の子牛にダイブした。

いきなり目の前に泰樹がいる。
泰樹は、子牛(俺)の顔を覗き込んで物思いにふけっている。
「なぁ、お前。なつは好きか?」
子牛(俺)は泰樹の目を見つめてゆっくり頷いた。

「そうか、お前もそう思うか。」
泰樹は、何か考えているようだ。

「わしも、いつかは死ぬ。その時に誰かがこの牧場を守らなければならん。」
泰樹さん、何の話をしてるんだ?
子牛(俺)は首を傾げた。

「本当は、剛男と富士子で力を合わせて、わしの後をついで欲しかった。。。。
でも、牛の基本的な毎日の作業が一通りできて、これから酪農の事を覚えて行くところで、戦争にとられてしまった。
戦後は、牧場の収入を安定させるために、全力でやってきて、剛男を後継として育てる事を疎かにした。
あいつが農協で勤めるようになってしまったのも、わしの責任だ。」
へー、剛男さんを跡取りにしようと思ってたなんて、知らなかった。
子牛(俺)は相槌をうった。

「でも、牧場は照男が継いでくれるだろう。照男は真面目だ。わしの言いつけを守ってきっちりやっている。
きっと、今のしばた牧場を守ってくれるだろう。
でも、なつはどうなる?
なつは、照男より前から、ずっと手伝ってくれていた。なつが手伝っていてくれたから、照男が酪農に興味を持ってくれた。
なつがいなかったら、このしばた牧場は廃業するしかなかった。
なつが救ってくれたのは、間違いない。
後継ができたからって、それでもういいっていうのは冷たすぎないだろうか。」
泰樹さん、大丈夫だ。なつはこれから東京に行ってアニメーターになるんだ!子牛(俺)はそう思って首を横に振った。

「やはり、お前も、後継ができたから、追い出すって冷たいからやってはならないと思うか!
そりゃそうだ。」


ちがう!
照男に全部任せるのが一番良い事だって!
子牛(俺)は力強く首を縦に振った。

「やはり、追い出すような事をしちゃダメだな。
どうすればいいんだ?なつをどうすれば・・・」

泰樹は子牛(俺)の顔をじっと見つめて考えている。
その時、厩舎の外を足音がしたので、はっと振り向いた。
照男が歩いている。

「そうか!照男と結婚させればいいのか。
今まで、兄弟として育ててきた。わしも照男となつは兄弟だと思っている。だから、それはいかんのじゃないかと思っていたが、
それが、間違いだった。」

そ・それは間違いだって!
なつは、照男や夕見子や明美と兄弟になる事で、柴田家の子供になる事で、この家が自分の居場所にすることができたんだよー!
なつが子供のころ、自分の居場所を見つけるためにどれだけ苦しんでいたか、覚えてるでしょ。
俺は必死に言おうとしたが、子牛にダイブしているので、モーという声しか出ない。
首を横に振って、違う!違う!と言おうとしたが。。。。
首を横に振ってモーモー言うだけだった。

「お前も、そんなに喜んでくれるか。
今まで、なつを奥原にしていたのを、いろんな人になんでだって聞かれて困った事だったが、結果的にはこれで良かったんだ。
これで、なつも柴田なつになる。こんなにめでたい事はない。」

めでたくない!泰樹さんの目線で、見える景色と、なつの目線で見える景色は全然違うって!
なつが気にするのは、その柴田とか奥原の部分じゃないし!
今、出来上がってる家族の関係が一番大切なんですよ!
よく考え直して!
いくら、頑張っても子牛(俺)の口から出る音はモーモーだけだった。。。

泰樹は子牛(俺)の姿を見て、喜んでいると思ったらしい。
「お前がそんなに喜んでくれて嬉しいぞ!自信が出てきたな。
今から照男に言ってくる。」

泰樹はさっと立ち上がって、厩舎を出て行った。

そして、目の前の景色が虹色に包まれ、俺はカプセルの中に戻っていた。

「お客様、大丈夫ですか?」
女性店員の声が聞こえた。
涙が止まらなかった。
「も・もしかして、俺が泰樹さんを焚きつけて、なつや、照男や、泰樹さんを傷つけたのかな?」
「大丈夫ですよ。物語には波風と盛り上がりが必要です。お客様は、みんなに喜んでもらえる事をやったんですよ。」

俺は無言でカプセルから出た。

店を出ようとする俺に、後ろから女性店員が駆け寄ってきて、ポーンと肩を叩いた。
「お客さん!来週も、もっと盛り上げていきましょうね!飴ちゃんあげます!」

笑顔で手渡された、飴を口に入れて、俺は店を出た。
めっちゃ、きついメントール味だった。

なつぞらダイバー 第6週 なつよ、雪原に愛を叫べ

なつぞらダイバー 第6週 なつよ、雪原に愛を叫べ

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
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