なつぞらダイバー 第5週 なつよ、お兄ちゃんはどこに?
ようこそ、ムービーダイバーへ
ムービーダイバーは、お客様の希望する小説、映画、ドラマの作者、脚本家の傾向を分析し、AI化する事で、お客様の希望するストーリーの中に入り込む事ができる、
バーチャル体験型アトラクションです。
俺は、またムービーダイバーの店舗に入った。
「いらっしゃいませ。小暮井総理!」
「総理大臣の小暮井です。いよいよ、ちがーーーーーう!
違います!前も言ったと思うけど、よく似ていると言われますが、別人です!」
「そうですか・・・すみません。」
「いえ、謝るほどの事ではありません。気にしないでください。」
女性店員は釈然としていないようだが、仕事モードになった。
「お客様は、今日はどの物語へのダイブをご希望でしょう?」
「今週も、なつぞらできるでしょうか?」
「なつぞら好きなんですね。まるで出演者みたい。」
「ほんと、画面に映ることができたら幸せなんですけどね。」
俺と女性店員は不穏な笑顔で微笑みあった。
「はい、大丈夫です。では何処にどの様な立場で参加されますか?」
「幼馴染の佐々岡信哉君が、十勝にやってきた時の夕見子の反応が気になって。。。。
皿洗いとか手伝うようになるって、変化が見たいと思うんですが、できますか?」
「夕見子にダイブが一番ですね。行きましょうか。」
俺は女性店員に促されカプセルに入った。
俺はいつもの様にしばた牧場の上空に現れた。
厩舎の前で、佐々岡信哉と剛男が話している。
俺はその上を通過し、夕見子の部屋に入っていった。
夕見子は本を読んでいる。
俺はそのままダイブした。
ドンドンドンドンドンドン!
凄い勢いで、妹の明美が駆け上がってきた。
「ゆみねーちゃん!たいへんたいへんたいへんたいへん!!!!」
「明美!やかましいよ。どうしたの?」
夕見子の言葉を無視して、そのままの勢いで駆け上がってきた。
「たいへん!たいへん!たいへん!たいへん!東京から佐々岡って人がやってきたよ!」
「東京の佐々岡って、なつが空襲の時に助けてもらったって言ってた佐々岡?」
「わかんないよ、でも、東京から来る佐々岡ってその人しかいないよ。何しにきたんだろう?」
佐々岡って人は東京の空襲で、命懸けでなつを救ってくれた人だ。
きっとなつにとっては、家族の様に大切な人に違いない。
その人が、わざわざ十勝までやってるなんて、、、、
まさか、なつを連れ戻しに来たのでは・・・・・
夕見子は、とてつもない心配にかられた。
そう思うと、一気に階段を駆け下り、外に飛びだし、厩舎に向かった。
泰樹じいちゃん!
困った時は泰樹に頼るのが一番だ。
しかし、厩舎には戸村悠吉、菊介親子しかいなかった。
菊介は夕見子が厩舎に入ってきたことに驚いた。
「おや、夕見子ちゃん、どうしたの?」
「じいちゃんは?」
「さっき、お客さんがきて、剛男さんと母屋に行ったよ。」
「えーーーー、そういうのには顔を出さない、タイプだと思ってたのに、、、、、もー!」
「そういうのって、どういうの?」
「さっき、来た人がなつを連れてっちゃうかもしれないの!」
「そんな事、泰樹さんが許すわけないって。なっちゃんだって、牛が大好きだし。」
「でも、さっきの人はなつの命の恩人で家族のような人よ。うちでは、なつは赤の他人で、なつを返してくれって言われたら断れないし。。。。
それに、命の恩人なんだから、なつが嫌でも断れないよ。なつが無理やり連れていかれちゃうよー。」
悠吉の敷き藁を整える作業の手が止まった。
「無理やり連れて行くなんて、そんな事はダメだ!」
3人は見合わせて決意した。
絶対になつを連れていかせない。
力ずくでも、なつを護る!
気合いを入れて母屋に向かった。
母屋に入ると皆が揃って、テレビで見た光景が展開された。
佐々岡信哉も、見た感じそんな乱暴者ではなさそうだ、むしろ温厚で話が通じるタイプに見える。
夕見子の心配は一気に引いた。
その夜、電気を消して寝床に入った時に、横からなつが話しかけてきた。
「ゆみ、、、今日は心配してくれてありがとね。」
「な、何も心配なんかしてないわよ。なつが連れていかれた時に、みんなで見送りをしなくっちゃって心配しただけよ。」
「ふーん、ありがとね♪」
妙になつの声がうれしそうだ。
「明日も牛の世話をするんでしょ。早く寝なさい!!!!」
すー・すー・横からなつの寝息が聞こえる。
「もう寝たの!?また明日ね。」
夕見子も眠くなってきた、視界が虹色に包まれて、俺は夕見子から離脱した。
気づくと、カプセルの中に戻っていた。
女性店員の声が聞こえる、
「お客様、いかがでしたか。」
「夕見子って案外、素直な子なんだね。もっとねじ曲がってるのかと思ってたけど、、、、」
「ほんと、大学に行きたい夢があって、お手本になる人をみると、急にお手伝い始めちゃったり。可愛いですよね。
私もお客さんがダイブしている間に、カプセルをピカピカに磨いておきました。」
俺は、掃除は高いところから順番にやるべきだと、思いながらも、口に出さずに店を出た。
なつぞらダイバー 第5週 なつよ、お兄ちゃんはどこに?