私の幻想はホントにあった
1.魔法はあるの!!!
ここは、日本の東京・新宿。
「澤野ミリカ」という、
父親が日本人、母親がイギリス人のハーフの
中学1年生の少女がいた。
今日は、7月15日(金)。
昼休憩のチャイムが鳴る。
〝キーンコーンカーンコーン〟
「いただきま~す!」
「だから!魔法はあるんだって!!」
ミリカが友達の「園田聖子」に言った。
「はい。分かった分かった」
「もう!信じてないな~!!」
「いや、ミリカ、もう中学生よ。良い加減、
現実とフィクションの違いぐらい解らないの?」
「そういう聖子こそ、
何で〝現実世界に魔法がない〟って説明出来るの?」
「いや、だって、あんたも、小学生の頃から
理科の授業で〝物理の法則〟を教わってるでしょ?」
「そうだけど・・・でも、聖子だって、
その〝物理の法則〟が何であるのか解らないでしょ?」
「う~ん・・・・・・」
「じゃあ、〝物理の法則〟があるのは当たり前じゃないし、
〝魔法〟も、〝絶対ない〟とは言いきれないじゃない!!!」
「・・・・・・そうだけど、でも、何でそんなに魔法を信じたいの?」
「そりゃ、だって、便利だし、何より、凄く夢があるじゃん?!」
「ん~・・・確かに、夢はあるけど、
そこまで〝どうしてもあって欲しい〟とまでは思わないし、
便利かもしれないけど、私達の生活には、機械があるから、
それで充分、不自由はしないかな~?」
「・・・・・・」
2.帰り道の会話
そして、昼休憩が終わり、
5時間目や6時間目も終わった。
ホームルームが始まった。
「え~、夏休みまで、あと約1週間ですが、
皆さん、最後まで気を抜かないで頑張ってください。
夏休みが近いですが、
今日は、特に、これといって、言う事はありません」
〝キーンコーンカーンコーン〟
聖子がミリカに声をかけてきた。
「ねぇ、ミリカ、一緒に帰ろう」
「うん」
帰り道で・・・・・・
「ねぇ、ミリカ、もうすぐ夏休みだね」
「うん。そうだね」
「アレ?何か、楽しみじゃなさそう」
「そう?ミリカは、何かやりたい事あるの?」
「う~ん・・・ないかな~・・・」
「へ~!意外!!超ロマンチストで妄想家なミリカが!!」
「何よそれ!!(笑)」
「あ~、ごめんごめん!!(笑)」
「あ~、でも!」
「ん?」
「やりたい事はないけど、やる事はある!!」
「え?それは何?」
「大阪のおばあちゃんの家に行くの!!」
「へ~!!良いじゃん!!楽しそう!!」
「うん!!」
しばらく歩いたところで、
道が違うミリカと聖子は別れた。
「じゃあね~!バイバ~イ!!」
3.楽しみなおばあちゃん家
その後、ミリカは歩きながら独り言を言っていた。
「おばあちゃん家に行くの、楽しみだな~!!」
やがて、家に着いた。
「ただいま~!」
「お帰り~!」
ミリカの母が言った。
「もうすぐ夏休みだけど、大阪に行くの、楽しみね!!」
「そうだね!!」
「久しぶりに行くけど、おばあちゃん、元気かしら?」
「きっと、元気にしてるよ!!」
「そうね!!」
それから、ミリカは、自分の部屋に入った。
「おばあちゃん、今頃、どうしてんのかな~?
会うの、久しぶりだから、とっても楽しみだな~!!
他の色んな人達に会うのも楽しみだけど!!」
そんな事を考えていた。
やがて、夜になった。
リビングで家族揃って晩ご飯を食べる。
「いただきま~す!!」
ミリカの妹のアミも
「お姉ちゃん、大阪に行くの、凄く楽しみだね!!」と言った。
「うん!!」
ミリカの母も、
「ワクワクするわよね!!大分久しぶりだもんね!!」と言う。
アミは、
「うん!!あ~、おばあちゃん家に着いたら何しよう!!」と言う。
ミリカは、
(おばあちゃん家で何するかは考えてなかった)と思っていた。
(そういえば、おばあちゃん家で何しよっかな~?
〝いつもと違う事が出来る〟っていったら、それは、何だろう?)
4.休日もファンタジー三昧
次の日、7月16日(土)の事。
この日の昼、ミリカは、リビングのテレビで
「Magic Sky World」というファンタジー映画を観ていた。
「やっぱり、カッコ良いし、素敵~!!」
そう、ミリカは、
幼い頃からずっとファンタジー作品が大好きで、
魔法を信じているのも、そのためである。
「お姉ちゃん、またそれ、観てる!!」とアミが言った。
「いや、だって、面白いじゃん!!」
「確かにそうだけど、良くそれだけ何回観ても
飽きないね~!!」
「何言ってんのよ!!この映画は名作よ!!
何回観ても飽きないどころか、
観れば観るほど深いんだから!!」
「は~。お姉ちゃんって、ホントにファンタジー好きね!!」
「だって、夢があるじゃん!!」
「ん~・・・確かに夢はあるけど・・・でも、
現実とフィクションは違うんだから、良い年だし、良い加減、もう、外でよその人達に〝魔法は現実にもある〟なんて
言わないでよね!!妹として、私、恥ずかしいから!!」
「もう!!うるさいな~!!」
ミリカは、それでもまだ、〝魔法〟をずっと信じ続けていた。
夜になり、ミリカは、自分の部屋に入った後、
ファンタジー小説を読んでいた。それは、
「不思議な国と夢見る少女」という作品だった。
「う~ん!!やっぱり、この小説も好き!!」と読みながら
独り言を言っていた。
7月17日(日)も、同じように1日中ファンタジーに浸って過ごした。
5.学校でもファンタジー三昧
7月18日(月)。この日、また学校に行った。ミリカは、
授業と授業の合間の休憩時間、また、
「不思議な国と夢見る少女」を読んでいた。
聖子とは別のクラスメイトの「本田順子」がミリカに話しかけた。
ちょうどその時、聖子は、そこにはいなかった。
「あんた、ホント、毎日、魔法にばっかり浸ってるわね!!
良い加減、もう中学生なんだから、
もう少し違う本読むとか、何か現実味のある趣味持って、
魔法から離れなさいよ!!」
「え~!?そんなの、私の自由じゃん!!それに、
何で魔法が子供っぽいのよ!?」
「だって・・・そんなの、ホントはあるワケない、
人間が勝手に描いてる妄想でしかないし、第一、ダサいじゃん!!」
「あるワケない!?じゃあ、もし、本当にあったらどうするのよ!?
それに、〝ダサい〟って何よ!?」
そう、彼女は、ミリカをいつも馬鹿にする、イヤミな生徒だった。
聖子も、ミリカの言っている〝魔法〟について信じてはいないが、
順子のように馬鹿にはしていなかった。
6.〝粉もん〟って素敵!!!
やがて、また下校の時刻になった。
〝キーンコーンカーンコーン〟
いつも通り、聖子がミリカに声をかける。
「ミリカ、今日も、一緒に帰ろ!!」
「うん!!」
「ねぇ、ミリカ、あんた、この前、
〝夏休みに大阪のおばあちゃん家に行く〟って言ってたわよね?」
「うん。そうだけど?」
「良いわよね~!!私、大阪には、一度も行った事ないのよね!!」
「そうなの?」
「うん。大阪って〝たこ焼き〟が美味しいところよね!!」
「そうだよ!!でも、他にも色々、名物あるよ!!
〝焼きそば〟とか〝お好み焼き〟とか〝粉もん〟だけでも色々!!」
「〝粉もん〟?何それ?」
「名前の通り、〝たこ焼き〟や〝お好み焼き〟含めて、
〝粉〟を使って作る料理の事よ!!」
「へ~!そうなんだ~!!でも、食べる事自体は、
東京でもいつでも出来るけど、いつか本場のも食べてみたいな~!」
「そっか!でも、本場の、凄く美味しいよ!!」
「へ~!そう言われると、ますます食べたくなる!!」
「ぜひ、今度、食べてみて!!」
「うん!!」
「じゃあ、ミリカ、楽しんで来てね!!」
「うん!!じゃあ、バイバイ!!」
「バイバイ!!」
そして、いつも通り、ミリカは、途中で聖子と別れ、
帰っていった。
7.夏休み前の、悲惨な最終登校日
ここで、1日飛ばして、7月20日(水)。
この日、夏休み前の最後の登校日だった。だが、聖子は、
体調不良で欠席だった。
ミリカは、休憩時間、また、
「不思議な国と夢見る少女」を読んでいた。
読んでいると、また、順子が馬鹿にしてきた。
「あんた、またそんな本、読んでるの!?バッカみたい!!」
すると、順子は、ミリカから本を取り上げた。
〝バッ〟
「ちょっと!!何するの!?」
「こんなの、こうしてやるんだから~!!」
順子は、本の表紙にマジックで落書きをした。
〝キュキュキュキュ〟
「アッハッハッハ~!!
これで少しは、子供騙しなモノから離れなさい!!」
「子供騙し!?」
「そうよ!!あんた、こんな、いつまでもガキの空想に
浸ってないで、現実を見なさい!!」
すると、順子は、本を床に叩きつけた。
〝バン!!!〟
「あぁ~っ!!!」
「アッハッハッハッ!!」
「ヒド~い!!!」
そのまま、順子は、教室を出て行った。
「良い年して、いつまでもくだらない夢ばっかり見てるのが
悪いのよ!!」
8.憂鬱で最悪な1日
そうして、時間が流れ、ホームルーム。
「え~、明日から夏休みです。楽しく遊ぶのも良いですが、
しっかり勉強して、宿題もしっかりやってきてください。
あと、クーラーのかかった部屋にこもりきりではいけません。
ちゃんと外に出て、運動もしっかりしましょう。そして、
熱中症にならないよう、水分補給、それから、塩分補給も
忘れないように。難しい事ですが」
夏休み前の最後の登校日が終わった。
〝キーンコーンカーンコーン〟
今日は、聖子が休んでいるため、ミリカは1人で帰った。
「あ~、今日は、せっかく夏休み前の最後の登校日なのに、
聖子がいないなんて~・・・寂しいし、つまらない」
いつもは聖子と一緒に帰るのが当たり前だったため、
1人で帰る今日がとても味気なかった。
やがて、また家に着いた。
「ただいま~」
「お帰り~」と、いつものように母が言った。
アレ?どうしたの?明日から夏休みなのに、
元気なさそうじゃない?」
「うん。色々あってね」
「そう。まぁ、でも、夏休みは、きっと良い事あるわよ!!」
「そうだね」
そうしてまた、ミリカは、自分の部屋に入った。
一方、母は、
(あの娘、何かあったのかしら?)と思っていた。
ミリカは、自分の部屋に入った後、順子に落書きされた愛読書
「魔法の国と夢見る少女」をカバンから取り出した。
「あ~あ~、大事な本なのに、ホント最悪。それに、何よ。
〝魔法が子供騙し〟なんて・・・は~。夏休み、
おばあちゃん家に行くのは楽しみだけど、他には特別やる事ないし、
良い事なんてあるのかな~・・・?」
9.楽しい旅行!!!・・・多分・・・?
3日飛ばして、7月23日(土)。
この日、いよいよ大阪のおばあちゃんの家へ行く日だった。
いつもは忙しい父も、今回の旅行のために2週間の休暇を
取っており、皆、早起きした。
「よ~し!じゃあ、皆、行きますか~!!」
「お~!!」
そうして、新幹線に乗った。
新幹線の中で、皆で駅弁を食べる。
「美味し~い!!」
しばらく時間が経ち、ミリカは、アイスクリームが食べたくなった。
「ねぇ、この新幹線の中の車内販売で、アイスクリーム、
売ってるわよね?私、前の車両に行って買ってくる!!」
「ちょ、ちょっと!!待ちなさい!!待ってれば、
こっちにも回ってくるわよ!!」と母が言う。
父も、同じように、
「そうだぞ!!大人しく待ってなさい!!」と言った。
「やだ~!!今すぐ食べたい!!」
「仕方ない子ね~。じゃあ、買ってきなさい」
「やった~!!」
父は、
「良いのかよ・・・」と、小声でつぶやいた。
「じゃあ、私、前の方の車両に行ってくる!!」
「気をつけてね~!!」
「は~い!!」
ミリカは、いくつか前の車両へ移動した。
自動ドアがいくつも開く。
〝ウイ~ン〟〝ウイ~ン〟
「アイス!アイス!」
すると・・・・・・
「え?何コレ?」
10.いきなりこんなのアリ!!??
そこは、新幹線とは全く違う、西洋風の、ファンタジー作品にでも
出てきそうな列車だった。
目の前には、銃を持った男達と、その男達にロープで縛りつけられている人質を見た。
「え・・・?え~・・・!!??」
「助けて~~~!!!」
銃を持った男達は、その列車の運転手や乗客達に
「フッフッ、コイツらを返して欲しけりゃ、大人しく3000万フェリス持って来い」と言っている。
(フェ・・・フェリス?もしかして、身代金かな?とにかく、
何か、この人達、凄く怖い!!)
突然、目にする、この、今まで目にした事がないほど衝撃的で
残酷な様子を見て、ミリカは、とても怖がった。
「怖い・・・助けて・・・!!!」
「おい!!さっさと金、持ってこい!!!」
(どうすんの!?どうすんの!?コレ!!!」
すると・・・・・・
〝ガシャ~ン!!!〟
11.今度は何!?カッコ良過ぎるんだけど!!!
窓ガラスの割れる音が聞こえた。
「こんなところで暴れちゃダメだ。大人しくしな」
「え!?」
何やら、とても気の強い美少年が窓ガラスを割って列車に入って
きたようだ。
少年は、ガムを噛んで、風船のように膨らませていた。
まるで、全く緊張などしていないよう。
「あ?お前、俺達にケンカを売る事がどういう事か分かってんのか?」
「いや、ケンカを売るも何も、そもそも、こんなところで暴れてるあんたらが悪い」
「何だと~!!おい!!コイツをやっちまえ~~~!!!」
「オラ~~~!!!」
「しゃあねぇな~。無駄なケンカはしたくないんだけどな~」
その時、少年が膨らませたガムが弾けた。
〝バン〟
すると、なぜかガムが消えた。
テロリストの男達は銃を発砲した。
〝バンバンバン〟
少年は、銃弾に手をかざした。
〝シュ~ン〟
すると、全ての銃弾が一瞬止まり、ひっくり返ってテロリスト達の
方向に飛んだ。
しかし、その銃弾は、テロリスト達にはスレスレのところで当たらず、全て壁に当たり、いくつも穴を開けた。
もちろん、少年がわざと外したのだ。
〝ドンドンドン〟
「ヒィ~ッ!!!」
「だから言ったんだよ。あんた達が暴れるから、こうなっちゃうんだよ」
「な、何だコイツ!!とりあえず、逃げるぞ!!」
「悪あがきするな」
〝ボコ〟〝ボコ〟〝ボコ〟
少年は、持っていた剣の鞘の部分でテロリスト達の急所を突いて気絶させた。
〝ドサッ〟
ミリカは、
(何この人!!カッコ良い~!!!)と思った。
しばらくして、テロリスト達は、連行された。
12.こんな事ってあるの!?夢みたい!!!
テロリスト達を止めた少年は、ミリカに声をかけた。
「君、ケガはなかった?」
「なかったです」
「良かった。でも、怖かっただろ?」
「はい・・・まぁ・・・」
「まぁ、そうだよな。あんな光景見ちゃったら、怖いに決まってる」
「あの、あなた、一体何者なの?」
「俺?ただのガードマンだよ」
「ガードマン?いや、でも、今、手を触れずに銃弾を止めたり、
半回転させて飛ばしたりしたでしょ!?」
「あ~、アレは、魔法だよ。〝handling (ハンドリング)〟っていうね」
「え!?魔法使いなの!?」
「そうだけど・・・それがどうしたの?」
「アレ、魔法だったんだ!!」
「何をそんなに驚いてるの! (笑)魔法なんて、そんな珍しいものじゃないでしょ」
ミリカは、そこで、その少年が魔法使いである事を知ると同時に、
ここは現実世界ではない事を認識した。
「私の幻想は、ホントにあったんだ!!」と小声で呟いた。
「ん?」
「いや~!何でもないです!!何でもないです!!アハハ・・・」
つい、口から出てしまった言葉を、テレながら慌ててごまかした。
「あ、そうだ、君、名前、なんて言うの?」
「私?ミリカ」
「そうか。俺は、ゼドル。よろしくな!!」
ゼドルは、ミリカの手をギュッと握り、強く握手した。
「え!?やだ!!私、こんなカッコ良くて強い人に握手されちゃってる!!!」
ミリカは、思いっきり顔を赤くした。
「ん?どうしたの?顔、凄く赤いよ。熱でもあるの?」
「いえ!!熱なんかありません!!大丈夫です!!元気です!!ア・・・アハハハハハ・・・」
「あ、そうだ、ちょっと、ついてきてもらって良い?」
13.仲間達も魅力的!!!
「え?あ、はい」
ミリカは、ゼドルと共に歩いた。
ゼドルについていくと、
「MaGistic Security Guard」と書かれた建物に着いた。
「ここだよ。俺の面白い仲間達を紹介するよ!!」
そこには、強そうな人達がいた。
「おい、お前ら、今日は、お客さんを連れてきたぜ!!」
「何だ?」とゼドルの仲間が言った。
「は、はじめまして。ミリカです」
「お~。可愛いじゃん!!よろしくな!!」
「よ、よろしくお願いします」
するとゼドルが
「よ~し!じゃあ、皆、自己紹介しよう!!」と言った。
「俺は、ギーゼフ。23歳。よろしく」
「僕は、ドロン。13歳。よろしくね」
「俺は、ザレン。30歳。よろしくな」
「僕は、フェル。15歳。よろしく」
「私は、ファンジェス。26歳。よろしく」
「私は、フェレナ。13歳。よろしく」
「私は、ファティネ。19歳。よろしく」
自己紹介され、ミリカは、
「へ~!色んな年齢の人がいるんだ!!」と言った。
ザレンがゼドルに
「おい、リーダー。どうしたんだよ?突然、こんな娘を連れてきて」と言った。
「あ~、さっき、たまたま会ったんだよ。面白そうな娘だったから」
すると、ミリカは、
(え~!?年上の人もいて、30歳の人さえもいるのに、この人、
リーダーなの!?)と思った。
ザレンが
「よし、今日は、お客さんが来た事だし、いっちょ、宴でもやるか!!」と言った。
すると、皆、
「良いね~!!それ、賛成!!」と言う。
「あ、あの、私、まだ13歳だから、お酒は飲めないんですけど・・・」
「分かってるよ。そんぐらい。小規模なパーティをするだけだ」
「は・・・はぁ・・・」
14.現実世界と異世界
そして、宴が始まった。ミリカとゼドルが話をした。
「へ~。君は、ここの住人じゃないのか」
「はい。この前から学校の夏休みで、それで、新幹線に乗って家族でおばあちゃんの家に行こうとしてたんです。で、乗ってる最中、1番前の車両に行こうとしたら、なぜか、全然違うあの列車に移っちゃったんです」
「そうか。その〝新幹線〟ってのは、良く分かんないけど、突然、
家族とはぐれて、急にあんな怖い光景を見て、大変だったね」
「はい。〝新幹線〟っていうのは、〝電車〟の種類の1つです」
「へ~。〝電車〟か~」
「はい」
「なるほど。君の話は、興味深いね。俺も、君のいた世界がどんな世界なのか見てみたいよ!!」
「そうですか」
「うん!!」
「ところで、この国は、なんていう名前なんですか?」
「あ~、ここか?ここは、〝ジャフロリア〟だよ」
「そうなんですか!!何かカッコ良い名前~!!」
「そうか?(笑)あ・・・そうそう・・・」
「ん?」
「俺と喋る時は、敬語じゃなくて良いから」
「え?本当に!?でも、何か、それって悪いような・・・4つも年上だし、ここのリーダーみたいだし・・・」
「良いんだよ!!気にすんなって!!俺、君の事が何か気に入ったから、距離、縮めたいんだよ!!」
「そうですか!!じゃあ、お言葉に甘えて!!」
「うん!!ってか、まだ堅いよ!!それと、これからは、呼び捨てで良いから!!」
「うん!分かった!ゼドル!!」
「おう!改めてよろしくな!ミリカ!!」
15.〝MaGistic〟に込められた意味
「ここにいる人達、皆、素敵だね!!」
「だろ!?俺の自慢の仲間達なんだ!!」
「そっか!!あ・・・そういえば・・・」
「ん?」
「ここでは、皆、何をしてるの?」
「あ~、ここは、ボディーガード屋だよ」
「ボディーガード屋?」
「そう、依頼人からお金をもらって守る仕事だよ」
「へ~!!そうなんだ~!!カッコ良い~!!!あ~、あと、何で
〝MaGistic Security Guard〟って名前なの?」
「あ~、〝MaGistic〟ってのは、〝魔法〟を意味する〝Magic〟と
〝威厳〟あるいは〝堂々とした〟って意味のある〝Majestic〟を
掛け合わせた造語だよ。俺達は、魔法で戦って守るし、威厳がないといけないから。〝G〟が大文字なのは、インパクトが欲しかったからってだけなんだけど」
「へ~!!ますますカッコ良い!!!」
「そうかな?そう言われるとテレるよ」
「うん!!凄くカッコ良いよ!!!」
16.この国を案内するよ
「あ~、そうだ、まだこの世界の事を良く知らないなら、俺が色んなところへ連れていってあげるよ!!」
「ホント!?やった~!!わ~い!!ワクワクするな~!!」
「それと、今日から、元の世界に帰るまでの間、この店の俺の部屋で一緒に生活しなよ!!」
「え!?良いの!?ありがとう!!!」
ミリカは、その日の翌日からゼドルと共に色んなところへ行く事になった。
ワクワクしているゼドルは、風のように走る。
「お~い!ミリカ~!こっちこっち~!!」
「待ってよ~!!」
「ここだ」
「わ~!すご~い!!」
そこは、たくさんの動物達がいる草原だった。
「キレイ~!!それに、たくさんの動物達がいる!!」
「だろ?!」
「うん!!ア、アレ?」
「ん?どうした?」
17.ミリカは凄い娘!?
〝チュンチュン〟
「何か、スズメ達が話してる」
「え!?ホントか!?」
耳を澄ませて聞いてみた。
「ねぇ、ここにまた人間が来たよ。何でここは、こんなに人が来るのかな?」
「さぁ?どうでも良いよ。知ったところで何にもならないし」
「ホントだ!ホントに喋ってる!! 」
「本当か!?なんて言ってるんだ!?」
「何か、〝また人間が来たよ。ここは、何でこんなに人間が来るのかな?〟〝さぁ?どうでも良いよ〟だって」
この時、ミリカは、動物の言葉が解る事に、自分でも驚いていた。
「そっか~!!」
「でも、ゼドル、ここって人が良く来るの?」
「うん。キレイだし、可愛い動物がいっぱいいて、キレイな花や
植物もいっぱいあるからね。写真家とか、動物好きとか、植物好きとか、色んな人が来るんだ」
「そっか~!!確かに、キレイだし、可愛い動物、いっぱいいるし、空気もとっても美味しいしね!!」
「うん!!でも、それより、動物の言葉が解る人なんて、本当にいたんだ!!」
「え?この世界には、当たり前のように魔法があるのに、他に、
〝動物の言葉が解る〟って能力を持った人、他にはいないの?」
「うん。何か、本には書いてあったんだけど、本当かどうかまでは
解らなかったんだ。まぁ、言い伝えだね」
「へ~!!じゃあ、私って、特別なんだ!!」
「うん!!でも、君、動物の言葉を聞いたのは、初めて?」
「うん!!でも、何か、何となく、昔から、動物の様子を見ると、
その時その時の細かい仕草や様子で、〝どんな気持ちなのか〟とか〝何を考えているのか〟とかは、何となく解るような気はしてたんだけど、それって、普通とはちょっと違うのかな?」
「う~ん・・・良く解らないけど、とにかく、君は凄い人だ!!」
「そうかな!?ありがとう!!」
「うん!!」
18.どこの世界でも、やっぱり花火は綺麗!!!
それから、ミリカとゼドルは、色んなところへ一緒に行った。
ある時は、ガードマンの仲間達も一緒に祭りに行ったりもした。
〝ヒュ~ン〟〝バン〟
花火が打ちあがる。
ゼドル以外のガードマン達は皆、食べ物を買ったり、遊んだりなどしている。
「わ~!!キレ~イ!!」
「だろ!?ミリカも、花火、好きかい?」
「うん!!キレイだから!!私の世界でも、毎年、夏祭りで良くやってて、私、いつも、浴衣を着て夏祭りに行ったりしてたの!!」
「〝浴衣〟?」
「あ~・・・ここはヨーロッパみたいな国だから、そういうのはないか・・・」
「ヨーロッパ?」
「うん!!〝ヨーロッパ〟っていうのは、私がいた世界にあって、〝イギリス〟とか〝フランス〟とか〝イタリア〟とか色んな国があるんだけど、〝ヨーロッパ〟は、この国に良く似てるの!!で、私は、〝アジア〟の〝日本〟に住んでたの。でも、私は、お父さんが日本人で、お母さんがイギリス人のハーフなの」
「へ~!!そっちの世界にも、たくさんの国があるんだね!!」
「うん!!」
〝ヒュ~ン〟〝バン〟
周りには、犬、猫、ハトなどの動物達がいる。
「アレ?皆、何か言ってる!!」
「本当か!!また動物達は喋ってるのか!!」
「うん。え~っとね」
その日も、ミリカは、動物の言葉を聞いて、なんと言っているのかをゼドルに教えていた。
しばらくして、花火も祭りも終わった。
19.不穏な空気が・・・・・・
それからも、ゼドルと共に色んなところへ行く度に、ミリカは、
色んな動物の言葉を聞き取った。たくさん人が通るところでも
動物達がなんと言っているかをゼドルに教えていたため、
周りの色んな人達が影からそれを見る事で、
「ミリカが動物の言葉が解る」という事が噂になり、時には、
「この動物、なんて言ってるんですか?」などという質問をされる事もあった。
だが、ミリカの能力の事が色んなところで話題になると、影で悪巧みをする人間達が「アイツは色んな事に使えて金儲けができるんじゃないか?」などと言っていた。
その日の夜、ミリカは、
(そういえば、今頃、現実の皆はどうしてるんだろう?)7と考えながら寝た。
20.え!?また!?ガム噛んでる場合!?
数週間後、ミリカは、いつものように「MaGistic Security Guard」のメンバー達といた。だが、そこへ、銃を持った男達が何十人もやって来た。
〝バン〟
「何だ?」
「おい!ここに、動物の言葉が解る娘がいるだろ?」
「何でそれを!?それに、何でここが分かった?」
「その娘の事は有名だよ。何でここが分かったかなんて簡単だ。
その娘は、大体、ここのリーダーであるお前と一緒にいるんだからな」
「くっ!!この娘に何の用がある!?」
「ソイツのその能力を使えば、良い金儲けになると思ってな~!!だから、さぁ、大人しくソイツを渡せ。そうすりゃ、何もしねぇでやる」
「この娘は、道具じゃない!!」
〝バン〟
「クソッ!!仕方ない!!皆、戦うぞ!!」
「了解!!」
ギーゼフ以外のメンバー達は、ガムを噛んだ。
「えっ!!こんな状況でガム!?」
「あ~、そうしないと、戦えないんだよ」
「えっ!?どういう事!?」
「詳しい話は後だ!!」
皆、ガムを膨らまし、そして、弾け、消えた。
「あっ!!コレ、あの時も同じだった!!」
その時、ミリカは、ゼドルと出会った時の事を思い出していた。
「おい!!大人しくしてるヒマなんかねぇぞ!!俺達は、のんびり待ってやるほど気が長くねぇんだ!!」
〝バンバン〟
「ンなこたぁ、言われなくても分かってるよ!!」
ゼドルは、銃弾を止め、ひっくり返らせて飛ばした。
〝バババババン〟
〝グシュアッ〟
銃弾は、男達の手や腹などに当たり、男達はケガをした。
「うわ~~~っ!!!」
ミリカは、
(コレは、あの時と同じ魔法だ!!)と思った。
「仕方ない。今は、手加減してる余裕なんてない。お前ら、あとは
何とかしといてくれ!!俺は、ミリカを連れて逃げる!!」
「了解!!」
21.何とか助かった!!!
ゼドルは、ミリカの手を引っ張って走った。
大変な状況だったが、ミリカは、ゼドルにまた手を握られ、守られながら、ドキドキしていた。
敵は、思ったより大勢いて、走った先にも何人も待ち構えていた。
「クソ~!!コイツら、一体何なんだよ~!!」
ゼドルは、一旦ミリカから手を離し、迫り来る敵を剣でひたすら斬りまくった。
〝ザンッ〟〝シュッ〟〝ズシャッ〟
(わ~!やっぱり、カッコ良い~!!)と思った。再びゼドルに引っ張られて走り、少し前、ゼドルと一緒に行った図書館に入った。
〝バタン〟
22.戦闘時のガムの秘密に感動!!!
「ハァハァ・・・・・・ここまでは、さすがに追って来ないだろ」
「え?何で?」
「この図書館には、色々と大切に管理されてる、とても貴重な本が多いからね。中も外も、警備が厳重なんだよ」
「あ!確かに、そう言われてみれば、この前もさっきも、ここでいっぱい警備員さんを見た!!」
「だろ?だから、ここなら大丈夫さ」
「そっか!!」
「でもさ、ゼドルの仲間の人達、大丈夫かな?」
「大丈夫だよ!!俺の仲間達は、皆、強い!!超優秀な仲間達さ!!あんなヤツらにやられはしない!!」
「そっか!!あの人達も、カッコ良かったな~!!」
「ん?」
ミリカは顔を赤くした。
「あ!あ~!!実は、前から、ゼドルが戦ってるところを見ると、
とっても勇気があるし、カッコ良いな!!って思ってたの・・・・・・でも、さっき、ゼドルの仲間のあの人達が戦ってるところを見て、
あの人達も、凄くカッコ良いって思った!!」
すると、ゼドルも顔を赤くした。
「え!?ホントに!?ありがとう・・・・・・」
ミリカは、その時、そんなゼドルを見て、普段はカッコ良いゼドルも、テレると可愛い一面があるんだと思った。
「でも、俺の仲間達も、頼もしいだろ!?」
「うん!!あ・・・!そういえば、さっき、大変な状況だったのに、ガムを噛んでたけど、何で?」
「あ・・・あ~。アレは、魔法使いが魔法を使う時に必要なのさ。
魔力が入ったガム。アレを噛む事で、身体に魔力を取り入れる事が
出来るんだよ。1枚噛めば、1時間魔法が使える」
「そうなんだ!!あ!それと、何で、あのガムは、突然消えたの!?」
「あ~、あのガムは風船ガムなんだけど、ちょっと特殊でね。普通、ガムは、噛んだ後、袋に包んで捨てるモンだけど、魔法を使って戦う時、そばにゴミ箱なんてない事が多いし、捨ててるヒマもないから、捨てなくて済むように、膨らませて弾けると、その弾けた瞬間に消えるように作られてるのさ」
「へ~!そうなんだ!!凄いね!!便利!!」
「だろ~!?まぁ、ガムを噛んだ後、ゴミ箱がそばにないからといって、ポイ捨てするワケにはいかないし、かといって、ポケットに入れるのも汚いからね」
「なるほど!凄い!!ガムで魔法が使えて、しかも、膨らませて弾けた瞬間消えるなんてオシャレ!!私が好きなどのファンタジーにも、そんなの全然なかった!!」
「ファンタジー・・・・・・?何それ?」
「あ~、私達の世界の文化。〝ファンタジー〟っていうのは、
〝夢のような物語〟の事。私達の世界では、魔法は使えないんだけど、私達の世界にある〝ファンタジー〟ってジャンルの物語には、魔法を使える人が出てくるの。ファンタジーの世界でも、魔法にも
欠点や使うための条件や制限があって、作品によって、皆、魔法を使うための条件は違うんだけど、〝ガムを噛んで魔法を使う〟なんて、見た事ないし、弾けて消えた時、凄くビックリした!!」
「あ~、そうなのか」
「うん!!まぁ、私が今まで見てきたのは、全部作り話だったんだけどね」
「そっか!そうやって、君はずっと、魔法に憧れてきたから、
初めて会った時も、魔法を見て嬉しそうにあんな事を言ってたのか!!」
「あ・・・あ~・・・・・・」
その時、ミリカは、異世界へやって来て、初めてゼドルに会った時の、自分の「私の幻想はホントにあったんだ!!」という発言の事
を思い出した。
「あの言葉、聞こえちゃってたのか・・・恥ずかしい・・・・・・」
23.異世界の過酷さ
「なぁ、ミリカ、今まで、その〝作り話〟の中でしか見なかった魔法を、実際に目の前で見てどうだった?」
「え!?そりゃ~、凄かったし、迫力あったし、感動したよ!!テロリストに人が襲われたり、私も、色んな人に狙われたり、大変だったけど」
「そうか・・・・・・でも、魔法がある事は、良い事ばっかりじゃないんだけどね」
「え!?そうなの!?何で!?」
「そのうち分かるさ」
「そっか・・・・・・」
「それと、ミリカ、今日、ミリカを自分の都合の良いように使おうと考えてるヤツらに狙われて大変だったけど、おそらく、今日、襲いかかって来たヤツらは、まだ、懲りないだろうし、今日のヤツら以外にも、まだまだ襲ってくるヤツがいるかもしれないよ」
「え!?私、まだ襲われるの!?それに、他にもまだまだ襲ってくる人達がいるかもしれないって!?」
「うん。分からないけど。自分の利益のために他人を襲うような悪いヤツらは、そう簡単には懲りないし、ミリカが動物の言葉を理解する力を持ってるのは、もう、かなり有名みたいだからね」
「そんな・・・・・・?」
ミリカは、泣いた。
24.俺が、いや、俺達がついてる!!!
「大丈夫だよ。俺が、いや、俺達が守ってやる」
「え!?〝俺達〟って?」
「な~んだ!!もう忘れちまったのか!?俺の〝MaGistic Security Guard〟の仲間だよ!!」
「え!?でも、私、お金、ちょっとしか持ってないんだよ。それに、今日は、突然、私が皆の目の前で襲われたから、助けてくれたけど、
これから毎日守ってもらって良いの?」
「大丈夫だよ!!何とかするから!!俺に任せろ!!」
「ありがとう!!」
「礼なんて良いさ!!俺も、普段は商売でやってるけど、目の前のピンチな人がお金を持ってなくても、ほっとくワケにはいかないから!!」
「なんて頼もしくて優しいの・・・・・・!!!」
その時、ミリカは確信した。ゼドルは、美男子である事や強い事である以上に、何より、この、優しさや懐の広さがカッコ良いと。そして、ゼドルは、とても魅力的な少年だという事を、改めて実感した。
「ごめん、ミリカ、今、うかつに外に出ると危ないから、今日は、ここでイスに座って寝よう。こんなところで寝る事になって悪い」
「ううん。良いよ。今、夏だから、毛布がなくても寒くないし」
「そっか。本当にごめんね。じゃあ、おやすみ」
「うん。おやすみなさい」
そうして、2人は、図書館でイスに座って寝た。
翌朝・・・・・・
25.報酬が1000円しか払えない・・・?
「おはよう。ミリカ」
「おはよう。ゼドル」
「もう、さすがに、昨日のヤツらは一度帰って、今、外は一旦、安全になってるだろう。じゃあ、これから、また皆に会いに行こうか」
「うん!!」
2人は、「MaGistic Security Guard」に戻った。
戻ってみると、ゼドルが言っていた通り、皆は無事だった。
「皆!おはよう!昨日は大変だったな!!すまなかった!!」と
ゼドルが言う。
すると、ギーゼフが
「いや~、ホントだよ!!いきなりあんなに刺客が来て、ビビったぜ!!でも、昨日、俺達が戦ったヤツらは通報して、逮捕されたよ」
と言った。
「そっか。それは良かった。でも、急にあんなにたくさんのヤツらと戦わせてすまなかった」
「まぁ、でも、お互い、無事で良かった」
「そうだな」
ギーゼフがミリカを見て
「ミリカも、無事だったんだな。良かった」と言った。
「どうも・・・あ・・・ありがとうございます。皆さんも、ご無事で良かったです」とミリカが答える。
「あ~、その、ミリカの事で頼みたい事があるんだけど」
「ん?そりゃ何だ?」
「この娘はおそらく、これからもしばらく、たくさんのヤツらから追われると思うんだ。だから、その間、この娘を守ってやってくれないか?」
「え!?」
「いや、無理なお願いなのは、分かってる。でも、目の前の危険に晒されてる人を見殺しにするワケにもいかないだろ!!」
「って、言われてもな~。昨日は、そりゃ、俺達の目の前で襲われてたから、〝なりゆきで仕方なく〟って感じだったけど、これからも守り続けて、しかも、もっとたくさんのヤツらと戦うとなれば、
俺達も、かなりの危険を冒す事になるし。それに、ミリカは、俺達を雇って守ってもらうほど、金があるのか?」
すると、ゼドルは、ミリカに
「ちょっと、お金出してみろ」と言った。
「うん」
ミリカは、1000円しか持っていなかった。
26.良し!!やっぱ、やってやるか!!!
「おい。〝1000円〟って・・・・・・〝フェリス〟じゃないって事は、この国の金じゃねぇだろ。まぁ、それは、当然か。一体、この国だと、いくらぐらいの価値なんだ?でも、少なくとも、言うほど大金じゃねぇだろ」
すると、ゼドルは、
「いや、そうでもないよ。俺も、良く知らないけど、おそらく、
お前の言う通り、このお札自体は、ミリカの世界でも、大金じゃなかったんだと思う。でも、こんな金、見た事ないだろ?それに、
この世界の金と違って、何か、真ん中に、角度を変えると見える
不思議な絵が描いてあるから、良く出来たお札だよ。って事は、
売れば、物珍しがられもするし、相当な大金になるだろ。それに、
成功すれば、このボディーガード屋は、もっと評判が良くなるだろ?!」と言う。
「確かに!!じゃあ、やってやるか!!!」
「お~~~!!!」
「ありがとう!!!皆!!!」
ミリカも、「ありがとうございます!!!」と言う。
27.ボディーガード屋の悲惨な過去
そして、また、ミリカは、ゼドルの部屋に入り、2人きりになった。
「ゼドル、本当にありがとう!!!」
「いえいえ」
「でも、私のお金を使ってあんな風に説得するなんて、頭が良いね!!!」
「そうかな?」
「うん!!!あ、そういえば、さっき、私を守れば、〝このボディーガード屋が評判が良くなる〟って言ってたけど、このお店は、評判が良くないの?」
「あ~・・・・・・まぁね・・・・・・」
「え~~~!?本当に!?皆、強いのに!?」
「うん。昔、ある有名な、とても優秀な医者の護衛を頼まれて、失敗して、死なせてしまった事があったんだ。その時、たくさんの人に怒られて、〝何で守れなかったんだ?〟って責められたし、そのせいで、治せる医者が少ない病気やケガを抱えた人達も、たくさん死んだり、後遺症が残ってしまったんだ。それで、信頼を失っちゃってね」
「そうなんだ。大変だったんだね」
「うん。でも、もし、今、たくさんのヤツらに狙われてるミリカを守り通す事が出来たら、きっと、また、信頼を取り戻せるだろう」
「そうだね!!出来たら良いね!!」
「うん!!」
「じゃあ、最後まで私を守りきって!!!ゼドル、本当にありがとうね!!!」
「ううん。これが俺の仕事だから、当然の事さ!!!」
「ゼドルって、ホントに優しいね!!!」
「いやいや!!!ミリカの方がよっぽど良い娘だよ!!!」
「ありがとう!!!」
「でもさ、ゼドルもゼドルの仲間のあの人達も、皆、凄く強いのに、守れなかった人がいたんだね」
「うん。まぁ、色々あったんだよ」
「そっか」
28.とても強い仲間達
数日後・・・・・・
ミリカがギーゼフの靴を見て
「アレ?その靴、鉄の板が貼られてる!!」と言った。
「うん。そうだよ。コレは、戦うために必要なんだ」とギーゼフが答える。
「でも、その靴を何に使うの?」と言う。
「まぁ、見てりゃ分かるさ」
すると、また、ミリカを狙うヤツらが襲いかかってきた。今度は、前よりも、人数がもっと多く、店の周りも、たくさんの敵が囲んでいて、今回は、逃げられそうにない。
「来たか!良し!皆、分かってるな?!」と、ゼドルが言う。
「あぁ」
また、ギーゼフ以外のメンバーがガムを噛む。
「さぁ、今度こそ、大人しくその娘を渡してもらうぞ」
「ヘッ!させるかよ!!」
敵は、また、銃を撃ってきた。
〝ババババババババン〟
「ヘッ!同じ手を使ったってムダだぜ!!」
ゼドルは、また、〝handlingハンドリング〟で銃弾をひっくり返し、敵に向けて飛ばした。
「うわあぁぁぁぁぁ!!!」
敵は、雷の魔法〝thunder voltサンダーボルト〟を使った。
〝バチバチ〟
ゼドルは、同じ魔法で相殺した。
〝シャ~ッ〟
「く~っ!!!」
そうやって、激しく火花を散らして戦った。
銃を持っている敵は、ヤケクソになって銃を撃った。しかし、
撃ち過ぎて、もう弾が残り少なかった。
そこで、ギーゼフが「俺がいく」と言った。
29.鉄の靴で反撃!!!
ギーゼフは、ジャンプした。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
〝ババババババババン〟
「うりゃ!!!」
〝カァン〟
ギーゼフは、鉄の板が貼られた靴で銃弾を蹴って跳ね返した。
「うっ!!!」
ミリカはとても驚いた。
「スゴ~イ!!!あっ!!あの鉄の板は、銃弾を跳ね返すためだったのか!!へ~!!凄い!!!」
「今のは、わざわざお前らが魔法を使うまでもなかったからな。それに、俺も、少しは〝やれる〟ってところを見せてやらねぇと」
危機的状況だが、ミリカは、「カッコ良い~!!!」と目を輝かせて興奮していた。
「うおぉぉぉぉぉぉ~!!!」
マシンガンを持った男がヤケクソになって銃をぶっ放した。
ゼドルが「伏せろ~!!!」と言い、皆、テーブルの下に隠れた。
〝ダダダダダダダダダダダダダダダダ〟
「クッソ~!!こんなたくさんの弾、〝hundlingハンドリング〟でも、全部は操れない!!どうしよう・・・・・・」
少し考えて、閃いた。
「そうだ!!!」
ゼドルは、ポケットからナイフを取り出し、マシンガンを持った男の手にナイフを投げつけた。
〝シャッ〟〝グサッ〟
「ぐあっ!!!」
敵は、マシンガンを落とした。
ゼドルが「ナイス!!チャンスだ!!!」と言う。
ギーゼフがマシンガンを拾い、敵のヤツらを脅す。
「どうだ!!まだやるか!?」
「ヒィィィィィ!!!」
ギーゼフは、マシンガンで、マシンガンを落とした敵の頭部を軽く殴り、気絶させた。
「うっ!!!」
〝ドサッ〟
「どうだ?まだやるか?」
「くっ!!!」
30.俺達をなめんなよ
ミリカは、「つ・・・つよ~い・・・・・・」と言った。
「フッ。もう勝ったつもりか?忘れたのか?今、この建物の周りにも、俺達の仲間がいる。逃げたりは出来ないし、かといって、こんなにたくさんの人数をたった8人で倒せるか?」
ゼドルは「何言ってんだ。俺達をなめんなよ」と言う。
「くっ!!コイツら!!!」
敵のヤツらは、逃げようとした。
「逃げるぞ~!!」
ゼドルは、「逃がすな~!!」と言った。
ゼドルが風の魔法〝tornadoトルネード〟を使い、
ドロンが炎の魔法〝burningバーニング〟を使い、
フェルが氷の魔法〝icicleアイシクル〟を使い、敵を蹴散らした。
ゼドルが「よし!皆、外に出るぞ!!」と言う。
〝ダッダッダッダッダッダッダッダッ〟
31.まだ敵がいたのか!!!
ゼドルがたくさんの敵を斬ったり、ギーゼフが敵を殴ったり蹴ったり、その他のメンバー達も、剣や魔法で敵を倒しながら突き進んでいく。
そして、ゼドル達は、汽車に乗った。
「フ~ッ!!なかなかしぶといヤツらだな~!!」
「そうだな。どれだけ痛めつけても追いかけてくる」
「で、どうする?」
「う~ん。とりあえず、安全なところまで行こう」
と、話していると、座席の裏から、また、ミリカを襲う男が現れた。
「安全なところへ行く?そんな事はさせねぇよ。その前に、お前達は皆、ここで俺が殺してやるよ」
32.悪魔のような犯罪者
ゼドルが「くっ!!まだここにも敵がいたのか!!」と言う。
ドロンが「いや、でも、大丈夫だよ。1人しかいないし」と言う。
「さぁ、それはどうかな~?」
「くっ!!」
ゼドルは、「いや、相手の風格で何となく分かる。コイツはかなり強そうだ。さっきと違って1人しかいないけど、下手すると、さっきのヤツらより厄介かもしれない」と言う。
「え!?そんなに!?」
「その通り。俺は、この国でとても怖れられている存在。強盗、殺人、色んな犯罪をしてきたが、捕まった事は1度もない。国が手を焼いている指名手配犯さ」
「そうだ。コイツは、有名だ。確か、冷酷なる咎人〝ジャイル〟」
「あ~、そういえば、コイツの指名手配書、見た事ある!!」
「何で俺達がこの汽車に乗ると分かった!?」
「前からお前達がその娘をかくまいながら逃げ回ってるのを知ってたのさ。あれだけ大量の人数から自分の足で逃げ回るのは限界があるだろ。だから、汽車にでも乗ると思ったんだよ。まぁ、俺のカンだ。見事に当たっちまったけどな」
「くっ!!お前の狙いも、やっぱりミリカなのか!?」
「そうだよ」
33.コイツの弱点は、どこだ!?
「お前は、何のためにミリカを狙う!?」
「俺は、その娘にも、その娘の能力とやらにも興味がない。ただ、
ソイツを捕まえれば、金がもらえるって聞いたんでな」
「くっ!!噂通りの金に汚いヤツだ!!!」
「さぁ来い。かつて、あらゆる犯罪者から怖れられたお前らの実力を見せてみろ。まぁ、どうせ、俺が全員殺すけどな」
「くっ!!」
ゼドルが雷の魔法〝thunder voltサンダーボルト〟を使う。
しかし、ジャイルは、それをいとも簡単にかわす。
〝シュッ〟
「オラッ!!!」
次は、風の魔法〝tornadoトルネード〟を使った。
しかし、その風は、剣で切られてしまった。
〝シャッ〟
ドロンが炎の魔法〝burningバーニング〟を使い、
フェルが氷の魔法〝icicleアイシクル〟を使った。
しかし、どちらの魔法もかわされてしまった。
「くっ!!なんてヤツだ!!どの魔法も、全部簡単にかわしちまう!!!」
「そんなモンか?このレベルだと、魔法を使うまでもないぞ」
「あ!そういえば、コイツ、まだ魔力吸収のガムを噛んでない!!」
「オラッ!!!」
ジャイルは、ゼドルを斬りつけた。
〝ジャッ〟
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ミリカが「ゼドル!!!」と叫ぶ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ザレンとファンジェスとファティネがジャイルに斬りかかる。
しかし、ジャイルは、たった一振りでザレンとファンジェスとファティネを吹っ飛ばした。
〝カァン〟
「わあぁぁぁぁぁぁぁ」
「くっ!!コイツは強い!!!」
ミリカが「ホント強い!!こんなの、どうやって倒すの!?」と言った。
ゼドルは「大丈夫だ!!俺達を信じろ!!」と言う。
ゼドルは、「ヤバい・・・もう1時間経つ・・・そろそろ、もう1枚ガムを噛まないと・・・」と言った。
「皆、そろそろ効き目が切れる!!ガムを噛め!!」
「うん」と、仲間達が答える。
皆、ガムを噛んだ。
ゼドルと仲間達は、再びジャイルに立ち向かった。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ムダだ」
〝カァン〟
「うわっ!!!」
「ダメだ!!ビクともしない!!クソッ!!コイツは、一体何なんだ!!この強さ、まるでバケモノみたいじゃないか!!」
〝MaGistic Security Guard〟の中で1番強いリーダーのゼドルも、
珍しく苦戦している。
「諦めるな!!考えろ!!コイツだって、強いけど、どっかに弱点があるはずだ!!見極めろ!!コイツの弱点!!」
ジャイルが「フンッ!!こんなモンか!!甘い甘い!!お前らの攻撃なんぞ、全部見切ってる!!」と言う。
「くっ!!!」
34.そういう事か!!!
「ハッ!〝見切ってる〟!?」
その時、ゼドルは、ジャイルの言った「見切ってる」という言葉が引っかかった。
「そういえば、コイツ、何かおかしい。俺達の魔法をかわす時も、剣の攻撃を振り払う時も、妙に反応が速過ぎる」
ゼドルの仲間達がめげずに立ち向かう。
「はぁ~っ!!!」
〝カァン〟
「うわっ!!!」
「くっ!!!ダメだ!!!」
「やっぱりダメだ。アイツの弱点は何だ?」
すると、ジャイルは、後ろから飛んできた蚊に刺された。
〝パン!〟
「うっ!クソッ!やりやがったな!」
刺されたが、すぐに潰した。
それを見て、ゼドルは、「変だ!」と思った。
(何でコイツ、俺達の攻撃には、全部、素早く対応出来るのに、たかが蚊なんかに気がつかないんだ?小さいからか?いや・・・まさか・・・ハッ!そういう事か!良し!じゃあ!!)
35.やっぱりな
ゼドルが消えた。
「ア・・・アレ?アイツは、どこに行った?」
〝ザンッ〟
「いてっ!!!」
「何だ一体!?」
ジャイルはもちろん、ミリカも、ゼドルの仲間達も、皆、驚いている。
「何が起こったんだ!?」
「このヤロー!!」
〝ボコッ〟
「うわっ!!!」
すると、次の瞬間、ゼドルが現れた。
〝シュン〟
「やっぱりな。コレがお前の弱点だったんだ」
「何!?」
「さっき、お前が蚊に刺された時、おかしいと思ったよ。
俺達の魔法を簡単にかわして、一斉にかかっても、全部見切ってしまうお前が、
たかが蚊なんかに刺されて、全く気がつかなかったんだから。
つまり、お前が対応出来るのは、姿が見えている相手だけだ。多分、お前は、
あまりにも目が良過ぎて、人やモノの動きがゆっくりに見えるんだろう。並外れた視覚、
それがお前の特殊能力みたいなモンだ。そうでもなきゃ、俺達の魔法や攻撃を
あの特殊ガムなしで全部見切るなんて出来ないだろう。だから、透明化したんだよ。ちなみに、
透明化すれば、身体だけじゃなく、衣服や武器も、全部透明になる。そんで、
透明になった状態で攻撃したんだ。
いくら動きがゆっくりに見えようが、見えなきゃ意味がないからな」
「くっ!クソ~!!見抜かれてたのか!!」
「ウチにも、特殊能力並みに身体能力が高いヤツがいるんでね!!どうだ?まだやるか?」
ミリカは、(凄い!ゼドルは、本当に凄い!!強いだけじゃなくて、洞察力も鋭くて、頭も良いんだ!!
17歳なのにリーダーをやってる理由が良く解る!!)と思った。
ファンジェスは、
(凄い!!〝透明化〟は、超高等な魔法!!まさか、そんな魔法が使えるなんて!!!さすがウチのリーダー!!!)と思った。
36.逃げられてしまった・・・
「くっ!!思ったより強いな。だが、これで勝ったと思うなよ。
それに、この先、俺よりも強いヤツが現れるだろう」
「じゃあな」
ジャイルは、煙玉を投げた。
〝ボン〟
「うっ!!ゲホッゲホッ!!」
煙が消えた後、見てみると、ジャイルは
、もう、いなかった。
ゼドルが「クソッ!逃がしたか!!」と言う。
「まぁ、良かったんじゃない?皆、無事だったんだし」とミリカが言う。
「まぁ、それもそうだな。でも、アイツは、また襲ってくるかもしれないし、それにアイツ、〝もっと強いヤツが現れる〟って言ってたからな」
ギーゼフが「そうだな。この先は大変だな。でも、負けるワケにはいかねぇだろ!!」と言う。
「そうだな!!」
そして、しばらくして、汽車が停まった。
ザレンが「とりあえず、ここまで来たけど、これからどうする?」と言った。
37.腹が減っては戦は出来ぬ
「うん。とりあえず、食べよう。何か、激しく動いて腹減っちゃったし」
「そうだな!!まだ昼飯食ってねぇし、〝腹が減っては戦は出来ぬ〟っていうしな!!食える時に食っとこう!!」
ゼドル達は、レストランに向かった。
皆、料理を注文し、食べる。
ドロンがゼドルに「いや~、さっきは凄かったよ!まさか、ゼドルが〝透明化〟の魔法を使えるなんて!!」と言った。
「そうか?」
すると、ファンジェスも、「うん!私も驚いた!!」と言った。
皆、ゼドルの事を誉めたたえる。
ミリカは「さっきの魔法って、そんなに凄い魔法だったんだ!!」と言った。
ゼドルは「皆、常に気を抜くなよ。ミリカを襲うヤツらは、どれだけいるか分からないし、いつ襲ってくるか分からないからな」と言う。
ドロンが「そうだね」と言う。
ドロンはミリカに「しかし、ミリカも大変だね。突然、こんなところへやって来て、しかも、たくさんのヤツらから狙われる事になっちゃって」と言った。
ミリカは「はい・・・・・・」と答える。
「でも、帰れると良いね!!」
「はい!!」
すると、そんな会話をするミリカとドロンを見て、ゼドルが少し寂しそうな表情をしていた。
フェレナがゼドルに「ねぇ、この後、どうするの?」と聞いた。
「そうだな。とりあえず、宿屋を探そう。それと、あの店には、
しばらく戻れない。もう、場所が知られてる。いれば、狙われやすいからな」
「そうだね」と、フェレナが答える。
ミリカが「ごめんなさい皆さん。私のせいでこんな大変な事になっちゃって」と言った。
ゼドルが「何言ってんだよ!ミリカのせいじゃないよ!!それに、俺達は、これが仕事だからな!!」と言う。
「ありがとう・・・・・・!!本当にありがとう・・・・・・!!!」
ザレンが「良し!ミリカが元の世界に帰るまで、俺達がミリカを守り抜くぞ!!」と言った。
皆、「おう!!」と言った。
38.ギーゼフの秘密と魔法差別
その後、宿屋を探した。
ギーゼフが「あ!あそこに宿屋があるぞ!!泊まろう!!」と言った。
ゼドルが「そうだな!!」と言った。
「すいませ~ん!!ここに泊めてください!!」
「はいよ」
ゼドル達は、その宿屋に泊まる事になった。
その夜、ゼドルとミリカは、外で話した。
「今日のゼドルもカッコ良かった~!!皆、手こずるような相手の弱点を見つけて倒すなんて、さすがゼドルだね!!それに、私は、魔法の事、良く知らないから良く分かんないんだけど、難しい魔法も使えるみたいだし、さすがリーダーだね!!」
「そうか?」
「うん!!」
「まぁ、俺は、リーダーとして、重い責任を背負ってるし、依頼人だけじゃなく、仲間の皆も守らないといけないからな」
「そっか!やっぱり凄いね!!17歳なのに、威厳と責任感が凄くあるね!!さすがリーダー!!」
「ありがとう」
「あ、でもさ・・・」
「ん?」
「そういえば、ギーゼフさんって、何で、戦う時、いつも魔法を
使わないの?」
「あ~・・・・・・、アイツは、〝使わない〟んじゃなくて、〝使えない〟んだ。魔法を」
「そうなの!?」
「うん。アイツは、昔、魔法が使えない事で、たくさんの人達に差別されてたんだ」
「そうなの!?」
「うん。けど、まぁ、元からの才能もあったから出来たんだけど、差別されないように、血が滲むほど鍛えて、身体能力をかなり高めて、魔法使いと互角に戦えるようになったんだよ。アイツは、この店で唯一、魔法が使えないメンバーなんだ」
「へ~!!そうなんだ~!!すご~い!!!魔法が使えないのに、
魔法使いと互角に戦えるなんて、カッコ良い~!!!」
「だろ?!」
「うん!!でも、この世界には、魔法を使えない人もいるんだね」
「うん。魔法が使えるか使えないかは体質の問題だからね。使える人も多いけど、使えない人も多いんだ。で、魔法が上手く使える人ほど優位に立てるけど、使えない人は、差別されたり、奴隷にされたりしてて、身分も低いんだ」
「そうなんだ・・・・・・大変なんだね・・・・・・あ!もしかして、この前、ゼドルが言ってた、〝魔法が使える事は良い事ばっかりじゃないって、そういう事なの・・・・・・?」
「まぁ、それもある。ギーゼフも、とても大変だったらしいからな」
「でも、ギーゼフさんは、ちゃんと居場所を見つけられて良かったね!!」
「そうだな!!」
その日、ベッドで横になりながら、ミリカは考え事をしていた。
そういえば、ギーゼフさん、いつも、1人だけガムを噛んでなかったな~。それにしても、魔法によって差別があるなんて・・・・・・
ここは、私がずっと夢見てたような、ただ〝ロマン〟があるだけの世界じゃないんだ・・・・・・とても過酷なんだ・・・・・・
私の幻想はホントにあった