グレイ家の兄弟 Captive Brothers

Amelie 作

グレイ家の兄弟 Captive Brothers
  1. 謎の美女と素敵な場所
  2. G4、絶体絶命!
  3. RESCUE!
  4. 反撃とジョンの雅量

謎の美女と素敵な場所

 その日、グレイ家の四兄弟(通称G4)は、ソルシティの人気カフェ「トゥアルィズコーヒー」のテラス席でトークしながらコーヒーとケーキをいただいていた。G4はいずれも顔面偏差値が低くはないため、カフェの前を通る人々がちらちらと彼らに目を向けてきた。しかし彼らはそれをさほど気にしていないようだ。
 自分たちだけの世界に浸ってトークを続けていると、浅黒い肌にセミロングの黒髪の一人の美女が彼らに近付いてきた。
「ハイ、素敵なお兄様方」
 G4は声のしたほうを向き、笑みを浮かべて片手を挙げた。
 その女性はふっとほほ笑むと、こう言った。
「私、これから素敵な場所に行こうとしているのだけど、1人じゃ寂しいのよ。お兄さんたち、もしお時間があれば、私と一緒にそこに行かない?」
 美女の突然の誘いに、G4は内心舞い上がり、お互いの顔を見て親指を立てた。
「君、グイグイ来るね。嫌いじゃないよ。一緒に行こう。ね、フレディ兄さん、ブライアン兄さん、ジョン?」
「ああ、賛成だ」
 すっかり乗り気でハイテンションなロジャーに、フレディが答えた。ブライアンはジョンをチラリと見たが、末弟がうれしそうにうなずいたので、同じリアクションをした。
「ふふ、うれしい。じゃあ、みんなで行きましょう」
 フレディが最後の一口を飲むと、G4は席を立って謎の美女と歩き出した。


 20分ほど歩くと、一行はピンクのクリスタルでできたお城といった感じの外観の建物の前に来た。
「ほら、ここよ。きれいな建物でしょう?」
 そう言うと、謎の美女はクスッと笑った。
「すごい、幻想的だ…」
「確かに素敵な場所だ」
「きれいな建物と美女なんて、何てぜいたくなコンビネーションなんだ」
「夢を見てるみたいだ」
 G4は、現実離れした建物の美しさに目を奪われた。
「みんな、中に入りましょう」
 彼らは謎の美女の後に続いて入っていった。建物の壁や天井、廊下も輝くピンクのクリスタルでできていた。
「本当、すごいなぁ」
 内装を見ながら、ジョンがつぶやいた。

 やがて謎の美女は一つのドアの前で立ち止まり、それを開いた。
「さあ、このお部屋に入って」
 G4は彼女の言うとおりにした。部屋の中には、ちょうど4人座れそうなサイズのえんじ色のソファーがあった。謎の美女がG4に座るように促すと、彼らはお礼を言って腰掛けた。
「私、楽しいボードゲームを持ってくるから、みんなはここで待っていてくれる?」
 4人はうなずいた。謎の美女はその部屋を出る直前、ドアのそばに置かれたアロマディフューザーのスイッチをつけた。わずか数秒で心地よい香りがすぐに部屋中に広がり、G4はたちまちリラックスした。
「お~、いい香りだ。眠くなっちゃうよ」
 そう言うと、フレディはそのまま眠りに落ちた。
「この空間、本当にぜいたくだ…」
 ロジャーは気持ち良さそうに言った直後、長兄と同様に眠りに落ちた。
「あ~快適」
 ジョンはそれだけ言うと、両目を閉じた。
「この香りとピンクのクリスタむにゃむにゃ…」
 ブライアンはつぶやきながら眠ってしまった。

 その頃、謎の美女は閉じたドアに背中をくっつけて、悪意ある笑みを浮かべた。


 それから15分後、謎の美女はG4の居る部屋へ入った。アロマディフューザーは既にスイッチがオフになっており、室内を満たしていた芳香はほとんどなくなっていた。彼女に続いて、3体の雌のガルーが入室した。謎の美女は眠っているG4のそばまで行って、一人一人の顔を見た。
「やつら、熟睡してるわね。OK、ガルーたち、一人選んで外へ運びなさい。この、一番若そうな男は私が運びましょ」
 そう、この美女は、前回のG4とガルーのバトルを遠くから見ていたあの女なのだ。3体の雌のガルーたちはそれぞれフレディ、ブライアン、ロジャーをまるで荷物を担ぐようにして連れ出し、G4をおびき寄せた性悪女はジョンを「逆お姫様抱っこ」して連れ出した。

G4、絶体絶命!

 ― 数時間後、G4が目を覚ますと、だだっ広い空き地に立てられた4本の杭に縛り付けられているのが分かった。
「うわ、何だこりゃ、縛られてる!」
「そんな…」
「くそっ、離せ!」
 フレディ、ブライアン、ロジャーが抵抗するように体を小さく動かし、ジョンが泣きそうな顔で宙を見つめていた。そこへ、あの美女と雌のガルーたちが彼らの前に歩いてきた。
「あっ、君は!!」
 フレディが大声で言った。美女はG4の顔を見るや高笑いをした。
「アッハハハハ。あなたたちは見事なまでに引っ掛かってくれたわ」
「ぐっ、ハメられた…」
 ブライアンが悔しそうに言った。
「ご覧。ここに居る3体は、今まであなたたちが倒したガルーの母たちよ」
 3体の雌のガルーは、わが子を殺された怒りの目でG4を見つめた。
「私ノカワイイ息子ヲイタブッタ末ニ殺シタヤツラメ…」
「アノ子ガ息絶エタトキノツラサヲ思ウト…」
「オマエタチサエ居ナケレバ…」
 恨み言を言う母ガルーたちに、ロジャーはふざけるなと言わんばかりの視線を送った。
「クズは親もクズだな」
 その横で、ブライアンが美女に問いかけた。
「まさか、君もガルーなのか?」
「いいえ、私は生まれたときからホモ・サピエンスよ」
「じゃあなぜ君はガルーに味方する?」
「その質問を待っていたわ。答えてあげる。彼らが保護すべき『弱小』部族だからよ」
 美女はドヤ顔で答えた。
「何が弱小部族だ。自分より弱い人間の命を平然と奪うやつらだぞ!」
 ジョンが次第に語気を強めながら言ったが、彼女はひるまなかった。
「あなた、分からないの?個体数が少なければ、それだけで『弱者』なのよ」
「おまえの論理が分かんねえ」
 フレディが眉間にしわを寄せて言った。

 美女はフレディを一瞥すると、母ガルーたちを集合させて言った。
「ゲームのルールを言うわ。年少者から一人ずつ消していき、最後に残った者を『早い者勝ち』で仕留める。そしてそれに成功した者が、ラストステージに進出できるわ。分かったかしら?」
 母ガルーたちは、黙ってうなずいた。
 G4の四男ジョンは恐怖に震え、涙目で首を細かく横に振った。
(僕が真っ先にやられる…嫌だ、そんなの嫌だ!!)
 しかし杭に縛り付けられているので、当然逃げることはできない。G4は絶望感に襲われたが、ブライアンはわずかに自由の利く指先を動かして、自分の手を縛っているひもを解こうとした。

 「では、ゲームを始めなさい」
 美女は冷徹な口調で言った。G4が最初に倒したガルーの母は、近くにあった大きな石で自爪を研ぎ始め、2番目に倒したガルーの母はロジャーと向かい合って冷たい目で彼を見ながら、鋭い爪で自身の腹部に縦線を書くようなアクションをした。これにはさすがのロジャーも
「やめろ…」
 と言いながら目を背けた。前回のバトルで倒したガルーの母は、用意していた丸太を持ってブライアンの真向かいに行き、殺傷能力の高い牙でその丸太をかみちぎった。彼女のその行動が意味することを理解し、ブライアンは即座に全身の毛がぞわっとよだった。
 そして性悪美女はフレディの目の前まで移動すると、おもむろにタバコとライターを取り出し、一服した。そして今度は彼の横まで動き、その耳元で言った。
「ねえ聞いて。面白いお話があるの」
 フレディは震えたが、女をにらんで言った。
「どんな話だ」
「ふふっ、実はね、ソルシティ警察の活動をストップさせていたのは、私なの」
「何だって!」
 フレディの大声に、隣に拘束されているブライアンが思わず彼のほうを向いた。
「私自身がソルシティ警察のお偉いさん方への『蜜』となったのよ」
「…やっぱりそうか」
 彼女の発言を聞いたブライアンは怒りの目で彼女を見たが、母ガルーに首を触られ、その心は再び恐怖に満たされた。
「あの人たちみんな、私の『お相手』をするのを頑張ってくれたわ」
 そこまで言うと、性悪美女はフレディに顔を寄せて、一層低いトーンで言った。
「力を使い果たして、寝込むまでにね」
 フレディは、この女に心の底から怒りを燃やし、歯ぎしりした。

 それと時を同じくして、最初に倒されたガルーの母は爪を研ぎ終わり、砥石に使った大きな石を指差し、ジョンの目を見た。そして彼女は、ギラリと光る爪で大きな石をさっと引っかいた。大きな石は、きれいに五つに割れた。この母ガルーは再びジョンの顔を見ると、残虐な笑みを浮かべた。ジョンは震えが止まらず、必死で首を横に振った。
「いや、やめろ。やめろ、マジで!」
「オシマイダヨ、ホモ・サピエンス!」

RESCUE!

 そのときだった。すさまじいプロペラ音を響かせながら、1台のヘリコプターが飛んできた。突然のヘリの登場に、全員が上空を見た。
「わっ、何だ!?」
「ヘリが来た?」
「何カ来タワ!」
 ヘリを操縦していたのは、ドクター・フリックだった。その中には、彼の助手のアメリ・ウェンとヒラリー・ヤンも居る。
「ドクター・フリック、あちらでス!」
 アメリが指差した方向には4本の杭が立っている。ドクター・フリックは、アメリとヒラリーに指令を出した。
「ほえほえ、G4を解放するだす」
「はいっ!」
 そして彼女たちは救助用ホースに乗って地上に降りてきた。
「エ?エ??」
「何ナノ、コノ女タチ?」
 予想外のG4サイドの救援者登場に、3体の母ガルーは驚いて動きを止めた。一方、フレディは
「おお」
 と軽く喜びの表情を見せ、ブライアンは安心した顔でうなずいた。
「あれはドクター・フリックのヘリだったのか」
 ロジャーが言うと、ジョンはよかった、と言うような顔でうなずいた。
 アメリはフレディとブライアンを、ヒラリーはロジャーとジョンを手際良く解放した。
「っしゃあ!!ありがとな、アメリ」
「ありがとう」
 フレディとブライアンは、アメリに感謝のハグをした。
「助かったぜ。ありがとうヒラリー!」
「助けてくれてありがとう」
 ロジャーとジョンも、ヒラリーに感謝のハグをした。
「いえいえ、お礼は要らないでス」
「当然のことをしたまでよ」
「ドクター・フリック、どうもありがとう!!」
 フレディは、ヘリの中に居る珍発明家に大声でお礼を言った。ミッションを成功させた幼なじみコンビは、救助用ホースの中でほほ笑んで手を振りながら、ヘリに戻った。

反撃とジョンの雅量

 「ようし、これでフェアに戦える!ブライアン、ロジャー、ジョン、ディヴァインフォームだ!!」
「「「OK!」」」
「「「「Divine Form!」」」」
 G4はディヴァインフォームを発動した。フレディは赤く細い布を粗く巻いたような露出の多いトップスと黒いベストのようなアーマーに黒の革パン、ブライアンは青い布を巻いたようなトップスと左腕をがっちり守っている黒ベスト風アーマーに黒の革パン、ロジャーは黄色い包帯を巻いたように所々肌の見える、軽くエロいトップスと黒の革パン、そしてジョンは茶色のトップスに両肩と左腕を守る黒いアーマーに黒の革パンといった服装に変わった。また、フレディは炎の翼、ブライアンは水の翼、ロジャーは雷の翼、ジョンは土の翼が背中に生えていた。

 母ガルーたちはあっけに取られていたが、すぐに戦闘態勢に入った。ガルーに味方する美女は、少し離れて戦況を見つめることにした。最初に倒したガルーの母はフレディとボクシング状態になったが、彼のパワフルな右フックが母ガルーの頬に炸裂し、彼女は派手に転倒した。
 2番目に倒したガルーの母は、ハウリングをして両手で平手打ちするようなアクションをしながらロジャーに向かって走ってきた。しかしロジャーはひょいとしゃがんで鋭いローキックをお見舞いし、母ガルーを転ばせた。その直後、得意のキックで彼女の牙をへし折った。
 前回のバトルで倒したガルーの母は、前方を引っかくアクションをして爪によるダブル斬撃をブライアンに飛ばした。しかし彼はハイジャンプでそれをかわし、浮遊しながら水のダーツを2発投げた。それらは連続で母ガルーの眉間を直撃し、彼女はあおむけに倒れた。ようやく彼女が立ち上がると、グレイ家の次男は待ってましたとばかりに、日本の某有名ヒーローのような空中キックを喰らわせた。

 フレディ、ブライアン、ロジャーが母ガルーたちからある程度距離を取った。フレディが両手を挙げ、文字どおりの「火の鳥」を出現させた。
「その命、燃え尽きろ!!」
 グレイ家の長男は持ち前の美声で叫ぶと、火の鳥は自ら羽ばたきながら、母ガルーに突進していった。
(…!!)
 火の鳥が見事に母ガルーの体を貫いた瞬間、その全身が炎上した。
「息子ノ敵ヲ取リタカッタ…!」
 G4が最初に倒したガルーの母は、炎の中で崩れていった。

 ロジャーは両手を挙げ、雷でできた鳥を出現させた。
「この技から逃げれるもんなら、逃げてみな!」
 グレイ家の三男が威勢良く言うと、雷の鳥は自ら羽ばたき、2番目に倒したガルーの母の周りを1周してその頭上まで飛ぶと、そこから急降下した。非常に強力な雷撃を脳天に受けた母ガルーの体は瞬時に黒焦げになり、そのままボロボロと崩れた。

 ブライアンは両手を挙げ、水でできた白鳥のような鳥を出現させた。
「もはや命乞いしても無駄だ」
 グレイ家の次男がクールに言うと、水の鳥は自ら羽ばたきながら、前回のバトルで倒したガルーの母に突進していった。水の鳥は母ガルーの体をぶち抜き、彼女は苦しそうな声を上げながら崩れていった。

 全ての母ガルーが倒されたのを見たあの女は顔をこわばらせ、自身は戦闘能力が皆無に等しいので命が惜しくなり、その場から去ろうとした。すると彼女の前にジョンが飛んできた。とっさに彼女は隠し持っていた縄を出して鞭代わりに振るって威嚇した。しかしジョンは表情を変えずに言った。
「武器を下に置くんだ。僕は君の命を取らない」
 思ってもいなかった彼のリアクションに、女は驚いた。
「なぜ?私はあなたたちホモ・サピエンスを裏切った身なのに」
「君もホモ・サピエンスだ。だから僕は君の命を取らないと言ったのさ」
 彼の言葉に、女の心の何かが動いた。
「もしここで僕が君を消せば、僕らもガルーと何も変わらない。そうだろう?」
(この男、私がホモ・サピエンスだという、ただそれだけの理由で私の命を奪わない…。ガルーとは全く違う行動だわ)
 そう思うと、ジョンのこの行動が非常に崇高に感じられた。
(私、ここまで優しい人たちに、本当にひどいことを…)
「…ええ、そのとおりよ」
「お姉さん、君はここを去るんだ。もうあんな種族に関わっちゃいけない」
 女は今にも泣きそうな顔で強くうなずくと、ジョンにお礼を言って走っていった。

 その後、G4が彼女の姿を見ることはなかった。

                             - TO BE CONTINUED -

グレイ家の兄弟 Captive Brothers

グレイ家の兄弟 Captive Brothers

「グレイ家の兄弟」の第6回です。G4が絶体絶命のピンチに見舞われます。また、前回エピソード「Divine Form!」の終盤に登場した「謎の女」が重要な役割を果たします。 どうなる、G4!?どうする、G4!?

  • 小説
  • 短編
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-04-14

Copyrighted
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