グレイ家の兄弟 Divine Form!

グレイ家の兄弟 Divine Form!

ドクター・フリックの発明品

 ドクター・フリックの研究所に集まったG4。
「ドクター・フリック、俺たちに渡したいものがあるんだって?」
 フレディが尋ねると、ドクター・フリックは、巾着袋を見せて答えた。
「ほえほえ~、チミたちのためにすごい装置を開発しただす」
 G4が興味深そうに巾着袋を見つめると、ドクター・フリックはその中から四つのチェーンブレスレットを出してテーブル上に並べた。その一つは炎モチーフの飾りとルビーレッドのスワロフスキーで飾られたもの、一つは水モチーフの飾りとマリンブルーのスワロフスキーで飾られたもの、一つは雷モチーフの飾りとレモンイエローのスワロフスキーで飾られたもの、そしてもう一つは岩モチーフの飾りとブラウンのスワロフスキーで飾られたものだった。
 G4は目を輝かせてそれらをじっと見た。ドクター・フリックは一人一人を見ると、再び話し出した。
「フレディは炎モチーフのを、ブライアンは水モチーフのを、ロジャーは雷モチーフのを、ジョンは岩モチーフのを装着するだす」
 ブライアンが、つぶやくように言った。
「なるほど、俺たちの能力に合わせたモチーフのやつを着けるんだな」
「ほえ、そうだす」
 G4は、ドクター・フリックの指定したブレスレットをそれぞれ着用した。彼らはお互いにブレスレットを見せ合い、ニッと笑った。

 ドクター・フリックは全員が着け終わったのを確認すると、再び話し出した。
「これらのブレスレットは、ディヴァインフォームになるための装置だす」
「何だよ、その『ディヴァインフォーム』って」
 フレディに聞かれて、ドクター・フリックの説明が始まった。
「ほえほえ、『ディヴァインフォーム』とは、エレメンタルウエーブの力がMAX状態になった、『神聖なまでの』強さを持つフォームのことだす」
「つまりあれか、最強モードってやつか」
 ロジャーがワクワクしながら尋ねた。
「まさにそのとおりだす」
 ドクター・フリックがうなずきながら答えると、今度はジョンが質問した。
「それで、そのディヴァインフォームには、どうやったらなれるの?」
「至って単純だす。左手を挙げて拳を握り、右上から左下へスライドさせるように手を動かすだす。そして、『Divine Form!』と唱えるのだす」
 ドクター・フリックは、自らそのアクションをしながら、ディヴァインフォームになる方法をG4に説明した。彼の説明が終わると、フレディが軽く興奮して
「ワオ、いいな」
 と言った。

 そのあと、G4全員がブレスレットを装着した腕をドクター・フリックに見せると、口々にお礼を言った。

G4、大苦戦

 G4がドクター・フリックの研究所から自宅に戻る途中、こげ茶色のスーツを着たあの中年男を見た。フレディは眉間にしわを寄せて、
「あいつ、こないだ擦れ違いざま俺に何か言ってきたやつだ」
 と言った。ブライアンは、自分が負けたときのことを思い出し、にらむようにその男を見た。
「よし、後を付けよう。やつが行動に出る前に、被害を食い止められるかもしれない」
 ほかの兄弟たちは互いにうなずき合った。G4は相手に気付かれないように細心の注意を払いながら、その男を追跡した。

 追跡開始からおよそ5分後、こげ茶色のスーツの男は、1軒のパン屋の前で立ち止まり、ドア越しに店内をじろじろ見ていた。G4も、目を凝らして彼の様子をうかがっていた。しかしわずか1分後、彼は店に入らずに再び歩き出したため、G4も追跡を再開した。
 こげ茶色のスーツの男は、パン屋の2軒隣の建物の前で足を止め、それをじっと見た。その看板には、「COSY CHILDREN’S HOUSE」と書かれている。どうやら児童養護施設のようだ。男は悪意100%の笑みを浮かべると、全身がこげ茶色の毛で覆われた「本来の姿」に戻った。

 その瞬間、フレディが怒りいっぱいに
「ガルー!!」
 と叫んだ。呼ばれたほうは、イライラ顔でG4のほうを向いた。
「コノ前ノホモ・サピエンス、マタ来タノカ。今度ハ仲間モ連レテ」
 するとブライアンが律儀に答えた。
「仲間というより、兄弟だ」
「ホウ。ソレヨリ貴様ラ、何度俺ノ『ゲーム』ヲ邪魔スル気ダ!」
 三男のロジャーが、威勢よく答えた。
「弱い人間ばっかり殺すおまえらを、止めるためだ!!」
「フン…本当ハ体力を温存シテ『ラストステージ』ニ臨ムツモリダッタガ、状況ハ変ワッタ。貴様ラ4人ヲ、コノ場デ葬ル!」
 そう言うと、ガルーはハウリングとともに、3体の分身を作った。
「うわっ、こいつ、クローン能力が!?」
 ジョンが焦ったように言った。ガルーは、得意げに言った。
「貴様ラニ面白ェ話ヲ聞カセヨウ。俺ハコウシテ分身ヲ作リ、複数ノ場所ニ散ラバッテ『ゲーム』ヲシタ」
 G4は一瞬戦慄を感じたが、長男のフレディが
「そうなのか。そりゃご親切にネタバレどうも」
 と返した。その直後、4体のガルーがG4一人一人に襲い掛かってきた。もともと腕っぷしの強いフレディは得意のパンチ攻撃や回転キックを浴びせようとしたが、パンチはことごとくガードされ、回転キックは命中前に跳ね返された。それでもフレディはすぐに立ち上がり、
「無駄な抵抗、するんじゃねえ!!」
 と吠えると、両腕を交差させて突き出した。すると、彼の両拳から炎が出現し、ガルーに向かって進んでいった。二つの火の玉は見事に命中し、ガルーは炎に包まれた。
「ウハァッ…」
「よし!」
 フレディは勝利を確信した。…しかし、ガルーは気合いで自ら鎮火させ、炎上から生還したのだった。
「ええーっ!?」
 予想外の光景を目の当たりにして、フレディはショックを隠せなかった。そしてガルーは歯をむきだして笑うと、フレディの頬を力いっぱい平手打ちした。その衝撃は強く、フレディは地面に倒れ込んだ。

 ブライアンはその長い脚を高く挙げ、分身のガルーにかかと落としを喰らわせようとしたが、振り下ろした脚を両手でつかまれてしまった。
(しまった!)
 ガルーはフンと鼻で笑うと、ブライアンの脚を乱暴に押し上げて離した。ブライアンはバランスを崩し、派手に転倒した。しかし彼は険しい顔でゆっくり起き上がり、右手を高く掲げた。
「…でも、おまえの負けは決まったな!」
 彼が自信満々に言うと、彼の右手の少し上に水でできた歯車が出現し、高速回転を始めた。
「たあーーーっ!!!」
 ブライアンはまるでフリスビーを飛ばすように、その歯車を投げるアクションをした。水の歯車は高速回転しながら、ガルーの胴体を貫いた。
「ウオオッ…!」
 その様子を見て、ブライアンは小さくガッツポーズをしながら一度うなずいた。しかしそれはぬか喜びだった。ガルーはその精神力で傷を自己回復させたのだった。
「そんな…!」
 またも自分の技が通じないと分かったブライアンは、愕然とした。
(俺の技は、やつとは相性が悪いのか?)
「俺ノ負ケハ、決マラナカッタナ」
 ガルーはそう言いながらブライアンに近寄ると、彼の胸ぐらをつかんで腹部にニーキックを浴びせた。

 ロジャーはスピーディーな動きで雷をまとったパンチやキックの連続攻撃をしたが、分身のガルーはそれらを見事にガードし、ダメージを最小限にとどめた。それだけではなく、ガルーのほうもロジャーに劣らぬスピードで連続技を繰り出してきて、ロジャーも避けるのがやっとだった。
(こいつ、ガードもスピードもすごいや。何とか強力な一撃を出さないと…)
 そこで彼はハイジャンプし、日本の某有名ヒーローのような空中キックを喰らわせようとしたが、ガルーは何と腕一本でそれを跳ね返した。ロジャーは背中から落下したが、幸いにも軽傷で済んだ。そしてガルーに向かって雄たけびを上げながら突進していったが、ガルーのパンチが彼の胸を直撃し、その勢いで吹き飛ばされてしまった。

 ジョンは分身のガルーの攻撃をガードする一方だったが、わずかな隙を突いて渾身のカウンターブローをお見舞いした。それは確かにガルーにヒットしたが、人狼は体勢を立て直すとすぐにグレイ家の四男の腕を捕まえ、地面にたたきつけた。ジョンは起き上がろうとしたが、その前にガルーが彼の腹部に足を置き、じわじわと体重をかけてきた。
(や、やめろ…)
 ジョンの目がそう訴えたが、情けを持たないガルーは嘲笑の目で彼を見て、
「コノママ貴様ノ体ヲ、中身モロトモ砕イテクレル!」
 そう宣言すると、膝を曲げてそのまま脚を挙げ、勢いよく踏んできた。
「うわっ!!」
 ジョンは素早く地面を転がってよけたため、最悪の状態は免れた。

 そうしている間に、フレディは身に着けているブレスレットに目を向けた。
「そうだ!みんな、ディヴァインフォームだ!」
 長兄の声を聞いて、弟たちが立ち上がった。
「よっしゃ!!」
 G4は一斉に左手を挙げて拳を握り、右上から左下へスライドさせるように手を動かし、
「Divine Form!」
 と唱えた。

Divine Form!

 すると、驚くべきことが起こった。(ここで画面4分割)4人の周囲が強く光り、目を閉じて軽く両腕を開いて立っているフレディ、ブライアン、ロジャー、ジョンの着ている服がそれぞれ火、水、雷、土に包まれた。その2、3秒後、フレディは赤く細い布を粗く巻いたような露出の多いトップスと黒いベストのようなアーマーに黒の革パン、ブライアンは青い布を巻いたようなトップスと左腕をがっちり守っている黒ベスト風アーマーに黒の革パン、ロジャーは黄色い包帯を巻いたように所々肌の見える、軽くエロいトップスと黒の革パン、そしてジョンは茶色のトップスに両肩と左腕を守る黒いアーマーに黒の革パンといった服装に変わった。また、フレディは炎の翼、ブライアンは水の翼、ロジャーは雷の翼、ジョンは土の翼が背中に生えていた。

 G4は目を開くと、自分たちに起こった変化に驚いたが、すぐに強気な笑顔でうなずき合った。ガルーは突然の事態に動きを止めていたが、ようやく口を開いた。
「何ダ…ヤツラノ服装ガ変ワッタ…?イヤ、構ワネエ。俺ハヤツラヲ消ス!!」
 G4は2、3回軽くジャンプすると、低空に浮かんだ。
「今度は負けねえ!反撃だ!!」
「「「うおおお!!!」」」
 フレディの力強い声に弟たちも答え、低空を移動しながらガルーとの距離を詰めた。

 フレディの強力な右アッパーがガルーのあごにしっかり命中し、ブライアンのストレートなハイキックは分身ガルーの鼻っ柱にヒットし、ロジャーの華麗な2連続回転キックが2発とも決まり、ジョンのクロスチョップが分身ガルーの首元に大ダメージを与えた。ブライアンの相手のガルーは、地べたに倒れたままつぶやいた。
「コノホモ・サピエンスノ、ドコニソンナパワーガ…」

 G4全員が、ガルーからある程度距離を取った。そしてフレディが両手を挙げ、文字どおりの「火の鳥」を出現させた。
「その命、燃え尽きろ!!」
 グレイ家の長男は持ち前の美声で叫ぶと、火の鳥は自ら羽ばたきながら、ガルーに突進していった。
(…!!)
 火の鳥が見事にガルーの体を貫いた瞬間、その全身が炎上した。これにはさすがのガルーも自己再生できず、炎の中で崩れていった。

 ブライアンは両手を挙げ、水でできた白鳥のような鳥を出現させた。
「もはや命乞いしても無駄だ」
 グレイ家の次男がクールに言うと、水の鳥は自ら羽ばたきながら、分身ガルーに突進していった。水の鳥はガルーの体をぶち抜き、ガルーは苦しそうな声を上げながら崩れていった。

 ロジャーは強力なキックで分身ガルーを跳ね飛ばすと、両手を挙げ、雷でできた鳥を出現させた。
「この技から逃げれるもんなら、逃げてみな!」
 グレイ家の三男が威勢良く言うと、雷の鳥は自ら羽ばたき、ガルーの周りを1周してその頭上まで飛ぶと、そこから急降下した。非常に強力な雷撃を脳天に受けたガルーの体は瞬時に黒焦げになり、そのままボロボロと崩れた。

 ジョンは両手を前に出すと、大量の土が出現し、ダチョウのような鳥の形になった。
「今謝っても、もう遅い!」
 グレイ家の四男が啖呵を切ると、土の鳥が3回地面を蹴った。力が十分にたまった土の鳥は、目にもとまらぬスピードでガルーに突進していった。土の鳥がぶつかった衝撃でガルーの体は宙に舞い上がり、その直後に地面に激突して爆発した。

 こうして、G4は今回のガルーを完全に倒した。しかし、元の服装に戻った彼らはエネルギーを大量消費したため、ばたりと倒れ込んだ。
「はぁ、これ、パワーの消費半端ない」
「フルパワーで戦った反動ってやつか…」
「もう立つ気力すらねえ…」
「今すぐエネルギーチャージしたい」

 そんなG4を、離れた所から険しい目つきで見つめる一人の女が居た。
「やつらね、ガルー族の『活動』の邪魔をする者たちは」

 この女は、いったい何者なのだろうか。


      - TO BE CONTINUED -

グレイ家の兄弟 Divine Form!

グレイ家の兄弟 Divine Form!

「グレイ家の兄弟」の第5回です。G4が支援者のドクター・フリックからすごいアイテムをもらいます。果たして、そのアイテムを使って何が起こるのでしょうか。

  • 小説
  • 短編
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-04-13

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. ドクター・フリックの発明品
  2. G4、大苦戦
  3. Divine Form!