なつぞらダイバー 第2週: なつよ、夢の扉を開け
なつぞら第二週が放送されました、いろんな夢が出てきた一週間でしたね。
なつよ、夢の扉を開け
ようこそ、ムービーダイバーへ
ムービーダイバーは、お客様の希望する小説、映画、ドラマの作者、脚本家の傾向を分析し、AI化する事で、お客様の希望するストーリーの中に入り込む事ができる、
バーチャル体験型アトラクションです。
俺は、またムービーダイバーの店舗に入った。
「いらっしゃいませ。あら!」
女性店員は、先週俺が来店したことを覚えているようだ。女性店員は続けた。
「すみません、内村さんですよね。サインいただけないでしょうか?」
「違います!よく似ていると言われますが、別人です!」
「そうですか・・・すみません。」
「いえ、謝るほどの事ではありません。気にしないでください。」
女性店員は釈然としていないようだが、仕事モードになった。
「お客様は、今日はどの物語へのダイブをご希望でしょう?」
「今週も、なつぞらできるでしょうか?」
「はい、大丈夫です。では何処にどの様な立場で参加されますか?」
「柴田家のおじいさん、泰樹さんのバターつくりを見てみたいので、お願いします。」
「はい、大丈夫です。それでは、しばた牧場で働いている戸村悠吉さんにダイブしますね。」
俺は先週と同じ様にダイブ用のカプセルに入った。
すると、すぐに虹色の光に包まれた。
次の瞬間、俺は空を飛んでいた。ダイブに入っているのだ。
眼下に、見覚えのある、しばた牧場があり、ゆっくり降下していった。
そして戸村悠吉と重なり入り込んでいった。
戸村悠吉、その息子の菊介、柴田泰樹の3人で搾乳が終わって、飼葉を与えて、一息ついている時に、
泰樹が、真剣な表情で悠吉に話しかけた。
「最近、乳が良くなったと思わんか?」
「そうですね。昔に比べて牛の食べ物もよくなったわけでもないのに、わしらの手入れも行き届いてるからですかね。」
悠吉は誇らしげに続けた。」
「昔は牛乳は採れてたけど、牛の数もギリギリで、泰樹さんが苦労して、バター作りとかも挑戦しましたよね。
なんとなく、酪農家は牛乳を採ってたらいいんだって考える人が多い中で、バターを作ることは、酪農と製造業を両方やることになる。
酪農家の生活を根本から変える事だって頑張りましたよね。懐かしいなぁ・・・・」
「酪農は1次産業、バター作りは2次産業、合わせて3次産業になると、商人になるから、4次産業とか言ったら、富士子に1+2は4なんてバカな事言うなって怒られたな。。。。そうだなぁ・・・・」
泰樹は、目を細めて昔を思い出話しを始めた。
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目の前で、バターチャンを回しているのはまだ若い、柴田泰樹だ。
「悠吉さん、いい感じで、バターとホエイの分離ができましたよ。」
「柴田さん、もう手応えでわかるようになってきたんですか?たいしたもんですね。」
「いや、牛乳は嘘をつかないからね。やればやるだけ上達するよ。」
泰樹は、手際よくチャンを傾けて、ホエイを流し出した。
「このホエイだって、栄養価が高いんだ。何か使い道があるに違いない。
牛乳がバターになって、価値が上がるだけでなく、それ以外の可能性もあるんだ。
バターにはいろんな可能性がある!」
そうは、言ってもバターを買ってくれるのは雪月くらい。
泰樹のバターを高く評価してくれているが、売り上げは高々しれている。
販路が拡がらずに細々とした売り上げにとどまっているのもどうしようもない事実だ。
「泰樹さんのバターは美味いことは間違いないんですけどね。まだ、ワシらみたいな田舎者は、バターを食べたこともない。
こんなに美味いのになぁ・・・・」
バターを生業とするのは、決して明るい環境ではなかった。
その時外から、かすれる様な富士子の声が聞こえた。
何かただ事ではない!
泰樹と悠吉は、慌てて外にとびだした。
そこには、脂汗を流し、真っ青になってしゃがみこんでいる富士子がいた。
「お腹が・・・痛い・・・」
泰樹は富士子を馬車に乗せ、病院に急いだ。
夜遅く、泰樹さんが一人で帰ってきた。
「急性の腹膜炎だ、緊急手術をしたので、今日は帰れん!」
「手術は成功だったんですか?」
「それは問題ない。一月も入院すれば大丈夫だろう。それより悠吉さん。」
泰樹が真剣な表情をしている。
「申し訳ないが、バター作りはしばらくやめようと思う。せっかく、いろいろ手助けしてもらっていたのにすまん。」
それは、そうだ。
健康保険にも加入してない状況で、娘の緊急手術と1ヶ月の入院となれば、かなりの費用が必要だ。
売れる様になる目処もないバター作りを続けられるわけがない。
「いいんですか?バター作りは夢だったんじゃないですか?」
「いいんだ。わしの夢の為に富士子を失うわけにはいかん。あの子はまだまだこれから夢を見るんだ。親が子供の夢を潰してどうする。
とにかく、生きていれば富士子もわしも夢を見ることはできる。ちょっと休憩だ。」
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「そんな事もありましたね。。。。」
悠吉は懐かしそうに思い出した。
そこに、夏が帰ってきた。
泰樹、悠吉、菊介に「ただいま」と言い、それから牛一頭づつに顔を見ながら「ただいま」と声をかけてまわっている。
「あれが(牛乳の質に)影響しているのかな?」
泰樹のつぶやきに、菊介がハッと気づいた様に言い出した。
「そういえば、最近、みんな搾乳前に牛の顔を見ながら、今から乳絞るぞ。とか飼葉食べてる時に美味しいかって話しかける様になりましたね。」
みんな、一斉に牛と話をしているなつを見た。
まさか!?
その時、俺の視界は虹色の光が現れた。
俺の視点は悠吉から離れ宙に浮かんでどんどん上昇していった。
厩舎の物置にはバターを作るチャンが出してあった。。。。。なつが泰樹の閉じていた夢の扉を開いたと言うことか・・・・
僕はどんどん上昇して、虹色の光に包まれた。
俺はカプセルの中で目を覚ました。
ゆっくりとカプセルから出ると、女性店員が涙ぐんでやってきた。
「お客様、今週は素敵でしたね。生きていれば夢を見ることはできるってところに、ハマってしまいました。」
「え!?」
この人はどういう人だ???
心配になりながらも、俺は店を出た。
なつぞらダイバー 第2週: なつよ、夢の扉を開け