土井留ポウ

 瀬戸内の小さな島に五戸総勢十五人ほどの集落があった。島は不毛の土地であって雨が降ってもすぐに土壌に吸収され海に紛れていく石ころ砂利の堆積した土地であり、木々が根付くことはなく作物も一切育つ気配もなく、島民のほとんどは海に出て漁をしていた。そして漁のついでに隣島に赴き飲料水などを汲みに行った。同じく隣島で得た木材を持って住処を作り、砂利や石ころが堆積しほとんど起伏のない土地に散らばるように暮らしていた。この奇妙な弓形型の島は十分もあれば周囲を一周できるほどの大きさで、その小さな湾の中心から桟橋が伸び、二艘の共用の船が係留され、島民が総出で漁に繰り出し海産物のみを常食としていた。

 肥えた土地である隣島は基本的にはこの島とは没交渉であった。ただに飲料水と木材の供給を許すのみでそれ以外の交渉はなかった。古くからそのような関係性を保ち、戦乱の世においてすらもこの島は絶えず閉鎖的であり、資源の乏しいこの島は四国の海賊も素通りするほどの未開であり、島民があまりにも愚鈍に見えたために幕藩体制が取られてから当地の支配藩から当初は申し訳程度の干物が徴収されたが、しばらくするとその徴収をも見送られるようになった。島民はしかし、閉鎖的ではあったが排外的ではなく、時に難破した船の船員が島に流れ着いた時には手厚い看護をしたし、愚鈍であるが正直であった。だが、島にあって西の外れの幾分高い丘になったところの裏手に住まう権蔵によって、いやその悪魔の子によって、島に血なまぐさい事件が起こった。

 権蔵はこの愚鈍と正直を絵に描いたような島にあって明らかに異質であった。権蔵は元々この島には珍しい利発な少年であったが、成長するに隣島での水汲みでなどで見受けられる隣島の者からの嘲りなどから島民の愚鈍さに気付いた。そしてそれを機に周囲をあからさまに馬鹿にし始めた。そしてある日父母が相次いで亡くなったことにより島を出たのである。しかし十年ほどして島に戻ってきた。その腕には大きな女の子が抱かれていた。島民は不思議がった。もう戻って来ないだろうと思っていたのが、ひょっこりと舞い戻って来、更に大きな女の子まで抱いている。しかし島民は、何故、とかいう状態から醸される微妙な抽象的な思考が出来なかった。それは能力として出来ないのではなく、そもそも抽象的な観念が湧き上がらなかったのであり、そういった思考を行ったことがなかったからであり、無いから出来ない、というわけであった。島民の脳裏に映じるのは事実のみで、海に海産物があることと、隣島で水と木材を調達すること、親がいて子がいてこの島に住んでいること、以外にはなかった。だから権蔵の落ち窪んだ目付きや女の子を見ても、また権蔵はこの島に戻ってきたのだな、子供が出来たようだ、という事実を受け取るのみで、二三の会話を交わした後にみなは漁に出ていつもの生活に戻った。

 再び島に戻ってきた権蔵は幼い時は利発、長じて嘲りといらだちをため込んでいた青年期と比べて、益々屈折していき引き籠もりながら中年期を過ごした。島の漁にも参加しなくなり丘の裏手の近海、湾とは逆の海で素潜りを時々しているのだけが見受けられた。あの当時大きさから見て五歳児ぐらいの女の子はそれからすくすくと大きくなっていった。言葉少なな権蔵と事実しか興味のない島民の交わした数えるほどの会話では、女の子の名は花と言い、年齢に関しては五歳ぐらいであると言葉を濁した。自分の子だと権蔵は言い、花の母親については死んだ、と一言だけ言った。花は大きくなった。初めて権蔵の腕に抱かれてこの島に訪れたときは、赤ん坊のように毛が生えそろっていなく、歯も生えていなかったが、それから時を経ることに毛が生え歯が生え始めていた。歩くことは未だままならなかったが島民の誰もが彼女を五歳児としか見ていなかった。隣島の住人であれば権蔵の言葉の裏にある何かを隠そうとする真実を読み取ろうとするだろうが、島民においては権蔵が五歳だと言ったから、それは事実であった。しかし花は五歳の頃によちよち歩きを始めて、八歳の頃に簡単な言語を喋るようになりそこらを走り回るようになった。身体の大きさは紛れもなく八歳児の大きさであり、八歳にしては何処か大きいことを花を見掛けた島民は少し不思議がった。あの子は大きいな、と船から丘を走る花を見ながら漁の合間に何気ない会話が交わされたりしていた。

 花はすくすくと大きくなった。権蔵は花がすくすくと大きくなるにつれて更に塞ぎがちになり落ち窪んだ眼が益々異様な光を帯び始めたのが対照的であった。花は簡単な言語は解したがそれ以上の知能は持たないようだった。十代というもっとも世界に対しての好奇心に満ち異性に恋い焦がれる思春期の時期において彼女は絶えず波間に漂い青空に薄弱な眼差しを向けて海に浮かんでいた。湾とは裏側の海だったので島民はそちらの方には漁には行くことはなく、その島の裏側で紺碧の海の只中に浮かぶ白く巨大な物体をそれから十数年と誰も目撃する者はいなかった。権蔵が花を抱いて再び島に舞い戻ってから十八年という月日が流れた頃、島の裏側とは逆に、湾の方で白い巨大な物体が沖合に浮かんでいるのを見つけた島民は総出でその白い物体を引き上げた。それは溺れていた相撲取りであった。助け出された彼が語るところによると、名は大山鬼太郎と言い、紀州藩のお抱え力士であるとのこと。今般は大江戸での勧進相撲に招かれ、海路で向かおうとしたところ嵐に遭い、船が難破し、仲間たちとも散り散りになり、板きれ一枚だけ抱いて海を幾昼夜漂っていたことの次第を話した。島民は初めて見る相撲取りに夥しく肩なり腹なりを触って、その大きさに感嘆していた。大山鬼太郎は初め衰弱していたが、数日すると回復し、養生がてら島を歩き回るようになった。

 大山鬼太郎は島を検分するようにうろついた。島にはないはずの木材をさすりながら、これは隣島とやらから貰ってくるわけだ、などと言い、島を覆う砂利石ころを持って、これでは作物は育たん、などと独りごちながら、島の裏手の土手を這い上った。土手の裏には小屋があり、廃屋然とした佇まいに食指が蠢き、小屋の中に入った。小屋の中に奇妙な老人が鋭い目付きで大山鬼太郎を見詰めていた。権蔵であった。すでに老境に差し掛かり白髪が伸び放題となり、落ち窪んだ眼が異様なぎらつきを持って訪問者をただ見詰めていた。しばらく大山鬼太郎は魂を奪われたようにこの老人と対峙していたが、陽光の煌めく波間に白い物体を認めて息を飲んだ。それは浜に向かってゆっくり、ゆっくりと近付いてくるのであった。クラゲのような滑らかさで波間を泳いでいる。背泳ぎであった。しかし両手を使うわけでなく身体を左右に揺らめかすのみの軟体生物のような動きである。二つの山が水面から突き出ている。途方もない大きさの乳房であった。それは花であった。

 大山鬼太郎の眼前に陰が落とされた。陽光が遮られ彼の前に現れた巨体を大山鬼太郎は呆然と見上げた。人々を見下ろし、また逆にこちらを見上げる人々の驚いた顔が普段の光景であったが、力士である自分があろうことか見上げる立場になろうとは、大山鬼太郎は屈辱を禁じ得なかった。更に縦の長さだけでなく横の大きさにおいても遙かに負けていた。その時、大山鬼太郎の脳裏に兆した言葉は、「勝てるだろうか……」であった。大人と子供ほど大きさに違いがあったのだ。しかれども女。女には負けるはずがない。力士である自分の屈辱と女であることの侮り、そして世話になっている島民の住家にあった酒を勝手に拝借し酔いが回って気持ちが尊大になっている最中であったことが仇となり、「待ったなし!」こう叫ぶや否や手をついて立合から一気に前に出た。花は大山鬼太郎に組み付かれ、徐々に巨体が後ずさったがその動きは優雅とさえ言える滑らかなものであった。薄弱な眼差しを天空に向けていたが、ゆっくりと右手が挙がり、耳元の煩い蠅を叩くように大山鬼太郎を平手打ちした。その右手の動きは手首の角度として三十度ほど移動しただけであったが、もの凄い破裂音がして大山鬼太郎の身体は地面に打ち付けられた。
「馬鹿なやつめ……」
 小屋から出てきた権蔵はその大山鬼太郎の遺骸を見て不気味に笑った。
「花に挑もうとするとはな……」
 ぴくぴくっと大山鬼太郎の身体は痙攣していたが、最後に大きくびくんっと身体を震わせると痙攣が止まりそれから一切動かなくなった。大山鬼太郎の首から上はなくなっていた。

 大山鬼太郎の帰りが遅いので心配して探しに来た住家の島民はほとんど足を運ぶこともなくなった権蔵の小屋までやってきた。権蔵の、これからは島の行事や漁にも一切参加しない、という宣言が行われてからは島民も権蔵の住む丘の裏手までは来ることがなくなったが、まだ回復途上にある大山鬼太郎の身を案じた島民は権蔵を訪ねてきた。権蔵の小屋の前で赤やピンクの花がカッと咲き誇っているのを島民は一瞬驚きに眼を瞠ったが、よく見るとそれは血糊や肉片に過ぎなかった。魚を調理でもしていたのだろう、と思いながら小屋の中を見たがそこには誰もいなかった。島民が権蔵を呼ばうと、小屋の裏から声が上がり権蔵が出てきた。着物や手が砂に汚れていた。島民は大山鬼太郎を見なかったかどうかと権蔵に尋ねたが、「俺は知らぬ」と権蔵はそっぽを向いた。逆に「誰だそれは?」と尋ねる始末。大山鬼太郎という相撲取りで先日に船が難破して湾の沖合に流れているところを助けたのだ、と権蔵に説明する島民であったが、左手の海の向こうにプッカリ、プッカリと波間に漂う白い巨大な物体が目の端でちらついていたがそれに眼を配る者がいなかったのは、無意識の領分によるものか。その時、サッと頭上に暗雲が過ぎって陽光が隠された。「一雨来そうだな……」誰かが呟いた。強風が吹き荒れた。風が唸り始めた。権蔵はそんな男は知らないと言ったから島民はその事実のみを受け取った。ただ、今までと違う曰く言い難い何かが島民の身内に湧き上がっていたが、幸不幸という観念が存在しなくある意味で能面とさえ言えるその皮膚世界の生活のみを現実とする島民において、得体の知れない不穏な感情は皮膚に届く前に逸失し、海が荒れ始めたことから漁に出ることも能わず、随って生活の常であるところの住家に引き籠もって内職をする、という普段の生活に戻り、大山鬼太郎の所在については一先ず棚上げされた。

 それから島は再び元の生活に戻り、大山鬼太郎については忘却され、島民たちは漁をし隣島へ赴き飲料水や木材を調達し、特に問題も無く数ヶ月過ぎたある日、晴天の波間に彼方から船が真っ直ぐと島へと向かって来るのを島民は認めた。呆然とその船が島まで辿り着くまで皆々見詰めていた。編み笠姿の三人の男。そのどれもが山のように大きく、船が接岸し、島に降り立った彼らは、呆気に取られる島民たちの前に屹立し、辺りを睥睨している。
「おい。貴様」
 すると、その中の一人が島民を見下ろし不遜な態度でこう言った。
「大山鬼太郎という男を知らぬか?」
 そう言われて、島民たちから声が漏れた。はっ、と思い当たる名前だったのだ。嘘を吐くことを知らない、事実のみに立脚する島民の精神にあって、それは今回ばかりは不幸なことであったと言わざるを得ない。一人が編み笠を取り、着物を掴み諸肌を脱いだ。蒸気した赤い肌、山のように盛り上がった脂肪と筋肉。のっしのっしとこの男は島民たちの前に踏み出す。
「知っているのだな?」
 そして島民たちは事の次第を語った。最後に行方不明であり、もう数ヶ月誰も見ていない、と言うと、諸肌を脱いだ男は雄叫びを上げた。男は島民の頭をとっくりを持つように片手で持ち上げると、
「大山鬼太郎の居場所を言え。さもないと首を引っこ抜くぞ」
 と息巻いた。
「まあ待て。厳砂令素」
 もう一人編み笠の男が止めに入る。
「放せ。荒砂。こいつら鬼太郎に何かしたんじゃ。あの船から遭難してあいつだけが見つからず、せっかく生きていたのに行方知れずとは、ここで何かあったのだ」
「事情を調べてからにしようではないか厳砂令素」
 そう言うと荒砂は編み笠を取り、島民たちに更に詳細に事情を聞き出そうとしたが、先程の島民の説明以上のものは聞き出すことが出来なかった。ただ最後に島民の一人が、そう言えばと、大山鬼太郎の行方知れずとなる日のことに我が家の酒が随分と減っていた、と言った。その島民の家で大山鬼太郎を看護していたのであった。
「酒を飲み海で溺れたのか」
「馬鹿な。あいつに限ってそんなことはしねえ」
 その時、沖合からの強風が吹き荒れた。スペイン宣教師を父に持つ紅毛碧眼のこの厳砂令素は強風を前にして両手を広げて叫んだ。
「鬼太郎!鬼太郎!何処へいったのじゃ!」

 かくしてこの三人の相撲取りは島の見分を始めた。島民たちはその大きな三人の相撲取りに随い歩いた。しかし小さな島である。起伏もほぼない砂だけの島はほとんど端から端まで見渡せる。点在する島民の小屋を詳細に調べる相撲取りたちであった。とは言え何ら収穫はない。そして小高い丘の方へ足を運ぶ相撲取りたち。そこにはあの権蔵の小屋がある。権蔵は小屋の前で魚をさばいている最中であった。俎板の周辺の砂に赤い血が飛び散っている。眩しく太陽が砂を煌めかせ、赤い血が照り映えていた。
 荒砂は、あいつは誰か、と島民に問うている。島民は荒砂に事実のみを言って聞かせる。十八年前に島に戻ってきた出戻りであること。娘がいること。漁には参加しないことなど。魚をさばき続ける権蔵。落ち窪んだ瞳はさらに異様な光を帯びている。
「おい貴様」
 厳砂令素が権蔵の肩をむんずと掴む。藁人形のように権蔵の痩せた身体がかくんっと動いて厳砂令素の方に向けられた。
「大山鬼太郎……」
 を知っているか、と言おうとしたが相手の様子の異様さから口を噤んだ。怪しく光る権蔵の瞳は三人の相撲取りを認めると、口角が上がり薄ら笑いを浮かべるのであった。
「俺は何も知らないね」
 そう言うのであった。未だ一人編み笠を脱がず黙したままの男はそこから沖合に浮かぶものを見詰めていた。
「なんじゃあ!ありゃあ!」
 厳砂令素もそれに気付き驚愕に声を上げた。荒砂もそれに瞠目している。しかし、島民の誰もにその視線の先を辿る者がいなかったというのは、偶然によるものであろうか。互いに話し込んでいたり、考えに耽っていたり、足元の砂を見詰めていたり、その金色の沖合に浮かぶ白い物体を認めた者は結局いなかったのだ。見る間に日が陰り、厚い雲に辺りは覆われた。強風が吹き荒れ、「一雨来そうだな」誰ともなく呟いた。雨がくれば、家に引き籠もり些細な内職でもするものだ。島民は丘を下り各々の家へと帰っていく。三人の相撲取りを残して。

 雷鳴が轟いている。激しい雨が三人の相撲取りの肩を叩く。権蔵は魚をさばいている。荒れ狂う波間を真っ直ぐと向かってくる白い物体。激しい雨粒が丘の一部を崩れさせた。夥しく降る雨はすぐにも砂の中に吸収される、荒砂はその崩れた丘の中から顔を出した骸骨を呆然と見ていた。その二つの黒い暗黒と互い見詰め合っていた。
「鬼太郎!鬼太郎!お前は鬼太郎か!」
 厳砂令素が髑髏のもとに駆け寄る。その骸骨を取り上げ、両手で抱きながら、戦慄し震えている。権蔵は魚をさばいている。白い物体は浜に到達しむっくりと起き上がった。
「お帰り。花。ご飯もうすぐだからね」
 権蔵の異様に輝いた瞳がその物体を見上げた。途方もなく巨きい白い物体、二つの豊満な乳房が左右に揺れている。雷鳴が轟き、がばっと厳砂令素が身構えた。厳砂令素の突き押し、豆腐のように花の肌が震えて厳砂令素の押しの衝撃だけでなく、厳砂令素自体を吸収した。しばらく厳砂令素は花の腹に埋まったままだった。花の右手が自らの腹に付いた虫を払うように少し手首を動かした。すると衝撃音が響き渡って厳砂令素は飛び散った。花は何事も無かったように歩き始めた。足元で厳砂令素の肉塊が転がっている。技巧派の荒砂はさっと花の足にしがみついて、引っ張りながら引き倒そうとするが、びくともしない。花の優雅な手がぺんっと足元の荒砂を叩いた瞬間、荒砂の身体はずぼっと砂に埋まった。頭部がなくなっていた。いや半身が砂に埋まった荒砂の頭部は、肩の中に埋まっていたのだ。
 編み笠の男はいよいよ編み笠を投げ捨て諸肌脱ぎになった。紀州和歌山藩藩主徳川頼宣こと南竜公からもっとも寵愛を受ける当代随一の相撲取り。江戸勧進相撲でも台風の目と目される鏡山沖右衛門であった。すっと土俵に手をついて花を前に立ち会う。その厳しい立合は石鎚が師なり。金剛力を振り絞り、気迫の掛け声とともに、花を抱え上げた。嵐の中に気迫の叫び声は響き渡った。カッと稲光が走る。蟻は自らの体重の十五倍の重さでも持ち上げると言うが、稲光に浮かび上がった光景がまさにそれであった。そしてまた次の瞬間、岩を持ち上げる蟻の四肢が、ぱんっ、と破裂した。花は再び砂の上に降り立ち、優雅な足取りで小屋に向かう。俎板の上の切り身を指先で抓み持ち、口に運ぶ。一通り食べ終えると花は再び海へと入っていき、荒れ狂う波間に漂った。
「俺は何も知らねえ。本当に何も分かっちゃいないんだ」
 権蔵は足元に転がる、厳砂令素、荒砂、鏡山、そして鬼太郎に向かってそう言った。
「あの子は全く花だよ。母親の腹の上で始めて咲き誇った時からな。へへへ……」



 それから五年後権蔵は死んだ。権蔵が死ぬと花は島に執着せず、そもそも花の意識に何かに執着することがあるだろうか、彼女は瀬戸内を泳ぎ去り、外洋へと出て行った。そしてその行く先々の海で噂され恐れられ伝説化されていった。捕鯨船員の間で白い巨獣と呼ばれるにいたる頃、すでに百年を経過していた。島民たちは、大山鬼太郎、厳砂令素、荒砂、鏡山だけでなく、花という権蔵の娘もまた行方不明だった、ということに権蔵が死んで始めて気付いた。島民たちは偶然によるものか、花という少女を初めて見て以来、ついぞ見た記憶がないことを不思議に思ったが、漁をし隣島に赴き木材などを調達する生活を近代まで営んでいた。近代化とともに皆島を出、各々散らばっていった。

瀬戸内に浮かぶ小さな島に再び舞い戻った男、権蔵。その権蔵の両手に抱かれた巨きな女の子。権蔵はその子のことを花と言った。 花はすくすくと大きくなるが反対に権蔵の瞳は落ち窪み異様な輝きを帯びていく。 そして、島に血なまぐさい事件が起こるのであった。

  • 小説
  • 短編
  • 時代・歴史
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted