銀魂【二次創作BL】

蒼井 紅 作

銀魂【二次創作BL】
  1. 1を教えるのには10を知らなければならない
  2. 二兎追うものも二兎得るかもしれない
  3. 三尺下がって師の影を踏まず

集英社少年ジャンプの「銀魂」二次創作。原作者:空知英秋。
この作品は二次創作となり、原作者、並びに「銀魂」公式とは全く関係ございません。そのことを踏まえた上で読書を楽しんでくだされば幸いです。
以下、それ以外の注意事項。
●BLです。
●オリキャラあり
●コメディ、シリアスあり。

1を教えるのには10を知らなければならない

「ああ? 寺子屋?」
煙を細く吐いて、その男は目の前の部下に自身の引っ掛かりを問いかける。
「ええ。このところ、無料で子供達に教えを説いている男がいるという噂があるんです」
「……こんなご時世に酔狂なやつぁ、1人や2人はいるとは思ってるが、無料でやってるとはな。んで、山崎。それが何だ。問題があんのか」
部下の監察は相当な手練れだ。こんなことで上司に報せることはない。何か気になることでもあるのだろう。
「はい、……関係あるのかはわかりませんが、数十年前でしょうか。同じようなことが別の場所であったんです。無料で提供している寺子屋が。なんでも、そこの塾生の中に攘夷浪士になったものがいると」

【真】
松下村塾。俺はガキの頃だったから覚えてねえが、そんなもんがあったなんてな。しかも今度はこの江戸でだ?別に無料で知識を与えるのは良い。だが、「無料」というのがいけ好かねえ。……引き続き調査を山崎に頼み、俺は一服タバコを吸い、吐き出す。まあ、深く考えるまでもねえだろう。
見廻りついでに、行きつけの定食屋に足を運ぶ。いつも通りに土方スペシャル丼を頼み、いつも通り箸で口へ掻き込む。すると、俺の隣にいつもの天パが座り、いつもの猫の餌を頼んだ。興味もないので、掻き込んだスペシャル丼を大切に咀嚼していると、ふと思い出す。……そうだ、こいつに聞けばわかるかもしれねえ。
「おい、万事屋」
「あ? まーた、犬の餌食べちゃって。今度は何? 別にお前の顔見ながら食事したくないんですけどー」
まった、こいつはっ!! 俺の堪忍袋を膨れ上げさせやがって!! だが落ち着け。今はそんなことしてる場合じゃないっ!
「だったら目をつぶって食え。万事屋、お前に聞きたいことがある」
「目をつぶってたら食べたくても食べれねえだろ!! って、ん? 聞きたいこと?」
いつにもなく喧嘩腰にならない俺に疑問を感じたのか、流石に聞き返してきた。おい、小豆が頬に付いてんぞ。
「ああ、お前、攘夷志士だったんだろ。最近、それに関する噂があってな。お前は知らねえかと思ってよ」
小豆が付いてることを指で示しながら、山崎から聞いたことを告げる。珍しく大人しく俺の話を聞いている万事屋。その間に、万事屋の目線、仕草に目を凝らす。職務上、人の動きでそいつの心中がわかるようになってきた。緊張、嘘、図星……。些細なことから拾える情報はある。
「松下村塾と言ってな、そこの塾生に攘夷浪士になったやつがいるらしい。名前は挙げられてねえし、人数もわかっちゃいねえ。本当かどうかもまだはっきりしてねえ。だが、元攘夷志士のお前なら何か情報が出るかと思ってな」
本日何本目なのかわからない、タバコを取り出し、火を付ける。一服煙を吸い、ゆっくりと吐き出す。……俺も、何かしら焦燥感というのを隠してんだろうな。……何に焦ってんのかわからねえが。少なくとも、万事屋の目が一瞬……ほんの一瞬だが据わった。
「俺は知らねえ。攘夷時代の頃、そんなに馴れ合いなんてしなかったしな。高杉、ヅラしか知らねえよ。少なくとも、あいつらがするようなことじゃねえ」
声が震えてる。万事屋にしては珍しい。だが……。
「俺は『そいつらの中で無料で塾を公開するような奴はいるのか』なんて聞いてねえよ」
万事屋が何かに気づいたように俺に向き直った。へっ、バレバレなんだよ。
「知ってんだろ。塾講師が誰なのか。……いや、知らなくても、可能性のある奴が」

結局、万事屋はあのまま黙り込み、俺の言葉も聞く耳持たずだった。無理に聞き質すのは憚られた。だが、逆に俺へ質問責め。
やれ場所はどこだ、やれどこまで情報があるのか、やれ情報共有はできるのか。別に大きな事件ともなり得なさそうだからと、近藤さんと相談して、万事屋にも協力してもらうことになった。……心配事も尽きねえが……。……万事屋も怪しい。まあ、元攘夷浪士だ。張り込みしても問題ねえだろう。


【?】
貧しい子供達が俺に笑顔を振りまき、質問をしてくる。それにわかりやすいように掻い摘んで答える。その繰り返し。
狭い小部屋。俺の家を塾として、お金を取らずに知を授ける。昔、師から受け継いだことをこうしてまた提供する。その繰り返し。
こんなことが世の中で黙認されているとは思わない。快く思っていないものもいるだろう。それもそうだ。昔もそうだったのだから。だけど、俺は悪いことだとは思わない。実際、人に危害を加えていないのだから。人は与えられて、与える。……昔の友人が言っていたような気がする。
早風(はやかぜ)先生! また金田(かねだ)くんが寝てるー!」
一番前の席の真面目な女の子が、壁際の男子に向かって指を指し、俺に報告してきた。しかし、その表情は笑顔だ。
俺はその男の子に近づき、持っていた教科書で軽く叩く。驚いた少年は俺を見上げると、不貞腐れたように自身の教科書を持って筆を取り、書き進める。
……俺はこの世界が好きだ。

数時間が経ち、辺りが赤く染まり烏が鳴き始めた頃、予鈴も街を包んだ。
「はい、今日はここまで。みんな、まっすぐ家に帰ってお母さんの作った晩御飯を一粒残らず食べること。それじゃあ、また明日」
街の予鈴が俺たちのチャイムだ。元気よくみんなでまとまって帰っていく子供達を見送って。
家の片付けを軽く済ませると、外に赴く。

夜ご飯に定食屋へ行くのが日課になっている。秋刀魚の定食を頼み、運ばれてきた料理を口に運びながら周りの話に耳を傾ける。
最近、俺の塾のことが噂になっている。今でも情報通な客はペラペラと喋る。まあ、これで子供達が増えてくれるのは嬉しい。だが、噂は悪い噂の方が出回りやすい。無料で子供を集めて人身売買だの、悪い教えを説いてるだの……。あの時と同じだ。……こんな時先生は……。
すると、隣で座っていた酔っ払いのおじさんの話が耳に入った。
「そういや最近よ、八百屋で盗みが発生してるらしいんだよ。なんでも、犯人はガキなんだと。これが逃げ足早くてよー。やっぱ、梅花桜塾(ばいかおうじゅく)の悪〜い噂、当たってんじゃねえの?」
……有り得ない。俺の生徒たちが。優しくて、元気で、身寄りもなくても……俺に笑顔を向ける子供達が。
知らずのうちに拳を握り、体が震えていた。こんな奴らにわかってたまるか。
「あー、その梅花桜塾? って、どこにあんの?」

あまりにイライラして、周囲の一切を遮断し、秋刀魚定食を食べ終える。綺麗に、残らず。

二兎追うものも二兎得るかもしれない

【梅】
夕方の予鈴が鳴ると、子供達が帰っていく。笑顔で見送り、片付けをしていると、玄関の戸から誰かが入ってくる。
「あれ、何か忘れ物……っ!」
生徒の誰かが忘れ物でもして帰ってきたのかと思い、振り返ってみると、そこには大人がいた。銀髪が目立つ男。木刀を腰に携えている。そういえば、万事屋という何でも屋の銀髪の男が、江戸で活躍していると聞いていた。もしやそいつか……。なぜこんなところに……。考える間も無く、男は家に不躾に入ってくる。
「よぉ、久しぶりだな。っつっても覚えてねえか? お前、すぐ人の名前と顔忘れるもんな」
いや……その顔は……。その声は……。
「今は万事屋として働いてる。坂田銀時。……松下村塾、吉田松陽の弟子だ」
「……っ!! 今更何だよ!! 忘れようとしてたのに……忘れてたのに!!」
昔の旧友、昔の仲間、そして……憎き仇。沸々と、懐かしさよりも憎しみが大きく包み込む。
「すまねえな、今はんなこと関係ねえ」
「……っ!!」
思わず、怒りで固く握った拳を振りかぶるも、相手に軽く止められ。
「別にここで殴り合いとかしてもいいけど、話進まねえんだよ。……最近起こってる盗難のことだ」
「!? ……盗難?」
「八百屋付近でいろんな商品が盗まれてる。心当たりがねえかって思ってな。そして、目撃証言によると、犯人は子供だ。男の子っぽいが」
「……そんなの、江戸中の男の子に聞けばいいんじゃねえのか? 家に入ればその商品があったりして?」
大丈夫だ。今のところ梅花桜塾(ばいかおうじゅく)ってバレてねえ。隠し通せる。……まだ、潰れるわけにはいかない。俺は生徒を信じるが……可能性は……。
「だいたい、万事屋の仕事か? 警察の仕事だろ。こんなことして意味あんのか?」
少し勝気な態度で問いかけると、銀時は玄関口に目を向けた。俺も目線を移すと、そこには真選組の制服を着た、鬼の副長が立っていた。
「家に入ればその商品がある。そりゃああるだろうよ、八百屋の商品だからな。野菜なんてどの家にもある。どの野菜が盗まれたかもわからないのにどうやって調べる」
男はタバコをふかしながら、鋭い目で俺を見る。やばい、そう予感がした。
「……単刀直入に聞く。何を隠してる? 隠してると尚更疑い深くなる。要らねえ隠し事はするな。後々面倒なことになる」

俺は観念して曝け出した。鬼の副長には逆らえない。逆らったとしてもどうせバレる。……そもそも、隠す必要があったのかというところに尽きるが、やはり世間の目が怖かったのだろう。俺の心の弱さに笑える。
予想に反して、銀時と鬼の副長は驚くことはなく、納得の表情だった。
「まあ知ってた。ここが梅花桜塾だって。聞いたんだよ。どこにあるのかって。噂程度で曖昧だったけど、辿り着いた。ただ、本人の口から聞かねえとわかんねえ。ここ、看板も何もねえじゃねえか。……まあ、そうする理由もわかるけどな」
「ってことは……今までのは俺の口から吐き出させるための芝居!?」
だが、鬼の副長はタバコを吸い柄に押し付けると、眉間に皺を寄せ、
「いや、芝居売ってはいたが、この事件は本当だ。犯人が子供な以上、裁きも何もできねえが、取り締まる義務はある。協力を頼みたい」

銀時と並んで歩く。無言で、目を合わさず。
あの後、結局俺は真選組に手を貸すことで承諾し、元攘夷だということも(銀時のせいで)言わざるを得なかった。つか、銀時は鬼の副長に自身の素性を言ってたらしい。まあ、「元」となると真選組も動けねえんだろう。専ら、活動しているヅラか高杉か……、そちらの方に尽力してるようだ。ただ、だからといって見逃すというわけでもなさそうだが。
「……他の奴らには会ったのか? ヅラとか……高杉とか」
「……ヅラには会った。つか、ずっと会ってる」
ポツポツと言葉が出ては地に落ちていく。鬼の副長は一旦屯所に行って報告してくると言い、俺たちを見て「どうせずっと会ってなかったんだろ。懐かしい思い出話でもしてろ」と言い残して去っていった。
ただ、何もない。
こいつの顔を見るだけで、声を見るだけで、懐かしい感情も何も……。憎しみだけが湧いて出る。知らずに拳を握りしめ、歯軋りをしていた。
「そんなになってまでイラつく顔が目の前にあるのに、何で殴ってこねえ? 何でお前は松陽の真似事をしてる?」
握っていた拳を緩める。
「殴って、何が変わるんだよ。松陽は戻ってこねえ。だったら……、松陽が残した……残そうとしたことを……俺らが残すのが筋ってもんだろ」
「……そうか、ならいい。んでも、溜め込むのはやめとけよ。お前、切れると怖えから」
「お前は……万事屋ってのをしてるらしいな? それで何を得た?」
「……知らねえよ。少なくとも、お前らじゃねえ仲間だ」
晴れ渡った顔でそれを言う。
「……俺らって、もう戻れねえんだな」
「…………、それこそ知らねえ」
また沈黙が降りる。銀時の抱えてることがわからねえ。自分の師、自分の育ての親をその手で殺しても……平気でいられるものか?
「……高杉は? 会ってねえのか」
「会った。ヅラほどではねえけど。お前と違って、俺に殴りかかってくるぜ」
「そりゃそうだ。高杉も銀時と同様、松陽が好きだったから。……銀時、お前、何を考えてる?」

「何も。考えてねえよ」

「……あと、俺らはどこに向かってんの? 無言で歩いてるけど、どこいってるの?」
「はぁ!? 銀時が行きたいところに行ってるんじゃなかったの!? 何だよ、なんか目的があって歩いてるのかと!! あー、……じゃあ、その八百屋のところ行こう。もうウジウジすんのやめ! 銀時が何考えてるのかとか、んなのどうでもいい!! どうせ言わねえんだろ、ほら、いくぞ」
銀時の着流しを強引に掴み、八百屋のところへと歩を進める。過去のことは過去。俺は俺、銀時は銀時だ。とりあえず、真選組の情報を洗いざらいにする。といっても、目撃証言もある。すぐにわかりそうなものだが。
「こんなこと言うのも何だけど、俺はお前の塾生の中に犯人がいると思ってる」
「……っ!」
「憶測だから何とも言えねえけどな。まあ、ガキは何考えてるかわかんねえ。とりあえず聞き込みするか」
まずは被害にあった八百屋の店主に話を聞く。
「あー、いつも夜にガキが来るんだよ。時間も定まっちゃいねえし、日も、来たり来なかったりだ。天気? いや、関係ねえな。雨でもくるし、晴れてても来ないこともある。格好? 男の子だが……変装が上手くてな。どのガキが盗人かわかったもんじゃねえ。いや……集団の可能性もあるな……。ほら、梅花桜塾ってあんだろ? あそこなんじゃねえかって女房と話してんだ」
「変装? ガキが? いやいや、ガキができることじゃねえと思うぜ。そりゃ梅花桜塾が怪しいですねー」
銀時の頭を殴って、一旦、八百屋から離れる。
「お前は俺の塾をナメてんのか!! 俺の塾生がそんなことするわけねえだろ!」
胸ぐらを掴んで、揺さぶりながらいろんな怒りを込める。
「するわけない? じゃあ、塾講師さんよぉ、生徒の何たるかを全て知ってるとでも? 塾が終わった後、子供たちが何をしてるのか、わかってるとでも?」
「__っ!」
「八百屋のおっちゃん、そのガキンチョ、『いつも』夜に来るんだよな? ただ、日と時間が定まってないだけで、夜なんだよな?」
俺に胸ぐらを掴まれたままで、銀時が八百屋の店主に大声で尋ねる。
「おう、そうよ。張り込みしてもいいが、確証はねえぞ。こっちも、いろいろ対策しねえとな。営業時間ずらすかもしれねえ」
「そりゃ懸命なこった。でも、江戸中の奥さん方が悔しがるだろうな」
「まあ、仕方ないこって。こちとら商売なんだ。その奥さん方のためにも野菜を新鮮に、一個でも多く品を並べるのが筋ってもんよ。そのためにも早く捕まえて欲しいもんさ」

「……そういうこった。塾はいつ終わる? 夕方だろ。塾生の可能性もなきにしもあらず。……塾生以外も、無きにしも非ず」
「……っつーことは一歩も進んでねえじゃねえか」
「まあ、要はここで張り込んで、そのガキの面を拝もうぜってこった」

鬼の副長を呼び出し、3人で張りこむことにした。俺は八百屋の向かいにある花屋で。鬼の副長は八百屋の後ろ、銀時は八百屋の隣の精肉店で。俺と銀時は怪しい人物を見かけたら随時、鬼の副長に知らせること。鬼の副長はすぐに飛び出せるように八百屋で待機するようにした。
辺りは暗くなりつつある。八百屋の客も減っていく。その中に子供はいない。今日は来ないのかもしれない。そう思った矢先、花屋に子供が1人入ってくる。俺は影に潜み、その顔を覗く。……見知ってる顔。金田くんだ。……いや、ここは花屋だ。誰かに花でも買ってあげるのだろう。そう思い、朗らかな気分で見ていると、花屋の店員と話しながら、滑らかな動きで一本の花を盗り、袖の袂へ入れ込むのが見えた。
__息が止まる。と同時に、無線が入った。
「来たぞ!! 取り押さえろ!」
八百屋の方から1人の子供が逃げていくのが見えた。そこを銀時が取り押さえる。子供だからか、簡単に捕まえられた。この騒動に、金田くんは動揺し、悟られまいとゆっくり歩きながら、騒動に紛れて逃げようとする。
銀時たちがいる方とは逆の方向へ。俺は金田くんの後をついていく。
俺の塾生、愛ちゃんの家に着いた。授業中、金田くんの昼寝をいち早く察知し、俺に報告する女子だ。いつも明るく、クラスメイトの人気者。その愛ちゃんの家の前に立ち、金田くんは頬を染めながら、玄関の戸を叩こうか叩かまいか逡巡し、結局、袖の袂から一本の花を取り出して、玄関前に置いただけだった。そのまま、その場を去っていく。俺は、金田くんを見守りながら、歩み寄り、花を手にとって、声をかける。
「金田くん。いけませんね。こういうのは」
「__っ!? せ、先生!?」
金田くんは、肩を大きく跳ねさせて勢いよく振り返る。青ざめているのか赤くなっているのか、よくわからない表情で慌てている。
俺は花を金田くんに見せ
「これ、どこから取ってきましたか?」
「……っ、そ、それは……、道端に咲いてたんだよ。摘んで悪いかよ」
「ええ、悪いです。殺生をしたものを好きな子に与えることは。与えるものを間違えてます」
「……せ、」
「何も、殺生を咎めているわけではありません。好きな子には正々堂々と、お金を払い、感謝と気持ちを伝え、嘘偽りなく曝け出しなさい」
「先生!!」
「……なんです? 窃盗してまでも伝えたかったことなんでしょう? あ、でも、食べ物の殺生は大丈夫ですよ。鶏肉、美味しいですから」
「……見てたんだろ。何で咎めねえんだよ! ガキだからか!? 金がねえから仕方ないってのか!?」
「……それもそうかもしれません。だって、まだ何もわからないんですから。それを教えたのは親であり、俺でもある。責任は俺たち大人にあるんだよ」
金田くんの頭を撫でると、金田くんは大きな涙の粒を瞳に溜め、しゃくり上げながら泣き始める。
後ろから3人の足音が聞こえる。
「ったく……事件は2つとも起こってたってことか。しかも1つはある塾に憧れて。もう1つはその塾生の恋路か。梅花桜塾は隅におけねえや」
鬼の副長がタバコを吸い、吐きながら言う。
銀時と鬼の副長の間に、八百屋から逃げ出そうとしてた男の子がいた。盗みなんてしない、裕福そうな着物を着た子供だった。
「塾に憧れて?」
「なんでも、梅花桜塾という塾が気になってたらしいな。悪を働かせる塾って聞いて興味が湧いてこれだ。悪い噂ってのは人を動かすんだな。しかも悪い方向に。おら、その塾講師に謝れ。噂に踊らされてごめんなさいって」
鬼の副長の言葉で、一瞬銀時を見やる。……目をそらされた!!
「ほらぁ、こんな良い講師、そうそういねえぞ。いやでも、盗んだんだよな? 花を盗んだってことだよな? お前誤魔化してるけど、してるよな? 塾講師様、責任取るんだよな? 俺は別に間違ってないよな?」
「うるっせえ!! してやるよ!! 銀時とはちげえんだよ!」
「よぉし、言ったな? 土方、お前も聞いたよな? 責任取るって」
「ああ、この耳でしっかりと聞いた。何なら録音もしてる」
鬼の副長が内ポケットから録音機を取り出す。
「え、お、お前ら! 先生に何すんだ!!」
「心配ねえって。ちょっとお灸を据えるだけだって」
「もう夜遅い。ガキは家帰って寝てな。なぁに、別にとって食いやしねえよ」
「せ、先生……」
「大丈夫です。この人たちは俺の友達だから。照れ屋なんですよ。酷いことされたりしませんから」
「お、俺のせいで先生が……」
「ほら、また明日会いましょう? 新しいお友達を紹介しなきゃいけませんから」
2人の頭を撫で、裕福そうな子供に話しかける。
「君の名前は?」
「……白川(しらかわ)

「……え?」
屯所内、土方と面合わせに、銀時と一緒に間抜けな声を出す。
「だから……高杉がここに来てるかもしれねえ。あいつがどういう算段で来るのかわかったもんじゃねえ。そこでだ、高杉と元仲間だったお前らなら、分かるだろうと思ってな。……明日、ここが狙われる」

三尺下がって師の影を踏まず

「高杉が? ……ヅラじゃなくて?」
「どうもそうじゃねえ。桂と高杉が組んだというわけでもねえだろうな。ただ、屯所の入り口にこれが貼ってあった」
土方が内ポケットから一枚の紙を取り出して、俺たちに見せる。
『明日、貴殿の大将の首を貰い受ける 高杉』
「俺は高杉のことを上手く嗅ぎ回ってねえ。ただ、普段こういうことをする奴とは思えねえ。だが……だからといってこれは見過ごせねえ。少なからず、俺の大将が命を狙われる。それは間違いねえだろう。だから……力を貸して欲しい。これが早風(はやかぜ)(れい)のお灸だ」

俺と銀時は屯所内で一部屋を借りる。銀時は今までの話を聞いてたのか聞いてなかったのか、すぐさま床に寝そべり、宙を見つめていた。
「……どう思う?」
「どうって?」
「高杉がわざわざ果たし状を書いて送るか? ご丁寧に名前まで付けて。もし、本当に高杉だったら、裏があるとしか思えないんだけど」
銀時は体を横に向けて、肘を立て、手に頬を乗せて俺を見つめる。
「……知らねえ。高杉の考えてることはわかんねえ」
「でもお前ら……」
__突然、けたたましい音が屯所内を駆け巡る。そして慌ただしく廊下を駆ける隊員たち。皆、剣を構えながら緊張した面持ちで音のした方向へ向かっていく。
俺も向かおうと足を向けると、裾を引っ張られる。振り返ると、銀時が体制も崩さずに、俺の裾を引っ張っていた。そして銀時は小さく首を振って、人差し指を口元にかざし、シーっと空気が抜ける音を出した。その通りに静かにしていると、隊員の足音がピタリと止み、隊員の群れが途切れた。と思ったら、廊下をゆっくりと歩く音が聞こえる。慌ただしさの後の静けさに、嘲笑うかのように静かに、ゆっくりと床を踏みしめる音。次第に、冷や汗が出る。近づいてくる音に懐かしさを覚えたと同時に、危険信号が頭で響く。ゆっくりと振り向くと、廊下から女物の着物を着て、煙管を吹かせる高杉が姿を見せた。

長い沈黙の後……、高杉が口火を切る。
「久しいな、銀時、澪」
銀時と俺はその声を聞いただけで、口を開かずに沈黙を守る。
ふと、風が舞う__。
俺の横を高杉が過ぎる。煙管の煙の匂いが鼻に付く。俺の後ろで呻き声を上げながら、銀時が転げ回るのが聞こえる。横の高杉を見ると、刀を手にしていた。
「銀時、わかってんだろ。狙いはサツの大将でも、サツの全滅でもねえ、お前の首だってなァ!」
高杉が大きく一歩を踏み出したところを、左足を差し出して引っ掛ける。それと同時に、相手の腕を引っ張り、地面に叩きつける。高杉の抵抗で頬に傷がついた。必然的に俺が高杉の上に馬乗りになった。
「はっ、なんで止める? お前だって先生が居なくなって、こいつを憎んでるだろ。なんで……俺と来ない? なぜ……その憎しみをあいつにぶつけねえ!?」
「……悲しいよ、俺は」
「……ああ、そういえばそうだったな。おめえ……銀時に恋してたな?」
「……っ!?」
「何を驚いてやがる。隊員の中じゃ有名な話だ。……はっ、そりゃ止めるはずだな? 恋する相手を死なせまいと。飛んだ誤算だ……」
「……」
「……お前は俺を斬るのか?」
一瞬、高杉の瞳が揺れた。高杉だって……。
「お前だって……俺のこと好きなんだろ」
高杉が歯を見せ、妖艶に笑むと、瞬間、顔が近づき、唇を奪われる__。
唇が離れると、妖艶な笑みはそのままに、銀時の方へ顔を向ける。銀時は転がってそのまま、壁に寄りかかっていた。
「銀時、お前はどうなんだ? 二人の気持ちが知れたところで……、お前の気持ちは」
銀時はそれを聞き、ゆっくりと起き上がる。俺たちのそばに歩み寄り、しゃがみこんだかと思うと、俺と高杉の後頭部をそれぞれ掴み
「んなの知らねえよ」
__火花が散った。

【鬼】
澪は変わっていなかった。銀時もポンコツさはそのままに、何も変わっていなかった。
……変わったのは俺だけだろうか。

頭に走る鈍い痛みに目が覚める。ここはどこだ。銀時のせいで澪と額をぶつけて意識を手放していた。まだ痛みもあるくらいだ。どのくらいの強さでぶつけやがった、あのポンコツ。
上半身を起き上がらせると、やはり脈打つように頭が疼く。居場所を突き止めようと、周りを凝らすと、また子、万斉が布団に寝かせられていた。丁寧に包帯も巻かれ、傷の手当てをした後のようだ。
部屋は和室。襖の向こうではガキどもの声が聞こえる。聞き慣れない声だ。どこかは判別がつかない。動かない方がいいだろう。
そう判断したと同時にその襖が開く。咄嗟に起き上がり、鞘から刀を……っ!
刀は押収されていた。また子の拳銃も、万斉の弦楽器もこの部屋にはない。入ってきた男に目を向けると、思考が止まる。
「……銀時……」
どういうつもりなのか、なぜここに……、いろんな疑問が喉元に出かかるが、あまりにたくさんありすぎて息となって出るだけだった。
「よぉ、とりあえず、お前に科せられた刑罰だ。一生万事屋として働いてもらう」
ただの冗談だろうと思い、沈黙を貫いていると、
「おいおい、だんまりかぁ? まあ無理もねえな。……あのままお前らがあそこにいたら捕まえられてた頃だ。あそこの局長と副長に掛け合って、お前を借りたってところだ。んで……あの張り紙はなんだ? お前の目的は? 俺の首だろうけど」
飄々と余裕そうに頭を掻きながら説明する銀時。
「そう簡単にサツが俺をお前に預けるか?」
「ちょっと? 質問してるのは俺なんだけど。まあそうだな……。副長はすっごい怒り任せに怒鳴ってきたな。でも、昔馴染みの俺の方が打ち解けやすいだろうって騙されてくれた。ってことで、別に答えなくていいぜ。俺としちゃ、お前の目的とかどうでもいいからな」
……こうも隙があると首を取ろうにも取れねえ……。
いつも昔から掴みどころがわからないやつだった。普通、恨みを買ってるやつと一緒にするか?
「ああ、ちなみに、澪もここに来るから。あいつ、松陽の真似事して、先生になってやんの。あんなボロ家より、ここでやればいいんじゃねえのって提案したら、快く承諾したな。……お前から俺を守ってくれるってのもあるからすげえ心強い」
こいつ……後者が目的だろ。
俺と銀時が話してると、澪も万事屋に入ってきたようだ。玄関の戸の音がし、複数の子供達が入ってきた。銀時の向こう側にいる、神楽と新八というガキに挨拶をし、借りたのだろう、空いた部屋へ入っていく。
「懐かしいだろ」
「……ああ」
思いがけず、かつての俺たちの姿を澪の生徒たちに重ね合わせていた。

銀魂【二次創作BL】

銀魂【二次創作BL】

【銀魂二次創作BL】 __かつて、攘夷四天王と呼ばれた4人の隣で、一際目立つこともなく、名を轟かせることもなく、その剣を振るっていた男がいた。その男は早風澪(はやかぜ れい)。攘夷戦争が終わった後の、4人が集まるまでの笑いあり、恋あり、謎ありのドタバタ劇。

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日 2019-04-11

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work