なつぞらダイバー 第1週: なつよ、ここが十勝だ

なつよ、ここが十勝だ

ようこそ、ムービーダイバーへ
ムービーダイバーは、お客様の希望する小説、映画、ドラマの作者、脚本家の傾向を分析し、AI化する事で、お客様の希望するストーリーの中に入り込む事ができる、
バーチャル体験型アトラクションです。

俺は、初めてムービーダイバーの店舗に入った。
「いらっしゃいませ。初めてのご利用ですか?」
女性店員は、テキパキと会員登録を済ませて、システムの説明をした。
「お客様は、どの物語へのダイブをご希望でしょう?」
「なつぞらできるでしょうか?」
「今放送中のドラマですね。できますが、まだ先のシナリオが確定していないので、この先の放送と整合が取れなくなる事があります。その点をご了承頂ければ、サービス致します。」
俺はその点を了承して先に進めた。
「ではこの物語の何処にどの様な立場で参加されますか?」
「第1週放送のお父さんと戦友が満州の戦地で交わした約束にもう一人の戦友がいたという設定でお願いします。」
「了解しました。ほとんど映像化されていないシーンですね。ムービーダイバーは脚本家の傾向をAI化しているので問題なく実現できます。それでは、カプセルに案内いたします。」
俺は店員に促されるままカプセルに入った。
すると急に虹色の光に包まれ俺は意識を失った。

ーーーーーーー

「彼が今日からこの舞台に配属された真田二等兵だ。
奥原!面倒をみてくれ。」

感じの悪い上官に奥原さんの元で作戦に参加するように命じられた。
しかも、その日の夜に、敵の砦を急襲する作戦が計画されている日だ。

奥原さんが笑顔で近づいてきた。
「真田さんよろしく。奥原です。今日の作戦の協力お願いします。」
偉ぶるでもなく、腰の低い男だった。

「真田君は今日が火曜日で運がいいよ。」
「?」
「僕がこの部隊に来たのも火曜日だった。そして、急に大きな作戦があって、仲間が危機に陥ったんだけど、それを乗り越えて、勝つことができたんだ。
今日も火曜日、君もきっと大丈夫だ。なぁ柴田!」
少し離れたところにいた、柴田が振り向いて答えた。
「また、火曜日の武勲の話をしてるのか?真田君胡散臭い話だけど、信じていればリラックス、、、、いや、緊張もほぐれるからね。信じたほうがいいよ。」
僕は彼らのノリがよくわからず、愛想笑いをしていた。

その夜、作戦は予定通り開始された。
我々のいた部隊の駐留地から西に進む峠に、敵の砲台を攻略するのが作戦だ。
砲台の周りには塹壕がめぐらされ、その中からもぐらたたきの様に敵が移動し現れ攻撃してくる。非常に厄介な状況だ。

我々は敵に見つからずに、砲台に近づき、迫撃砲で攻撃し破壊。
その後根気よく、塹壕の敵兵を倒していく作戦だ。

我々は暗闇を進んだ。
砲台まであと、100mまで近づいたとき、敵の砦から光の玉が打ち上げられた。
照明弾だ!
見つかった!!!
敵からの銃撃がはじまった。
我々の部隊も展開して反撃した。
奥原と柴田はその場に迫撃砲を設置して、攻撃を開始した。

戦闘開始後しばらくは、互角の戦況であったが、やがて敵の砲台が砲撃をはじめ、一気に形成が不利になってきた。

俺は奥原さんの指示にしたがい、ひたすら迫撃砲に弾を込め続けていた。
しかし、我々の部隊は全く進むことも退くこともできな状況になり、徐々に消耗していった。

やがて、夜明けが近づき辺りが白み始めたとき、仲間の状況が確認できるようになってきた。
すると、なんと、柴田が完全に孤立して岩陰で銃撃に耐えている姿が見えた。

「柴田ー!」
奥原は唇をかみしめた。

ただ、我々も敵の銃撃の合間に迫撃砲を一発づつ撃つのが精いっぱいだ。
砲台に狙われたらひとたまりもない。

奥原は辺りを見渡し、俺に語り掛けた。
「真田君!迫撃砲の脚をたたんでくれ!」
「撤退ですか?」
俺は銃撃と砲撃に恐怖して、柴田さんの事も忘れて逃げ出したくなっていた。
しかし、奥原さんは首を横に振って、砲台をゆびさした。
「あの砲台を狙う!今から僕が指示するタイミングで、あと20メートル全速で走って前進する。あの岩陰が目印だ!あそこで、すぐに迫撃砲を設置して、一発で仕留める。」

?そんな、この銃撃の中を20メートルも前進するなんて不可能だ!
それに一発で仕留めるなんて。。。。。

俺の不安な表情を感じ取ったのか、奥原さんは笑顔で言ってくれた。
「真田君、日が昇るまでは火曜日だ!僕たちなら大丈夫!」

奥原は東の地平線をみている。
「今だ!行くぞ!」
奥原さんは一気に駆け出した!
俺も覚悟を決めてついて走り始めた。
背後の地平線に太陽があらわれた。
背中に太陽の光を感じながら、俺たちは走った。

そして、銃撃も砲撃も受ける事なく目的地点に到着した。
奇跡だ!
いや、奇跡じゃない!朝日が砲台や塹壕を照らし、敵の目が眩んでいた。
奥原さんは、そこまで計算に入れて行動したんだ。

そして、すぐさま迫撃砲を設置し、奥原さんが砲台めがけて撃った。
弾は放物線を描き、砲台の窓に吸い込まれていった。
ドンという爆発音と共に砲台は沈黙した。

奇跡だ!この人は奇跡を起こす人だ!
俺は感動して立ち上がってガッツポーズをした。
「バカ!伏せろ!」
奥原さんは俺に覆いかぶさり、俺を押し倒し(ターーーーン)た。
俺は自分が軽率だった事に気付き、奥原さんにお礼を言おうとしたが、奥原さんは大量の血を流していた。
「咲太郎、なつ、千遥、、、、、」奥原さんの最期の言葉だった。

!!!!!

奥原さんの一撃で戦局は一変した。
我々は敵の砦を攻略した。
しかし、奥原さんを俺が死なせてしまった。
柴田さんは俺の事を気遣い、悪いのは戦争だといてくれたが。。。。

俺の気持ちの中は辛い感情に覆い尽くされた。
そして辺りは虹色に包まれていった。

ーーーーーーー
お客様、ご気分はいかがですか?
俺はカプセルの中で目を覚ました。
ゆっくりとカプセルから出ると、女性店員がきづかってくれた。
「ずいぶん、辛いダイブでしたね。ドラマでは放送されていなかったけど、決して戦争を美化しない気持ちと、平和の素晴らしさを感じてもらいたい脚本家のメッセージですよ。ドラマの話と割り切ってくださいね。」
そう言われても、釈然とせず、俺は店を出た。

なつの父ちゃんは凄かった。
でも、戦争はもう嫌だ。。。。。

なつぞらダイバー 第1週: なつよ、ここが十勝だ

なつぞらダイバー 第1週: なつよ、ここが十勝だ

なつぞらのファンが妄想に任せて書いてます。 各回読み切り、どこから読んでも大丈夫。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-04-10

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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