猿の右手

生き残った朝のかすかな空の色が
やさしく裸の眼球に薄い膜を張る
ミルクをレンジで温めたときの
ラムスデン現象みたいな、
うざったい膜。
内部で臓器でも燃えているのだろうか
ふいに
どうにでもなれ、と左脳が吐き捨てた気がして
ざわざわと右脳が騒ぎはじめて
砂嵐のアナログテレビ そのノイズの奥で
寸裂された俺の四肢たちが
真っ赤になってくるくる空を飛んでんだ
それはさぞや楽しいだろうなあって
げらげら全身が笑っているから
どこかに潜む意識がひとり恐怖で震えている



外灯の下
うつろな目をした男が佇んでいる
一人称がお前のなかで死んでいる
らしいから カメラが何者なのかわからない
リンダキューブのアンinヒュームみてえな感覚
シャッターが地面を打ちつける音
振動で白蛾の翅が塵芥と
ぐるぐるになって宙を舞う
虚無の街で こんな虚無の道で 
ちかちかとフリッカーする、
ゴミの羽ばたきが綺麗だなって思ったんです。
喉がかゆくなって 
乾いた唇に気がついて
ずっと透明な遺言を叫びたかったんだよなって
谺をポケットにいれて墓場まで持って行くから
10年後に掘り返してみてください
ほらな 0しかないだろ、お前の人生なんか。
0.1の風景が延々続いてもエンジンは切らずに
リミッターを解除していけよ、オンボロの鉄塊



品性の欠片すらない人間に
限りなく近似した塊に
言語製のナイフで刺殺された帰り道
ズタズタに裂かれた脳みそ抱え
コンビニにでも寄って
包帯はいらないから、 
トイレットペーパーを買って
ぽたぽた落ちる血液も拭かず
熱い臙脂をインク代わりにして
終わらない遺書を綴ろうか



おっぱい おまんこ
心で書くな、折れた指震わせてでも書き散らせ
おっぱい おまんこ
流れている痛みの色が紙を赤く濡らした
お前が誰かに嗤われようと 
俺がお前を嗤おうと
ゴミ箱に捨てずじまいの
消費期限切れの恥や外聞に何の意味がある?
痛いよな、そりゃ痛いよ
おっぱい おまんこ
なあ 俺はただ
猥雑な言葉になって下水道に流されてえよ
おっぱい おまんこ
配水管に詰まった脳が
朝をむかえて 幻の陽光で乾く前に
クソみたいなエロゲーテキストそのものの
日曜日をロードして
真っ赤な眼見開いて
お前自身の刃物を握れよ
真っ暗闇のなか
言葉 鋭く

猿の右手

猿の右手

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-04-07

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