拾われジャック【声劇】

「チキュウ」という星は

魔法を使った戦闘法を用いる魔物

機械と武器を使った戦闘法を用いる人間

との戦争によって、長年の間荒れ果てていた。

300年前、人間が戦争に勝利したことによって長い年月をかけた戦争に終止符を打った。

以後。魔物に対する嫌悪感から、人間政府は魔法に関する一切を禁止した。

魔法を使える者を差別し、魔法器具の売買を違法とした。

しかし、現在でも魔法を使うことの出来る「魔女」や「魔法使い」は絶滅危惧種程度に存在し魔法器具の売買は秘密裏に高値で取引されている。

そんな、魔法器具の売買を阻止するための組織が存在する。

若きリーダー『キング』を筆頭に、様々な能力を持った組員が活動している。

これは、そんな『とある組織』の活動記録である。

【とある組織の活動記録】1話 拾われジャック

登場人物
アオイ(男)...とある組織の『キング』でボス。冷静な判断で組織を引っ張る。仲間からの信頼は厚い。年齢は20代半ばから後半くらい。
アカミヤ(男)...とある組織の『ジャック』に任命された。明るく活発。負けず嫌いで猪突猛進な一面がある。元々孤児で、キングに拾われた過去を持つ。年齢は16歳くらい。クイーンに憧れている。
シオン(女)...とある組織の『クイーン』。幼く愛らしい容姿をしているが、立派な成人女性でありかなり大人びた振る舞いをする。組織内にファンクラブが存在するとの噂。年齢は21歳。
キコ(女)...とある組織の『ジョーカー』。所謂「おバカキャラ」ただし、何を考えているかは分からない。仕事でタッグを組むことが多いシオンとは大の仲良し。年齢は18歳。
コク/ハク(男)...とある組織の『エース』。上層部最年少で二重人格。コクの時は物静かで無愛想。ハクの時は心配性でよく喋る。年齢は14歳。
α(男)...魔法器具の密輸や売買を行う組織の1人。大剣使いで冷酷。
β(男)...魔法器具の密輸や売買を行う組織の1人。大鎌使いで戦闘狂。

配役
○アオイ/α...♂
○アカミヤ...♂
○コク・ハク/β...♂
○シオン...♀
○キコ...♀
計5名(3:2:0)

組織ビル一階、会議室にて。
アカミヤ「え…まじで、俺が…ジャック?」
アオイ「あぁ、先代がお前を任命したんだ。直々にな。」
アカミヤ「まじか…まじか!どうしよう、俺…!感激して手が震えてる…!」
アオイ「おいおい、お前らしくないな?いつもみたいに、喜んでそこらへんを跳ね回りだすんじゃないかと思ってたぞ。」
アカミヤ「俺は犬かっての!…でも、そっか。俺が、上層部に仲間入りなんだ…な」
アオイ「同じ上層部として、お前の活躍を期待しているぞ。『ジャック』。」
アカミヤ「!…おう。じゃ、なくて…はいっ!」
アオイ「ん、良い返事が聞けて良かった。早速、上層部のフロアに行くぞ。」
アカミヤ「え?今から?」
アオイ「そうだ。お前との顔合わせのために、上層部の組員が全員集合している。こんな機会、滅多にないぞ?」
アカミヤ「うおぉぉぉ…何それめちゃめちゃ緊張する…!」
アオイ「行動力がありすぎて、なかなかここに戻ってこない奴もいるからな。呼び寄せるのが大変だったよ。」
アカミヤ「…ん?」
アオイ「どうした、アカミヤ」
アカミヤ「いや。上層部の組員が、全員揃ってるんだよな?」
アオイ「そうだが?」
アカミヤ「…てことは」
アオイ「…ん?」
アカミヤ「あぁいや、なんでもない!待たせるわけにはいかねえし。早く行こうぜ!」
アオイ「ん、あぁ。じゃ、早速エレベーターに乗ってくれ。一気に最上階に行くぞ。」


組織ビル最上階にて。
キコ「ねーねー!新しいジャック君は、どんな人なんだろーねー?」
コク「…俺、興味ない。帰っていい…?」
キコ「勝手に帰っちゃうと、キングに怒られるよー?」
コク「別に…キングは怖くないし…」
キコ「あれー?コクはキングの怒ったとこ、見たことないんだっけー?」
コク「俺はない。けど…」
キコ「(被せるように)じゃあハクはー?」
ハク「僕はあります!なんというか、どす黒いオーラを纏っていて…っ」
キコ「あははははっ!あのオーラで、人1人殺れそうだもんねー!」
ハク「そんな…!殺すなんて、怖いこと言わないでください…っ!」
キコ「でもでも、実際にあのオーラ触ったら無傷じゃすまないと思うなあ。」
ハク「まぁ…それだけの迫力があるから、誰もキングには逆らわないし逆らえない。とも考えられますよね…。」
キコ「んー。難しいことはよくわかんない!けど、キングの事は大好きだよ!」
コク「くだらな…俺は与えられた仕事をするだけ。」
キコ「ふーん?シオンちゃんは?どう思うー?」
シオン「どうって?新入りジャックのこと?」
キコ「あぁ。そういえばそんな話してたんだっけ。」
コク「自分から話振ったんだろ…」
キコ「だってー、色んなお話が一気に来ちゃうと…なんかこう、ドカーンっ!!ってしたくなっちゃうんだよねえ。」
コク「…意味わからん。付き合ってられないね。俺は引っ込む。」
キコ「上手く言えないんだよー!アタシ馬鹿だからさー!」
シオン「ふふっ、素直なキコの事。私は好きよ?」
キコ「ホント!?アタシもシオンちゃんだーいすきっ!どれくらい好きかっていうと、シオンちゃんをいやらしい目で見て、あわよくば触っちゃおう!なんて考えてるお兄さんたちに出来立てダイナマイトプレゼントしちゃうくらい好き!」
シオン「あら…この間の爆発はそういうことだったの?」
キコ「えへへー。だって、シオンちゃんを見る目が…気色悪かったんだもん。潰したくなっちゃった。」
シオン「ふふ…うふふふっ!ありがとう、キコ。」
キコ「うん!どういたしまして!」
ハク「あ、あの…」
キコ「ん?」
シオン「どうしたの、ハク君。」
ハク「この間、キングから頼まれて(おこな)った爆発事件の処理って。もしかして…」
コク「すっげー苦労したやつな。2徹したわ…ふあぁ。」
シオン「あら、睡眠不足はお肌に良くないわよ?」
キコ「うんうん!アタシ、毎日10時には寝ちゃうもん!」
コク「小学生かよ!」
ハク「で、でも…夜の任務は…」
キコ「ん?ちゃんとやってるよ?」
ハク「じゃあ、10時っていうのは…」
キコ「お空が明るい10時!」
シオン「ふふ、キコはそれでお肌が綺麗なんだから。羨ましいわ?」
コク「前言撤回。完全に昼夜逆転してんじゃねーか。」
キコ「だってだって、暗殺任務なんて夜にしかできないよ?」
シオン「ジョーカーのお仕事は、秘密裏(ひみつり)に行うことが多いものね。」
キコ「でも、この仕事は好きなんだ。シオンちゃんともたくさんお話できるし!」
シオン「私も、貴女は最高の相棒だと思ってるわ。」
キコ「えへへー」
コク「…とか言ってる(あいだ)に、エレベーターが動き出したぞ。」
ハク「うわぁ、いよいよですかね…!?」
キコ「たくさん仲良くできる子だといいなー!」
シオン「…。」
キコ「んー?」
ハク「どうしました?クイーン。」
シオン「いえ、なんでもないわ。」
コク「んだよ、なんでもないなら思わせぶりな態度取るなっての。」
シオン「ふふっ、ごめんなさいね?」
コク「…ふんっ」

アカミヤとアオイが到着
アオイ「上層部、全員いるな?新入りを連れてきた。」
アカミヤ「あ、えっと…オジャマシマス」
キコ「おぉー!きたきたきたーっ!新入りジャック!」
ハク「わ、思っていたよりも若いですね!僕と変わらないくらいかな…!?」
アオイ「キコ、ハク。落ち着け。いきなり突っ込むと、新入りが困るだろ?」
キコ「えー?色々聞きたいのにー!」
ハク「新入りさんと仲良くなりたいんですよー!」
アカミヤ「や、えっと…俺も、仲良くしたい!」
ハク「本当ですか!?」
アカミヤ「だから、これから仲良くしてくれな!」
ハク「もちろんです!僕の事も、コクの事もよろしくお願いします!」
アカミヤ「え?」
ハク「え?」
キコ「この反応…キング、説明してないの?」
アオイ「自分達ですると思って黙ってんだが。余計なお世話だったか?」
コク「めんどくさいから言って良かったと思うんだけど。」
ハク「そんなことないです!僕が説明しますよ!」
アカミヤ「きゅ、急に雰囲気変わったな…!?」
コク「急に出てくんなっての。…どうでもいいけど。」
アカミヤ「ん、ん?今のは、その…二重人格…?」
コク「まあ…そんな感じ。『コハク』って1人の人間の中に2人いるって感じ。俺がコクで」
ハク「僕がハクです!」
アカミヤ「お、おう。びっくりするくらいコロコロ変わるな…どうやって判断したらいいんだ?」
ハク「慣れてくると他の上層部の方のように雰囲気で判断できるようになりますが、しばらくは一人称で判断していただけるか聞いて貰えたらいいかと!」
アカミヤ「な、なるほど…」
アオイ「エースはこの組織に入った時、既に2つの人格を体内に宿していたんだ。コクは情報操作を得意とし、ハクは範囲型の支援魔法を得意としている。」
アカミヤ「え、魔法…!?魔法が使えるのか…!?」
アオイ「驚くのも無理はないな。」
キコ「魔法使いなんて、絶滅危惧種だもんねー。」
アカミヤ「俺、魔法使える人間に会ったの初めてだ…!」
ハク「魔法なんて、響きの良いものじゃないんですけどね…。使った後は、疲れてすぐに眠ってしまうんです。だから、普段はコクに仕事を任せています。」
コク「なんで俺ばっかり…と言いたいが、仕事自体は嫌いじゃないもんでね。」
アカミヤ「へえ…!」
キコ「ねえねえねえ!アタシも新入りジャックに自己紹介したいんだけどー!」
アオイ「したら良いんじゃないか?」
キコ「うん、する!アタシはジョーカーのキコ!キコ・シュタックだよ!」
ハク「あぁぁ、名乗るのを忘れていました!
僕はコハク・クロイドです!」
アカミヤ「あぁ、よろしくな!んで...キコ・シュタック?この国の名前じゃない…?」
キコ「そうだよー!パパもママもこの国の人じゃないんだー!といっても、両親を最後に見た記憶もないんだけどねー?」
アカミヤ「あ…そっか。俺と、同じだ。」
キコ「へえ!ジャック君も、孤独なんだ?」
アオイ「な…おい。キコ」
ハク「言い過ぎですよジョーカー…!」
アカミヤ「いや、良いんだ。間違ってねーし。俺、キングに拾われるまでは独りだったからさ。」
キコ「あははっ!よく似てるね、アタシ達!」
アカミヤ「そう、だな…。」
キコ「でも、独り同士が一緒にいる時点でもうそれは孤独じゃないよね?」
アカミヤ「…!」
アオイ「…へぇ。」
コク「たまにはいいこと言うんだな。アイツ。」
キコ「私も拾われてここにいる。今はお仕事も生活も毎日楽しいよ!きっと、これから上層部としての生活も楽しくなる!…えっと。」
アカミヤ「名前?アカミヤ。ミツキ・アカミヤだ。」
キコ「アカミヤ!よろしくね!仲良しの握手だよ!」
アカミヤ「お、おう!よろしくな!キコ!」
ハク「…大丈夫そう、ですかね?」
アオイ「みたいだな。ふう、キコにはヒヤヒヤさせられる事が多いな。」
コク「体張って止めろ。なんて言われるんじゃないかって身の危険を感じてたわ。」
アオイ「俺がそんな事を言うように見えていたのか?コク。」
コク「冗談だっての。」

シオン「キコも、コク君もハク君も。自己紹介は終わったかしら?」
アカミヤ「!?」
キコ「アタシはこれくらいで良いかなー。」
ハク「僕も大丈夫です!コクも大丈夫かと!」
シオン「そう。…新入りジャック君?」
アカミヤ「は、はいっ!」
キコ「…んー?」
コク「なんか、さっきと態度が変わってねーか…?」
シオン「こちらへいらっしゃい?私の目の前に。」
アカミヤ「お、恐れ多い…ですっ!が、失礼します…!」
シオン「ふふっ、良い子ね。ミツキ・アカミヤ」
アカミヤ「あ…っ!な、なまえ…!」
シオン「私の名前は、当然知っているわよね?」
アカミヤ「はい!シオン様!」
シオン「噂は聞いていたわ?上層部へようこそ。私がクイーンのシオンよ。」
アカミヤ「まさか、こうして会話できる日が来るなんて…!」
シオン「ふふ、うふふふっ!そんなにかしこまらなくてもいいわよ?同じ上層部なんですもの。仲良くしてね…?」
アカミヤ「はい!」
アオイ「なんだ…話についていけないんだが。」
ハク「クイーンとジャックは、お知り合いなんですか?」
アカミヤ「い、いや!知り合いっていうか、俺が一方的に知ってるだけっていうか…。」
コク「ん…あぁ、例のファンクラブか?お前が会員なんて、聞いてないけどな?」
アカミヤ「会員じゃない!けど、純粋に憧れててさ…!完璧な仕事ぶり。鈴が鳴るような凛とした声。愛らしい容姿からは想像し難い大人びた振る舞い…!」
シオン「ふふ、褒めすぎだわ?噂には尾ひれがつきものって、まさにこの事ね?」
キコ「なんでもいいけど、シオンちゃんに何かしたら怒っちゃうよ?」
アカミヤ「な、何かするつもりなんてねえって!ちゃんと、真面目に仕事はする。」
アオイ「あぁ、良い覚悟だ。ジャック。期待してるぞ?」
アカミヤ「おう!」

突然、コクのスマホがバイブレーションで震える。

コク「…ん?もしもし。なんだよ、今日は上層部の集まりがあるから連絡されてもこま…!?」
アオイ「どうした、コク。」
コク「魔法器具の密輸情報を得た組員がいる。今日深夜、海辺(うみべ)倉庫。」
アカミヤ「魔法器具の…密輸!?」
アオイ「チッ…こんな時に…っ。上層部、動くぞ。」
キコ「りょーかいっ!」
シオン「えぇ。」
コク「言うまでもなく」
アカミヤ「お、俺も!」
コク「…は?」
キコ「いきなり実践は危ないよ!?」
アカミヤ「俺だって、実力を認めてもらえたから上層部に仲間入りしたんだ。ちゃんと自分の身は自分で守れる!」
アオイ「ミツキ、気持ちは嬉しいがまだ早すぎる。しかも、今回売買される魔法器具はかなり高額のものだ。いきなり責任を負わせるわけにはいかない。」
アカミヤ「俺には荷が重いって言いたいのかよ!」
アオイ「な…!そうは言っていない。俺はただ、お前を心配して…」
コク「(被せるように)おい、新入りジャック」
アカミヤ「…なに」
コク「キングは甘すぎるから、俺がハッキリ言ってやる。お前じゃ足手まといなんだよ。」
アオイ「おい、コク!」
コク「上層部のやり方を何一つ理解していないくせに、俺達の足を引っ張らずに仕事が出来るのかよ。」
アカミヤ「それは…!」
コク「万が一お前の身に何かあった時、誰もお前を守ったりしないぞ。ここにいる全員、今日を生きるのに必死だからな。」
アカミヤ「それでも、俺だって下っ端の時に戦闘法は身につけてきた!俺はこの剣で自分の身を守って、悪を斬ってきたんだ!」
コク「お前が剣使いなのは知ってるさ。今回は敵数(てきかず)も多い。もしバレて集中攻撃を受けたりなんかしたらっつってんだよ!」
アカミヤ「だから!」
シオン「良いんじゃない?行かせてあげたら。」
コク「…邪魔すんなよ、クイーン。」
シオン「今回現場に行くのは、いつも通り私とキコでしょう?キング。」
アオイ「あぁ、そのつもりだ。」
コク「…。」
シオン「そこに新入りジャックを同行させる。ということでしょう?良いわよ、連れて行っても。」
コク「だから、それがクイーンとジョーカーの足を引っ張って仕事にならないって言って...!」
シオン「じゃあ、約束しましょう。彼の命は、私が保証する。それなら問題ないかしら?」
アオイ「…クイーンがそれでいいと言うのなら、構わない。」
コク「な…っ!」
シオン「キングの許可は得たわ?これで文句はないわね?コク君。…いえ、エース?」
コク「…チッ、勝手にしろよ。」
キコ「アタシも、シオンちゃんがそうしたいなら従うけどさぁ…?」
シオン「ごめんね?キコ。でも、私とあなたのタッグだからこそ大丈夫だと思っているのよ?」
キコ「シオンちゃん…!うん、そうだね!今回も、アタシがバンバン敵を蹴散らしちゃうよぉー!」
アオイ「では、指示を出す。まずはエース」
コク「…ん」
アオイ「お前はモニタールームから、現場組へ情報の送信を行ってくれ。」
コク「いつも通りに。」
アオイ「次にジョーカー」
キコ「はいはーいっ!」
アオイ「お前は特攻隊長だ。いつも通り、暴れて来い!」
ハク「うあぁ、後始末するの少し楽にしてくれたら嬉しいな。なんて…」
キコ「(被せるように)よっしゃあー!やっちゃうよぉー!!新作ダイナマイト試しちゃうもんね!」
ハク「…聞いてない、ですね。」
アオイ「次にジャック」
アカミヤ「は、はいっ!」
アオイ「お前はジョーカーとクイーンと共に、現場に向かってくれ。敵と鉢合わせせずに帰る事が出来れば奇跡と言っていい。戦いは、()けて通れないだろう。…帰って笑った顔を見せてくれ。」
アカミヤ「…!」
アオイ「どうした、ジャック。緊張して表情が強ばってるぞ?大丈夫だ、上層部に昇格できるだけの実力があるんだ。自分を信じろ。」
アカミヤ「…あぁ、俺。やるよ!」
アオイ「頼んだぞ。…最後にクイーン」
シオン「何かしら、キング」
アオイ「ジョーカーとジャックのサポートと同時進行で、現場での細かい指示出しを頼む。」
シオン「えぇ、分かったわ。」
アオイ「2人のこと、頼んだぞ。」
シオン「っふふ、私を誰だと思ってるの?上層部のクイーンよ?」
アオイ「っはは、頼もしいな。」
シオン「その方が、安心できるでしょう?」
アオイ「強がりじゃないならな?」
シオン「強がりに見えるのかしら?貴方とは長い時間を共に過ごしてきたのに、私の事何も分かっていないのね?」
アオイ「強がりじゃないと分かっているから、頼もしいんだろ?…頼りにしてるよ、クイーン」
シオン「っふふ、ありがと。キング」
アオイ「では、それぞれ行動開始!」

各々動き始める

アカミヤ「…あの!」
キコ「ん?」
シオン「どうしたの?ジャック君。」
アカミヤ「ありがとう、ございます。…エースを、説得してくれて。」
シオン「説得なんてしてないわよ?」
アカミヤ「けど、『彼の命は、私が保証する。』って…!」
シオン「あぁ…。あれは、あなたを庇うために言ったわけじゃないのよ?」
アカミヤ「じゃあ、あれは…」
シオン「早く新入りさんの腕前を見たかったのよ。だって…せっかくこうして出会えたんだもの、もっと知りたいじゃない…ねぇ?」
アカミヤ「っ!?」
キコ「シーオーンーちゃーん?」
シオン「っふふ、ごめんなさい。でも、本当の事よ?サポートは任せてね?」
アカミヤ「…っはい」
キコ「えぇ、ジャックばっかりずるいー!アタシはアタシはー?」
シオン「キコはいつも通りよ、大切な相棒ですもの。頑張りましょう?」
キコ「えへへ…うん!頑張ろ!ジャックもね!」
アカミヤ「お、おうっ!」

シオン、キコ、アカミヤが部屋を出る。

ハク「…。」
アオイ「どうした、羨ましくなったか?」
ハク「…いえ、そういう訳では」
アオイ「本当なら、お前も現場に行かせたいんだがな。どうしても…」
ハク「僕が現場に行くとしたら、魔法を使う事を求められますよね。そうなると魔女狩りの存在が怖い。だから僕を守るために現場には行かせない。…分かっています。」
アオイ「ハク…」
ハク「っと、僕のお話は良いんです!今はコクとして情報のお仕事をしないと!」
アオイ「…あぁ、欠けると困る大切な仕事だ。頼むぞ」
コク「…おう。」


キコ、シオン、アカミヤが海辺倉庫到着

コク「魔法器具の密輸が行われるのは1時間後。青色の倉庫。」
キコ「青色…あれだね。」
シオン「青色倉庫…随分目立つ場所にある倉庫で、密輸を行うのね?」
コク「あぁ、俺も怪しいと思って今調べてる。情報が入り次第送信する。」
キコ「りょーかいっ」
シオン「お願いね、エース」
アカミヤ「…?」
シオン「どうしたの?ジャック君。」
アカミヤ「…いや、今音がしたから。」
シオン「音…?」
アカミヤ「足音…みたいな」
キコ「…んん?そんな音、してないような」
シオン「どこからした音か、分かる?」
アカミヤ「あそこです。」
シオン「黒色倉庫…1番奥まった場所にある倉庫ね。」
キコ「怪しいっちゃ怪しいけど…でも、エースからの情報もないしなぁ…」
アカミヤ「俺、ちょっと見てきます!」
シオン「待って、ジャック君。勝手に…!」

アカミヤが1人で駆け出す

キコ「…あー、行っちゃった」
シオン「…すぐ、戻ってきてくれたらいいけど。」
キコ「あぁ、しかもジャック君まだ上層部用の連絡端末持ってないよ...!」
シオン「これじゃあ、連絡の取りようが...」
キコ「…!見て、シオンちゃん!青色倉庫の入口!」
シオン「まだ情報の時間よりだいぶあるはずなのに。…騙されたわね。」
キコ「行こう!」
シオン「…えぇ。」


アカミヤ、黒色倉庫前にて
α「…情報の操作は、完璧なんだろうな?」
β「当たり前だろ。奴らにこっちがバレることはねーよ。大方、今頃雑魚共を大量にばらまいた青倉庫の方に固まってるんだろうさ?」
アカミヤ「…!?(誰か、いる。クイーンとジョーカーに伝えないと)」
α「…誰だ」
β「あ?」
α「…入口に人がいるぞ。音がする」
β「んだよ、雑魚が紛れ込んだかぁ?」
アカミヤ「…っ」
α「出てこない。…来ないのならば、こちらから行く。…っふん!」

αが素早く入口まで移動し、アカミヤ目掛けて大剣を振り下ろす。

アカミヤ「っぶね!?」
α「…見ない顔だな。組織の下っ端か?」
アカミヤ「俺は上層部だ!下っ端じゃねぇ…よっ!」

アカミヤが剣を引き抜きα目掛けて切りつける

α「遅い。剣が風を切る音で動きが分かるわ。…甘いな、小僧。」
アカミヤ「チッ…!」
β「ほーれ坊ちゃん、お前の相手は1人だとは言ってねえぞ?」
アカミヤ「っいつの間に!?」
β「ほらほらほらぁ!かわさないと死んじゃうよぉー?」
βが大鎌を振り回す

アカミヤ「…っ!このままかわすだけじゃ、拉致があかねぇっ!はあぁっ!」
α「…ふんっ、組織の上層部はこの程度なのか?恐れるまでもなかったな」
β「遅い遅いっ!遅すぎて…ほら」
アカミヤ「な…!?」
β「あっという間に目の前だぜぇ?」
アカミヤ「っクソ!速いし暗いし、見えねぇ…っ」
β「あはははははは!遅いし脆いしか弱いしぃ?それで上層部は笑い話だろお?ほぉらっ!」
アカミヤ「っやば!間に合わ…っぐ…あぁっ…!!」
β「あはははははは!肩をサクッとやるのなんて、簡単なんだぜえ?骨まで切ってないから感謝しろや。」
アカミヤ「う、っぐ…ぁ…!!」
α「使えなくなった右腕、剣を持たない左腕。最早無力な子猫だな。」
β「子猫ちゃんだってさぁ?どうする?まだやんのお?」
アカミヤ「(やべぇ…っ血が、止まらねぇ!このままじゃ…っ)」
α「口もきけなくなったか?本当に無力だな。子猫を上層部に選んだ、奴らの人選はどうなっているんだか。」
β「それじゃあ、さっさとトドメをさしますかぁ。」
アカミヤ「…っ!」
β「悪く思わないでくれよ?上層部の子猫ちゃん?」
キコ「ダイナマイトぉー、どかーーーんっ!!」
β「…っと」
α「…もうあちらはやられたのか、使えん雑魚どもめ」
キコ「ジャックー!大丈夫ー?」
シオン「遅くなってごめんなさい!どうやら嘘の情報を流されていたみたいね、本当の密輸場所はここよ。」
アカミヤ「ま、じ…ですか…」
キコ「!?ジャック、それ…!」
アカミヤ「ごめん、おれ…やっちった…」
シオン「...骨までは届いていないようだけど、かなり傷が深いわね…」
α「お前らの顔は見たことがある、クイーンとジョーカーだな?」
β「へーえ?やっと骨のあるのが来たのか。」
キコ「アタシ達の事知ってるのー?」
シオン「光栄だわ、冥土の土産にしてちょうだい?」
β「あはははははは!勇ましいねえ!そこの子猫ちゃんみたいに、すぐにへたれるなよお?」
アカミヤ「…っ」
キコ「ジャックは安静にしてて!アタシ達で片付けちゃうから!」
シオン「来るのが遅くなって、本当にごめんなさいね?」
α「ほう...女2人で私達に勝てると豪語するか...小癪(こしゃく)な。」
β「随分ナメられたもんだなぁ?泣きを見るのはそっちかもしれねえぞお?」
キコ「それはどうかなー?...シオンちゃん!」
シオン「えぇ!」
アカミヤ「!?」
α「...憑依術(ひょういじゅつ)か」
β「随分古い術を使うんだなぁお嬢ちゃん。いつまでも古臭いんじゃ、新しきには勝てないぜ?」
キコ「...それはどうだろう?」
β「あぁ?」
キコ「お兄さんお兄さん!お喋りも楽しいけど...もっと楽しいことしようよ。」
β「っ!?コイツいつの間に背後にっ」
キコ「出来立てダイナマイトを貴方にお届け!3.2.1でーー?どかーーーんっ!!!」
β「...ッチィ!俺様の顔を土埃(つちぼこり)で汚すなんて、やるじゃねぇか」
キコ「あはははははっ!元々顔が汚いから、汚れたかどうかもわかんないよ?」
β「ア?」
キコ「なあにー?」
β「...上等だよ小娘ェ。本気出してやるから大人しく消えろやぁ!!!」
キコ「わー!怒った怒った!こわぁーい!動きが遅すぎて、こわーい!!」
α「...おい、挑発に乗るな。」
β「うるせぇ!俺はこの小娘を木っ端微塵にしねえと気がすまねえ!!」
キコ「全然当たらないよー?もしかして、手加減してくれて...おっと。」
β「あはははははっ!おいおい、余裕な態度とっておいて後ろは壁だぜぇ?終わりだなぁ小娘。俺様の鎌の味を知って...消えな?」
アカミヤ「...はあぁぁあっ!!」

アカミヤが左手に剣を持ちβに向かって走り出す。

β「チッ、子猫ちゃんはねんねしてろっ!」
アカミヤ「が、はっ....!」
シオン「ジャック君!」
キコ「シオンちゃん!アタシは大丈夫だから、ジャックの方行ってあげて!」
シオン「っでも!」
キコ「大丈夫!アタシ強いから!」
シオン「...ありがとう、キコ」
β「なんだ?ここで憑依を解かれるのか?弱くなるんじゃ死にたがってるのと同じだぜ?お望み通り切り刻んでやる...オラァッ!」


シオン「ジャック君!」
アカミヤ「く、クイーン....すみません、おれ...ほんとに、足手まとい...で....」
シオン「いえ、勇気ある行動だったわ。...悪いけど、もう少し戦える?」
アカミヤ「え...っ?」
シオン「今から貴方が必要とする力を授けるわ。それが、私の憑依術よ。」
アカミヤ「必要とする...力?」
シオン「えぇ。さぁ、欲する力を想像して。いくわよ」
アカミヤ「な、え。ちょ....」
シオン「3.2.1....」
アカミヤ「っぅぐ!?」
α「...クイーンの気配が小僧の方に移ったな。憑依したか。」
アカミヤ「(なんだこれ...体が軽い!左手に、力が...っ!これなら、戦える!)」

β「...()られたか。」
キコ「残念でしたー!アタシ、運動神経バッチリなんだよ!」
β「...次は外さねえ。この鎌で、串刺しにしてやる。」
アカミヤ「はあぁああぁっ!!」
β「っ!?」
キコ「ジャック!?」
β「ッチィ!土埃だけじゃ事足りず、傷まで付けんのか。」
アカミヤ「まだまだ!っおらぁ!」
β「っ!しかも、左手...へえ、おもしれぇじゃねえか!」
アカミヤ「さっきは、よくもやってくれたな...魔法器具の密輸もさせねえ!」
β「金が入ればいいんだよこっちは!お前が身につけているその服も、金がないと得られない。そうだろう?」
アカミヤ「けど、その金を得る術が間違ってるんだ!」
β「あーあー!綺麗事なんざ、聞きたくねぇ...よっ!!」
アカミヤ「っ!」
β「こちらを騙していたのか、左腕を無理に使っているのか知らねえが...俺に傷をつけた事、一生後悔させてやるよ!」
キコ「アカミヤ!入り口に向かって走って!」
アカミヤ「えっ」
β「あ?」
キコ「今日のために特別に用意したダイナマイト!どっかーーーーんっ!!!」
β「な....っ!」
α「チィッ....魔法器具ごと粉々にするつもりか....!」
アカミヤ「や、っべ!」
β「おい、アカミヤとか呼ばれてたな。お前の顔と名前、覚えといてやるよ。...次はぶっ殺す。」
アカミヤ「俺は、お前らみたいに正当な道を通らないやつを許さないっ!」
β「ッハ!言ってろ。」
キコ「ジャック!速く!倉庫崩れちゃうから!」
アカミヤ「...は!?」



明け方の組織ビル、上層部フロアにて。

アオイ「生きて帰ってきてくれて何よりだ。だが....」
シオン「ふふ、久しぶりに刺激的な夜を過ごしたわ。」
アカミヤ「俺の腕も、なんとか治りそうで良かった。」
アオイ「本当にな。で、問題は...」
ハク「もーーージョーカー!後処理を楽にするどころか倉庫をまるまるひとつ破壊してしまっているじゃないですか!!今度は二徹どころじゃ済まないですよ!!」
キコ「ごめーーん!でもでも、ああするしかなかったんだよ?」
ハク「倉庫の大きさに対して投げるダイナマイトの規模が大きすぎると言っているんです!今度はもっと考えてですねえ!」
キコ「あーーん!ごめんってばーー!!次からはちゃんと気をつけるからあー!」
ハク「ジョーカーは後処理任務をやらないから分からないと思いますが、寝ずの作業は本当に大変なんです!下手すると食欲も失せてしまって....!」
キコ「ごーーめーーんーーなーーさーーいーー!!」
アカミヤ「あ、あはは...」
シオン「ふふ、賑やかね。」
アオイ「賑やか、で済ませていいのか...?」
ハク「もおおおおおおお!!」
キコ「シオンちゃん、キング、アカミヤぁ!助けてええええええ!!!」

to be continued...

拾われジャック【声劇】

やりたいことを詰め込んだ結果でき上がりましたこちらの台本。
多くの方の演じてもらえますように。
台本についての質問があれば、Twitter(@enjinroom0wl)までどうぞ。

拾われジャック【声劇】

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-04-01

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND