本能
別にいいじゃない。
そんなこと気にしなくて。
時間なんて関係ない。
1回しちゃえば楽になるんだから。
何をそんなに躊躇うの。
ダメよ。
惑わされないで。
流されたら終わり。
しちゃったらきっと後悔する。
もっと自分を大切にして。
右耳からは誘惑。
左耳からは忠告。
私はどうしたいんだろう。
興味、未知、冒険、常識、風潮、世間。
抵抗、制止、抑制、許容、同調、便乗。
体の中から、何かが湧き出る。
名前のない、正体不明の何かが。
私の体を満たす。
それは、心臓から、上半身を巡り。
肩から、腕、手首、指先と、徐々に、徐々に、
ゆっくりと、到達していく。
意識が朦朧としだした。
なんだか眠くなってきた。
天井から降り注ぐ光がやけに眩しい。
思わず、瞼を閉じる。
押さえつけられた、両手首。
私の顔など一切見ずに、生暖かいものは、
私の体の上を少しづつ、這い回る。
左に傾けた私の顔は、柔らかな布団に埋もれ、
ガシャガシャした音だけが、しんとした部屋に
響き渡る。
あぁ、抵抗できなかった。
ダメって言えなかった。
また、さよならの繰り返し。
本能