幼馴染と高校で再会して偶然同じクラスで席が近くなったら……これはもう恋に発展するでしょ? 9話

幼馴染と高校で再会して偶然同じクラスで席が近くなったら……これはもう恋に発展するでしょ? 9話

その夜 

夢を見た。

きらきら光る、あれは、佐々木君の髪……?
違う。水。
プール……? 聡の髪……? 違う。

水面。

水面に映る緑。あれは、小空川。
隣の学区を流れる小さな川。

聡とふたり、ザリガニを採りに行った。小三の夏。


「あんまり遠くには行くなよ」

聡に言われ、くつを脱いで裸足になった私。麦わら帽子を落として、追いかけて、そして川底の小石で足を切った。
傷は深くはなかったけれど、痛がる私を聡はおんぶしてくれた。私より小さな体で、何度も何度も私を背負い直していた。

「自分で歩けるよ」

そう言っても、聡は何も言わず私をおんぶして歩いた。自分の帽子を私に被せて。額からだらだらと汗を流して。
真っ赤な顔をして。

セミの鳴き声がやたらと煩かった。アスファルトの、ふたつ重なった濃い影。

聡の小さい背中が黒いヌリカベに変わる……。ヌリカベにはボタンがひとつもない。


そこで私は目を覚ました。
思い出した。あの日、家に帰りつく頃にはすっかり日は傾いて、オレンジ色に染まった雲の合間には金星が輝いていた。私たちを探していたお母さんを見つけると、聡は私を降ろしてこう言った。

「結ちゃんのお母さんごめんなさい。僕が結ちゃんをザリガニ採りに誘って、結ちゃん、怪我させちゃいました」

お母さんは私たちを叱らなかった。
小さい聡の身体が、あの時は大きく見えた。

カーテンを開ける。窓から見下ろすと自然と庭の隅の物置に目がいった。
そっと階段を降りてリビングの窓から庭に降りた。懐中電灯を持って物置を開ける。

あった──

ザリガニを採りに行ったときの網。ちょっと破れているけど。


ごめんね。聡。
これで見つけられるかな……。

幼馴染と高校で再会して偶然同じクラスで席が近くなったら……これはもう恋に発展するでしょ? 9話

幼馴染と高校で再会して偶然同じクラスで席が近くなったら……これはもう恋に発展するでしょ? 9話

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更新日
登録日
2019-03-28

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