two of a kind

hrym

  1. 待っていたのは
  2. 出逢い

待っていたのは

「夢…。」

夢を見た。

君と海で遊んでる。

目が覚めて恋しくて、少し泣いた。

時計を見ると、午前6時25分。アラームより少し早く起きてしまい、損をしたような、徳をしたような。

「…起きよう。」

そしていつもの日常が始まった。


いつも通りの通勤路、いつも通りの職場。

「おはようございます。」

「おはよう、内海さん。新体操の新井選手なんですが、定期検査の日付を変えたいと連絡がありました。」

「分かりました、こちらから折り返し連絡しておきます。」

「あ、内海さーん、水野選手のMRI終了しました。」

「はーい、今行きます。」

私が勤務している国立スポーツ科学センター、通称JISS。

主に日本のスポーツ選手を、最先端の医療と科学、そして設備など、様々な分野でサポートする機関だ。

ここで私は、トップアスリートの怪我からの復帰のサポートを行なっている。

高校生の時にこの仕事に就きたいと考えてからは、総合大学へ進学を決めた。

スポーツ科学、医学に加え、より細かい医学の分野、栄養学、心理学の講義など、アスリートのサポートにおいて為になることは、自分で手当たり次第学びたかったからだ。

その努力が実を結んだのか、就職してから2年も経ってないが、大役を任せられることも多く、最近では、U-18サッカー日本代表のトレーナーとして帯同したりもしている。

私はこの仕事を天職だと思っている。

薬剤師や看護師を目指していた友達は、「絶対他の医療系職業のほうがいい給料だし、安定してるって!」と、私の道に反対する子もいたけど、まあ、それもそうだ。

でも、私がこの仕事を目指したのは、ちゃんとした理由がある。


「内海、もう昼休憩だぞ?」

時計を見ると、もう12時半。

「ああ、本当ですね。」

「頑張るなぁ、ほどほどにしとけよ?」

そう話しかけてくれたのは上司の谷崎さん。
40代の元気なおじさんって感じで、分け隔てなく部下に接してくれるため、皆からの信頼も厚い人だ。就職したばかりの頃はだいぶお世話になった。

「有難うございます、これ終わったらお弁当食べてきます。」

「今日も弁当?」

「はい、節約中なんで。笑」

「ああ、もうすぐだもんな、頑張れよ!」

「有難うございます。」

そう、今は節約中。

もうすぐドイツへ渡る為だ。

今の会社に入社してから、谷崎さんにはいつか海外に勤務したいということを伝えていた。

幼稚園までの間をアメリカで過ごし、大学時代にドイツへ1年間留学していたため、英語とドイツ語がある程度話せる。

これは仕事に活かさなきゃ勿体ないし、また海外で暮らしたいとも考えていた。

そして2ヶ月前に、ドイツのサッカーチームの期間限定トレーナーとして、私が呼ばれたのだ。

ドイツ語が話せる人ということで、都合がよかったみたい。

チームのトレーナーである谷崎さんの知り合いがもうすぐ産休に入るため、その間の代わりとして、とのことだ。

まあ、経験の少ない24歳の日本人女性を、急遽正式採用なんてこと、チーム側がするはずもない。

期間限定、という言葉を巧く利用している。

それでもやっていける自信はある、自分が積み重ねた努力を信じているからだ。

何事も挑戦だ、まだ若いんだし。経験は劣らずとも、知識でカバーしていこう。

そう意気込んで、この仕事に二つ返事をした。

「ドイツかぁ、いいなぁ。ビールいっぱい飲めるね。」

そう言いながら一緒にお弁当を囲む、同僚の玲奈。

「仕事なんだからね?」

「でも凄い決断したよね〜。そのトレーナーの人、谷崎さんの知り合いなんでしょ?」

「うん、谷崎さんの留学時代の友達なんだとか。」

「あの人、サッカー好きすぎてドイツに留学したんだっけ?本当面白い人よね〜」

「まあ、ちゃんと勉強も頑張ったって言ってたけど。」

「それで、菫のいくチームはなんて言うチーム?」

「…何だっけ?」

「嘘でしょ?それくらい覚えときなよ!」

「いや、今の仕事に加えて単語覚え直したり、色々準備してるからいっぱいいっぱいなんだって。」

「もー、ドイツ行く前に倒れたら元も子もないんだから、しっかり体調管理はしなさいよ?」

「分かってる分かってる。」

そう、大学時代から今までほとんど暇がない。

学びたいことが多すぎて、今もずっと勉強している状態だ。

好きでやっているから苦痛だとは思わなかったけど、時折虚しく、そして寂しくなる時がある。

まだ24歳だし、遊んでいたいとも思うわけだ。

それで少し時間ができたら、大学や職場の仲間と飲みに行ったりしたけど、地元の友達とは中々会えていない。

そんな中でドイツへ渡るわけだから、結局自分は仕事が生き甲斐なんだな、とつくづく思う。

今よりもっと忙しくなるに違いない。

でも、向こうの生活が落ち着けば、少しはゆっくりできるだろうか?

「ドイツに行くこと、皆にも連絡しなきゃ。」

そうして間も無く、仕事に戻った。



ドイツへ発つ前日、職場でたくさんの選手、社員、研究員の方に激励の言葉をもらった。

「俺の知り合いに案内を頼んである、空港に着いたらロビーのこの場所で待っててくれ。」

「はい、分かりました。何から何まで有難うございます、谷崎さん。」

「いいや、この話を聞いた時に一番に君を思い浮かべたよ。君にぴったりの仕事じゃないか、精一杯悔いのないよう頑張って来てくれ。」

「はい、本当に有難うございます、また連絡します。」

この話に私を推薦してくれた谷崎さんには、本当に感謝している。

次に戻ってくる時は、今よりも成長した姿を見せたい、そう思い職場を後にした。

空港に着き、再度忘れ物の確認をする。

そういえば、玲奈にあれだけ言われたのに、チームのことほとんど調べてなかったな。チーム名はさすがに谷崎さんに聞き直したけど。

でも向こうに着いてからチームに合流するまで2週間はあるし、もう少し後でもいいか。私の専門はあくまで選手のトレーナーなわけで、チームの組織自体にはあまり関係がない。

ピコン

LINEが入り、差出人の名前を見る。

「雅也?」

ああ、そういえばドイツ渡るってこの前連絡してたんだっけ。

"出発便のご案内をいたします。デュッセルドルフ行き、18時発…"

「激励メールかな、後でいいや。」

そう思い、携帯を機内モードに切り替えて搭乗ゲートへと向かった。


約12時間のフライトを終え、デュッセルドルフ国際空港へ到着した。

そして漂う、日本とはまた違う独特の匂い。

久しぶりに降り立ったこの国に、少し懐かしさを感じる。

現地の天気やニュースを見ながら、空港のロビーで関係者の人を待つ。

チームスタッフの人か、谷崎さんの知り合いか定かではないが、どうやらこの時間に迎えに来てくれるらしい。

現地の人に、私のドイツ語が通じるだろうか。と今更になって不安になってくる。

その時だった。

「菫…?」

懐かしい、懐かしい声がした。
忘れもしない、その声。

「…絢斗。」

ゆっくりと振り返った後、驚いた顔をして立っているその人の姿を見て、私は思わずそう呟いていた。

出逢い


まだ、何も考えなくてよかった。

ただ目の前のことにがむしゃらでいられた。

青い青い、そんな日々。



高校1年生の春。


「菫!早く!」

「分かってるって。よし、行ってきます!」

「おばちゃん、行ってきます!」

「はーい、二人とも行ってらっしゃい。」

向かいに住む幸田雅也は、私の幼馴染みだ。

小学生に上がる前、私がここへ引っ越して来た時に知り合った。

親同士の仲も良く、小学校、中学校と一緒だったが、めでたく高校まで一緒になった。

気さくで誰とでも友達になれるし、友達思いで優しいけど、少しおっちょこちょいなところもある。

「そんなに急ぐ必要ある?高校近いんだし・・」

速歩きで歩く雅也。私たちの家から徒歩15分の距離に高校はある。

「クラス発表見なきゃじゃん!蓮二、沙耶、日和ももう着いてんのかな〜」

蓮二、とは鳴川蓮二。そして沙耶は荒木沙耶、日和は柳田日和のことだ。

この3人とは中学で知り合った。

蓮二はいつもうるさくて馬鹿なところも多いけど、真面目な時はすっごく真面目で、そこは尊敬している。

沙耶は口が悪いけど、サバサバしてて男女問わず人気がある。スラッとしてて美人だし。

日和は噂とか流行が大好きで、ザ・今時の女子って感じだけど、信念があって責任感のある子だ。

特に何かきっかけがあったわけではないが、5人で遊びに行くことも多く、何かしら集まったりする仲だ。

「3年間クラス変わらないってどうよ、うちの高校。」

「だから余計気になるんだって!」

「大丈夫、雅也がボッチになっても、ご飯は私たちが一緒に食べてあげるから。笑」

「どんな慰めだよ!そんなことにはならねぇ…多分!」

そんな他愛もない会話をしていると、すぐに着いた。既に掲示板には人だかりができている。

「ほら、雅也でかいんだから見てきてよ。」

「はいはい。」

「どう、どう?」

「あ、菫!雅也!」

「日和!」

「私たち同じクラスだよ!5人とも!」

「嘘?そんなことあるの?」

「本当、誰か頼み込んだんじゃないかってぐらいの奇跡よね。」

「沙耶!もう来てたんだ!」

「うん、日和が早く来たいってうるさくて。笑」

「ちょ、俺見た意味ないじゃん!」

「雅也、お疲れ。笑」

「とりあえず良かった、高校も充実しそう〜」

「ね。」

「蓮二は?来てないの?」

「さっきメールで、寝過ごしたから俺の見といてって来てた。笑」

「あいつ、相変わらずだわ。笑」

「この3年間、私たち蓮二に赤点やばいって振り回されるよ、絶対。笑」

「その度になんか奢ってもらう?笑」

新しい高校生活に胸を弾ませながら、私たちは教室へと向かって行った。



高校生活1日目は、入学式やらこれからの準備やらで慌ただしく終わった。

「なんか疲れた〜」

「でも、これから楽しみだよね〜」

そう言いながら、沙耶と日和が近づいてくる。

「菫、一番後ろの席いいな〜。私一番前だし。」

「しばらく席替えしないっぽいしー」

「あ、ねぇ、帰りマック行こう〜」

「初日から。笑 まあいいけど。」

「おっつー」

「あ、蓮二、雅也。この後マック行く?」

「ワリィ、俺らこの後部活登録兼ねた説明会なんだよね、その後になるわ。」

「分かった、また終わったら連絡して。」

「ねぇ、ウッチーも行くよね?一緒に行こう?」

雅也がウッチーと呼ぶその子に目をやる。私の前の席で、今日一日教室にいる間はずっと寝ていた。モゾッとその子が身体を起こす。

「…ん。」

「内倉くんだよね?その後一緒にマック来なよ!」

「いや、俺は…」

「おい、早く行こうぜ、怒られるって!」

蓮二に連れられて、雅也と内倉くんと呼ばれるその子は教室を出て行った。

「日和、あの子のこと知ってるの?」

「当たり前じゃん!サッカー凄く上手い上にイケメンで有名だよ!逆に知らないの?」

「ふ〜ん」

「まあ、菫はあんまりそういうの興味ないから。笑」

マックに着いても私たちはひたすら喋っていた。

「で、沙耶はやっぱりバイトするの?」

「うん、やりたい部活もないし、うちの学校禁止だからコソコソやらないと。」

「日和は?」

「まあ部活には入らないかな〜、菫はどうするの?」

「陸上…かな。」

「やっぱりまだやりたいの?」

「諦めたくないな、って。満足いくまでやってみたい。」

私は小学生の頃に、普通に走るより跳ぶという動作を加えたほうが楽しいかも、という理由で幅跳びを始めた。

中学の時も陸上部だったが、半分ほどは怪我で休養していた。

1年生の頃に一度やってしまった肉離れが癖になってしまい、それ以来度々再発するようになったからだ。

小学校の頃は全国大会に出たりもしたが、中学ではほとんどの大会で結果を残せず、いや、本当は怖くて思いきり跳べなくなってしまったのだ。

プツン、と切れるようなあの痛み。

それを庇って、思うようなジャンプができなくなってしまった。

それに気付いたのは、引退してからだった。

中学での部活は、後悔しか残らなかった。だから高校では、自分の脚が壊れるまで思いきりやろうと決めた。

走れなくなってもいい、跳べなくなってもいい、歩ければいい。だから、高校では満足いくまでやろう、と。

「中学の時、後悔したから。だから、高校では悔いを残さないところまで頑張ってみる。」

「そっか、頑張って。私たちにできることがあったらサポートするから。」

「うん、応援してるから。」

「有難う、二人とも。」

「おーい!」

「あ、雅也、蓮二。」

「お疲れ、長かったね。」

「本当に、蓮二の言う通り怖そうな監督だったわー。」

「蓮二、推薦入試だからもう会ってるんだっけ?」

「そうそう、何回か練習も参加してるしな。何言われるのかとビクビクやってたわ。」

「まあ、蓮二は推薦じゃなきゃ入れてないんだから感謝しなさいよ、その監督に。」

「本当にそれ、一般は絶対落ちてる、まず先生に受験すること止められてる。」

「その分、サッカー頑張ったんだから褒めろよな〜」

「てか、うちはそんなに強いの?」

「ああ、全国にもよく出てる。」

「へぇ、じゃあ私たち連れてってね、全国に。」

「任せとけって!」

「簡単に言ってくれるなぁ。まあ、そのつもりだけど。」


その後もあれやこれやと話した後、私たちは解散した。


「ねぇ、あの内倉くんって人もサッカー部なの?」

いつも通り、雅也との帰り道。

「ああ、ウッチーね。あいつは上手いよ、蓮二と同じくらいかそれ以上。」

「へぇ、蓮二以上かぁ。」

「そう、中学の時トレセンですげぇ上手いやつがいるなって思って、友達になったんだよね。」

「雅也っぽいや。笑」

「変わってるけど、すげぇいいやつだよ。」

「そっか。」

「うん、じゃ、また明日!」

「うん、バイバイ。」


次の日のお昼。

「腹減ったー、飯食べよ!」

「蓮二さっきの時間なんか食べてたじゃん。」

「あれは別腹!部活用に食い溜めすんだよ。」

「内倉くんも、一緒に食べない?」

やっと起きた内倉くんに、声を掛けてみる。

「…うん。」

6人で弁当を囲む。

「へぇ〜、じゃあ内倉くんは函南から通ってるの?」

「うん。」

「遠くない?どれくらいかかるの?」

「電車で1時間半くらい。」

「え、ウッチー何時に家出てんの?」

「5時。」

…そりゃ寝るわ。

昼休みは皆、内倉くんに質問責めだった。私はそれをずっと黙って聞いていた。

「菫もさ、なんか聞きたいことないの?さっきからずっと黙ってるけど!」

「ん、ん〜…。好きな食べ物は?」

急に日和に振られて、特に思い浮かばなかった私は何となく質問してみた。

「なにそれ菫。笑」

「英語の授業じゃないんだから。笑」

皆の反応に少しムスッとする。

「何かって言われたから聞いただけなのに。」

「…内海ってさ、意外と天然なの?笑」

そう笑いながら言う内倉くんに少し戸惑う。へぇ、こんな感じで笑うんだ。クールなのかと思ったけど…。

「内倉くんまで笑うんだ。」

「ごめんって。笑」

私たちに初めて笑顔を見せてくれた。

そのきっかけが私のことで、少し嬉しいような。



「沙耶、日和、私部活登録出しに行くから。先帰ってて。」

「分かった、じゃあね〜。」

机から用紙を取り出し、書き込んでいく。

窓から部室へ向かうサッカー部の姿が見えた。さすが強豪、練習始めるのが早いなぁ。

早速出された課題もついでにやってしまおうと10分ほどしていると、既に教室に残っているのは私一人だけだった。

教室の鍵を閉めて、職員室に向かおうと廊下を歩いていると、練習着でこちらに走ってくる内倉くんが見えた。

「あ、」

「おう、」

お互いそう言って通り過ぎた後、ハッとした。

「内倉くん!」

「ん?」

5mほど先で振り向く内倉くん。

「鍵!閉まってる!」

そう言って私が投げた鍵を片手でパシッと掴む。

「ん、サンキュ。」

それだけ言ってまた走って行った。

…何だろう、この感じ。思わずフフッと笑みが零れる。

職員室に入る前に、ペチッと頬を叩く。こんな顔で入ったら、変な子だと思われてしまう。

「失礼します。」

「中森先生、部活登録です、お願いします。」

「はいよー。お、幅跳び専門か。」

「はい、これからお世話になります、宜しくお願いします。」

「ん、じゃあ必要なものとか部内ルールはこれに色々書いてるから、また目通しといて。」

「分かりました。」

「じゃあ来週からの練習で。」

「はい、失礼します。」

私もいよいよ部活が始まるのか。そうして職員室を後にした。

「ウッチー、やっと来た!」

「おせーよ、長谷川キャプテンに怒られるぞ!」

「ワリィ、スパイク教室に置いてきちまってた。」

「…ウッチーなんかあった?」

「え?」

「片方だけ口角上がってる。」

「…見間違いじゃね?」

「おい1年!早く動けよー!」

「「ウッス!!」」



1週間後。

だいぶ高校生活に慣れてきた。クラスにもそれぞれグループができて、落ち着いてきている。

「ねぇ、川崎先輩ってサッカー部?」

「そうだけど、どうした日和?」

「カッコよくない?この前すれ違ってさ、サッカー部っぽいなって思ってたのよ。」

「あ〜、あの人はおっかねぇぞ。」

「蓮二、いつも注意されてるもんな。笑」

「いや、本当こえーから!」

「彼女いるのかな〜」

「今度しれっと聞いてみるか。」

「え、聞いて聞いて!菫も部活始まるし、沙耶もバイトだし、暇な時見に行こうかな〜。」

「あ、菫は今日から?」

「うん。」

「俺ら練習ガン見しとこうか?笑」

「いやそこは集中して。笑 私も蓮二ガン見しとくよ?笑」


キーンコーンカーンコーン


「あ、次英語じゃん、だりぃ。」

「地味に嫌なんだよねー、ペアワーク。」

授業が始まり、先生からペアワークの指示が出た。そして、内倉くんが振り向いてきた。

「やる?」

「…やらない。笑」

「だよね。笑」

「内海ってさ、陸上部入んの?」

「うん。」

「ふーん。…ぽい。」

「ぽい、って、内倉くんは何を基準に判断してんの。笑」

「俺の…偏見?笑」

「なにそれ。笑」

「ずっとやってんの?」

「ん〜、小学生からやってたり、やってなかったり?笑 内倉くんは?ずっとサッカーしてるの?」

「どっちだよ。笑 俺も小学生から、てかいつまで内倉くん呼びなわけ?」

「え?じゃあ…ウッチー?」

「ん。」

「はーい、それじゃ前向いてねー。次のテーマはーー…」



ウッチーって、読めないんだよなぁ、こういうところ。



放課後、初めて部活の練習に参加した。

「内海菫です、専門は幅跳びです。宜しくお願いします。」

パチパチパチパチパチ


目標は今年の全国大会。難しいけど、春休みにもずっと自主練はしてきた。脚のことを気にさえしなければ、届かない目標じゃない。

まずは東海大会出場を目指す、ここからリスタートだ。


「5m20、すげぇな内海!お前ずっとやってたのか?中学の大会でお前の名前、聞いたことないが…」

「中学の時は怪我で思うように跳べなくて。今は大丈夫です。」

「そうか。東海は目指せそうだな、この調子で頑張れよ。」

「はい。」



そして5月上旬。
地区大会が終わった。

結果は2位で、東海大会に進めることに。



「おめでとう!」

「おめでとう、菫!」

「ありがとう、皆。」

初めて6人でマックへ来た。

テスト期間に入り、今日はサッカー部も練習が休みらしい。

「いっぱい頼めよ!いや、いっぱいは困るけど、俺らの奢りだから!」

「いや、頼まないし、食べれないって。一応食事気をつけてるんだから。」

「あ、そうか。」

「ていうかあんたたち、よくそんなに食べれるよね。」

「ウッチーも意外とめっちゃ頼むし!」

あの後すぐ、私のウッチー呼びが皆に移って、雅也と私だけじゃなく、全員ウッチー呼びになった。

「テスト期間が永遠に続けばいいのに。」

「蓮二はそんな余裕こいてないで、テス勉ちゃんとしなよ?」

「いや、大丈夫、ギリギリで赤点逃れるつもりだから。」

「どこから出てくんのよ、その自信は。中学の時みたいに前日になって菫にすがるんじゃないわよ。」

「高校生の俺は一味違うからな、まあ見とけって。」



とか言ってたのも束の間。

テスト前々日の朝、蓮二が電話をかけてきた。そして結局、皆で集まって勉強することになった。



ピンポーン

「本当ワリィ、やっぱ数学は一人じゃ無理だわ!」

「…まあ数学はね。日和はもう来てて一緒にやってるから、部屋行ってて。沙耶ももうすぐ来るって。」

「は?あいつも分かんねぇところあるんじゃん。」

「いや、あんたほどではないから!」

「聞こえてんのかよ・・。」

「もう、うるさいなぁ。雅也は駅までウッチー迎えに行ってるから。」

「了解、お邪魔しまーす。」


ピンポーン


「雅也、ウッチー、早かったね。」

「うん、これ、アイスとか買ってきたから。」

「ありがとう、あ、沙耶。」

「やっほ。はい、お菓子持ってきたよ。」

「有難う、私飲み物とってくるから上がってて。」

「「「お邪魔しまーす。」」」



「は?もう分かんねぇ!」

「だからそこ2乗するの、あと1ページだから頑張ってよ蓮二!」

「もう6時か〜、皆わりと頑張ったね。」


「ただいま〜。」


「あ、お母さん帰ってきた。」

「俺らもおばちゃんに挨拶してくるわ。」


「おかえり、皆でテス勉してて。」

「初めまして、内倉絢斗です、お邪魔してます。」

「ウッチーは私たちと同じクラスで、雅也と蓮二と同じサッカー部なの。」

「内倉くんね、いらっしゃい。皆ご飯食べていく?内倉くんもどう?」

「うん、そうしなよ、こんな時間だし。」

「…じゃあ、お言葉に甘えて。」

「皆、親御さんに連絡しといてね。」

「私たち何か手伝いましょうか?」

「そうね、カレーにしようと思ってるんだけど…手伝ってもらおうかしら。」

「俺ら、飲み物とか買ってきます!」

「あら、ありがとう。」

「よし。雅也、ウッチー、行こう!」



「へぇ、じゃあ内海は雅也んちによく来てたの?」

「うん、菫はお父さんがよく海外に出張してて、お母さんも夜遅い日が多かったから。うちでよく夜ご飯食べてたよ。」

「ふーん。」

「よく泊まっていけって俺の母さんとか言ってたけど、寝る時は絶対自分ちに帰ってたから、そこは遠慮してたんだと思う。」

「俺もそれ聞いた時、だから菫しっかりしてんだなって納得したわ。」

「だから俺ら、よく菫んちに泊まりに行ったりしてたのよ、さすがに今は行かないけど。」

「へぇ、まあ中学でも充分すげぇけど。」

「んー、俺らに恋愛とかそんなの皆無だからな。」

「そうなんだ?」

「だって、どっかが付き合ったら皆遠慮するし、グループで遊べなくなったりするじゃん。」

「まあ、それもあるけど、皆この中の誰かを好きってことが、まずないんじゃないかな?」

「へぇ。」

「それより、ウッチーは彼女とかいないわけ?」

「そうだよ、この学年の女子すげぇ気になってるってそれ!」

「いねーよ。てか、興味ない。」

「はー、モテるやつはちげぇわ。」

「蓮二もそこそこモテるじゃん、黙ってれば。」

「黙ってればってなんだよ!」



「あ、おかえり、ありがとう飲み物。」

「内倉くん、親御さん大丈夫?」

「あ、連絡しときました、大丈夫です。」

「そう、あとちょっとでできるから待っててね〜。」

「おばちゃん、沙耶と日和は迷惑かけませんでしたか?笑」

「うるさいなぁもう、私だってやるときはやるから!」

「蓮二のやつだけ人参丸々入れようか?」

「まじで、沙耶、それはやめろ。」


「ご馳走さまでした、片付けは俺らがやります。」

「あら、ありがとう。」

「久しぶりに菫んちにこんな遅くまでいたな〜。」

「なんか懐かしいね。」

「また今度泊まりに来ていい?おばちゃん。」

「うん、いつでも来てね。」

「やった、菫も一人の時教えてね。寂しいでしょ?笑」

「はいはい、その時は言うから。笑」



「お邪魔しました、それにご飯までありがとうございました。」

「おばちゃん、ご馳走さま!」

「いえいえ、またいつでも来てね。」

「あ、ウッチー、駅まで送ろうか?」

「大丈夫、覚えてるし、帰り危ないから。」

「そっか、気をつけてね。」

「ん、またね。」

two of a kind

two of a kind

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work