戦友【Truth of Secrets】18

Shino Nishikawa

戦友 【Truth of secrets】18
落下傘訓練の日。
巧は緊張していた。アメリカでは何度も経験があるので、巧自身は大丈夫だが、日本兵が死んだりしたら、自分が降格になってしまう可能性があるからだ。
巧は現在34才。日本に来て6年。
日本政府の親米家の協力のもと、スパイとして日本に来た大西とムティと共に、一軍のトップを任されていた。

目的は、アメリカを守りぬくことだ。まだ戦争は始まっていない。

「いいか。俺が手本を見せる。」
「はい!!」

巧は、いつもどおり落ちた。
船では、大西とムティ、従道が見上げている。

しかし、予期せぬことが起きる。
一伯が上がってこないのだ。

「一伯は?」
巧が聞くと、若い兵士は首をふった。
「なんで。」
「分かりません。」
「そうか。」

巧は腕まくりをし、ズボンもまくった。
自分が助けに行こうとしたが、トウナが助けに行ってくれた。

トウナは8分ほど泳いでいるが、見つからない。
巧が沈痛の面持ちで、船の下を見ると、一伯が船につかまっているのが見えた。

「メシにするぞ!!」
巧は、兵士達に言った。

しばらくすると、あきらめた一伯が船に来た。

お弁当は、1人ついてきてしまった女性の歩美さんが配った。
アメリカでは、こういうことはない。
女性がついてくるなら、2人乗せるものだ。

巧は、談笑している大西とムティを睨んだ。

こういう女は、日本の女性が犯罪に手を出す元となる。
巧は、そんなことの収拾などしたくなかった。

ハンカチで汗を拭こうと、胸ポケットからハンカチを出した時、
「ねえ。」
歩美さんが話かけたので、親友からもらった黒い指輪が、海に落ちてしまい、巧は、頭に血がのぼってしまった。

「一伯君のこと、なんで嫌いなの?」
歩美さんが聞いた。
巧は答えようとしたが、日本語が出てこない。

巧はキレ、歩美さんを船から落としてしまった。
巧はしまったと思ったが、なんと、二番兵の従道が歩美さんに銃を向けてくれた。

「なんでそんなことしたんですか?」
見ていた一伯が聞いたが、巧は顔を赤くして、無視した。
他の者は、気づいていない。

従道は純日本兵だが、歩美さんを海に捨てることは大事なことだと思っていた。
こういう女は、庶民のストレスになる。

「マジですか?」
ムティが聞いた。大西も厳しい顔をしている。
「歩美さんを海に捨てたって。」

「だって、しょうがないだろう。」
「しょうがなくないですよ。」
ムティは軽く、船を足で蹴った。

「巧君。」
大西は、巧を見つめた。
「すみません。」
巧は、目を伏せて謝った。

港につき、しばらくすると、9才くらいの丸刈りの男の子が来た。
「お姉ちゃんは?」

「ああ。あの人、君のお姉さんなのか?」
「ちがう。でも、どうしていないの?」
「途中で、船から降りたんだよ。」
「へー。いつ帰るの?」
「俺も分かんない。ごめんな。」
巧は、男の子の頭をなでた。

夜、歩美さんの家族が泣いてきたが、
「そのうち帰ってきますから!!」
大西が言って、帰らせた。
巧は布団で泣いた。


11月1日の夜9時。
アメリカから連絡が来る。
『はい、‥はい。分かりました。』
大西が連絡をとった。

『どうです?』
巧は聞いた。
『本土に影響がないように、日本から開戦すること、だそうだ。』
『そうですか。』

『じゃ、パールハーバーを?』
ムティが聞いた。
『ああ。そのつもりだ。日本政府に連絡してみる。』
大西は答えた。
その会話を、なんと従道が立ち聞きしていた。
従道は、3人がアメリカのスパイだと気づいたが、山形県の自分の家族と恋人を守ることが一番だったので、山形にはアメリカの空襲がこないよう、なんとかして3人を操ろうと決めた。

5日後の夜、3人はまた、大西の部屋で話していた。
『誰も気づいてないな。俺達がアメリカ人だって。』
大西は、確かめるように言った。
『まぁ‥大丈夫ですかね。』

『大丈夫ですよねって。大丈夫に決まってるだろ。』
大西は、つっこんだ。

『まあ、とにかく開戦する。現地時間で12月8日、朝8時。ヤヤ、だな。』
大西は言った。
『日本は手ごわいです。』
ムティが、大西の机に、よりかかりながら言った。

『そうだな。な?巧君もそう思うだろう?』
『‥はい。』

『やるべきことはただひとつ。アメリカを勝利に導くことです。』
ムティが言った。

その後、アメリカ人のスパイ3人とヤマを呼び、会議をした。
白人のミルとポール、黒人のロイは、大西、巧、ムティがアメリカのスパイとは知らない設定だったが、ロイは気づいていた。
ミルとポールはそれには気づいていないが、ミルとポールはなんと朝鮮からのスパイだった。二重スパイなのだ。
本当は朝鮮のスパイだが、アメリカ人として、日本にもぐりこんでいるスパイだ。

ヤマは何も知らない。

富四郎とエードは、会議の一部始終を聞いてしまい、次の日、実家に帰ると言い、そのまま失踪したが、巧は2人を病気で退軍したことにした。
なぜなら、巧は以前、富四郎に話しかけられた時、日本語がうまく話せなかったからだ。富四郎は、巧がアメリカに留学していただけだと思っただけだったが、巧は完全にバレたと思い込んでいた。

11月28日。
兵士達に開戦することを告げる。日本軍に、自分達の他に、アメリカのスパイがいたことには、気づかなかった。

マロと伸、佑ジャン、黒人のロイは選ばなかった。
開戦と同時に、大事な兵力を失うのも、どうかと思ったからだ。

開戦の日は1日ずれた。前倒しだ。
現地時間12月7日の朝8時。
向こうが指定してきた。

「13月がないからねぇ。」
大西は、ムティに言った。
「どういう意味です?」
「暗号に、イニナンヤ。」
「そうなんですか?」
「うん。アメリカ好きの学者殿が、考えるらしいよ。」

12月5日。
大西はトイレが近くなり、夜中、まだ事務作業をしていた巧とムティの下に、大西が行った。

大西は、震えながら言った。
「従道君が、私に合言葉をたずねてきたんです。」
「合言葉を?」
「はい。どういうわけでしょうか?」
「うーん‥。」

「もしもの時は。」『パン。』 
ムティは、手で銃の形を作った。

「そうだね。できれば、人殺しはしたくないけどね。」
大西は安心したように、部屋に戻って行った。
大西は、まるでボケ老人のようになってしまっている。

真珠湾攻撃の日。
巧とムティは、初めてハワイを見た。

大西は来たことがあるので、目をそむけた。
できれば、家族と訪れたかった場所だ。

家族はいたが、離婚した。

襲撃は成功した。
「死ねぇぇ。」
大西は言った。
大西は、ムティと同じ戦闘機だ。
巧は、アーティと一緒だった。

「あっ、ダメだ!」
アーティは、言った。
スパイだった日本兵士が、ハワイに降りようとしていたのだ。

「いいですか?」
アーティは聞き、巧はうなずいた。
アーティは右に回りながら近づき、手で戻れの合図をした。

しかし、日本兵2人は、親指を下にし、下降して、撃たれた。

「もうダメだ。」
巧は戦闘機を戻した。

かなり疲れたが、開戦は成功だった。



「あいつのメシ、うまいな。」
巧が、佑ジャンを見て言った。
「それに、良い子だし、特攻に指名するのは、止めてくださいね。」
ムティが言った。

初めての特攻は、天候により、みんな帰還した。
「こんなの、正気じゃないっすよ。」
帰ってきた従道は、言った。
大西が困った顔で巧を見ると、巧は従道に言った。
「わかった、じゃ、従道はもう行かなくていい。」

「‥ありがとうございます。」
従道は、少しびっくりした感じだ。

従道は、大西、ムティ、巧がスパイだと分かっていた。

2回目からの特攻は、誰も戻らなかった。

巧は腹を壊した。
今でいう、ノロウイルスである。

「巧さん、大丈夫ですか?あの、僕、薬を調合できるんです。」
サンショウウオ博士は、薬に詳しい医者だった。
とても良い薬を調合してくれた。

サンショウウオ博士は、大西にも同じことをしたので、2人はなんとかして、サンショウウオ博士を、この危険な戦争から、逃がしたいと考えていた。

4回目の特攻で、サンショウウオ博士を指名するが、断られてしまう。
2人は、燃料を多く入れ、逃げるよう言うつもりだったのだ。

2人は後で説得するつもりでいたが、ヤマが特攻に志願する。

巧にとって、強いヤマは、邪魔な存在だった。
巧の目的は、アメリカを守ることだ。

夜、巧、大西、ムティは話した。
「ヤマが志願するとは。」
大西は言った。

「やめさせますか?今、いなくなったら困りますよね。」
ムティが言ったが、巧は考え込んでいる。
大西がまた口を開いた。
「な、そうするか。思わないか?もしも本当に日本兵だったら、あの方は使わないね。最後までとっておく。」

「あの方は良い方だ‥。」
大西は、遠い目をした。
大西は、ヤマのマッサージが好きだったのだ。

次の日、巧は、ヤマに話しかけた。
「いいのか?」
「いいですよ。」
ヤマはご飯を食べていたが、巧を、涙を我慢してすました顔で見上げた。

巧は背を向けたが、ヤマの目からは涙がこぼれた。


「燃料、少ないんじゃないのか?」
ヤマの戦闘機に燃料を入れる巧に、大西が話しかけた。
巧は視線を落とした。
巧は、アメリカに、ヤマという強い男が特攻で行くことを、連絡したのだ。
『あの方は良い方。』
大西はそれ以上言わなかったが、くもり空の夕焼けを見ながら、つぶやいた。
大西は寒気を感じながら、涙を我慢した。

ヤマは死んだが、サンショウウオ博士を逃がすことは成功した。


「硫黄島から、応援要請です。」
従道が言った。
「何?」
「ですから、硫黄島から、応援要請です。」
「無理。」
大西は、首をふった。

「どうしてですか?」
「そんなに出せない。沖縄での地上戦が控えている。」
「沖縄で地上戦が?予定では、長崎のはずですが。」

大西は、首をふった。
「あそこは、都会だから。」
「都会?行ったことがあるんですか?」
「こっちもいろいろ調べている。とにかく無理と伝えてくれ。」
「‥分かりました。」

巧とムティは、無言で大西を見た。
外では、軍事演習が始まっている。
「行くか。」
「そうですね。」
巧とムティは、立ちあがった。

巧は、テヘラを気にかけている。
それは、テヘラが、軍に忍び込もうとした女を、撃ち殺したことを知っているからだ。軍に忍び込もうとしている女を殺していたのは、アーティだけではなかった。

テヘラは、建物の影から、忍び込もうとした男女を撃ったが、女だけが倒れた。
「ああっ。」
男は逃げ、テヘラは、倒れた女に駆け寄った。
「死んでいる。」

「大丈夫ですか!大丈夫ですか!」

巧が来た。
「その人はもうダメだ。どうした?」
「いえ‥、来たら、死んでいて。」
「違う!お前が撃ったんだ。」
「違います。」
「とにかく運ぶぞ。」
「どこにですか?」
「海だよ。」

「その人、どうしたんですか?」
ハリーと後輩達が、駆け寄ってきた。
「基地で亡くなっていたんだ。」
「そんな‥。」

ハリーと後輩達は、こそこそと話した。
『レイプかな。』

「どこに行くんですか?」
「火葬場だよ。」

『火葬場なんてあったっけ?』
『知らない。』

「ふうぅ。」
女を岩陰に寝かせた。

「2時になったら流せ。」
「はい。」

「俺は、もう行くからな。」

テヘラは、岩影に座り、海藻を見て、時間を待った。
テヘラの考えでは、2時ではない。ちょうどいい時間は、3時だ。

テヘラは、寝てしまった。

「まだか?」
「え?」
その人は、亡くなったはずのヤマだった。

「どうした?人を殺すなんて。」
「‥1人を許したら、みんなが押し寄せる。それに、戦争中なのに、こんなに肌が綺麗なんて、おかしい。」

「関係ないだろ、そんなこと。いいか、人殺しはダメだ。」

テヘラは、うなだれた。

「えっ!」
ハミリーが来た。
「火葬場に、行ったんじゃなかったんですか?」
「ううん。海に流すんだ、ご家族の考えで。」
「ええっ。どうして?テヘラさんがやるんですか?」
「恋人だったんだよ。」

「今、何時くらい?」
「多分、2時半です。」

「そろそろか。」

テヘラは、海に女を流した。


大西が言った。
「もうすぐだね、沖縄に行くのも。‥従道君は行く必要がない。足を撃たれたのだから。」
「すみません。」
従道は、銃の演習中に、後輩から足を撃たれてしまったのだ。

従道は資料を持ち、部屋を出て行った。

「皆殺しかな?」
大西が聞くと、ムティが答えた。
「何の話です?」
「沖縄戦だよ。私達が、アメリカ人ということは、気づかれず、皆殺しになる。」
「そんなわけありません。今まで、厳しい訓練を積んできました。」

「仲間撃ちだけは、止めてくださいね。いいですか?巧さん。」
「はい。」


夜、ムティは、多久に襲われてしまう。
「おい、アメリカ人だったのか?」
「止めろ。」

伸も来た。
「アメリカ人なのか?」
「そうだ。」

多久は、銃を向けた。

「撃つなら、頭を撃ってくれないか?」
ムティが言った。
伸が多久を止め、ムティも部屋に戻った。


沖縄に向かい、泳いでいる時、巧は足をつってしまった。



「最近、トウナと大ちゃん、昔っぽいよな。」
未来のリンチルとマロは、居酒屋で話していた。

「お待たせ。」
伸が入ってきた。
「あれ、多久は?」

「いない。なんかあいつ‥ちょっと、変なんだよ。」
「でも、久しぶりにみんなで飲もうって言っていたじゃん。」
「ごめん。」

アハハハハ!
隣のテーブルの合コンは楽しそうだ。
「一伯さんだ。」
リンチルが言った。

「一伯のヤツ、まだ生きていたのか。」
「何?」
「生きていたのかって言った?いいじゃん。人が生きて、何が悪いの?」
「いやいや。そんなマジになりますなって。」
「おかしいってぇ。死ぬとか、生きるとかさ!」
マロは言った。

「もう酔ってんの?」
リンチルが覗き込んだ。
「まだ水しか飲んでないじゃん。」

「お姉さん、ビール、3つね。」
「勝手に決めないでよ。」
「あのさ、俺は、ビールが飲みたくて、来ているんじゃない。」
「うん、伸ちゃんは、多久も一緒に、みんなで飲みたかったんだろ。マージンとかも一緒にさ。」
「まぁ、それもそうだけどね。お姉さん!ビールは変更で、カクテルにして。アイスオレンジロイヤル。」
「あっ‥じゃあ‥俺も、アセロラロイヤルで。ビールは、変更ね。」
リンチルも言った。

「うまいね、ここの魚。」
ホッケ等を、3人は食べた。
1時間後。
3人は、温かいお酒を飲んでいた。
リンチルはまだ、アセロラロイヤルを飲み干していない。
結局3人は、ビールも注文した。

「やっぱ。このメンバーが一番落ち着くわ。」
「マージンも多久もいないけどな。ヤマも大ちゃんもトウナもさ。」

「ヤマは、もういないよ?」
伸は言った。
「何言ってんの。昨日も連絡きたよぉ!」
マロが言った。

伸は少し泣いた。
「俺は、戦争に行ってきたんだよ。」
「え?」
「何言ってんの?」
「だからさ、俺は、タイムスリップできるんだよ。たまにね。」
「え‥。」
「そうだったの?」

「一伯のヤツ‥!!なんで美月に、あんなことしたんだよ!!」
伸は言った。
「美月さん?亡くなったって聞いたよ。」

「レイプした後、刺殺したんだよ。一伯がな。」
伸が言った。
「だから、俺が殺したんだ。過去の世界で。」

「そうだったの?」
「うん。でも死んでない。だから、分かったんだ。過去の世界でその人が死んでも、現実の世界では、関係ないって。」

リンチルが言った。
「でもさ、伸ちゃんが殺したのって、過去の一伯だろ?」
「違う。一伯も、過去にタイムスリップしていたんだ。」

「そんなに不思議なことがあるなんてな。」
マロとリンチルは、顔を見合わせた。

戦争中のマロとリンチルは、沖縄で、トウナと大ちゃんが未来から来た者と知り、シーサーに懇願し、タイムスリップをし、戦争中のマロとリンチルが、到着した。
「わああっ!!」
「俺達の代わりに戦争に行ってください、お願いします。」

『いいか。死の抜け道が一つだけある。それは、タイムスリップして、入れ替わることだ。みんなの命を救うためにも、戦争に行ってくれ。』
伸は言った。
マロとリンチルは、有名な神社からタイムスリップをした。
安井金比羅宮の穴をくぐったのだ。


ムティは、イギリスの国旗を立てた船で、沖縄を目指した。
あらかじめ、仲間には連絡してある。

ムティは、ミルの英語が下手なので、ミルが二重スパイだということを見抜いていた。
それに、ミルが勝手に、ムティ達の無線を使う所を、目撃していたのだ。

「ミル。沖縄についたら、ロイが迎えに来る。アメリカ軍に行くんだ。」
「え‥。」

「君はどこから来た?」
ミルはうつむいた。ミルは朝鮮人だ。髪を脱色していたが、今は薬切れで、生え際は、黒くなってきていた。

「とにかく、アメリカ人としてふるまうんだ。」


ムティが沖縄に着くと、佑ジャンとリンチルと多久が、海岸に来ていた。
ムティは、佑ジャンを気に入っていたので、見られたことを残念に思った。

不安に感じたナツが、巧と大西とムティの部屋に来た。

「どうした?」
「アメリカ兵と仲良くしているって、本当ですか?」
「‥スパイの人達だ。」

「ふーん。」

「じゃあこれは?」
ナツが、ゴミ箱に落ちていた毛染薬を持った。

「実は、巧君とムティ君は、元々、毛が茶色だから、黒に染めているんだよ。それに、ムティ君は、イギリス人とのハーフなんだ。」

「そうなんですか‥。」
「ごめんね、今まで黙ってて。」
「いえ。」
ナツは納得したようだ。


朝、沖縄のお婆さんは、米軍基地に忍び込み、テントで寝ていた隊長を、ナイフで刺し殺した。



巧、佑ジャン、ミツジ、ナツ、多久、日比野、大西は、見回りをすることになった。

巧は走り、茂みから銃を構えた。
多久と日比野、大西もそれにつづいた。

佑ジャンとミツジ、ナツは、顔を見合わせ、後ろにただ身を潜めた。

一人のお婆さんが逃げ、米兵が追っている。
パン!パン!
お婆さんは玉をうまくかわしていく。
巧達も茂みの中から、後を追った。

広場に来た時、お婆さんは転んだ。

米兵は英語で言い、銃を構えた。
「隊長の仇をとる。」

巧は両手をあげ、前に出て、英語で聞いた。
「What is this old woman?」

「誰だ、お前。」
米兵は、巧に銃を向けた。

「婆さんが何をやったか聞いているんだ。」
巧が強い口調で聞いたので、米兵はひるんだ。
この米兵達は、前に旧友のクロウドを見た時に、一緒にいた兵士達だったのだ。
「俺達のリーダーを殺したんだ。」

「そうだったか。リーダーの名前を教えてくれ。」

「クロウド・スワロスキー。」
パンッ
「巧君、今、何を?」

大西は言ったが、部屋で巧と2人きりになるとゲラゲラ笑い、英語でしゃべりだした。

「まさか、君が、あのお婆さんを撃つとはなぁ。突然、どうしたの?」
「あの婆さんが殺したアメリカ人が、俺の旧友だったんだ。」

「そうだったのか。私には、アメリカ人の友達などいないよ。」
大西は、悲しい目をした。
途中で出会ったアメリカ軍の中に、旧友がいたので、手を振ったが、無視をされたのだ。


ナツは帰ることにした。巧達がスパイだということに、気づいてしまったのだ。
「ね、ごめん。先に帰るから。」
「ふーん。」
佑ジャンとミツジは、そっけない態度をとった。

「巧さん、すみません。」
「どうやって帰るんだ。」
「泳いで帰ります。」
「また戻ってきてくれていいから。」
「ありがとうございます。」
ナツは深々と頭を下げ、テヘラと行ってしまった。


「ユウジさん、しっかり撃ってくださいよ。」
「佑、撃つ時はこう構えるんだ。」

「もっと、こうだ。」
「ああ‥。」

「バカタレ!!早く撃たんか!!」

パンッ

巧は青ざめた。
マロとリンチルには、死んでほしいとは思っていたが、佑ジャンがマロを撃ってしまったのだ。
マロは、弟を道連れにするように、リンチルを撃った。
でも、マロがリンチルを撃ったのは、一緒に未来に戻るためだった。



夜、巧はうなだれた。
マロとリンチルの遺体安置所の近くに行ったが、トウナ達が泣いていたので、遺体のそばには行けなかった。


「撃たんか!!」
次の日の戦闘で、巧は、佑ジャンに厳しくした。
佑ジャンが、マロを撃ったことを気にして、自殺することを恐れたのだ。

「俺、見てたぜ。」

「マロさんのこと、撃ったんだろ。」

「違う!!向こうに行け!!」
巧は、成道に怒鳴った。

その日の夜、マロとリンチルの火葬が、行われることになっていた。
「時間です、来ませんか?」
ムティがドアを開けた。
「いや‥。」
巧が首をふった。

「大西隊長はどうですか?」
ムティが聞いた。
「私は、行くとするか。」
大西は立ち上がった。


夜遅く、ムティが、姫百合の姫達を本土まで送ることになった。
「すみません、先に帰ります。」

「本当にお世話になりました。」

ムティは、部屋から出た。

「いい?みんな乗った?」
姫達は、緊張の面持ちでうなずいた。

船を出した。
パンッ
銃声だ。
姫達は怯えて、うずくまっている。

「大丈夫?」

ムティが見ると、多久が撃ってきていた。
「あぁ‥。」
パン パン
玉は、当たらなくなった。

「今までありがとう!!」
ムティは、大きく手を振った。


次の日、ミツジが捕虜になってしまう。
「巧君、ミツジを助けに行く?これを機に、アメリカ軍に戻ったら?」
「いや‥ユウジが行くだろう。」

「ユウジ、これ。」
「はい。」
「頑張れよっ。」
巧は、佑ジャンの背中をたたいた。

佑ジャンは、見事、ミツジを連れて戻った。

沖縄地上戦が終わり、巧は捕虜となった。
しかし、巧がスパイだとアメリカ軍に伝わり、本土に戻ることができた。

大型船から降りると、クリスティアラが迎えに来ていた。
「久しぶりね、ルーター。」
「クリスティアラ。」
巧は、荷物を落とした。


大西は、軍服のまま、マンゴーの木の下に来ていた。
自分は金バッチをつけ、周りの村人達は、ロープを持っている。
GHQの者達が見張る中、大西は絞首刑を、村人達により執行された。


過去から未来の世界に来ている、マロとリンチルは話した。
今日はボーリング場に来ている。
「ボーリング面白いな。」
「うん。やると、気持ちがすっきりする。」

「だけど、そろそろだと思うよ。俺は。」
マロが構えながら言った。
「そろそろって何が?」
「あいつらが戻ってくるの。」


「もう?」
マロとリンチルは、場所を移動した。
今度は、ビリヤード場だ。
「うん。もう。」
マロは、一手を決めた。

「ふぅ~。いい湯だった。」
最後に、マロとリンチルは、銭湯によって帰った。

ドンッ
「ん?」
「いって。」
「ああ。」
現代のマロとリンチルが戻ってきたのだ。
過去のマロとリンチルは、顔を見合わせた。

過去のマロとリンチルは、戦争の時代に戻ったが、なぜかグアムに降りてしまった。
「ここ、どこ?」
「ガムだよ。ほら。」
マロが、看板を指した。

「うわぁ‥。なんで?」
「わかんない。でも、俺達が来たかった場所じゃん。」
「でも、あいつが知ったら、嫉妬するんじゃない?」
「あいつとは?まさか多久のことか?」
「うん。」
「気にしなくていいさ。ずっと伸ちゃんとつるんでいるから、つまんないよ。」

「でも未来の伸ちゃんは、良い人だったよね?」
「うん。今の伸よりずっといいわ。」
マロは言いながら、ポケットを探った。
「ん?」

「銭が入ってた。」
「よかったじゃん。それで何か買おうよ。」
「そうだな。」

2人はお弁当を買った。

マロが、ご飯を食べながら聞いた。
「今日のところはいいけどさ、明日からはどうする?」
「なんか、日雇いの仕事探す?」
「ああ、まぁ、そうだな。」

2人は、ゴミ捨て場の仕事を見つけた。

休日。2人はヨットを拾った。

「あれ?誰だ?」
「あ、大西さんだぁ!」

「大西さん!」
「ガムに来ていたんですね!」
大西は、うなずいている。

「こんなところで、知り合いに会うとは。」
「大西さん、家族いないのかな?日本人なのに、ガムに来るなんてさ。」
「前に、家族はいないって言ってた。」

夜。
「あれ?誰?」
「大西さんだよ。あんな場所で寝ちゃってる。」

「大西さん、大西さん。」

「ん?」
マロとリンチルはタイマツを持ち、覗き込んだ。
「大丈夫ですか?冷えますよ、いくらガムでも。」
「お、おお。」
「家は?分かりますか?」
「うん。」
「俺達、あそこにテントを貼ってるんです。」
「そうか。」

「どうにか日本に帰りたいですけどね。」
涼しい風が吹いた。

「マロ!船が来てるよ。」
リンチルが、テントのマロを呼びに来た。
「マジか!!」

「あー‥でも、中国行きの船だ。」
「構わない。乗せてもらおうぜ。」

「これで、日本に帰れるのかな?」
「うん。大丈夫だろ。」

しかし、なかなか日本に帰ることができず、2人は、中国人になることになってしまった。

「スポーツが、俺達を日本に結び付けるか?」
マロは、ビリヤードを決めながら聞いた。
「これ、スポーツって言える?」
「言えないね。これは、ただのゲームだ。俺達が未来で習得した、大人のゲーム。」

「世界でも目指すか?」
マロが、ポスターを見ながら聞いた。
「そうだね。それにこれ、開催場所が、名古屋だ。」
「よし。これで、日本に戻ることが出来るな。」


トウナ、大ちゃん、高選手、日比野は、話した。
「やっぱり、お前達も、未来から来てたんだ。」
「うん。」
「どうやって来たの?」
「雷です。」
「俺達もですよ。」
「そうなんだ。」

「うーん‥。」

「そうだ、雷門だ。」

4人が、仮設の雷門に行くと、電流が流れ、戻ることが出来た。


「こんにちは。」
5年後、佑ジャンとナツとミツジが話していると、ムティが声をかけた。
「ムティさん!!」
「乗馬の試合に出るんだって?」
「はい!!」


「佑ジャン、頑張れ!!」
世界大会に、ムティとナツとミツジが、応援に来た。
なんと、巧とクリスティアラも来ていた。
佑ジャンは、優勝した。

「ミツジも、何か始めたら?」
「ほら、あれなんかは?」

ミツジは、1年間、木村先生と特訓をした。

ミツジのビリヤードの大会の日。

「また来ちゃったな、この時代に。」
高選手、日比野、大ちゃん、トウナが来ていた。

多久、伸、ミンクも来ていた。
決勝で、選手のマロと、審判のリンチルが登場し、みんな、目を見開いた。


「え‥マロさん?」
『ちがう、別の人だ。』
「マロさん、やっぱり生きていたんですか?」

大西も、影から、様子を見ていた。

『久しぶりだな。兄弟。』
マロは、多久に言った。
多久は、無表情のままだ。

試合は始まった。白熱した試合だ。

この一手で、どちらが勝つか決まる。
マロが日本語で、ミツジに聞いた。

「お前、人を殺したことはあるか?」
「ありません。」

マロは一手を決めた。

マロは、スティックを肩にかけ、言った。
「嘘だろ。嘘をつく奴は必ず負ける。」

「え‥。」


試合の後、多久、伸、ミンクが、マロに話しかけた。
「マロか?」
「そうだよ。」
「生きていたんだ。」
「ああ。」

「多久。」
リンチルと多久は、抱き合った。

白人のポールは、田舎で、日本人達と暮らしていた。

ロイは、アメリカで、勲章をもらった。

ミルは、朝鮮に連絡をした。
「今更か?戦争から5年もたってる。」
「すみません。仕打ちを受けるかと思うと、怖くて連絡が出来ませんでした。」
「死んだかと思っていたぞ。」

「朝鮮は、南北に分裂された。もう、お前が帰る場所はない。」

そう言われたミルは、電話を切った。

従道は、恋人の墓に、花冠をつけた。

大西は、巧からの手紙を読んで、メガネを外した。
「50を超えても、子供がいないっていうのは、戦争の代償かな。」

「70を超えても1人っていうのも、戦争の代償だけどね。」

大西は、1人で、ハワイ暮らしをしている。

巧は、子供がいないが、クリスティアラと、休日の午後のコーヒーを飲むことが、一番の幸せだった。


ダグラスとチル・・ Fool

伊藤博文・・糸、永遠

リグウ・・With you

ヘランの空・・Asian Legend,The Absolute Joker

戦友第二部・・Rill don't,ひとりの日本兵,おまえら叩くのはやめろ、おれは人間ではないんだ,破壊された土壁に記す,A LALA LOVE

HIMEYURI・・HIMEYURI

沖縄地上戦・・戦友、骨のうたう、戦歌、Tomorrow

Truth of Secrets・・At that time

BY SHINO NISHIKAWA

戦友【Truth of Secrets】18

戦友【Truth of Secrets】18

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